RF-S7.8mm F4 STM DUALレビュー|3D撮影・対応カメラ・DUAL FISHEYEとの違い
Canon RF-S7.8mm F4 STM DUALは、一般的な広角単焦点レンズとは目的が大きく異なる、3D映像撮影用のデュアルレンズです。左右に2つの光学系を持ち、それぞれの視差を1台のカメラで同時に記録することで、奥行きを感じられる3D映像を制作できます。EOS VR SYSTEMの一部として設計されており、対応カメラと専用ソフトを組み合わせることで、Apple Vision Proで視聴できる空間ビデオをはじめ、3D Theaterや3D 180°向けの形式へ変換できます。
焦点距離表記は7.8mmですが、通常の7.8mm単焦点レンズとして約12.5mm相当の超広角写真を撮る製品ではありません。左右の光学系から得られる2つの像を撮像センサーへ配置する特殊構造で、完成する3D映像の画角は約60°です。単純にAPS-Cの1.6倍を掛けて一般的な広角レンズと比較すると、このレンズの用途を誤解しやすくなります。
レンズ構成は7群9枚、絞り羽根は7枚、最小絞りはF16、最短撮影距離は0.15m、最大撮影倍率は0.07倍です。フィルター径は58mm、最大径約69.2mm、全長約41.5mm、質量は約131gと非常に小型軽量です。従来の記事では重量や画角について別のDUALレンズと混同しやすい部分がありましたが、RF-S7.8mm F4 STM DUALは約131gの小型モデルです。
さらに、最短撮影距離0.15mを生かして料理、手芸、模型、メイク、ペットなど比較的近距離の被写体を立体的に見せることを得意とします。約180°を見回す本格VR向けDUAL FISHEYEとは性格が異なり、「広大な空間へ入り込むVR」より、「目の前の人や物に奥行きを与える3D映像」に重点を置いたレンズです。
RF-S7.8mm F4 STM DUALはどんなレンズか
RF-S7.8mm F4 STM DUALを理解するには、一般的なRF-Sレンズと同じ基準だけで評価しないことが重要です。写真用の広角単焦点ではなく、左右2系統の映像を同時に記録するための特殊レンズであり、焦点距離、画角、撮影距離の意味も通常のレンズとは異なります。
左右2つの光学系で3D映像を同時記録する
人間は左目と右目で少し異なる位置から物を見ています。その位置差によって生じる視差を脳が処理することで、手前と奥の距離や立体感を認識しています。RF-S7.8mm F4 STM DUALも同じ原理を利用し、左右に配置した2つのレンズから異なる視点の映像を同時に取り込みます。
2台のカメラを並べて3D撮影を行う場合、左右のカメラで露出、ホワイトバランス、フレームレート、録画開始時刻、レンズ位置などを合わせる必要があります。DUALレンズでは1台のカメラと1枚の撮像センサーを使うため、左右の映像を時間的に同期させやすく、機材も大幅に減らせます。
通常のRF-Sレンズとの位置づけはRF-Sレンズ完全ガイドで確認できます。
約60°の画角で目の前の被写体を自然に見せる
キヤノンが案内している完成映像の画角は、人間の有効視野に近い約60°です。レンズ仕様上の画角は水平・垂直・対角とも63°で、180°近い範囲を記録するDUAL FISHEYEとは明確に方向性が異なります。
視聴者が左右や上下を大きく見回すVR映像より、正面にいる人物、料理、作品、ペットなどを自然な距離感で見る3D映像に向いています。画面のほぼ全方向へ情報を詰め込むのではなく、撮影者が見せたい被写体を正面へ配置する通常の動画に近い構図で使えることが特徴です。
RF-SレンズとRFレンズの違いを含めた基本はRF-Sレンズとは?一覧・対応機種・RFレンズとの違いで詳しく解説しています。
約131g・全長41.5mmの小型軽量設計
質量は約131g、全長約41.5mmです。2つの光学系を備えた特殊レンズとしては非常に小さく、EOS R7との組み合わせでも機材全体を大きくしにくいことが特徴です。プリズムを使わないストレート方式を採用したことが、小型化へつながっています。
DUAL FISHEYEレンズには前面が大きく張り出したモデルもありますが、RF-S7.8mm F4 STM DUALは一般的な小型RF-Sレンズに近い外観です。58mmの前面フィルターも使えるため、保護フィルターや用途に応じたフィルターを一般的なレンズと近い感覚で扱えます。
キヤノンのRF・RF-Sレンズを体系的に確認するならキヤノン大全も参考になります。
3D映像が作られる仕組み
RF-S7.8mm F4 STM DUALでは、撮影した段階で一般的な3D動画がそのまま完成するわけではありません。左右の光学系から得た映像を記録し、専用ソフトで視差や左右配置を処理し、視聴機器に合った形式へ変換することで3D映像として利用します。
1台のセンサーへ左右の映像を記録する
左右の光学系から入った像は、1台のカメラに搭載された同じ撮像センサーへ記録されます。そのため、2台のカメラで3D撮影する場合に発生する録画開始時刻のズレや、センサーごとの色味の違いを減らしやすくなります。
左右の映像はそれぞれ異なる位置から見た像なので、手前の物ほど左右の位置差が大きく、遠くの背景ほど差が小さくなります。視聴時には左右の目へ対応する映像を分けて表示することで、この差が奥行きとして感じられます。
より広い180°3D VRで同じ原理を使うレンズについてはRF5.2mm F2.8 L DUAL FISHEYEの3D VR撮影で詳しく解説しています。
0.15~0.5m付近では立体感を出しやすい
最短撮影距離は0.15mで、キヤノンはカメラから約0.15~0.5mの範囲を立体感が出やすい距離として案内しています。これはRF-S7.8mm F4 STM DUALの用途を考えるうえで非常に重要です。
遠くの山や建物だけを撮影すると、左右の視点差に対して被写体までの距離が長すぎるため、立体感は弱くなります。料理、模型、手芸、ペット、人の手などを比較的近い位置へ配置すると、手前と奥の位置差が視差として表れやすくなり、3Dらしい奥行きを作れます。
より広い画角で3D VRを撮るRF-Sモデルとの違いはRF-S3.9mm F3.5 STM DUAL FISHEYEで確認できます。
7.8mmを通常の超広角レンズとして換算しない
一般的なAPS-Cレンズなら、7.8mmに約1.6倍を掛けて約12.5mm相当と考えたくなります。しかしRF-S7.8mm F4 STM DUALでは、その考え方だけで完成映像の画角を理解することはできません。左右2つの像を1枚のセンサーへ記録する特殊なレイアウトであり、キヤノンが示す実際の3D映像の画角は約60°です。
そのため、RF-S10-18mmの10mm側よりさらに広い普通の超広角レンズとして使う製品ではありません。焦点距離表記は光学系の値であり、視聴時の画角や用途はEOS VR SYSTEM全体で判断する必要があります。
ミラーレスで特殊な広角光学系を設計しやすくする仕組みはショートバックフォーカスとはで詳しく解説しています。
対応カメラと撮影前に必要な準備
RF-S7.8mm F4 STM DUALは、RFマウントだからすべてのEOS Rへ装着すれば同じように使えるレンズではありません。EOS VR SYSTEMとして利用できるカメラは制限されており、ファームウエアやソフトウエアも対応状態へ更新する必要があります。
EOS R7・R50・R50 Vに加えてEOS R8 Mark IIにも対応する
対応カメラとして案内されているのは、EOS R7、EOS R50、EOS R50 V、EOS R8 Mark IIです。発売当初の記事や古い情報ではEOS R7やEOS R50だけが挙げられている場合がありますが、現在の対応範囲は広がっています。
ただし、RF-S表記だから対応するAPS-C機すべてでEOS VR機能を利用できるとは限りません。EOS R10やR100など、RF-Sレンズを通常装着できるカメラでも、RF-S7.8mm F4 STM DUALを使ったEOS VR撮影の対応機種として案内されていないモデルがあります。購入時はマウントが付くかだけではなく、EOS VR SYSTEMへの対応を確認する必要があります。
EOS R7の基本性能や動画機能はEOS R7の性能と魅力で詳しく紹介しています。
EOS R50は小型3D撮影システムを作りやすい
EOS R50は小型軽量なAPS-Cボディなので、約131gのRF-S7.8mm F4 STM DUALと組み合わせてもシステムが大きくなりません。机上の料理や模型、屋内での人物撮影、旅行先での短い3D動画など、機材をできるだけ簡単にしたい場合に使いやすい組み合わせです。
大型のVRリグや2台のカメラを同期させる構成と比べると、通常のミラーレスカメラにレンズを装着するだけで撮影準備を進められる点が大きく異なります。3D映像へ初めて取り組む場合にも、機材構成を理解しやすいシステムです。
EOS R50のサイズや性能についてはEOS R50の軽量コンパクトな魅力で詳しく解説しています。
EOS R50 Vは動画中心の運用と相性がいい
EOS R50 Vは動画撮影を重視した操作系を持つAPS-Cボディなので、RF-S7.8mm F4 STM DUALで3D動画を中心に作る場合に組み合わせやすいモデルです。ファインダーを省いたボディ形状や動画向けの操作系は、三脚やリグを使った撮影でも扱いやすくなっています。
3D映像では撮影後の変換工程が必要になるため、通常の静止画撮影よりワークフロー全体が重要です。撮影時のフレームレート、露出、ホワイトバランスだけでなく、変換後にどの機器で視聴するのかまで決めておくと素材を管理しやすくなります。
EOS R50 Vを写真と動画の両面から見るならEOS R50 Vの静止画性能とEOS R50との違いも参考になります。
撮影後はEOS VR Utilityなどで変換する
RF-S7.8mm F4 STM DUALは、レンズとカメラだけで最終的な視聴用3D映像まで完成するシステムではありません。撮影したデータをEOS VR UtilityやEOS VR Plugin for Adobe Premiere Proへ渡し、左右映像の処理や出力形式の変換を行います。
EOS VR Utilityで左右映像の調整と変換を行う
EOS VR Utilityでは、左右映像の入れ替え、視差補正、水平補正、再生、簡易的なカット編集などを行えます。撮影した素材をそのまま一般的な動画プレーヤーで再生して完成という流れではなく、視聴形式に合わせた変換工程を挟むことがEOS VR SYSTEMの基本です。
3D映像では左右の高さや視差に違和感があると、視聴時に疲れを感じやすくなります。撮影時にできるだけ正しく構図を作ったうえで、変換時にも水平や視差を確認する必要があります。これは通常の2D動画にはない工程です。
動画撮影全体でカメラやレンズを選ぶ基準は動画性能で差が出るカメラ選びで詳しく解説しています。
Adobe Premiere Proで編集するワークフローも使える
EOS VR Plugin for Adobe Premiere Proを利用すれば、撮影した素材をPremiere Proで扱える形式へ変換しながら編集できます。複数のカットをつないだり、音声、テロップ、BGMなどを含めた映像作品へ仕上げたい場合には、一般的な動画編集の流れへ3D変換を組み込みやすくなります。
ただし、3D映像では画面内のテロップ位置やカットの切り替えにも配慮が必要です。通常の平面映像と同じ感覚で画面端へ大量の文字を配置すると、視聴環境によって見にくくなる場合があります。まずは短いカットから制作し、実際の視聴機器で見え方を確認する方が確実です。
動画向けRF-Sレンズの操作性を比較するならRF-S14-30mm F4-6.3 IS STM PZレビューも参考になります。
Apple Vision Pro向け空間ビデオへ変換できる
RF-S7.8mm F4 STM DUALと対応カメラで撮影した映像は、EOS VR Utilityを通してApple Vision Proで視聴できる空間ビデオ向け形式へ変換できます。ここが約180°の没入型VR専用レンズとの大きな違いで、通常の動画に近い構図の中へ奥行きを加える使い方ができます。
さらに3D Theaterや3D 180°など複数の形式へ書き出せるため、視聴環境に応じて完成形を変えられます。ただし、元映像そのものの撮影画角が180°になるわけではありません。約60°で撮影した素材を対応形式へ出力するという関係を理解しておく必要があります。
EOS Rシリーズ全体の動画機能や機種構成はEOS Rシリーズ完全ガイドで確認できます。
料理・ペット・模型など近距離撮影で強みが出る
RF-S7.8mm F4 STM DUALは広大な風景をVRで見回すためのレンズより、カメラの近くにある被写体の立体感を見せる用途へ適しています。特に0.15~0.5m付近では左右の視差が分かりやすくなり、このレンズの特徴を引き出しやすくなります。
料理や手芸では手前と奥の位置関係を見せられる
料理を正面斜め上から撮影すると、手前の皿、料理、奥のグラスなどの位置関係を3Dで見せられます。通常の2D動画でも被写体の形は分かりますが、立体視では高さや奥行きまで感じやすくなります。
手芸、ペーパークラフト、模型、組み立て作業などでは、手と道具、材料の前後関係が重要です。カメラへ比較的近い位置で作業するため、RF-S7.8mmの得意距離と一致しやすく、手元を立体的に記録する用途へ向いています。
小物を大きく見せる撮影距離や倍率の基本はマクロレンズとクローズアップ撮影の基本で詳しく解説しています。
ペットや人物では背景も含めた自然な奥行きを作れる
ペットをカメラから30~50cm程度の位置へ置けば、顔、身体、背景の距離差を立体的に見せやすくなります。特に鼻先、耳、身体といった前後差のある被写体は、平面映像とは異なる見え方になります。
人物でも顔だけを極端に近づけるより、上半身や手元を含めて背景との距離を確保した方が自然な3D表現を作れます。近すぎる被写体を大きな視差で記録すると視聴時に違和感を感じる場合があるため、撮影後の視聴確認も重要です。
APS-Cボディごとの動画性能の違いはEOS RシリーズAPS-C機比較で詳しく紹介しています。
手持ちできる軽さだがカメラワークはゆっくり行う
約131gという軽さによって、三脚だけでなく手持ち撮影も現実的です。ただし、3D映像は通常の2D動画以上に急激なカメラ移動が見づらさへつながる場合があります。視聴者が奥行きを認識している状態で映像全体が大きく揺れると、違和感が強くなりやすいためです。
レンズ自体に光学式手振れ補正は搭載されていません。ボディ内手振れ補正や動画電子ISの利用可否、補正方法は使用するカメラや撮影モードによって異なるため、3D撮影では対応仕様を確認しながら使う必要があります。手持ちでは脇を締め、急なパンや上下移動を避ける方が見やすい映像を作りやすくなります。
光学式、ボディ内、電子式の補正方法の違いは電子手ぶれ補正とセンサーシフト式の違いで整理しています。
画質・AF・操作性を確認する
特殊な3Dレンズでも、撮影の基本となる光学性能、AF、絞り、操作リングは一般的なRFレンズと共通する部分があります。7群9枚の光学系へUDレンズを2枚配置し、プリズムを使わない構成で小型化と画質を両立しています。
UDレンズ2枚とストレート光学系で色にじみを抑える
3D映像では左右の映像を同時に見るため、片方だけ色にじみやフレアが大きいと違和感が目立ちます。RF-S7.8mm F4 STM DUALではUDレンズを2枚配置し、倍率色収差などを抑える設計が採られています。
さらにプリズムを使わず光を比較的まっすぐセンサーへ導く構成にすることで、プリズム面で発生する反射を減らし、フレアやゴーストを抑える方向へ設計されています。約60°という比較的限定された画角を4Kで記録するため、180°VRを同じ4Kで記録するより1°あたりへ割り当てられる画素数を増やしやすいことも特徴です。
レンズの色収差、解像力、フレアなどを判断する基本はレンズの光学性能とはで詳しく解説しています。
ギアタイプSTMで左右光学系を一体駆動する
AFにはギアタイプのSTMを採用し、左右レンズを一体的に駆動します。ワンショットAFだけでなく動画サーボAFにも対応しており、一般的なRFレンズに近い感覚でピント合わせを行えます。
特殊レンズだから常にマニュアルフォーカスが必要という製品ではなく、対応カメラのAFを利用できることは撮影負担を大きく減らします。ただしAF可能範囲には制限があり、左レンズのイメージサークル内がAF対象になります。画面内のどこでも一般レンズと同じようにAFできると考えない方が分かりやすくなります。
STMの特徴やUSMとの違いはSTMとUSMとVCMの違いで詳しく紹介しています。
左右のピント差を手動調整できる
RF-S7.8mm F4 STM DUALにはピント左右差調整モードスイッチがあり、フォーカス/コントロールリングと組み合わせて左右のピント差を調整できます。立体映像では左右の像のピント状態が大きく異なると違和感につながるため、特殊レンズならではの調整機構です。
フォーカス/コントロールリングは電子式で、カメラ側の設定によってフォーカス操作や各種設定操作へ使います。レンズ側には通常のフォーカス/コントロール切り換えスイッチがないため、使用前にカメラ側のリング設定も確認しておくと操作で迷いにくくなります。
絞り、ピント、被写界深度の関係はF値とボケ・被写界深度の基本で詳しく解説しています。
RF-S3.9mm・RF5.2mmとの違いと選び方
キヤノンのDUALレンズには複数のモデルがあり、数字だけを見ると3.9mm、5.2mm、7.8mmの焦点距離違いに見えます。しかし実際には撮影画角、対応ボディ、映像の見せ方、被写体距離が大きく異なります。
RF-S3.9mm F3.5 STM DUAL FISHEYEは広いVR向け
RF-S3.9mm F3.5 STM DUAL FISHEYEは約144°の広い画角を持ち、視聴者が周辺まで見回せる3D VR映像を作る方向のレンズです。RF-S7.8mmの約60°より大幅に広く、空間全体を見せたい撮影へ向いています。
RF-S7.8mmでは料理、ペット、手元作業など「何を見るか」を撮影者が明確に決める構図が中心ですが、RF-S3.9mmでは視聴者が周囲を見回す余地を持たせた画面作りが必要になります。同じRF-S DUALでも、通常動画に近い3DとVR寄りの3Dという違いがあります。
RF-S3.9mmの仕組みや撮影方法はRF-S3.9mm F3.5 STM DUAL FISHEYEレビューで詳しく解説しています。
RF5.2mm F2.8 L DUAL FISHEYEは180度3D VR向け
RF5.2mm F2.8 L DUAL FISHEYEはフルサイズ用のLレンズで、190°の魚眼画像を記録し、180°3D VRへ変換する本格的なVRレンズです。F2.8の明るさを持ち、対応するフルサイズEOS Rシリーズと組み合わせて高解像度のVR素材を制作できます。
一方、RF-S7.8mmは約131gと非常に軽く、約60°の3D映像を手軽に撮る方向です。RF5.2mmは視聴者を空間の中へ置く没入型VR、RF-S7.8mmは正面の被写体へ奥行きを与える3D映像と考えると役割を分けやすくなります。
フルサイズ180度VRレンズについてはRF5.2mm F2.8 L DUAL FISHEYE完全ガイドで詳しく紹介しています。
購入前は対応ボディと編集環境まで確認する
RF-S7.8mm F4 STM DUALは、通常の写真用レンズと同じ感覚で「RFマウントだから使える」と判断すると用途が合わない可能性があります。EOS VR SYSTEMとして使える対応ボディ、必要なファームウエア、EOS VR Utilityや編集環境、最終的な視聴機器まで含めて一つのシステムとして考える必要があります。
中古で購入する場合も、前玉や後玉の傷だけでなく、左右の光学系、AF、フォーカス/コントロールリング、ピント左右差調整機構などを確認します。左右の光学系が一体となった特殊レンズなので、通常の単焦点レンズ以上に動作確認が重要です。また、対応カメラが手元にない状態でレンズだけを購入しても、EOS VR機能を利用できない場合があります。
EOS RシリーズとRF-Sレンズの対応関係を含めて確認するならEOS RシリーズAPS-C機の違いと選び方が参考になります。
まとめ
RF-S7.8mm F4 STM DUALは、7.8mm F4という焦点距離と明るさだけで評価する一般的な単焦点レンズではありません。左右に2つの光学系を持ち、1台のカメラで左目用と右目用の映像を同時に記録するEOS VR SYSTEM専用の3D撮影レンズです。
完成映像の画角は約60°で、RF-S3.9mm F3.5 STM DUAL FISHEYEやRF5.2mm F2.8 L DUAL FISHEYEのような広い没入型VRとは用途が異なります。料理、手芸、模型、メイク、ペット、人物など、正面にある比較的近い被写体を自然な奥行きで見せる用途に適しています。
仕様は7群9枚、7枚羽根、最短撮影距離0.15m、最大撮影倍率0.07倍、58mmフィルター、最大径約69.2mm、全長約41.5mm、質量約131gです。特に0.15~0.5m付近では立体感を出しやすく、従来の大掛かりなステレオ撮影システムより大幅に小型な機材で3D制作を始められます。
AFにはギアタイプSTMを採用し、ワンショットAFと動画サーボAFへ対応します。左右のピント差を調整する機構も備え、2つの光学系を持つ特殊レンズでありながら、通常のEOS RシリーズとRFレンズに近い操作感を目指しています。
対応カメラはEOS R7、EOS R50、EOS R50 V、EOS R8 Mark IIで、利用時にはカメラのファームウエアや関連ソフトを対応状態へ更新する必要があります。RF-SレンズだからAPS-C EOS RすべてでEOS VR撮影ができるわけではないため、マウント互換性とEOS VR対応は分けて確認する必要があります。
撮影した素材はEOS VR UtilityやEOS VR Plugin for Adobe Premiere Proなどを使って処理し、Apple Vision Pro向け空間ビデオ、3D Theater、3D 180°など用途に応じた形式へ変換します。通常動画より撮影後の工程は増えますが、左右2台のカメラを同期させる従来型の3D撮影に比べれば、撮影機材とファイル管理を大きく簡略化できます。
RF-S7.8mm F4 STM DUALの価値は、超広角レンズとして広い写真を撮れることではなく、通常のミラーレスカメラに近い小型システムで、正面の人や物へ自然な立体感を与えられることにあります。約180°のVR空間を作りたいならDUAL FISHEYE、料理、ペット、模型、人物などを約60°の3D映像として見せたいならRF-S7.8mm F4 STM DUALというように、完成させたい映像から選ぶことが重要です。



