キヤノンが85mm F1.2級など4本の大口径単焦点レンズを特許公開!超高屈折率素材による小型化に注目
キヤノンが、85mm F1.2級をはじめとする大口径単焦点レンズの光学設計に関する特許を公開しました。2026年10月15日に公開された特許公報には、85mm F1.2級、100mm F1.4級、135mm F1.8級、APS-C用65mm F1.4級という4種類の設計例が掲載されています。今回の特許で注目したいのは、焦点距離や開放F値だけでなく、超高屈折率素材を利用して光学性能と小型化の両立を目指している点です。
キヤノンには、すでにRF85mm F1.2 L USMやRF135mm F1.8 L IS USMといった高性能な大口径単焦点レンズが存在します。そのため、今回の特許を見て、既存レンズの後継機や新しいポートレートレンズを想像する方も多いでしょう。一方、特許公報に記載されているのは光学設計の技術的な内容であり、製品名、発売時期、価格などが発表されたわけではありません。公報に記載された数値を確認しながら、4種類の設計例がどのような特徴を持ち、キヤノンの今後のレンズ開発にどのような可能性を示しているのかを詳しく解説します。
キヤノンが公開した大口径単焦点レンズの特許とは
今回公開された特許は、単に明るいレンズを設計したという内容にとどまりません。大口径単焦点レンズでは、開放F値を小さくするほど光学系が大型化しやすく、色収差などの補正も難しくなります。キヤノンは、この問題に対して屈折率の高い光学素材の配置を工夫し、小型でありながら高い光学性能を持つレンズの実現を目指しています。
2026年10月15日公開の特許公報に4種類の設計例
今回の特許は、公開番号が「特開2026-167867」、名称が「光学系および撮像装置」です。出願日は2025年4月2日で、2026年10月15日に公開されました。公報では、絞りの前後に配置される正レンズの屈折率や部分分散比などに条件を設け、色収差の補正と光学系の小型化を図っています。レンズの設計例として4種類の数値実施例が示されており、それぞれ焦点距離、開放F値、対応する像高が異なります。
特許公報の実施例は、技術的な効果を説明するために具体化された光学設計です。実際に販売されるレンズでは、製造技術、材料の調達、オートフォーカス機構、耐久性、価格などを考慮して設計が変更される場合があります。そのため、実施例の数値がそのまま製品仕様になると考えることはできません。キヤノンがこれまで開発してきた単焦点レンズの特徴については、キヤノン単焦点レンズの完全ガイドでも紹介しています。
85mm、100mm、135mm、65mmの光学設計を比較
公報に掲載された4種類の数値実施例をまとめると、次のようになります。焦点距離とF値は特許公報に記載された設計上の数値であり、製品として販売される際の名称を示したものではありません。特に65mmの設計例は、ほかの3種類と像高が異なるため、同じフルサイズ用レンズとして比較しないことが重要です。
| 設計例 | 焦点距離 | F値 | 像高 | 光学全長 |
|---|---|---|---|---|
| 85mm F1.2級 | 83.26mm | F1.24 | 21.64mm | 140.35mm |
| 100mm F1.4級 | 100.00mm | F1.44 | 21.64mm | 140.00mm |
| 135mm F1.8級 | 135.00mm | F1.85 | 21.64mm | 160.01mm |
| 65mm F1.4級 | 65.00mm | F1.44 | 13.66mm | 90.00mm |
最初の3種類は、像高21.64mmというフルサイズに対応する設計です。一方、65mm F1.4級は像高13.66mmで、APS-Cサイズに相当する設計となっています。光学全長についても、レンズの先端から撮像面までの光学的な距離であるため、製品の鏡筒長と同じ数値ではありません。85mm、100mm、135mmの焦点距離による画角と背景の見え方の違いについては、中望遠レンズとボケの特徴を解説した記事も参考になります。
特許の目的は高性能と小型化の両立
大口径レンズは多くの光を取り込めるため、暗い場所でもシャッタースピードを確保しやすく、背景を大きくぼかした撮影にも適しています。しかし、F1.2やF1.4といった明るさを確保しながら画面周辺まで高い解像性能を得ようとすると、多数のレンズを組み合わせたり、大径のガラスを使用したりする必要が生じます。特に色収差や球面収差を高い水準で補正することは容易ではありません。今回の特許では、高い屈折率を持つ材料を適切な位置に配置することで、こうした課題に取り組んでいます。
開放F値が小さいレンズほど、使用者にとっては描写性能だけでなく携帯性や取り回しも重要になります。高い光学性能を維持したままレンズ構成を効率化できれば、将来的な設計の自由度が広がる可能性があります。ただし、公報にある光学全長の数値から、完成品の重量や外径を求めることはできません。現在販売されているRF単焦点レンズの特徴については、RF単焦点レンズの総合ガイドで確認できます。
85mm F1.2級の設計例で注目したいポイント
4種類の設計例のうち、特に関心を集めそうなのが85mm F1.2級です。キヤノンの85mm F1.2は、EFマウント時代から高級ポートレートレンズを象徴する存在でした。現行のRF85mm F1.2 L USMも高い評価を受けており、今回の光学設計が今後どのような技術へ発展するのか注目されます。
83.26mm F1.24という光学設計の意味
最初の実施例は、焦点距離83.26mm、開放F値F1.24の光学系です。一般的な製品の表記に置き換えれば、85mm F1.2級に該当します。像高は21.64mmで、フルサイズ撮像素子の画面対角に対応する設計となっています。半画角は14.18度、光学全長は140.35mm、バックフォーカスは14.17mmです。
85mmは、人物撮影で使いやすい中望遠の焦点距離です。顔の形を極端に変形させず、適度な撮影距離から自然な遠近感を得られることが特徴です。F1.2級の明るさが加われば、大きな背景ボケによって被写体を印象的に浮かび上がらせる表現が期待できます。現行の製品として知られるRF85mm F1.2 L USMの描写性能と特徴を確認すると、この焦点距離と明るさが持つ魅力を理解できます。
現行RF85mm F1.2 L USMとの関係
キヤノンには、RF85mm F1.2 L USMというフルサイズ対応の大口径単焦点レンズが存在します。このレンズは開放F1.2の明るさを持ち、ポートレート撮影を中心に高い描写性能を求めるユーザーに向けた製品です。高画質を優先した設計のため、重量は約1,195gあり、決して軽量なレンズではありません。今回の特許が小型化を目的にしていることから、重量やサイズの改善を期待する見方も考えられます。
もっとも、今回公開された83.26mm F1.24という数値は、既存製品の後継機を示す証拠にはなりません。特許公報には、新製品の名称や具体的な発売計画が記載されていないためです。また、特許の光学全長と現行レンズの外形寸法を直接比較して、どちらが短いと判断することもできません。EFマウントからRFマウントへの進化については、キヤノン85mmレンズのEF・RF比較記事で詳しく紹介しています。
F1.2級で求められるボケと開放描写
85mm F1.2級のレンズでは、背景を大きくぼかせることに加えて、ピントが合った部分の描写が重要になります。開放絞りでは被写界深度が極めて浅くなるため、目に正確にピントが合っていても、顔のほかの部分が大きくぼけることがあります。さらに、ピント面の前後に発生する色づきや、強い光源の周辺に現れる色収差も目立ちやすくなります。背景ボケの柔らかさとピント面の鮮明さを両立させるには、光学設計の工夫が欠かせません。
今回の特許が色収差の補正を重視していることは、85mm F1.2級という設計例とも関係があります。大口径レンズでは、光の波長ごとに焦点位置がずれる現象を抑えることが、開放付近の描写を改善するうえで重要です。ただし、特許の存在だけでボケの質や周辺解像力まで評価できるわけではありません。現行製品に採用されている特殊なボケ表現については、RF85mm F1.2 L USMとDSモデルの比較も参考になります。
100mm F1.4級と135mm F1.8級の可能性
今回の特許には、85mm以外にもフルサイズ対応の中望遠単焦点レンズが含まれています。100mm F1.4級と135mm F1.8級は、人物撮影や舞台撮影、比較的離れた位置からの撮影などで活用できる焦点距離です。どちらも大きな背景ボケを得やすい一方、被写体との距離や構図の作り方には違いがあります。
100mm F1.4級は85mmと135mmの中間
100mmの設計例は、焦点距離100.00mm、開放F値F1.44です。像高は21.64mmで、フルサイズ対応の光学系となっています。光学全長は140.00mm、バックフォーカスは13.50mm、半画角は11.87度です。85mmより狭い画角を持ち、135mmほど撮影距離を必要としない焦点距離として位置づけられます。
100mm F1.4級が製品化された場合を想定すると、上半身のポートレートや屋外での人物撮影が主な用途の一つになると考えられます。85mmより背景の範囲を狭く整理しやすく、135mmよりも室内などで構図を作りやすい場面があるためです。100mmの焦点距離そのものはマクロレンズでもおなじみですが、F1.4級の大口径レンズでは求められる設計や使用目的が異なります。現在販売されている明るい85mmレンズの一例として、RF85mm F1.4 L VCMの特徴も確認できます。
135mm F1.8級は既存の高級望遠単焦点と重なる
135mmの実施例は、焦点距離135.00mm、開放F値F1.85の光学系です。像高21.64mmのフルサイズ対応設計で、光学全長は160.01mm、バックフォーカスは19.76mm、半画角は8.84度となっています。今回の4種類の設計例の中では、もっとも焦点距離が長く、光学全長も長い構成です。135mmという焦点距離では、狭い画角を生かして背景を大きく整理できることが特徴になります。
キヤノンには、すでにRF135mm F1.8 L IS USMという高性能なレンズがあります。そのため、この特許を見て後継機を想像することもできますが、公報にそのような製品計画が記載されているわけではありません。135mmは被写体から一定の距離を取りやすい屋外ポートレートや、ステージ上の人物などを撮影する用途でも使われます。キヤノンの135mmレンズの特徴については、キヤノン135mm単焦点レンズの魅力で詳しく解説しています。
85mm・100mm・135mmはどのように使い分けるのか
85mm、100mm、135mmは、いずれもポートレート撮影に適した焦点距離ですが、撮影時に得られる画角は異なります。同じ位置から撮影した場合、焦点距離が長いほど被写体は大きく写り、画面に入る背景の範囲は狭くなります。一方、人物が同じ大きさで写るように撮影距離を変更すると、遠近感や背景の写り方にも違いが現れます。レンズの明るさだけでなく、撮影場所や被写体との距離に応じた選択が必要です。
85mmは比較的扱いやすい中望遠として、室内から屋外まで幅広く使えます。100mmはその中間に位置し、背景の整理と撮影距離のバランスを取りやすい焦点距離です。135mmはさらに狭い画角を生かした表現が得意ですが、室内などでは十分な撮影距離を確保できない場合があります。これらの違いを理解するには、キヤノンのポートレート向けレンズガイドも役立ちます。
APS-C用65mm F1.4級の設計例にも注目
今回の特許で見逃せないのが、65mm F1.4級の光学設計です。85mm、100mm、135mmの3種類がフルサイズに対応する一方、65mmの実施例はAPS-Cサイズを想定した像高となっています。キヤノンのAPS-C機で使用した場合、画角はフルサイズ換算で約104mm相当になり、中望遠ポートレート向けの焦点距離となります。
65mm F1.4級はAPS-Cで約104mm相当の画角
65mmの設計例は、焦点距離65.00mm、開放F値F1.44です。像高は13.66mmで、ほかの3種類より小さいAPS-Cサイズに対応する光学系となっています。半画角は11.55度、光学全長は90.00mm、バックフォーカスは10.00mmです。フルサイズ用の100mm F1.4級と比べると、同じ中望遠用途を意識できる画角でありながら、より小さな撮像面に合わせた設計となっています。
キヤノンのAPS-C機では、焦点距離に約1.6倍を掛けることでフルサイズ換算の画角を求められます。したがって、65mmは約104mm相当の画角となり、100mm前後の中望遠レンズに近い感覚で使用できます。ただし、画角が約104mm相当になることと、レンズの実焦点距離が104mmになることは別の話です。センサーサイズと焦点距離の関係については、APS-Cレンズとフルサイズの違いで詳しく説明しています。
APS-Cの小型カメラと大口径レンズの組み合わせ
APS-C用65mm F1.4級という設計は、人物撮影を重視するAPS-Cユーザーにとって関心の高い内容です。例えば、EOS R50やEOS R10などのAPS-Cミラーレスカメラでは、フルサイズ換算約104mm相当の画角を利用できます。明るい単焦点レンズであれば、室内の人物撮影や夕方の撮影でシャッタースピードを確保しやすくなります。背景を大きくぼかしたポートレート表現にも適した組み合わせです。
今回の実施例の光学全長は90.00mmで、フルサイズ用の3種類より短くなっています。ただし、これは撮像面までを含めた光学設計上の数値であり、製品の鏡筒サイズや重量を示すものではありません。実際に小型軽量な製品になるかどうかは、レンズ群の構成、駆動機構、外装などによっても変わります。APS-Cカメラの特徴や用途については、EOS RシリーズのAPS-Cカメラガイドも参考になります。
65mm F1.4級がRF-Sレンズになるとは限らない
像高13.66mmという数値から、65mm F1.4級の設計例がAPS-Cサイズに対応していることは読み取れます。一方、今回の特許公報は光学系の技術を示すものであり、将来の製品にRF-Sマウントが採用されることまで確定しているわけではありません。特許の技術が実際の製品に採用される場合、マウント構造やオートフォーカス機構を含めて再検討される可能性もあります。現時点では、APS-C向けの光学設計例として理解するのが適切です。
キヤノンのAPS-Cユーザーにとって重要なのは、焦点距離と開放F値だけでなく、レンズの価格、重量、最短撮影距離などです。65mm F1.4級がどのような製品になるかについては、具体的な情報が公開されていません。すでに販売されているレンズを選ぶ場合には、撮影距離や倍率などが明確になっている製品同士を比較できます。例えば、RF85mm F2 Macro IS STMの特徴を確認すると、同じ中望遠域でも用途の違いによってレンズの性格が変わることが分かります。
超高屈折率素材で色収差と小型化を両立する技術
今回の特許の中心となるのは、85mmや100mmという焦点距離そのものよりも、光学系に使用する材料とレンズ配置の工夫です。特に、絞りの前後に高い屈折率を持つ正レンズを配置し、屈折率や部分分散比に関する条件を設定している点が特徴です。こうした工夫は、大口径レンズで問題になりやすい色収差を補正しながら、光学系の大きさを抑えることを目的としています。
絞りの前後に高屈折率の正レンズを配置
特許公報では、絞りより物体側にある第1の正レンズと、絞りより像側にある第2の正レンズが重要な役割を持っています。これらの正レンズには高い屈折率を持つ材料が用いられ、屈折率の条件として2.0以上3.0以下の範囲などが設定されています。屈折率は、光が物質に入ったときに進む方向がどの程度変化するかを示す値です。高い屈折率を持つ材料は、レンズの曲率や厚さなどの設計に関して従来と異なる選択肢を与えます。
大口径単焦点レンズでは、明るさを確保しながらさまざまな収差を抑えるために、多くの光学要素が必要になります。そこで屈折率の高い材料を適切な位置に使用できれば、必要な屈折力を確保する方法に幅が生まれ、光学系を効率的に構成できる可能性があります。ただし、高屈折率の材料を入れるだけで自動的に高画質になるわけではありません。収差の種類や補正の仕組みについては、RFレンズとEFレンズの色収差に関する解説も参考になります。
部分分散比の制御で色収差を補正
今回の特許では、屈折率だけでなく部分分散比も重要な条件として扱われています。光は波長によって屈折の仕方が異なるため、レンズを通過した後に赤や青などの光が完全に同じ位置へ集まらない場合があります。この現象が色収差であり、画像の輪郭に色づきが発生したり、ピントが合った部分の鮮明さが低下したりする原因になります。部分分散比は、異なる波長の光に対する材料の分散特性を表す指標の一つです。
一般的な光学設計でも、分散特性の異なる複数のガラスを組み合わせることで色収差を補正しています。今回の特許では、非常に高い屈折率を持つ材料と、その分散特性を利用することで、光学系全体の色収差を抑える構成が示されています。大口径レンズでは開放付近の描写を重視するため、このような補正技術は重要な意味を持ちます。レンズの性能を評価する際には、レンズの光学性能とMTFの考え方も理解しておくと役立ちます。
光学全長を抑える設計とフォーカス機構
高性能な大口径レンズを小型化するには、色収差だけでなく、レンズ全体の構成を効率化する必要があります。今回の特許では、絞りの前後にあるレンズ群の配置に加えて、フォーカシングに関係するレンズ群についても説明されています。公報に示された光学全長は、85mm F1.2級と100mm F1.4級が約140mm、135mm F1.8級が約160mm、APS-C用65mm F1.4級が90mmです。いずれも光学設計上の距離であり、実際の製品を手に持ったときの長さを示すものではありません。
フォーカシングに伴って複数のレンズ群が移動する構成は、撮影距離による収差の変化を抑えるためにも利用されます。大口径レンズでは近距離と遠距離で描写性能を維持することが重要であり、光学系の移動方法も設計上の課題になります。ただし、公報から将来の製品に搭載されるAFモーターの種類や駆動速度まで判断することはできません。画像の鮮明さを左右する要因については、レンズの解像力と画質の関係でも詳しく解説しています。
特許公開から製品化を考える際の注目点
特許が公開されると、新しいレンズの発売を期待する声が出ることがあります。今回も85mm F1.2級や100mm F1.4級という具体的な数値が示されているため、将来の製品を想像しやすい内容です。しかし、光学設計が特許として公開されたことと、その仕様の製品が発売されることは別の段階にあります。今後の情報を見る際には、何が確認された事実で、何が期待や予想なのかを分けて考える必要があります。
RF85mm F1.2の後継機が決まったわけではない
今回の特許に85mm F1.2級の設計例が含まれることから、RF85mm F1.2 L USMの後継機を連想する方もいるでしょう。現行のRF85mm F1.2 L USMは大型で重いレンズですが、その分、開放F1.2の描写性能に重点を置いた製品です。もし将来、同じ明るさで小型軽量化した製品が登場すれば、持ち運びや撮影時の取り回しにメリットが生まれます。しかし、公報の内容だけで後継機の開発状況や発売予定を判断することはできません。
85mm F1.2という焦点距離と開放F値は、キヤノンにとって長い歴史のある組み合わせです。EFマウント時代にはEF85mm F1.2L II USMがあり、その後RFマウントでRF85mm F1.2 L USMが登場しました。今回の特許が将来の製品に関連する可能性はありますが、どの製品に採用されるかは未発表です。これまでの設計の違いについては、RF85mm F1.2とEF85mm F1.2の比較で確認できます。
製品化では光学性能以外の条件も重要
光学設計で優れた性能が得られても、その構成を量産製品として成立させるには多くの条件があります。今回の特許で扱われているような非常に高い屈折率の材料では、材料の製造方法や均質性、加工性、コストなども重要になります。さらに、レンズを動かす機構、電子制御、外装、耐久性などを含めた設計が必要です。特許で示された技術が、完成品では別の構成と組み合わされることも考えられます。
実際の撮影で使いやすいレンズになるかどうかは、重量や全長だけでは決まりません。オートフォーカスの速度と精度、近接撮影性能、操作部の配置なども使用感を左右します。特に静止画と動画の両方を撮影する場合には、フォーカス時の動作や音などが気になることもあります。こうした観点から、RF単焦点レンズのメリットと使いこなしを確認すると、カタログの数値以外にも比較すべき項目があることが分かります。
現行レンズと比較するときに確認したいこと
85mm F1.2級の特許を見て新しいレンズを待つ場合、現行製品がどのような性能を持っているかも把握しておきたいところです。RF85mm F1.2 L USMは開放F1.2の描写性能を重視するレンズであり、RF85mm F1.4 L VCMは明るさと取り回しのバランスが異なります。RF85mm F2 Macro IS STMには近接撮影性能や手ブレ補正という特徴があります。いずれも同じ85mmの単焦点レンズですが、使用目的によって適した製品は変わります。
今回の特許には85mmだけでなく、100mm、135mm、APS-C用65mmという設計例も含まれています。このことから、単一製品の後継機という視点だけでなく、大口径単焦点レンズ全体に応用できる光学技術として捉えることができます。もし将来、これらの技術を採用した製品が登場した場合には、光学性能に加えて価格、重量、撮影距離、対応する撮像素子などを比較することが重要になります。現行の中望遠レンズの選び方については、キヤノンのポートレート用中望遠レンズ比較も参考になります。
まとめ
キヤノンが2026年10月15日に公開した特許「特開2026-167867」には、85mm F1.2級、100mm F1.4級、135mm F1.8級、APS-C用65mm F1.4級という4種類の大口径単焦点レンズの光学設計例が掲載されています。85mm、100mm、135mmはフルサイズ対応の像高を持ち、65mmはAPS-Cサイズに対応する設計となっています。いずれも大口径レンズの特徴を生かしながら、高い光学性能と小型化を両立させるための技術が検討されています。
今回の特許で特に注目したいのは、絞りの前後に超高屈折率素材を使用した正レンズを配置し、屈折率と部分分散比の条件を工夫している点です。この構成によって、大口径レンズで問題になりやすい色収差を補正しながら、光学系の大きさを抑えることを目指しています。85mm F1.2級だけでなく、100mm F1.4級やAPS-C用65mm F1.4級の設計も含まれていることから、複数の焦点距離に応用できる技術として注目できます。
現時点で、これらの設計例を採用した製品の発売は発表されておらず、RF85mm F1.2 L USMの後継機が決まったという情報もありません。特許に記載された光学全長や開放F値は技術を説明するための数値であり、実際の製品仕様とは区別して考える必要があります。今後、キヤノンが新たな大口径単焦点レンズを発表する際には、今回の特許に示された高屈折率素材と色収差補正の技術がどのように生かされるのかが注目点となります。


