開放F1.2という極めて明るい絞りを持つEF85mm F1.2L USMは、ポートレート撮影における理想を具現化したような中望遠レンズです。浅い被写界深度が描く美しいボケと圧倒的な立体感は、撮影者に新たな表現の可能性を提示してくれます。
EOS EF85mm F1.2L USM 写真に奥行きと空気を加える中望遠レンズの実力
プロからアマチュアまで多くの写真家に支持され続けてきたEF85mm F1.2L USMは、描写力・操作性・信頼性のすべてを兼ね備えた一本です。その魅力をあらためて掘り下げ、なぜ今なお語り継がれる存在なのかを詳細に解説していきます。
特徴的なスペック
- 極めて浅い被写界深度が生み出す表現力
- ポートレート撮影に最適な中望遠画角
- 描写力と操作性を両立した高級レンズ設計
極めて浅い被写界深度が生み出す表現力
EF85mm F1.2L USMは、開放F1.2という極端に明るい絞りを備えており、これによって得られる被写界深度の浅さは他のレンズとは一線を画します。ポートレート撮影においては被写体の瞳にだけピントを合わせ、その前後を大きくぼかすことで、被写体を背景から強く引き立てることが可能です。この極端なボケは、単なる背景の処理にとどまらず、写真全体の空気感や印象を決定づける重要な要素となり、特に人物の存在感を際立たせたい場面において圧倒的な力を発揮します。また、絞りを開けても画面周辺の解像度が高く、非球面レンズの採用によって発生しがちな球面収差も抑えられているため、単なるスペックに留まらない描写力の高さが魅力です。被写界深度が浅いことはピント合わせにシビアさを要求しますが、それを補う高いAF精度とフルタイムマニュアルによる微調整が可能であるため、狙ったポイントに正確にピントを合わせることができます。F1.2という絞り値は暗所でも撮影可能な明るさを提供し、感度を上げずに撮れることでノイズを抑えた高画質な画像を得られる利点もあります。これらの特性が合わさることで、単なる明るいレンズという枠を超え、表現を変える力を持つレンズとして、写真表現における武器となる一本です。
ポートレート撮影に最適な中望遠画角
EF85mm F1.2L USMは85mmという焦点距離を持つ中望遠レンズであり、特に人物撮影との相性が非常に高い画角となっています。この焦点距離は被写体との距離感がちょうど良く、顔や体のパースを自然に保ったまま、背景をしっかりとぼかすことができます。中望遠という特性上、被写体に圧迫感を与えることなく、撮影者と被写体との間に適度な距離を確保することで、被写体がリラックスしやすく、より自然な表情やポーズを引き出すことが可能です。また、撮影者自身が一歩引いて構図を整えることで、背景とのバランスを取りながら主題を際立たせる構成がしやすく、ポートレートに限らず、スナップや舞台写真、屋外ポートレートでも高い汎用性を発揮します。さらに、このレンズは開放F1.2という大口径と組み合わさることで、圧縮効果による奥行きのある描写と、ボケによる背景の整理が同時に得られるため、構図の自由度と表現の幅が格段に広がります。こうした特性はプロのポートレートフォトグラファーにとっても重要な要素であり、顔の立体感や肌の質感を美しく描写できるこのレンズの85mmという焦点距離は、単なる距離という以上の意味を持ちます。被写体との距離が写真に与える印象を考えたとき、85mmは最も人間らしい距離感を再現できる焦点域であり、その中でもこのEF85mm F1.2L USMは、その魅力を最大限に引き出してくれる存在です。
描写力と操作性を両立した高級レンズ設計
EF85mm F1.2L USMはLレンズシリーズに属することからもわかるように、キヤノンの高級レンズラインに位置づけられ、描写性能だけでなく操作性や耐久性にも非常に優れています。鏡筒には高剛性の金属パーツが用いられており、撮影中の微細な振動や外的衝撃にも強く、安定した撮影をサポートしてくれます。また、外装には防滴構造が採用されているため、多少の雨や埃のある環境でも安心して使うことができ、過酷な環境でのポートレート撮影やロケ撮影でも信頼性が高い設計となっています。さらに、USMによる高速かつ静音のオートフォーカスは、ピントを素早く正確に合わせることが可能であり、フルタイムマニュアルフォーカスにも対応していることで、AF後でもすぐに細かいピント調整が可能となり、特に開放F1.2での撮影では重要なポイントです。加えて、レンズの重量バランスも考慮されており、EOSシリーズのフルサイズ一眼レフと組み合わせたときに、手にしっくりと馴染むよう設計されている点も魅力です。ピントリングの操作感も滑らかで、マニュアルフォーカス時にもスムーズな動作ができるため、撮影者の意図をストレスなく反映できます。このように、描写力を支える光学設計と、撮影に集中できる操作性や信頼性が一体となって完成されていることが、EF85mm F1.2L USMが長年にわたり評価され続けてきた理由のひとつと言えるでしょう。
スペック
- 円形絞りによる美しいボケの再現
- 防塵・防滴構造による高い耐久性
- フルタイムマニュアルフォーカス対応
- 一眼レフ専用に最適化された光学設計
- 繊細なピント面と立体的な描写力
- ポートレート撮影以外にも活躍する万能性
- 逆光に強いコーティング技術の採用
- Lレンズシリーズとしての信頼性と存在感
円形絞りによる美しいボケの再現
EF85mm F1.2L USMは8枚羽根の円形絞りを採用しており、開放から少し絞った状態でも美しい円形を保ち続ける設計となっています。この構造により背景の点光源が玉ボケとなった際にも自然で柔らかな円形を維持しやすく、特にイルミネーションや木漏れ日といった光の描写が非常に美しく仕上がります。ポートレートにおいては被写体の背後にある光を生かして印象的な写真に仕上げることができ、ボケの輪郭にクセが出にくいため背景が騒がしくならず、あくまで主役を引き立てる脇役としてのボケが機能してくれます。特に開放F1.2という明るさに加えて円形絞りを組み合わせることによって、前ボケや後ボケの滑らかさが際立ち、立体感と空気感のある描写が可能になります。ボケの質にこだわる撮影者にとっては、ただ背景をぼかすだけでなく、そのボケ自体が写真全体の雰囲気を左右する重要な要素となるため、この円形絞りの採用は非常に大きな意味を持ちます。実際に人物撮影や物撮りで背景を意識的にぼかす構成を取った場合、その効果は一目で違いを感じられるほどであり、ボケ味を作品の演出に積極的に活かしたい撮影者にとって、EF85mm F1.2L USMはその能力を最大限に引き出してくれるレンズといえます。
防塵・防滴構造による高い耐久性
EF85mm F1.2L USMはLレンズとしての耐久性が追求されており、防塵・防滴構造が施されている点も大きな特徴です。撮影環境というのは必ずしも理想的な条件ばかりではなく、時には風の強い屋外や、湿度の高い場所、あるいは予測できない天候変化にも直面しますが、こうした場面でも安心して使えるという点でこのレンズは優れた信頼性を持っています。特にポートレート撮影ではロケ地が多様であり、自然光を重視する撮影者にとって、防塵防滴は重要なファクターです。防塵構造により微細な砂埃や塵の侵入を防ぎ、内部機構の劣化や動作不良を抑えることができますし、防滴構造は急な雨や水しぶきなどにも耐えられる設計となっており、機材保護の観点からも非常に有効です。もちろん完全防水ではないため過信は禁物ですが、少なくとも一般的な環境下での安心感は段違いです。また、こうした構造を持つことで長期的な使用にも耐えうる堅牢性が実現され、長年使い続ける上でのメンテナンス性や信頼性に繋がっていきます。機材は投資であり、信頼して使い続けられることは何よりも重要です。その意味で、このEF85mm F1.2L USMの堅牢なボディと気候耐性は、日常の撮影からプロフェッショナルな現場まで幅広く対応可能な、実用性に富んだ設計だといえるでしょう。
フルタイムマニュアルフォーカス対応
EF85mm F1.2L USMはフルタイムマニュアルフォーカスに対応しており、これは撮影中の操作性を大きく向上させる機能のひとつです。AF撮影中でもシャッターボタンの半押しを解除すればそのままフォーカスリングを回してマニュアルでのピント調整が可能となり、特にF1.2という極端に浅い被写界深度ではこの機能が極めて重要になります。AFだけでは狙ったピント位置が微妙に外れてしまうことがあるため、撮影者が意図する位置に正確に合わせるための微調整が簡単に行えるという点で、作品の完成度に大きな影響を与えます。また、マニュアルフォーカスの操作感も極めて滑らかで、指の動きに対してリニアに反応する設計となっているため、微細なフォーカシングが求められるポートレートや商品撮影などでも繊細な表現が可能です。フォーカスリング自体の剛性やトルクも程よく設計されており、不意にズレてしまうようなこともなく、安心して使用することができます。このフルタイムマニュアル対応というのは、特にスチル写真において重要視される機能であり、素早く被写体を捉えるAFと、じっくり仕上げるMFの両方を同時に扱える柔軟性が、撮影者の意図に忠実な描写を可能にします。操作性と表現力の両立を図るこの機能は、EF85mm F1.2L USMが単なる高性能レンズに留まらず、撮影者の表現を支える道具として完成されていることの証です。
一眼レフ専用に最適化された光学設計
EF85mm F1.2L USMはキヤノンの一眼レフカメラ用として光学系が最適化されており、ミラーボックスやペンタプリズムを前提とした構造に合わせて設計されています。これによりミラーレス用レンズにはない描写傾向や立体感を生み出すことができ、光がレンズを通ってファインダーに届くまでの流れが極めて自然かつ滑らかになるよう配慮されています。ミラーの存在を前提とした光学構成は、センサーに届く光線角の処理が丁寧であり、周辺減光や色収差が最小限に抑えられ、画面全体で安定した描写を可能としています。また、一眼レフの精度の高い位相差AFとの組み合わせで、動きの少ないポートレートでも高精度のピント合わせが可能となり、ミラーレスとは違った撮影のテンポと手応えを感じることができます。加えて、一眼レフ用として設計されたことで、レンズのサイズや重さに応じたボディとのバランスが取りやすく、EOS 5DやEOS 1Dシリーズのような中・上級機との組み合わせでは手ブレの抑制にも貢献しやすいです。特にEVFとは違って実像を見ながら構図やボケを確認できる光学ファインダーとの相性が抜群であり、撮影の瞬間に直感的な判断がしやすい点は一眼レフ専用レンズの大きな強みです。このように、EF85mm F1.2L USMはデジタル一眼レフというシステム全体の特性を熟知したうえで開発された光学設計であり、古さではなく完成度の高さとして評価されるべき一本と言えるでしょう。
繊細なピント面と立体的な描写力
EF85mm F1.2L USMは開放F1.2という極めて明るいレンズ構成を活かし、ピント面の繊細さと立体感のある描写を両立することに成功しています。このレンズで撮影された写真を見たとき、多くの人が感じるのは被写体の存在感の強さと、その背景がとろけるように滑らかにボケていく描写の美しさです。特にポートレートでは、まつ毛や瞳の先端にピタリと合ったピントが際立ち、そこからなだらかに崩れていくフォーカス外の部分が柔らかな雰囲気を醸し出し、全体として非常に奥行きのある写真に仕上がります。このピント面のシャープさは高精度なレンズ設計と加工技術のたまものであり、解像力だけでなくコントラストの高さや色再現の正確さも含めた総合的な描写性能によって成り立っています。また、前ボケと後ボケの両方が非常に美しく、背景の情報を残しすぎず、かといって完全に消してしまうわけでもない絶妙な距離感で描かれるため、主役の魅力を引き立てるための演出がしやすくなっています。さらに、被写体の肌の質感や服の素材感などもきちんと伝える描写力があり、撮影者が狙った印象を的確に表現するための道具として非常に信頼できます。ピントの浅さゆえに扱いには一定の慣れが求められますが、それを乗り越えたときに得られる表現の幅は他のレンズでは味わえない特別なものであり、EF85mm F1.2L USMを使う価値はそこにあると言えます。
ポートレート撮影以外にも活躍する万能性
EF85mm F1.2L USMはポートレートレンズとしての評価が非常に高い一方で、その表現力の高さから実は多くのジャンルで活躍する万能性も持ち合わせています。まずスナップ撮影においては、街角の一瞬の表情や人物の佇まいを背景から浮かび上がらせるように写すことができ、写真に物語性や深みを加えることができます。また、開放F1.2の明るさを活かすことで、屋内や夕方のような光量が限られた場面でもISO感度を抑えた高画質な撮影が可能となり、料理や小物、商品撮影といった分野でも非常に優れた結果を出してくれます。特に物撮りにおいては、その繊細な描写性能と柔らかなボケ味によって被写体をより魅力的に演出することができ、背景に写り込む不要な情報を自然にぼかして整理することができます。さらに、舞台撮影やライブ撮影といった距離のある被写体を狙う場面でも、F1.2の明るさと85mmという中望遠の距離感が相まって、演者を強調しながらも臨場感のある写真に仕上げることができます。加えて、フルサイズカメラとの組み合わせで画角が自然な中望遠となるため、過剰な圧縮感がなく、それでいて背景との距離感を効果的に表現できる点も使いやすさの一因です。このようにEF85mm F1.2L USMは特定の撮影ジャンルに限定されるレンズではなく、写真表現にこだわる多くの撮影者にとって、幅広い用途でその実力を発揮できる懐の深い一本であり、ポートレートにとどまらず、創造的な表現を求める場面全般で力を発揮してくれます。
ズーム時に全長が伸びるインナーフォーカス非対応
シグマ18-50mm F2.8 DC DN [キヤノンRF用]はズーム操作に伴ってレンズの全長が変化する沈胴式の構造を採用しており、ズーム時にレンズ筒が前方に伸びる仕組みとなっています。これはインナーズームやインナーフォーカスとは異なり、携帯時にはよりコンパクトに収納できるというメリットがある一方で、ズームに伴う重心の変化やバランスの変化が発生するという側面も持っています。とくに動画撮影においてはジンバルなどの機材を使用している場合にバランス調整が必要になることがあり、ズーム操作中の構図の変化や重心移動に注意が必要です。ただし、この構造によってレンズ全体の軽量化とコンパクト化が実現されており、日常的なスナップ撮影や静止画中心の運用では大きなデメリットとはなりません。加えて、ズームリングの操作感は非常に滑らかで適度なトルクがあり、意図しないズームの動きも起きにくくなっています。外装も質感が高く、手に取った瞬間に信頼感を覚えるような剛性感があり、安価なレンズにありがちなチープさを感じさせない仕上がりとなっています。全長が変化するという構造的な特性を理解した上で使用すれば、この点が問題となる場面は限られており、むしろ収納性や携帯性においては優れた設計であると言えます。
Lレンズシリーズとしての信頼性と存在感
EF85mm F1.2L USMはキヤノンが誇るLレンズシリーズに属しており、その位置づけにふさわしい圧倒的な存在感と信頼性を兼ね備えています。LレンズとはLuxuryの頭文字であり、単なる高級品という意味にとどまらず、実用性・堅牢性・描写力すべてにおいてプロフェッショナルの要求に応えるために設計されたレンズ群で、このEF85mm F1.2L USMも例外ではありません。鏡筒には金属素材が贅沢に使用され、剛性の高さと耐久性を確保しつつ、操作部の精度も極めて高く、長期間使用してもガタつきや緩みが出にくい構造となっています。また、Lレンズに共通する赤いリングは撮影者にとっての誇りであると同時に、現場での信頼の証でもあり、外観からもその特別なレンズであることが一目で分かるようになっています。EF85mm F1.2L USMはその大口径設計のため、サイズと重量が大きくなるものの、それを補って余りある描写力と表現の幅を提供し、撮影者にとっては機材の重さがむしろ撮影への集中を助ける役割を果たすこともあります。信頼できる機材とは、撮影者の意図を正確に反映し、どのような条件でも安定して結果を出せるものであり、このレンズはまさにそうした信頼に応える一本です。プロの現場でもアマチュアのこだわり撮影でも、自信を持って使えるLレンズとしての完成度があり、その存在感は装着した瞬間から撮影者の背筋を正すような、特別な空気を放ちます。単なるスペックを超えた、写真に向き合う姿勢を変えるレンズ、それがEF85mm F1.2L USMの真の魅力と言えるでしょう。
唯一無二の個性を持つ大口径ポートレートレンズ
- EF85mm F1.2L USMの描写がもたらす芸術的表現力
- 撮影者を魅了する操作体験と没入感
- 後継モデルとの違いから見える設計思想
EF85mm F1.2L USMの描写がもたらす芸術的表現力
EF85mm F1.2L USMは数あるキヤノンの中望遠レンズの中でも際立った個性を持っており、その描写は単なる写真の域を超えて芸術的とも言えるレベルに達しています。被写界深度の極端な浅さにより、ピントが合った部分は驚くほどシャープでありながら、その直後から一気にとろけるようなボケが広がっていく様子は、写真に奥行きと臨場感を加えると同時に、被写体の存在を強烈に印象づける力を持っています。とくに人の顔においては、瞳やまつ毛の1本1本まで克明に描写しつつ、肌の質感や背景との距離感を柔らかく表現することで、写真を見る側に深い没入感を与えます。単焦点レンズならではの解像力の高さはもちろんのこと、このレンズが真に評価される理由は、単なるシャープネスでは語れない「空気感」や「立体感」の再現にあります。光の当たり方や背景の距離、絞りの開け具合によって描写が劇的に変化するため、撮影者にとってはまさに「絵を描くように」写真を作り出す感覚に近く、技術と感性の両方を駆使して最高の一枚を追い求める楽しさを提供してくれます。このようにEF85mm F1.2L USMの描写性能は、カタログスペックを超えた感動を撮影者にもたらし、単なる記録ではなく作品としての写真を追い求めるすべての人にとって特別な一本となるはずです。
撮影者を魅了する操作体験と没入感
EF85mm F1.2L USMはその描写だけでなく、使っているときの操作感や存在感そのものが撮影者を魅了する特別なレンズです。まず手に取った瞬間に感じるのは、その重量とサイズからくる「撮る覚悟」のようなものです。軽量コンパクトが主流になりつつある現代において、このレンズの重厚感は一見すると不利に見えるかもしれませんが、実際に撮影を始めるとその印象は一変します。重量によって手ブレが軽減され、ファインダーを覗いたときの構図の安定感が増し、自然と被写体に集中する姿勢が整います。また、オートフォーカスはUSMによって静かで滑らかに動作し、フルタイムマニュアルフォーカスにより微調整も簡単に行えます。操作系のレスポンスも非常に精密であり、ピントリングのトルク感やストロークの長さなど、どれをとっても撮影者が意図した動きに即応する設計となっているため、撮ることそのものが快感に変わります。ファインダー越しに見えるボケの量や光のまわり方をリアルタイムに感じながら撮影を進めていくことで、機械的な作業ではなく写真という表現に全神経を集中できる環境が整っていきます。このようにEF85mm F1.2L USMは、使い込むほどにその真価を発揮するレンズであり、撮る行為そのものを豊かな体験に変えてくれる道具として、撮影者の創作意欲をかき立てる存在であり続けます。
後継モデルとの違いから見える設計思想
EF85mm F1.2L USMには後継モデルとしてEF85mm F1.2L II USMが存在しますが、この初代モデルには初代ならではの描写傾向や設計思想が色濃く残されており、それが今でも一部のファンに根強く支持されている理由となっています。確かに後継機ではAF速度の改善やコーティングの最適化が図られ、より実用的な性能を獲得していますが、初代のEF85mm F1.2L USMには「描写の味」という意味で独自の個性があり、そのわずかな収差や周辺光量落ちが逆に作品に雰囲気を加える要素となっているのです。特に開放F1.2での柔らかい描写は、絵画的な印象を与えることがあり、後継モデルではやや抑えられたこの特性を好んであえて初代を選ぶ撮影者も少なくありません。また、レンズ設計そのものも重視されており、ガラス素材の選定や研磨精度によって生まれる描写は、スペック表では測れない立体感や空気感を持っています。後継機の登場によってスペック至上主義が進む中で、初代EF85mm F1.2L USMは「機械ではなく人が撮る写真」に寄り添った道具としての側面がより明確に感じられます。設計者の思想としても、絶対的な解像力よりも美しさや印象の残り方を優先したような描写バランスがあり、それがこのレンズを単なる撮影機材ではなく、創作のパートナーとして多くのフォトグラファーに支持され続けている理由と言えるでしょう。
中古市場における価値と評価
- EF85mm F1.2L USMの中古価格と相場の推移
- 中古購入時に注意すべきポイント
- 今後の資産価値としての魅力
EF85mm F1.2L USMの中古価格と相場の推移
EF85mm F1.2L USMは生産終了からかなりの年月が経過しているにもかかわらず、中古市場では依然として高い人気を誇っており、その価格も安定しています。中古価格の相場としては状態の良いものであれば10万円を超えることも珍しくなく、外装に多少の使用感がある個体でも写りに問題がなければ十分な価格が付けられている状況です。後継モデルであるEF85mm F1.2L II USMが登場した後も、初代ならではの描写の味や柔らかさを好むユーザーは一定数存在し、その需要が価格を支えています。特にフィルム時代から一貫してポートレートレンズとして評価され続けてきた歴史があるため、製品そのものに対する信頼が根強く、現在でもプロやこだわりのあるアマチュアが購入対象として検討するレンズの一つとなっています。また、キヤノンの一眼レフシステム全体がミラーレスへと移行しつつある中でも、EFマウントの名玉としてその存在は語り継がれており、コレクションとして保持しているユーザーも多いです。中古相場の推移を見ても大きく下落することはなく、むしろ在庫の減少とともに徐々に上昇傾向を示すケースもあり、レンズとしての評価だけでなく、希少性やコレクターズアイテムとしての側面も中古価格に反映されていることが分かります。このようにEF85mm F1.2L USMは中古市場においても確固たるポジションを保ち続けており、性能・人気・信頼性の三拍子が揃った優良銘玉として高く評価されています。
中古購入時に注意すべきポイント
EF85mm F1.2L USMを中古で購入する際には、いくつか注意すべきポイントがあります。まず最も重要なのはAF機構の動作確認です。このレンズはUSM駆動のため、モーターやギアに不具合があるとピントが合わない、音が異常に大きい、あるいはまったく動かないといった症状が発生することがあります。また、フォーカス時の引っ掛かりや違和感も要注意であり、実際にカメラに装着して試写ができる場合は必ずチェックするべきです。次に確認したいのはレンズ内の状態であり、カビやクモリ、バルサム切れなどがあれば光学性能に大きな影響が出るため、特に逆光耐性やコントラストに影響する箇所は重点的に見ておくべきです。F1.2という非常に明るいレンズであるため、わずかな曇りでも描写に大きく影響します。さらに、前玉や後玉の傷も注意が必要であり、特に前玉に深い傷があるとフレアやゴーストの原因となるため、購入前に必ず光にかざして状態を確認しておくと安心です。また、電子接点の腐食やマウント部のガタつきなども、撮影時の不安要素になりうるためチェックが欠かせません。加えて、元箱やフード、ケースなどの付属品が揃っているかどうかも価格に影響するため、将来的に再販を視野に入れる場合は付属品の有無を確認するのが賢明です。このように中古レンズは新品とは異なり、個体ごとにコンディションが大きく異なるため、状態の確認と販売店の保証内容を十分に比較検討することが、満足のいく買い物へと繋がります。
今後の資産価値としての魅力
EF85mm F1.2L USMは単なる撮影機材という枠を超え、今後の資産価値という視点から見ても非常に魅力的な存在となっています。まず第一に、キヤノンがEFマウントの新規レンズ開発を停止し、RFマウントへと完全に移行した現在、EFレンズの中でも名玉と称される製品は今後市場から徐々に姿を消していくことが予想されます。そのなかでEF85mm F1.2L USMは設計から描写傾向まで、まさに唯一無二の個性を持ったレンズであり、代替の効かない存在として希少性が高まる一方です。特に初代モデルならではの柔らかさや空気感を持った描写は後継モデルでは再現されない特徴として評価され続けており、今後もこの描写を求めるユーザーが一定数存在する限り、中古市場での需要は維持されると考えられます。また、コレクターやレンズ愛好家の間でも状態の良い個体は高値で取引されており、元箱や付属品が揃ったものや外装に傷の少ない個体は年々プレミア化の傾向すら見られます。さらに、EFマウントは今でも多数のユーザーを抱えているため、現役の道具としても通用する点が大きな強みです。RFマウントへの完全移行が進んでも、マウントアダプターを使うことでミラーレス機との組み合わせも可能であり、その価値は決して過去のものではありません。こうした背景から、EF85mm F1.2L USMは撮る喜びだけでなく、持つ喜びや将来的な資産としての価値も併せ持つレンズとして、今後も長く注目され続ける存在になると断言できます。
まとめ
EF85mm F1.2L USMは、開放F1.2という他に類を見ない明るさと極めて浅い被写界深度を活かした独自の描写力で、写真表現を追求する撮影者にとって唯一無二の存在となっています。その立体感のある描写や空気を写すような柔らかいボケ味は、人物撮影を中心に多くの撮影シーンで高く評価されており、またLレンズとしての堅牢性や操作性の高さも兼ね備えているため、長く愛用できる信頼の一本です。中古市場でも依然として高い価値を保ち続けており、描写傾向の違いを求めて初代モデルをあえて選ぶユーザーも少なくありません。最新の機材にはない味わい深さと、使うほどに深まる魅力を持つこのレンズは、写真を作品として昇華させたい人にとって、所有する意義のある特別な選択肢と言えるでしょう。