EF400mm F2.8L IS III USMレビュー|2840gまで軽量化したヨンニッパの実力と使い方
EF400mm F2.8L IS III USMは、400mmという超望遠と開放F2.8を組み合わせたキヤノンEFマウントの大口径単焦点レンズです。スポーツ、野鳥、野生動物、航空機など、被写体へ近づけない撮影で威力を発揮する、いわゆる「ヨンニッパ」のIII型にあたります。
最大の変化は軽量化です。先代EF400mm F2.8L IS II USMの約3850gに対して、本レンズは約2840g。約1010g、25%以上軽くなりました。400mm F2.8という巨大な光学系そのものが小型レンズになったわけではありませんが、1kgを超える差は、構える、振る、移動するという超望遠撮影の基本動作を大きく変えます。
光学系には蛍石2枚とスーパーUDレンズ1枚を採用し、ASCによってフレアやゴーストを抑制。ISは約5段分まで強化され、最短撮影距離も2.5mへ短縮されています。さらにMF速度を3段階から選択できる電子式フォーカスリングや、あらかじめ設定した2点へ素早くピントを移動できる機能など、現場での操作性も強化されました。
この記事ではEF400mm F2.8L IS III USMのスペックを並べるだけでなく、II型から何が変わったのか、F2.8をどのように使うのか、スポーツや野鳥ではどの設定から始めればよいのか、エクステンダーを使う場合はどう考えるのかまで、実際の撮影方法を含めて詳しく解説します。
EF400mm F2.8L IS III USMの基本性能
- 400mm F2.8と2840gを両立した超望遠単焦点
- 蛍石2枚とスーパーUDレンズによる高い描写性能
- II型から約1010g軽くなったことの意味
400mm F2.8と2840gを両立した超望遠単焦点
EF400mm F2.8L IS III USMの焦点距離は400mm、開放F値はF2.8です。レンズ構成は13群17枚、絞り羽根は9枚、最小絞りはF32、最短撮影距離は2.5m、最大撮影倍率は0.17倍。最大径は約163mm、全長は約343mm、質量は約2840gです。前玉が非常に大きいため一般的な前面ねじ込み式フィルターではなく、52mmのドロップインフィルターを使用します。
400mmはフルサイズ機では明確な超望遠です。離れた選手を大きく写すフィールドスポーツ、警戒距離を保つ必要がある野鳥や野生動物、遠くを通過する航空機などで使いやすい焦点距離です。一方で単焦点なので、被写体が近づいたときにズームで引くことはできません。400mmという画角を理解し、撮影位置を決めることが重要になります。
EFマウントには300mm、400mm、500mm、600mm、800mmといった多数の超望遠単焦点が存在します。焦点距離ごとの位置付けを確認する場合は、Canon EFレンズ一覧|焦点距離・種類別に選び方とおすすめを解説も参考になります。
蛍石2枚とスーパーUDレンズによる高い描写性能
EF400mm F2.8L IS III USMでは、蛍石レンズ2枚とスーパーUDレンズ1枚を使用しています。焦点距離が長くなるほど色収差は目立ちやすくなりますが、蛍石は超望遠レンズで問題になりやすい二次色収差を抑えるために有効な素材です。
さらにASC(Air Sphere Coating)が採用され、レンズ内で発生する反射を抑えることで、強い光が画面内や画面付近にある場面でのフレアやゴーストを低減しています。屋外スポーツ、鳥の飛翔、航空機などは撮影方向を自由に選べないことが多く、逆光側へカメラを向ける場面も少なくありません。そのような条件でもコントラストを維持しやすい設計です。
400mm F2.8では、単純な解像力だけでなく、ピント面の鋭さと前後の大きなボケを同時に使える点が重要です。遠くの被写体を大きく捉えながら背景を整理できるため、競技場の観客席、森林の枝葉、フェンスなどがある状況でも主役を分離しやすくなります。描写とボケの関係については、感動を与える描写力とボケ表現の秘密でも詳しく解説しています。
II型から約1010g軽くなったことの意味
EF400mm F2.8L IS II USMは約3850gでした。III型は約2840gなので、差は約1010gです。数字だけを見ると「1kg軽くなった」という話ですが、超望遠撮影ではこの1kgの意味が大きくなります。
三脚に固定したまま撮る場合でも、撮影場所まで運ぶ、三脚へ載せる、撮影方向を変える、撤収するといった作業があります。一脚ではさらに差が大きく、レンズを持ち上げて被写体を追う時間が長いほど負担が変わります。短時間であれば手持ち撮影も現実的になり、鳥が突然飛び出した場面や、スポーツで急に撮影方向を変えたい場面にも対応しやすくなります。
II型にも高い光学性能がありますが、III型を選ぶ理由を考えるときは、単に新旧だけではなく重量差をどう評価するかが重要です。II型についてはEF400mm F2.8L IS II USM 夢のようなボケと圧倒的解像感で詳しく紹介しています。
EF400mm F2.8L IS III USMの操作機能
- 約5段分のISを撮影状況に合わせて使い分ける
- リングUSMと電子式フォーカスリングを使いこなす
- フォーカスプリセットを使って離れた位置へ瞬時に戻す
約5段分のISを撮影状況に合わせて使い分ける
EF400mm F2.8L IS III USMは、EOS-1D X Mark II装着時のCIPA規格で約5段分の手ブレ補正効果を持っています。400mmではファインダー像のわずかな揺れも大きく見えるため、ISは単に撮影画像のブレを減らすだけでなく、被写体をファインダー内へ保持するためにも役立ちます。
静止している被写体ならISの効果を活かしてシャッター速度を下げる余地があります。一方、スポーツ選手や飛翔する鳥はISでは止まりません。被写体そのものが動いているためです。たとえば止まっている鳥なら1/250秒や1/500秒を試せても、飛翔中なら1/1600秒、1/2000秒以上が必要になる場面があります。
つまり「5段分のISがあるから低速シャッターで何でも撮れる」と考えるのではなく、手ブレと被写体ブレを分けて考える必要があります。ISの基本とシャッター速度の関係は、手ブレ補正で広がる写真表現 揺れを防いで撮影をもっと自由にでも解説しています。
リングUSMと電子式フォーカスリングを使いこなす
AF駆動にはリングUSMを採用しています。大きなフォーカスレンズ群を高速に駆動する必要がある超望遠レンズでは、被写体を捕捉する初動と、その後の追従性能が重要になります。400mmでは被写界深度が浅く、F2.8ではさらにピント位置がシビアになるため、AF性能は画質と同じくらい撮影結果へ影響します。
III型ではフォーカスリングが電子化され、マニュアルフォーカスの速度を3段階から選択できます。遠くから近くへ大きくピントを移動したい場合と、鳥の目や選手の顔へ微調整したい場合では、適したリングの反応速度が異なります。撮影前に自分が扱いやすい速度へ設定しておけば、AFからMFへ移った際の操作が安定します。
リングUSMそのものの構造や他のUSMとの違いについては、USMの仕組みと種類を知る 静音と高速を両立するフォーカス技術の選び方と使い分けも参考になります。
フォーカスプリセットを使って離れた位置へ瞬時に戻す
EF400mm F2.8L IS III USMでは、あらかじめ設定したピント位置へ素早く戻すフォーカスプリセットを利用できます。III型では事前に設定した2点へピントを移動できるため、距離の異なる場所を繰り返し狙う撮影で効果を発揮します。
たとえば野鳥撮影なら、手前の止まり木と奥の水場を登録しておきます。スポーツならゴール付近と別の重要なポイントを設定しておく方法があります。通常のAFでは、現在のピント位置から大きく距離が変わると、一度背景へ抜けたり、目的の被写体を探したりする時間が生じます。プリセットを使えば、その距離付近へ一気に移動してからAFを開始できます。
F2.8では最終的なピント位置を細かく確認する必要があります。AFを基本としながら必要に応じてフォーカスリングで追い込む考え方については、フルタイムマニュアルフォーカスで直感操作 撮りたい瞬間を逃さないフォーカス制御術も参考になります。
EF400mm F2.8L IS III USMの撮り方
- スポーツでは高速シャッターとF2.8を基準に設定する
- 野鳥では被写体との距離と背景を先に決める
- エクステンダーで560mm F4・800mm F5.6として使う
スポーツでは高速シャッターとF2.8を基準に設定する
スポーツ撮影では、最初にシャッタースピードを決めます。屋外競技で選手の動きを止めたい場合は1/1000秒以上を出発点とし、サッカー、ラグビー、モータースポーツなど動きが速い被写体では1/1600秒から1/2500秒程度まで上げて様子を見ます。
絞りはまずF2.8を使います。400mm F2.8の最大の利点である光量と背景分離を活かせるためです。複数人へある程度ピントを合わせたい場合や、日中で十分な光量がある場合はF4やF5.6へ絞ります。ISO感度はシャッタースピードと絞りを決めたあとに必要な値まで上げる方が、動体撮影では設定を組み立てやすくなります。
AFは被写体追従を基本にし、選手が画面内で小さい場合は背景へAFが抜けないよう注意します。400mmは画角が狭いため、ファインダーへ被写体を入れる技術も必要です。スポーツ撮影の基本設定については、スポーツ撮影で輝く瞬間を逃さない魔法のテクニックも参考になります。
野鳥では被写体との距離と背景を先に決める
野鳥撮影で400mm F2.8を使う場合、最初から鳥だけを見るのではなく、鳥が止まりそうな場所と背景の位置関係を確認します。400mm F2.8は背景を大きくぼかせますが、背景が鳥のすぐ後ろにあると十分にはぼけません。撮影者から鳥までの距離だけでなく、鳥から背景までの距離を確保できる場所を選ぶことが重要です。
止まっている鳥なら、F2.8からF4程度で目にピントを合わせます。頭部全体まで安定させたい場合や、鳥が斜めを向いている場合は少し絞ります。飛翔撮影ではシャッタースピードを1/1600秒以上へ上げ、光量が不足する場合はISO感度を上げます。F2.8が使えるため、F4やF5.6の超望遠より高速シャッターを維持しやすい点がヨンニッパの強みです。
400mmで足りない場面もあります。小型の鳥を遠距離から狙う場合、無理に大きくトリミングするよりエクステンダーを使う方法もあります。400mmを含む望遠域の考え方については、Canon EF望遠ズームレンズ完全ガイドも焦点距離選びの参考になります。
エクステンダーで560mm F4・800mm F5.6として使う
EF400mm F2.8L IS III USMはEXTENDER EF1.4×IIIとEF2×IIIを使用できます。1.4倍では560mm F4、2倍では800mm F5.6になります。どちらもAFとISを利用できます。
1.4倍は焦点距離を400mmから560mmへ伸ばしながら、開放F値の低下を1段に抑えられるため、野鳥や野生動物では使いやすい組み合わせです。画角が狭くなる分、被写体をファインダーへ入れる難しさは増しますが、400mmでは少し足りない場面を補えます。
2倍では800mmまで伸びますが、開放はF5.6になります。被写体を非常に大きく写せる反面、光量、AF、ファインダー内での捕捉難度を含めて条件が厳しくなります。最初から2倍を付けるのではなく、400mmで撮影位置を決め、距離が足りない場合に1.4倍、それでも足りない条件で2倍と考えると扱いやすくなります。EFエクステンダーの違いはEFエクステンダーの使い方 対応レンズと1.4倍・2倍テレコンの選び方で詳しく解説しています。
EF400mm F2.8L IS III USMを現在使う方法と選び方
- EOS一眼レフではEFマウントへ直接装着する
- EOS RシリーズではEF-EOS Rを介して使う
- 中古では光学系だけでなくAF・IS・付属品まで確認する
EOS一眼レフではEFマウントへ直接装着する
EF400mm F2.8L IS III USMはEFマウントレンズなので、EOS-1D XシリーズやEOS 5Dシリーズなどのフルサイズ一眼レフへ直接装着できます。またEFマウントを採用するAPS-C一眼レフでも使用でき、画角は35mm判換算で約640mm相当になります。
APS-Cでは被写体を画面内で大きく捉えやすくなるため、小型の野鳥などでは有利です。一方で画角が狭くなるため、飛翔する鳥や高速で動く被写体を追う難度は上がります。フルサイズで400mmを使うか、APS-Cで約640mm相当の画角を使うかは、被写体までの距離と追従のしやすさで選びます。
EFレンズ全体の焦点距離や種類を把握してからシステムを組む場合は、RFレンズとEFレンズの違い Canonの互換性と選び方も参考になります。
EOS RシリーズではEF-EOS Rを介して使う
EOS R5、EOS R6シリーズ、EOS R3、EOS R7などのRFマウント機では、EF400mm F2.8L IS III USMを直接装着できません。マウントアダプター EF-EOS Rをカメラとレンズの間へ入れて使用します。
標準タイプのEF-EOS Rには画角を変える光学系が入っていないため、フルサイズEOS Rへ装着した場合も400mmは400mmのままです。EOS R7などAPS-C機ではセンサーサイズによって約640mm相当の画角になります。
EOS Rシリーズでは被写体検出AFを利用できる機種があり、EF400mm F2.8L IS III USMの高い光学性能を現在のミラーレスボディで活用できます。EFレンズをEOS Rへ装着する手順や互換性については、EOS RでEFレンズを使う方法|マウントアダプター・互換性・デメリットを解説で詳しく説明しています。
中古では光学系だけでなくAF・IS・付属品まで確認する
EF400mm F2.8L IS III USMを中古で選ぶ場合は、一般的なレンズ以上に状態確認が重要です。まず前玉と後玉だけでなく内部のカビ、曇り、大きなホコリ、傷を確認します。次にAFを近距離から遠距離まで動かし、異音や不自然な停止がないか確認します。ISも作動させ、ファインダー像が安定するかを確認します。
電子式フォーカスリング、フォーカスプリセット、各スイッチも確認対象です。大型超望遠では三脚座の状態も重要で、回転や固定に異常がないかを見ます。フード、ドロップインフィルターホルダー、キャップ類などの付属品も、後から個別に揃えると負担が増えるため確認しておきたい部分です。
RFマウント機で使用する予定ならEF-EOS Rを加えた全体の重量と長さも考えます。アダプター運用時の注意点については、Canon マウントアダプターのデメリット EF-EOS RでEFレンズを使う注意点も確認しておくと判断しやすくなります。
まとめ
EF400mm F2.8L IS III USMは、400mm F2.8という大口径超望遠の描写性能を維持しながら、約2840gまで軽量化したEFヨンニッパです。先代II型の約3850gから約1010g軽くなったことで、手持ち、一脚、撮影場所の移動など、実際の撮影で扱いやすさが大きく変わりました。
光学系は13群17枚で、蛍石2枚とスーパーUDレンズ1枚を採用。ASCによるフレア・ゴースト対策、約5段分のIS、最短撮影距離2.5m、最大撮影倍率0.17倍など、単に軽くしただけのモデルではありません。MF速度を3段階から選べる電子式フォーカスリングやフォーカスプリセットなど、スポーツや野生動物の現場を想定した操作機能も充実しています。
撮影では、F2.8を積極的に使ってシャッタースピードを確保しながら、400mmならではの背景分離を活かすのが基本です。スポーツなら1/1000秒以上、激しい動きでは1/1600秒から1/2500秒程度を出発点にし、野鳥では止まりものと飛翔でシャッタースピードを明確に分けます。ISは手ブレを抑える機能であり、動く被写体を止めるには高速シャッターが必要です。
さらにEXTENDER EF1.4×IIIでは560mm F4、EF2×IIIでは800mm F5.6として使用できます。EOS RシリーズでもEF-EOS Rを介して活用できるため、EF時代のレンズでありながら現在のミラーレスボディと組み合わせる選択肢も残っています。
EF400mm F2.8L IS III USMは、400mmが必要なだけなら望遠ズームでも代用できます。しかし、400mmでF2.8を使いたい、暗い時間帯でも高速シャッターを維持したい、大きなボケで背景から被写体を切り離したい、そしてその性能を約2.84kgで扱いたいという用途では、このIII型ならではの価値があります。



