一眼レフカメラでバローレンズは使える?望遠鏡への接続方法とテレコンとの違い
一眼レフカメラで天体望遠鏡を使って撮影するとき、月や惑星をさらに大きく写したいと考える人は多いでしょう。その際に役立つのが、天体望遠鏡の実効焦点距離を延長するバローレンズです。バローレンズは本来、天体望遠鏡の接眼レンズと組み合わせて倍率を高める光学アクセサリーですが、適切な接続部品を使用すれば、一眼レフカメラによる天体撮影にも利用できます。
一眼レフカメラにバローレンズを使用する場合、基本となるのは天体望遠鏡とカメラを接続する方法です。キヤノンEOSやニコンのデジタル一眼レフでは、カメラの交換レンズを取り外し、TリングやTアダプターを介して望遠鏡へ取り付けます。バローレンズを光路の途中に組み込むことで、月面のクレーターや木星、土星などをセンサー上で大きく記録できます。
一方、カメラ用の望遠レンズに使用するテレコンバーターも、焦点距離を延長するための光学アクセサリーです。バローレンズとテレコンバーターには共通点がありますが、装着位置、接続規格、対応する光学機器、AFの扱いなどに違いがあります。この記事では、一眼レフカメラでバローレンズを使う方法、天体望遠鏡への具体的な接続手順、倍率とF値の変化、テレコンバーターとの違い、月や惑星の撮影方法まで詳しく解説します。
一眼レフカメラでバローレンズは使える?
結論から説明すると、デジタル一眼レフカメラでもバローレンズを使用できます。代表的な方法は、天体望遠鏡とカメラの間に撮影対応のバローレンズを組み込む接続方式です。望遠鏡メーカーのセレストロンやSky-Watcherも、一眼レフカメラを接続できるバローレンズや専用アダプターを製品化しています。
バローレンズは天体望遠鏡の焦点距離を延長する光学部品
バローレンズは、天体望遠鏡の対物レンズや主鏡で形成される光束を変化させ、実効焦点距離を長くするための光学部品です。一般的には2倍、3倍、5倍などの製品が販売されており、接眼レンズを使った眼視観測では、望遠鏡の倍率を高める目的で使用します。写真撮影では、カメラの撮像センサーに形成される天体の像を大きくする役割を果たします。
例えば焦点距離1,000mmの天体望遠鏡に2倍のバローレンズを組み合わせると、実効焦点距離は2,000mmになります。3倍なら3,000mmとなり、月面のクレーターや惑星をセンサー上で大きく記録できます。カメラのクロップ機能とは異なり、バローレンズは光学系の実効焦点距離そのものを変化させる仕組みです。
焦点距離が長くなると、撮影できる範囲は狭くなります。月全体を写す撮影と、月面の一部分を拡大する撮影では適切な焦点距離が異なるため、望遠鏡の焦点距離とセンサーサイズを組み合わせて考えることが重要です。天体望遠鏡を一眼レフカメラへ接続する基本については、EOS Raのおすすめ設定完全ガイドでも詳しく紹介しています。
通常のカメラレンズへ直接装着する製品ではない
一般的な天体望遠鏡用バローレンズは、キヤノンEFマウントやニコンFマウントへ直接取り付ける構造ではありません。望遠鏡の接眼部に挿入する31.7mm径や50.8mm径の製品が中心で、カメラ用交換レンズのバヨネットマウントとは接続規格が異なります。そのため、通常のEF70-200mmやニコンの望遠ズームへ、バローレンズをテレコンバーターと同じ方法で挟み込むことはできません。
カメラ用望遠レンズの焦点距離を延長したい場合には、そのレンズと互換性を持つテレコンバーターを使用します。キヤノンのEXTENDER EF1.4×やEXTENDER EF2×、ニコンのAF-Sテレコンバーターなどは、対応レンズとカメラの間に装着する光学アクセサリーです。カメラのマウント規格やレンズ側の後玉形状、電子制御への対応を前提として設計されています。
バローレンズとテレコンバーターは、どちらも実効焦点距離を延長するという光学的な共通点を持っています。大きな違いは、バローレンズが主に天体望遠鏡の光学系で使用されるのに対し、カメラ用テレコンバーターは特定の交換レンズとの組み合わせを前提としていることです。キヤノン用テレコンバーターの基本については、EFエクステンダーの使い方と対応レンズで詳しく説明しています。
直焦点撮影とバローレンズを使った拡大撮影の違い
天体望遠鏡に一眼レフカメラを取り付ける方法として、基本になるのが直焦点撮影です。直焦点撮影では、カメラの交換レンズと望遠鏡の接眼レンズを取り外し、天体望遠鏡の光学系が作る像を直接センサーへ記録します。この状態では、天体望遠鏡そのものが超望遠レンズの役割を果たします。
バローレンズを組み込む撮影では、望遠鏡が作る光束をバローレンズによって変化させ、センサー上の像を大きくします。セレストロンは、この方式をテレエクステンデッド撮影として案内しており、専用のバロー兼Tアダプターを使用することで一眼レフカメラを接続できます。接眼レンズを使わない構成でも、バローレンズによる拡大撮影が可能です。
さらに、接眼レンズを残してカメラへ像を投影する接眼レンズ拡大撮影という方法もあります。この方式では接眼レンズと撮像面の距離によって拡大率が変わり、バローレンズだけを使う方式とは光学構成が異なります。天体望遠鏡を使用する撮影方法の基本については、天体撮影の楽しみ方で詳しく紹介しています。
バローレンズの倍率と画質への影響
バローレンズを使用すると、天体がセンサー上で大きく写るようになります。その一方で、撮影範囲、実効F値、露出時間、ピント合わせの難しさも変化します。単純に倍率が高い製品を選ぶのではなく、望遠鏡の焦点距離や口径、撮影対象との関係を理解すると、適切な組み合わせを選びやすくなります。
2倍・3倍のバローレンズで焦点距離はどう変わる?
バローレンズの倍率は、望遠鏡の実効焦点距離を何倍にするかを示しています。例えば焦点距離800mmの望遠鏡に2倍のバローレンズを使うと、実効焦点距離は1,600mmになります。3倍なら2,400mmとなり、同じカメラでも天体をセンサー上で大きく写せます。
| 望遠鏡の焦点距離 | バローレンズ | 実効焦点距離 |
|---|---|---|
| 600mm | なし | 600mm |
| 600mm | 2倍 | 1,200mm |
| 600mm | 3倍 | 1,800mm |
| 800mm | 2倍 | 1,600mm |
| 1,000mm | 2倍 | 2,000mm |
| 1,000mm | 3倍 | 3,000mm |
| 2,000mm | 2倍 | 4,000mm |
表の数値は、表示された倍率で使用した場合の計算値です。一般的なバローレンズでは、レンズの光学部から撮像センサーまでの距離によって実際の拡大率が変化します。バーダープラネタリウムのVIPバローレンズの資料でも、撮像面までの距離を変えることで倍率が変化することが説明されています。
一眼レフカメラのTリングや延長筒を組み合わせると、バローレンズと撮像面の距離が変わります。そのため、製品に2倍と表示されていても、接続方法によって実際の倍率が変化する構造の製品があります。長い焦点距離で月などを撮影する際の画角については、600mmレンズの使い道でも具体的に解説しています。
2倍のバローレンズではF値も2倍になる
バローレンズは焦点距離を延長しますが、望遠鏡の対物レンズや主鏡の有効口径を大きくするわけではありません。そのため、実効焦点距離が2倍になると、実効F値も2倍になります。例えば口径100mm、焦点距離1,000mmのF10望遠鏡に2倍のバローレンズを使用すると、実効焦点距離2,000mm、F20の光学系になります。
| 元の望遠鏡 | バローレンズ | 実効F値 | 同じ露光時間での像面照度 |
|---|---|---|---|
| F5 | なし | F5 | 100% |
| F5 | 2倍 | F10 | 約25% |
| F5 | 3倍 | F15 | 約11% |
| F10 | 2倍 | F20 | 約25% |
同じ対象の像面照度は、理想的な光学条件ではF値の2乗に反比例します。2倍のバローレンズでは同じセンサー面積へ届く光量が約4分の1となり、同じ明るさを得るために約4倍の露光時間が必要になります。3倍では実効F値が3倍となり、同じ明るさを得るための露光時間は約9倍になります。
月面のように明るい被写体では、実効焦点距離を延長して細部を大きく写す使い方ができます。暗い星雲や銀河では、実効F値の増大によって露光時間が長くなるため、撮影目的に応じた使い分けが重要です。F値と明るさの関係については、F値とカメラの明るさの基本で詳しく紹介しています。
倍率を高めても解像力が無制限に向上するわけではない
バローレンズによってセンサー上の像を大きくすると、月面や惑星の細部を記録しやすくなります。しかし、元の望遠鏡が持つ解像力そのものが2倍や3倍になるわけではありません。実際に記録できる細部は、望遠鏡の口径、光学性能、撮像センサーの画素サイズ、大気の揺らぎなどによって決まります。
例えば、口径の小さな望遠鏡へ非常に高倍率のバローレンズを使用すると、像が大きくなっても新しい細部が増えず、輪郭が甘くなることがあります。月や惑星の撮影では、大気の状態が悪いと像が細かく揺らぎ、高倍率になるほどその影響が目立ちます。適切な倍率を選ぶことが、単純に最大倍率を追求すること以上に重要です。
センサーの画素数が多い一眼レフでも、望遠鏡の光学性能や大気の状態を超えた細部を記録することはできません。倍率を段階的に変更して撮影画像を比較すると、使用する望遠鏡とカメラに適した組み合わせを見つけやすくなります。長い焦点距離で月を撮影する際の考え方については、800mmレンズの使い道でも解説しています。
一眼レフカメラとバローレンズの接続方法
バローレンズを使った一眼レフ撮影では、天体望遠鏡、バローレンズ、Tアダプター、Tリング、カメラボディを適切な順序で接続します。重要なのは、望遠鏡側の接眼部の口径と、カメラ側のマウント規格を合わせることです。接続方式は使用する望遠鏡やバローレンズによって異なりますが、Tネジ付きの撮影対応バローレンズを使用すると構成を整理しやすくなります。
接続に必要な機材は望遠鏡・バロー・Tリング・カメラ
一眼レフカメラを天体望遠鏡へ接続する場合には、カメラに対応したTリングが必要です。Tリングは、キヤノンEFマウントやニコンFマウントなどのカメラ側の取り付け規格を、天体望遠鏡用のTネジ接続へ変換する部品です。一般的なT2ネジはM42×0.75mmという規格で、同じ直径42mmでもネジピッチが1.0mmの一般的なM42カメラマウントとは区別されます。
望遠鏡側では、接眼部に取り付けるTアダプターや、Tネジを備えたバローレンズを使用します。31.7mm径の接眼部へ挿入する製品と、50.8mm径の接眼部へ接続する製品があり、使用する望遠鏡の構造に合わせて選びます。セレストロンのUniversal Barlow and T-Adapterのように、2倍バローレンズとTアダプターを兼用する製品も販売されています。
カメラ側のマウント規格が異なる場合には、それぞれに対応するTリングを用意します。キヤノンEOS一眼レフならEFマウント用、ニコン一眼レフならFマウント用のTリングを使用する構成が基本です。天体望遠鏡と一眼レフの接続に関する光路長やバックフォーカスについては、EOS Ra使いこなし完全ガイドでも詳しく説明しています。
バローレンズと一眼レフの接続手順
撮影対応のTネジ付きバローレンズを使う場合、接続する順序は望遠鏡、バローレンズ、Tリング、カメラボディとなります。カメラの交換レンズを取り外し、カメラマウントへ適合するTリングを装着します。次に、Tリングをバローレンズ側のTネジ接続部へ取り付け、バローレンズの筒先を望遠鏡の接眼部へ挿入して固定します。
- 一眼レフカメラから交換レンズを取り外す。
- カメラのマウントに適合するTリングを取り付ける。
- バローレンズのTネジ接続部とTリングを接続する。
- バローレンズを望遠鏡の接眼部へ挿入する。
- 接眼部の固定機構でカメラとバローレンズを確実に保持する。
- カメラをライブビュー撮影に切り替える。
- 望遠鏡のフォーカサーを操作して天体へピントを合わせる。
通常の接眼レンズ用バローレンズには、カメラを直接ネジで接続するためのTネジが付いていない製品もあります。その場合には、バローレンズの接眼レンズ差し込み部に適合する撮影用Tアダプターを使用します。Tネジ付き一体型製品と比較すると接続部分が増えるため、カメラの重量を支える固定機構の剛性が重要になります。
一眼レフカメラの操作では、通常の交換レンズを認識しない状態で撮影することになります。機種によってはレンズ未装着時のレリーズ設定を変更する必要があり、撮影モードはMにして露光時間やISO感度を調整します。具体的なカメラ設定については、EOS Raのおすすめ設定完全ガイドでも紹介しています。
31.7mmと50.8mmの違いとフルサイズ機の周辺減光
天体望遠鏡の接眼部では、31.7mm径と50.8mm径という2種類の規格が広く使用されています。31.7mmは1.25インチ、50.8mmは2インチと呼ばれ、接続できるバローレンズや撮影用アダプターのサイズが異なります。フルサイズ一眼レフで撮影する場合には、光路の開口径が画像周辺の明るさやケラレに影響します。
31.7mm径のバローレンズでも、一眼レフで撮影することは可能です。しかし、フルサイズセンサーでは撮影範囲が広いため、バローレンズ内部の有効径や接続部の開口径によって画面周辺が暗くなる場合があります。特に広い写野を必要とする撮影では、50.8mm径の接続方式が適した構成になります。
APS-Cサイズの一眼レフではフルサイズより使用するセンサー範囲が狭いため、接続部の開口径による影響が変わります。撮影した画像で四隅が大きく暗くなる場合には、望遠鏡のイメージサークル、バローレンズの有効径、アダプターの内径を確認すると原因を整理できます。イメージサークルと周辺減光の違いについては、小さなイメージサークルとは?で詳しく紹介しています。
バローレンズとテレコンバーターの違い
バローレンズとテレコンバーターは、焦点距離を延長して遠くの被写体を大きく写すための光学アクセサリーです。どちらも2倍などの倍率を持つ製品があり、光学系の実効F値も変化します。異なるのは、対応する機材と接続規格、電子制御の仕組み、撮影用途です。
装着位置・対応機材・AF機能を比較
カメラ用テレコンバーターは、対応する交換レンズとカメラボディの間に装着します。マウントの機械的な形状に加え、AFや絞り、手ブレ補正などの電子制御を利用するための接点を備えた製品が中心です。対応するカメラとレンズの組み合わせでは、焦点距離を延長しながらAFや露出制御を利用できます。
バローレンズは、主として天体望遠鏡の接眼部や撮影用光路に組み込まれます。通常の天体望遠鏡を一眼レフへ接続する場合、望遠鏡側のフォーカサーを手動操作してピントを合わせます。カメラ用交換レンズのように、カメラボディから電子的にAFや絞りを制御する構成ではありません。
| 比較項目 | バローレンズ | カメラ用テレコンバーター |
|---|---|---|
| 主な用途 | 天体望遠鏡の観測・撮影 | 交換レンズによる写真撮影 |
| 接続位置 | 望遠鏡の接眼部・撮影光路 | 交換レンズとカメラの間 |
| 一般的な倍率 | 2倍・3倍・5倍など | 1.4倍・2倍など |
| 接続規格 | 31.7mm・50.8mm・T2など | EF・F・RF・Zなどの対応マウント |
| AF | 通常は望遠鏡側でMF | 対応機材ではAF使用可能 |
| 絞り制御 | 通常は望遠鏡の光学系で決まる | 対応機材ではカメラから制御 |
| 代表的な被写体 | 月・惑星・天体の細部 | 野鳥・スポーツ・飛行機・月 |
接続方法の違いを理解すると、購入するアクセサリーを区別しやすくなります。天体望遠鏡の焦点距離を延長したい場合にはバローレンズ、対応するカメラ用望遠レンズを延長したい場合にはテレコンバーターが基本です。テレコンバーターの構造や互換性については、EFエクステンダーの使い方で詳しく解説しています。
2倍バローと2倍テレコンのF値変化は共通する
バローレンズとテレコンバーターは装着方法が異なりますが、焦点距離を延長することで実効F値が大きくなる点は共通しています。例えば焦点距離400mm、開放F4のカメラ用望遠レンズに2倍テレコンバーターを装着すると、実効焦点距離800mm、開放F8になります。天体望遠鏡でも、焦点距離400mm、F4の光学系へ2倍バローレンズを使用すると、実効焦点距離800mm、F8になります。
1.4倍テレコンバーターでは、実効焦点距離が1.4倍になり、明るさは約1段分減少します。2倍では焦点距離が2倍になり、明るさは約2段分減少します。これはニコンなどのカメラメーカーも公式に説明している、テレコンバーターの基本的な光学特性です。
望遠鏡にバローレンズを使用する場合も、実効焦点距離が延長されるほど露光条件が変化します。月のような明るい天体では高倍率撮影に活用できますが、暗い対象では露光時間が長くなるため、撮影対象に合わせた使い分けが重要です。2倍テレコンバーターの具体的な焦点距離とF値の変化については、Canon EXTENDER EF2xの解説で詳しく説明しています。
野鳥や飛行機にはテレコン、月や惑星にはバローが便利
通常の一眼レフ用望遠レンズで野鳥や飛行機を撮影する場合には、対応するテレコンバーターが便利です。望遠レンズのAFや絞り制御を利用しながら焦点距離を延長できるため、動く被写体を追いかける撮影に適しています。例えば400mm F2.8のレンズへ2倍テレコンバーターを装着すれば、800mm F5.6の構成になります。
月面のクレーターや木星、土星を大きく撮影する場合には、天体望遠鏡とバローレンズの組み合わせが有力です。望遠鏡の長い焦点距離をさらに延長し、センサー上の惑星像を大きくできます。天体は通常の野鳥撮影と異なり、望遠鏡を固定した状態でピントや露光を細かく調整するため、AFの有無よりも光学性能や架台の安定性が重要になります。
どちらを使うかは、カメラに装着している光学機器で決まります。交換レンズを使用する場合には対応するテレコンバーター、天体望遠鏡を使用する場合にはバローレンズという選択が基本です。超望遠レンズとテレコンバーターの組み合わせについては、EF400mm F2.8L IS II USMの解説でも詳しく紹介しています。
バローレンズを使った月・惑星の撮影方法
バローレンズを一眼レフカメラで使用する代表的な撮影対象は、月、木星、土星などです。これらは見かけの大きさが異なるため、必要な焦点距離や撮影方法も変わります。月面の一部分を拡大する場合と、小さな惑星の模様を記録する場合では、使用する倍率と露光条件を分けて考えます。
月面のクレーターは2倍バローレンズから撮影する
月は比較的明るく、バローレンズによる拡大効果を確認しやすい天体です。焦点距離1,000mmの望遠鏡では、月全体を画面へ収める撮影や、月面の一部を拡大する撮影ができます。2倍のバローレンズを追加して2,000mm相当の実効焦点距離にすると、月面のクレーターや山脈を大きく記録できます。
月面撮影では、満月の明るい部分だけを撮る場合と、半月の明暗境界付近を撮る場合で写る地形の印象が変わります。太陽光が斜めから当たる明暗境界付近では、クレーターや山脈の影が長くなり、月面の凹凸を立体的に表現できます。ピントはライブビューの拡大表示を利用し、月面の輪郭やクレーターを確認しながら合わせます。
高倍率ではカメラや望遠鏡のわずかな揺れが画像へ影響します。セルフタイマーやリモートレリーズを使用し、撮影後は画像を拡大してピントとブレを確認すると安定した結果を得やすくなります。望遠レンズを使った月の撮影方法については、200-800mmレンズの使い道でも詳しく紹介しています。
木星・土星は動画撮影とスタッキングを組み合わせる
木星や土星は、月と比較して見かけの大きさが非常に小さい天体です。そのため、焦点距離の長い望遠鏡と2倍や3倍のバローレンズを組み合わせ、センサー上の惑星像を大きくする方法が使用されます。木星の縞模様や土星の環を撮影する場合には、望遠鏡の口径と解像性能、大気の状態が結果を左右します。
惑星撮影では、一枚の静止画だけで細部を記録する方法に加え、多数の動画フレームを撮影して合成する方法が広く利用されています。大気の揺らぎが小さい瞬間のフレームを選び、位置合わせとスタッキングを行うことで、ノイズを抑えながら細部を強調できます。デジタル一眼レフでも動画記録を利用できますが、撮影時のセンサー読み出し範囲や動画の圧縮方式によって記録される情報量が異なります。
撮影倍率を上げすぎると像が暗くなり、ノイズや大気の揺らぎの影響も大きくなります。使用する望遠鏡の焦点距離とセンサーの画素サイズに合わせて倍率を調整し、複数の撮影データを比較すると適した条件を見つけやすくなります。写真や動画の複数フレームを合成する方法については、写真のスタッキングとは?で詳しく解説しています。
星雲や銀河ではバローレンズを使わない撮影も重要
バローレンズは月や惑星の拡大撮影に便利ですが、星雲や銀河の撮影では実効F値が大きくなることが撮影条件へ影響します。例えばF5の望遠鏡へ2倍バローレンズを組み合わせるとF10になり、同じ像面照度を得るには約4倍の露光時間が必要です。淡い星雲の広がりを記録したい場合には、バローレンズを使用しない直焦点撮影が適しています。
星雲や銀河を撮影する場合には、被写体の見かけの大きさに合った焦点距離を選びます。オリオン大星雲のように広がりのある対象では、画角を確保できる望遠鏡やカメラ用望遠レンズが使いやすくなります。小さな銀河を拡大する場合には長い焦点距離が役立ちますが、赤道儀による正確な追尾と十分な露光時間が重要になります。
天体撮影では、撮影対象の大きさと明るさを組み合わせて機材を選ぶことが基本です。月や惑星ではバローレンズによる拡大、淡い星雲では明るい光学系と長時間露光というように、光学構成を変えることで撮影の幅が広がります。高画素カメラと天体撮影の関係については、天体写真におすすめの高画素機ランキングでも詳しく紹介しています。
バローレンズを使うときのピント・ブレ・画質の対策
バローレンズを使用した撮影では、通常の交換レンズ撮影とは異なる調整が必要になります。特に重要なのが、焦点位置、望遠鏡の固定、センサー上の像の明るさです。接続部の精度や光軸の状態も画質に影響するため、撮影前に機材全体の構成を確認すると安定した結果につながります。
ピントが合わない場合はバックフォーカスと接続距離を確認する
天体望遠鏡に一眼レフカメラを接続したとき、フォーカサーを動かしてもピントが合わない場合があります。これは、望遠鏡が形成する焦点位置とカメラの撮像センサーの位置が一致していないことが主な原因です。特にニュートン式反射望遠鏡では、カメラを接続するとフォーカサーを十分に内側へ動かせず、直焦点撮影でピントが出ない構成があります。
セレストロンは、こうした場合の対策としてバロー兼Tアダプターを使用する方法を案内しています。バローレンズによって焦点位置が変化するため、直焦点ではピントが出ない望遠鏡でも撮影できる構成になります。実際の焦点位置は望遠鏡と接続部品の組み合わせによって決まるため、使用するアダプターの光路長が重要です。
ピントを調整するときには、一眼レフカメラのライブビューを使用する方法が便利です。月面や明るい恒星を拡大表示し、望遠鏡側のフォーカサーを少しずつ動かして最も鮮明になる位置を探します。ライブビューによるMFの基本については、ピント操作の実践知識でも詳しく紹介しています。
長い焦点距離では三脚・架台・レリーズの安定性が重要
バローレンズによって焦点距離が延長されると、カメラや望遠鏡のわずかな揺れが画像へ大きく現れます。例えば実効焦点距離2,000mmの構成では、シャッターボタンを押す動作や風による振動も撮影結果に影響します。天体望遠鏡を支える架台の剛性と、カメラを取り付けた状態での重量バランスが重要になります。
デジタル一眼レフでは、ミラーの作動による振動を抑えるため、ライブビュー撮影やミラーアップ撮影を利用できます。リモートレリーズやセルフタイマーを使用すれば、シャッターボタンへ直接触れずに撮影できます。月面撮影では比較的短い露光時間を使用できるため、振動が収まった状態で複数枚を撮影し、結果を比較する方法が有効です。
星雲や銀河を長時間露光する場合には、架台の安定性に加えて赤道儀の追尾精度が重要になります。天体は地球の自転によって見かけ上移動するため、焦点距離が長いほど星の流れが目立ちやすくなります。リモートレリーズと長時間露光の関係については、リモートシャッターで安定した撮影を行う方法で詳しく解説しています。
安価なバローレンズと高性能モデルでは画質に差が出る
バローレンズには、比較的単純な光学構成の製品から、複数枚のレンズを使用して収差補正を重視した製品まで種類があります。高倍率撮影では、バローレンズ自体の収差や光軸のずれが画像へ現れやすくなります。特に月面のクレーターや惑星の模様など、細かな構造を撮影する場合には光学性能が重要です。
高性能なバローレンズでは、色収差、球面収差、画面周辺の像の乱れなどを抑えるために光学設計が工夫されています。さらに、レンズ表面のコーティングによって反射やフレアを抑え、コントラストを維持する設計も採用されています。Sky-WatcherのNOMADシリーズのように、天体撮影向けの光学性能とカメラ接続機構を組み合わせた製品も販売されています。
一眼レフカメラへ接続する場合には、光学性能だけでなく、Tネジの有無、接続径、撮像センサーまでの距離、固定機構の精度を確認することが重要です。倍率が同じ2倍でも、接続方法や光学設計が異なると撮影結果が変わります。レンズの解像力、色収差、コントラストについては、レンズの光学性能とは?で詳しく紹介しています。
まとめ
バローレンズは、適切な接続アダプターを使用することで、デジタル一眼レフカメラによる天体撮影にも利用できます。代表的な方法は、カメラの交換レンズを取り外し、TリングとTアダプターを介して天体望遠鏡へ取り付け、撮影光路へバローレンズを組み込む構成です。2倍や3倍のバローレンズを使用すれば、望遠鏡の実効焦点距離を延長し、月面や惑星をセンサー上で大きく記録できます。
| 撮影目的 | 適した方法 |
|---|---|
| 月全体を撮影 | 天体望遠鏡の直焦点撮影 |
| 月面のクレーターを拡大 | 2倍バローレンズ |
| 木星・土星を拡大 | 望遠鏡と適切な倍率のバローレンズ |
| 星雲・銀河を広く撮影 | 直焦点撮影・赤道儀による追尾 |
| カメラ用望遠レンズを延長 | 対応するテレコンバーター |
| 一眼レフと望遠鏡を接続 | Tリング・Tアダプター |
バローレンズとテレコンバーターは、どちらも光学系の実効焦点距離を延長しますが、使用する機材と接続方法が異なります。天体望遠鏡の月・惑星撮影ではバローレンズ、通常の望遠レンズによる野鳥・スポーツ・飛行機撮影では対応するテレコンバーターが基本です。2倍の光学系を使用すると実効F値も2倍になり、撮影範囲が狭くなるとともに露光条件が変化します。
一眼レフカメラで初めてバローレンズを使用する場合には、Tネジ付きの2倍バロー兼Tアダプターが構成を理解しやすい製品です。望遠鏡の焦点距離と接眼部の規格、カメラのマウント、必要な撮像面までの距離を合わせれば、月面や惑星を大きく撮影するシステムを構築できます。望遠鏡の光学性能と一眼レフカメラの撮像性能を組み合わせることで、通常のカメラ用望遠レンズとは異なる天体写真の世界を楽しめます。



