Canon EF-Sレンズ完全ガイド|EFとの違い・代表レンズ・EOS Rでの使い方
Canon EF-Sは、キヤノンのAPS-C一眼レフ向けに設計されたレンズシステムです。EOS Kissシリーズ、EOS 80D・90D、EOS 7Dシリーズなどで長く使われ、標準ズーム、超広角、望遠、高倍率ズーム、単焦点、マクロまで幅広い撮影を支えてきました。
EF-Sの特徴は、フルサイズ対応のEFレンズを単純に小さくしたものではないことです。APS-Cセンサーに必要なイメージサークルへ合わせ、レンズ後端と撮像面の距離も短く設計しやすい構造を生かして、小型軽量化や広角化を実現しています。同じキヤノン一眼レフ用レンズでも、EFとEF-Sでは対応するボディ、画角、サイズ、価格、将来のレンズ資産という点で違いがあります。
現在はEOS Rシリーズがキヤノンの中心となり、EF-Sレンズの多くも生産終了製品へ移っています。しかしAPS-C一眼レフを現在も使っている場合、中古市場まで含めるとEF-Sには魅力的なレンズが数多くあります。さらにマウントアダプターを使用すれば、EOS RシリーズやEOS MシリーズでもEF-S資産を活用できます。
この記事では、EF-Sマウントの仕組み、EFとの違い、対応カメラ、1.6倍相当の画角、代表的なEF-Sレンズ、実写画質、中古で選ぶポイント、EOS Rへ移行した後の使い方まで詳しく解説します。
Canon EF-Sとは何か
EF-SはAPS-Cサイズの撮像素子を搭載したEOS一眼レフ向けに作られたレンズ規格です。EFマウントの電子制御を基礎にしながら、APS-C専用として光学系と機械構造を最適化しています。
APS-C専用設計によって小さなイメージサークルと短いバックフォーカスを使える
EF-SレンズはAPS-Cセンサーを覆う範囲に合わせてイメージサークルを設計できます。フルサイズセンサー全体を覆う必要がないため、特に広角ズームや標準ズームではレンズ全体を小さくしやすくなります。
さらにAPS-C一眼レフはフルサイズ一眼レフよりミラーが小さいため、レンズ後端を撮像面へ近づけた設計を利用できます。EF-Sの「S」はShort Back Focusを示し、この構造がEF-Sの成り立ちを理解する重要なポイントです。
ただし、EF-Sなら必ずEFより小さく軽いという単純な関係ではありません。EF-S17-55mm F2.8 IS USMのように、明るさと光学性能を重視した結果、約645gまで大型化した製品もあります。APS-C専用設計によって必要な部分へ性能を集中できることがEF-Sの本質です。
EF-Sの構造をさらに詳しく知りたい場合は、EF-Sマウントの基本と活用方法でマウント構造やAPS-C専用設計の意味を解説しています。
焦点距離は変わらず画角が約1.6倍相当になる
APS-Cでよく使われる「1.6倍」という表現は、レンズ自体の焦点距離が変化するという意味ではありません。EF-S24mm F2.8 STMはEOS Kissに装着しても24mmレンズのままです。ただし、APS-Cセンサーがフルサイズより狭い範囲を記録するため、写る画角は35mm判換算で約38mm相当になります。
同様に18-55mmは約29-88mm相当、55-250mmは約88-400mm相当、10-18mmは約16-29mm相当の画角になります。この換算を理解すると、EF-SレンズのラインアップがAPS-Cでどのような役割を持っているか分かりやすくなります。
望遠ではこの狭い画角を利用しやすく、250mmでも約400mm相当の画角になります。野鳥、鉄道、航空機、運動会などでは比較的小型のレンズで遠くの被写体を大きく写せます。一方、広角では18mmでも約29mm相当になるため、フルサイズの18mmほど広く写りません。このためEF-Sには10mmから始まる超広角ズームが用意されています。
APS-C一眼レフと画角、画質、機材サイズの関係はCanon APS-C一眼レフが選ばれる理由で詳しく紹介しています。
EF-Sレンズを装着できるカメラ
EF-SはすべてのEOSへ直接装着できる規格ではありません。一眼レフではAPS-C対応ボディへ直接装着し、ミラーレスでは専用マウントアダプターを使用します。フルサイズ一眼レフとフルサイズEOS Rでは扱い方が異なるため、互換性を整理しておく必要があります。
EOS Kiss・二桁D・7D系などAPS-C一眼レフでは直接使える
EF-Sレンズの中心となるのはAPS-C一眼レフです。EOS Kiss Digital以降の多くのEOS Kissシリーズ、EOS 20D以降の多くの二桁Dシリーズ、EOS 7Dと7D Mark II、EOS 8000Dや9000Dなどで使用できます。
ボディ側にはEF-S用の白い四角形の取り付け指標があり、レンズ側の白い指標を合わせて装着します。EFレンズ用の赤い丸とは取り付け指標が分けられているため、レンズの種類を確認しやすくなっています。
APS-C一眼レフにはEF-SだけでなくEFレンズも装着できます。このため、18-55mmや10-18mmはEF-S、50mmや70-200mmはEFというように両方を混在させることもできます。EOS 90Dのような高画素APS-CでもEF-Sレンズを使用でき、レンズごとの解像性能や用途を考えて組み合わせられます。
APS-C一眼レフを現在使う場合の代表例として、EOS 90Dでは高画素APS-CとEF・EF-Sレンズの組み合わせを詳しく解説しています。
フルサイズ一眼レフにはEF-Sレンズを装着できない
EOS 5Dシリーズ、EOS 6DシリーズなどのフルサイズEFマウント一眼レフには、EF-Sレンズを正常な方法で装着できません。EF-Sでは後玉側をより深く配置できる構造を採用しているため、対応しないフルサイズ一眼レフへの誤装着を防ぐ機械的な構造が設けられています。
フルサイズ一眼レフへ移行するときにEF-Sレンズをそのまま持ち越せないことは、EF-Sを選ぶ際の大きな注意点です。APS-C用18-55mmを所有していてEOS 5Dへ移行する場合は、フルサイズ対応の24-70mmや24-105mmなどを別に用意する必要があります。
一方、EFレンズはAPS-C一眼レフでもフルサイズ一眼レフでも使えます。将来フルサイズ一眼レフへ移る計画が明確な場合は、単焦点や望遠をEFでそろえる方法もあります。ただしAPS-Cで広角を確保するためにフルサイズ対応レンズだけで構成すると、レンズが大きく高価になりやすいことも考える必要があります。
フルサイズ一眼レフ側のレンズ構成についてはキヤノンフルサイズ一眼レフの魅力で詳しく紹介しています。
EOS RとEOS Mではマウントアダプターを使ってEF-S資産を活用できる
EOS Rシリーズではマウントアダプター EF-EOS Rを使うことでEF-Sレンズを装着できます。APS-CのEOS R7、R10、R50系ではセンサーサイズもAPS-Cなので、EF-Sレンズの画角を従来のAPS-C一眼レフに近い感覚で利用できます。
フルサイズEOS RでもEF-Sレンズをアダプター経由で使用できますが、記録範囲はAPS-C相当にクロップされます。フルサイズセンサー全体を使う撮影にはならないため、ボディの総画素数より記録画素数が少なくなります。この点は「装着できる」という互換性と、「フルサイズを全面使用できる」という意味を分けて考える必要があります。
EOS Mシリーズでもマウントアダプター EF-EOS Mを使えばEF-Sレンズを装着でき、AF、絞り、対応レンズのISなどを利用できます。EF-Sは一眼レフ用として生まれたレンズですが、純正アダプターを介して二つのミラーレスシステムへ引き継ぐ方法が用意されています。
EOS RでEF・EF-Sを利用する具体的な方法はEOS RでEFレンズを使う方法で詳しく解説しています。
EFとEF-Sは何が違うのか
EFとEF-Sの大きな違いは対応するセンサーサイズです。EFはフルサイズを覆えるイメージサークルを持ち、APS-C一眼レフでも使用できます。EF-SはAPS-C用として設計され、フルサイズ一眼レフには対応しません。
EF-SはAPS-Cで必要な焦点域を小型化しやすい
APS-Cでは焦点距離に対して画角が約1.6倍相当になるため、フルサイズ用の標準ズームをそのまま使うと広角側が不足しやすくなります。例えばEF24-70mmをAPS-Cへ付けると約38-112mm相当になり、日常用標準ズームとしては広角側が狭くなります。
EF-S18-55mmなら約29-88mm相当となり、風景、室内、人物を一本で撮りやすい画角になります。EF-S17-55mmなら約27-88mm相当、EF-S15-85mmなら約24-136mm相当です。APS-Cで日常撮影しやすい画角から逆算したレンズが多いことがEF-Sの特徴です。
EFとEF-Sのどちらを選ぶかは、レンズの格では決まりません。現在使っているボディ、必要な画角、レンズの明るさ、携帯性、将来の移行先を合わせて考える必要があります。
互換性と画角を含めた違いはEFレンズとEF-Sレンズの違いで詳しく整理しています。
代表的なCanon EF-Sレンズ
EF-Sには非常に多くの製品が存在します。18-55mmのキットズームだけを見てEF-S全体を判断すると、このシステムの実力を見誤ります。F2.8通しの17-55mm、超広角10-18mm、小型単焦点24mm、等倍マクロ60mmなど、用途のはっきりしたレンズも揃っています。
EF-S10-18mm F4.5-5.6 IS STMは約16-29mm相当の超広角を240gで使える
EF-S10-18mm F4.5-5.6 IS STMは、APS-Cで約16-29mm相当の画角をカバーする超広角ズームです。質量は約240gで、4段分の光学式手ブレ補正を備えています。最短撮影距離も0.22mなので、単に遠くの風景を広く写すだけでなく、手前の被写体へ寄って遠近感を強調した構図も作れます。
実写では中央部の解像感が高く、価格やサイズから想像する以上に風景や建築で使いやすいレンズです。一方、10mm側では周辺減光や歪曲が見えやすく、画面の端に人物を置くと広角特有の変形も出ます。広角レンズではこうした特性を欠点として消すだけでなく、被写体との距離とカメラ角度を調整して利用することが重要です。
開放F値はF4.5-5.6と明るくありませんが、広角では手ブレの影響を抑えやすく、さらにISがあるため静止した風景や室内なら低速シャッターも使いやすくなります。星景など動く星を止める用途ではF値の暗さが制約になります。
詳しい実写特性はEF-S10-18mm F4.5-5.6 IS STMで解説しています。
EF-S17-55mm F2.8 IS USMはEF-Sを画質で評価するときに外せない
EF-S17-55mm F2.8 IS USMは、ズーム全域F2.8を実現した高性能標準ズームです。APS-Cでは約27-88mm相当となり、広角から中望遠まで日常的に使いやすい範囲をカバーします。リングUSM、フルタイムマニュアルフォーカス、約3段分のISを備え、質量は約645gです。
EF-SにはLレンズの名称を持つ製品がありませんが、EF-S17-55mm F2.8 IS USMは描写性能を重視した代表的な一本です。F2.8を維持できるため、室内イベントや人物撮影でシャッタースピードを確保しやすく、背景もキットズームより大きくぼかせます。
実写では中央部の解像力が高く、少し絞れば画面全体の安定感も増します。一方、645gあるためEF-Sの軽量というイメージとは異なり、EOS Kissの小型ボディでは前側が重く感じられます。また長期間使用された中古個体も多いため、ズームリング、AF、IS、内部のクモリなどは確認したい部分です。
画質や中古選びはEF-S17-55mm F2.8 IS USMで詳しく解説しています。
EF-S18-135mm F3.5-5.6 IS USMは一本で約29-216mm相当をカバーする
レンズ交換を減らしたい場合に使いやすいのがEF-S18-135mm F3.5-5.6 IS USMです。APS-Cでは約29-216mm相当となり、広角から望遠まで約7.5倍の範囲を一本でカバーできます。質量は約515g、最短撮影距離は0.39m、最大撮影倍率は0.28倍です。
AFにはナノUSMを採用し、静止画での高速AFと動画での滑らかなAFを両立させています。約4段分のISもあり、旅行、運動会、子どもの撮影、街歩きなど、レンズ交換する時間がない場面で便利です。
高倍率ズームなので、単焦点やF2.8標準ズームと比べれば開放F値や光学設計には制約があります。それでも実写では、レンズ交換の回数を減らして撮り逃しを防げる価値が大きく、一本で広い用途へ対応したい人には扱いやすいレンズです。
詳しい特徴はEF-S18-135mm F3.5-5.6 IS USMで確認できます。
EF-S24mm F2.8 STMは125gの薄型単焦点で約38mm相当になる
EF-S24mm F2.8 STMは、質量約125gのパンケーキレンズです。APS-Cで約38mm相当となり、35mmと50mmの中間に近い自然な画角を得られます。街歩き、旅行、料理、日常スナップなどで扱いやすく、EOS Kiss系へ装着すると一眼レフとしては非常に薄い構成を作れます。
最短撮影距離は0.16mで、テーブル上の料理や小物へかなり近づけます。実写では開放F2.8から中央部のシャープさが高く、周辺も良好な描写を得やすい一方、開放では周辺減光や樽型歪曲が見られます。
手ブレ補正は搭載されていませんが、F2.8の明るさがあるためキットズームよりシャッタースピードを稼ぎやすくなります。画角をズームで変えられないため、自分が前後に移動して構図を決める単焦点らしい撮影も学べます。
実写やサイズについてはEF-S24mm F2.8 STMで詳しく紹介しています。
EF-S55-250mm F4-5.6 IS STMは軽量望遠として完成度が高い
EF-S55-250mm F4-5.6 IS STMはAPS-Cで約88-400mm相当となり、運動会、動物園、鉄道、航空機、野鳥などを低い負担で始められる望遠ズームです。質量は約375gしかなく、400mm相当まで届くシステムとして非常に軽量です。
最短撮影距離は0.85mで、旧型55-250mmより近距離撮影にも使いやすくなっています。STMによるAFは静かで、ライブビューや動画との相性も良好です。実写でも価格と重量を考えると画質評価が高く、望遠側でも十分な解像力を得やすいレンズです。
F4-5.6なので夕方や室内スポーツではISO感度が上がりやすくなります。背景を大きくぼかしたい場合も、70-200mm F2.8などの大口径レンズほどの自由度はありません。その代わり、持ち出しやすさと低価格によって望遠撮影を始めやすいことが大きな価値です。
55-250mmシリーズの特徴はCanon EF-S55-250mmで詳しく解説しています。
EF-S35mmと60mmのマクロは等倍撮影でも性格が異なる
EF-Sには本格的な等倍マクロが二本あります。EF-S35mm F2.8 マクロ IS STMは約56mm相当の標準域に近い画角で、最短撮影距離0.13m、質量約190gです。レンズ先端にはLEDライトを内蔵し、角度ブレとシフトブレの両方を補正するハイブリッドISも搭載しています。
EF-S60mm F2.8 マクロ USMは約96mm相当となり、最短撮影距離0.2m、質量約335gです。同じ等倍でも35mmより被写体との距離を取りやすいため、花、小物、昆虫などでレンズ先端が被写体へ近づきすぎることを避けやすくなります。リングUSMとインナーフォーカスを採用し、通常の中望遠単焦点としても使えます。
35mmは標準画角と小型軽量、内蔵ライト、手ブレ補正が特徴で、60mmは被写体との距離を取りやすい中望遠マクロとして性格が分かれます。マクロでは焦点距離の数字だけで選ばず、ワーキングディスタンスや背景の入り方まで考えることが重要です。
60mmマクロの実写特性はEF-S60mm F2.8 マクロ USMで詳しく紹介しています。
EF-Sは画質が低いのか
EF-Sにはキットレンズが多く、価格の安い製品も多いため、初心者向けで画質が低いという印象を持たれることがあります。しかしEF-Sというマウント規格自体が画質を低くするわけではありません。
レンズごとの差が大きくEF-Sという名称だけでは画質を判断できない
EF-S17-55mm F2.8 IS USM、EF-S60mm F2.8 マクロ USM、EF-S24mm F2.8 STM、EF-S10-18mm F4.5-5.6 IS STMでは、焦点距離、価格、設計目的がまったく違います。同じEF-Sという理由だけで一括して画質を評価することはできません。
キットレンズの18-55mmも世代ごとに光学系やAF機構が変化しています。STM世代では動画やライブビューの使いやすさも向上し、軽量な標準ズームとして十分な画質を得られます。一方、F2.8通しや強い背景ボケ、画面周辺までの高い均一性を求める場合は17-55mm F2.8や単焦点など別の選択が適しています。
高画素のEOS 90Dなどを使えば、古いレンズとの差は低画素機より確認しやすくなります。ただし高画素ボディがレンズの画質を悪くするわけではなく、レンズが持つ解像性能や収差の違いを見つけやすくなると考える方が正確です。
EF-Sで画質差が生まれる理由はCanon EF-Sレンズの画質と弱点で詳しく検証しています。
EFレンズをAPS-Cで使う意味
EF-S対応ボディではEFレンズも利用できるため、すべてをEF-Sで揃える必要はありません。広角と標準はEF-S、明るい単焦点や望遠はEFという組み合わせも自然です。
単焦点や望遠ではEFレンズの豊富なラインアップが生きる
EF50mm F1.8 STMをAPS-Cへ装着すると約80mm相当になり、人物撮影に使いやすい中望遠になります。EF85mm F1.8 USMなら約136mm相当となり、少し離れた位置から人物やステージを撮影できます。
望遠ではEF70-200mmが約112-320mm相当、EF100-400mmが約160-640mm相当の画角になります。野鳥や航空機ではAPS-Cの狭い画角を積極的に利用できます。
一方、広角ではEF16-35mmでも約26-56mm相当になり、フルサイズで使う超広角とは役割が変わります。APS-Cの広角撮影ではEF-S10-18mmや10-22mmなど、APS-C専用レンズの方が小さく広い画角を得やすくなります。
EFの各焦点域や代表レンズはCanon EFレンズ一覧で確認できます。
EOS Rへ移行したときEF-Sレンズはどうなるのか
EF-S一眼レフからEOS Rへ移行すると、EF-Sレンズをすぐ処分する必要があるとは限りません。純正マウントアダプターを使用することで継続利用できます。
R7・R10・R50系ならAPS-Cの画角を維持しやすい
EOS R7、R10、R50、R50 V、R100などAPS-CのEOS RへEF-Sレンズを装着すると、センサーサイズは従来のAPS-C一眼レフと同じ系統なので画角感覚を引き継ぎやすくなります。EF-S10-18mmなら超広角、18-135mmなら高倍率標準ズーム、55-250mmなら望遠という役割も大きく変わりません。
ミラーレス化によってボディ側のAFシステムは新しくなりますが、AF駆動速度や静音性は装着するレンズのモーターにも左右されます。STMやナノUSMを搭載した比較的新しいEF-Sレンズは、アダプター運用でも扱いやすい組み合わせです。
フルサイズEOS RではEF-S装着時にAPS-C相当へクロップされるため、フルサイズセンサー全域を使用するRFやEFのフルサイズ対応レンズとは結果が異なります。高画素フルサイズ機ならクロップ後も実用的な画素数を残せる場合がありますが、ボディごとの記録画素数を確認する必要があります。
RFシステム全体との関係はEOS Rシリーズ完全ガイドで詳しく整理しています。
EOS MでEF-Sレンズを使う場合
EF-MマウントとEF-Sマウントには直接の互換性がありませんが、マウントアダプター EF-EOS Mを使用することでEF-Sレンズを装着できます。EOS M2、M3、M5、M6、M6 Mark II、M100、M200、EOS Kiss M系などでEF・EF-S資産を活用できます。
小型EOS Mではレンズサイズとのバランスを考えたい
EF-S24mm F2.8 STMや18-55mm系ならEOS Mでも比較的小さくまとめられます。一方、17-55mm F2.8や18-135mmなどをアダプター経由で装着すると、EOS Mの小型ボディに対してレンズがかなり大きくなります。
AF、絞り、ISなどの電子機能を利用できるため、すでにEF-Sを所有している場合のレンズ資産活用には有効です。ただし、小型軽量を最優先するならEF-M専用レンズの方がシステム全体をコンパクトにできます。
EOS MとEOS Rは別マウントなので、EF-MレンズをEOS Rへ流用することはできません。EF-Sは専用アダプターを変えることでMとRの両方へ利用できるため、古い一眼レフ資産としては独特の柔軟性があります。
EF-M専用レンズとの違いはCanon EF-Mレンズ一覧で比較できます。
現在のEF-Sラインアップと中古市場
EOS Rへの移行が進み、EF-Sは新製品が増え続けるシステムではなくなりました。多くのレンズが生産終了製品へ移っています。その一方で、過去に大量に販売されたシステムなので中古流通量は多く、価格も下がった製品があります。
生産終了していても修理対応期間が残るレンズがある
生産終了と同時にすべてのサポートが終了するわけではありません。EF-S10-22mm F3.5-4.5 USM、15-85mm F3.5-5.6 IS USM、17-55mm F2.8 IS USM、18-135mm各世代、55-250mm各世代、35mmマクロ、60mmマクロなどは、製品ごとに修理対応期間が設定されています。
古いレンズを買う場合には、単に発売時期を見るだけでなく、メーカー修理が現在受けられるかを確認する意味があります。特にISやAFモーターを搭載したレンズは、光学系がきれいでも電子系統が故障すると修理費用が大きくなる場合があります。
また、生産終了後も中古相場は一律に下がるわけではありません。17-55mm F2.8のように代替しにくいレンズ、24mm F2.8のように小型で用途がはっきりしたレンズは需要が残りやすく、状態によって価格差も生まれます。
キヤノンの一眼レフとレンズ資産全体の位置付けはキヤノン一眼レフの魅力とレンズ資産で詳しく紹介しています。
中古ではカビやクモリだけでなくAF・IS・ズーム機構まで確認する
中古EF-Sレンズでは、前玉や後玉の傷より内部状態と動作確認が重要です。小さなチリは実写へ影響しにくい場合がありますが、広範囲のクモリ、カビ、強いバルサム切れなどはコントラストや逆光性能に影響します。
ズームレンズでは鏡筒のガタ、ズームリングの引っ掛かり、自重によるズームの伸びも確認します。AFは近距離から遠距離へ何度か往復させ、毎回安定して合焦するかを見ます。IS搭載レンズでは補正開始時の音だけで故障と判断せず、ファインダー像が安定するか、異常な振動や大きな連続音がないかを確認します。
STMレンズではフォーカスリングが電子制御になっている製品があり、ボディへ装着して電源を入れないと正常なMF操作を確認できない場合があります。中古店で触れる場合は、可能であれば対応ボディへ装着した状態で一通り動作確認した方が確実です。
中古機材全般の確認方法はカメラとレンズの中古市場を活かす撮影機材選びで詳しく解説しています。
EF-Sを現在選ぶ意味
現在のキヤノンで新しくシステムを組むならEOS RとRF・RF-Sが中心になります。その一方で、すでにAPS-C一眼レフを所有している人や、中古一眼レフを低予算で使いたい人にとってEF-Sの価値は消えていません。
低予算で広角・標準・望遠・マクロを揃えられることが強み
EF-Sでは10-18mmの超広角、18-55mmや17-55mmの標準、18-135mmの高倍率、55-250mmの望遠、24mmの単焦点、35mmと60mmのマクロを揃えられます。一眼レフ本体も中古価格が下がっているため、撮影ジャンルごとにレンズを増やす費用を抑えやすくなっています。
フルサイズの高級レンズ一本へ予算を集中する撮影もあれば、同じ予算で広角、望遠、マクロを揃えて多くの撮影ジャンルを経験する方法もあります。EF-Sは後者の機材構成を作りやすいシステムです。
一方、将来RFシステムへ完全移行し、アダプターを使わずRFレンズだけで構成する予定なら、EF-Sを大量に買い足す意味は小さくなります。今使っている一眼レフで何を撮りたいのか、何年間使う予定なのか、中古価格がどの程度なのかを合わせて考える必要があります。
キヤノンの一眼レフ、EOS R、EF、EF-S、RFの関係をまとめて確認する場合はキヤノン大全から各システムの記事をたどれます。
Canon EF-SはAPS-C一眼レフを完成させた実用的なレンズシステム
Canon EF-Sは、APS-C一眼レフ専用として小型軽量化と実用的な画角を両立するために作られたレンズシステムです。小さなイメージサークルと短いバックフォーカスを利用し、10mmから始まる超広角、18mmからの標準ズーム、小型望遠、パンケーキ単焦点、等倍マクロまで幅広い製品を実現しました。
APS-Cでは焦点距離自体が変化するわけではなく、画角が35mm判換算で約1.6倍相当になります。このため24mmは約38mm相当、55-250mmは約88-400mm相当となり、同じ焦点距離でもフルサイズとは撮影時の見え方が変わります。
EF-Sの画質も一括りにはできません。17-55mm F2.8 IS USMのような高性能標準ズーム、軽量ながら実写評価の高い24mm F2.8 STMや55-250mm IS STM、本格的な等倍撮影が可能な35mm・60mmマクロなど、目的ごとに性格が異なります。
弱点はフルサイズEF一眼レフへ直接装着できないことと、新しい製品が増えるシステムではないことです。しかし、EOS RではEF-EOS R、EOS MではEF-EOS Mを使って活用できるため、既存のEF-Sレンズが一眼レフ本体と同時に使えなくなるわけではありません。
APS-C一眼レフを現在も使っているなら、EF-Sは中古市場を含めて非常に幅広い撮影を低い費用で試せるレンズ群です。広角を追加したいのか、暗い場所でF2.8が必要なのか、旅行を一本で済ませたいのか、400mm相当の望遠が欲しいのか、マクロへ進みたいのかを決めれば、現在でも用途に合った一本を見つけられます。



