Canon EOS-1D X Mark IIIレビュー|連写・AF・高感度・中古選びを徹底解説
Canon EOS-1D X Mark IIIは、キヤノンのプロ向け一眼レフ「EOS-1D X」シリーズの3代目として登場したフルサイズフラッグシップです。約2010万画素という画素数だけを見ると、現在の高画素ミラーレスより控えめに見えます。しかし、このカメラが重視しているのは画素数競争ではありません。高速連写、AF追従、高感度画質、連続撮影可能枚数、耐久性、通信性能を一体化し、スポーツ、報道、野鳥、航空機などで大量の写真を確実に残すことを目的とした設計です。
光学ファインダー使用時は最高約16コマ/秒、ライブビューでは最高約20コマ/秒でAF・AE追従撮影が可能です。ファインダー撮影用には最大191点、最大155点クロスのAFシステムを備え、ライブビューではデュアルピクセルCMOS AFを使用します。さらにCFexpress Type Bのダブルスロット、約50万回の作動試験をクリアしたシャッターユニット、約2850枚のファインダー撮影可能枚数など、長時間の現場運用を前提とした仕様が随所に見られます。
EOS R3やEOS R1など高速ミラーレスが登場した現在、被写体認識や電子シャッター、ボディ内手振れ補正では新しい世代が進化しています。一方で、光学ファインダーで被写体を直接見ながら撮る感覚、EFレンズをアダプターなしで使えること、大容量バッテリーによる持続力、縦位置一体型ボディの操作性など、EOS-1D X Mark IIIにしかない性格も残っています。
この記事では、EOS-1D X Mark IIIの正確なスペックを整理したうえで、約2010万画素の画質、高感度、連写、AF、光学ファインダー、動画、堅牢性、EOS-1D X Mark IIやEOS 5D Mark IV、EOS R3との違い、中古で選ぶ際に確認したい部分まで詳しく解説します。
- EOS-1D X Mark IIIは一眼レフ時代のフラッグシップ
- 約2010万画素は高速撮影を優先した画素数
- 連写はファインダー16コマ秒、ライブビュー20コマ秒
- 191点AFとスマートコントローラーが動体撮影を支える
- 大型ボディは重量と引き換えに耐久性と操作性を得ている
- バッテリーと光学ファインダーはミラーレスにない強み
- 5.5K RAW動画まで内部記録できる一眼レフ
- EOS-1D X Mark IIとの違いは連写だけではない
- EOS 5D Mark IVとは目的が大きく違う
- EOS R3と比べると一眼レフとミラーレスの差が明確になる
- 現在EOS-1D X Mark IIIを使う意味
- EOS-1D X Mark IIIは一眼レフの完成形に近い高速フラッグシップ
EOS-1D X Mark IIIは一眼レフ時代のフラッグシップ
EOS-1D X Mark IIIは2020年2月に発売されました。EOS-1D Xシリーズは、高速連写を重視した旧EOS-1D系と、高画素フルサイズのEOS-1Ds系を統合したプロ向けラインで、初代EOS-1D X、EOS-1D X Mark IIを経てMark IIIへ発展しています。
EOS-1D X Mark IIIではセンサー、映像エンジン、AFセンサー、記録メディアなど多くの部分が刷新されました。外観は従来の1D系を受け継いでいますが、内部は一眼レフとミラーレスの両方の考え方を取り込んだ構成になっています。
EOS-1D Xシリーズ3代目として登場した
EOS-1D X Mark IIIは、キヤノンのEOS一眼レフの中で最上位に位置したモデルです。横位置と縦位置の両方で同じように操作できる一体型縦位置グリップ、視野率約100%の大型光学ファインダー、プロ用通信機能、大容量バッテリー、堅牢な外装など、1D系で長く積み重ねられてきた設計を継承しています。
一般的な一眼レフと最も違うのは、単に性能が高いことではありません。数時間から一日単位で撮影し続け、大量の画像を記録し、現場から素早く転送するという運用まで考えられています。高速連写だけを切り取って評価するより、撮影から保存、転送までを含めた一つの道具として見ると1D系の性格が分かります。
キヤノンの一眼レフ、EOS Rシリーズ、EF・RFレンズまで含めた全体構成は、キヤノン大全で確認できます。
約2010万画素・DIGIC X・CFexpressダブルスロットを採用
撮像素子は約35.9×23.9mmのフルサイズCMOSセンサーで、有効画素数は約2010万画素です。映像エンジンにはDIGIC Xを採用し、JPEG、HEIF、RAW、C-RAWに対応します。静止画では10bitのHDR PQ HEIFも記録できます。
記録媒体はCFexpress Type Bで、2スロットとも同じ規格です。SDカードとの混在ではないため、高速連写時にも高速カードを2枚使用できます。ボディサイズは約158.0×167.6×82.6mm、本体のみで約1250g、バッテリーとカードを含む状態では約1440gです。
| 項目 | EOS-1D X Mark III |
|---|---|
| 撮像素子 | フルサイズCMOS |
| 有効画素数 | 約2010万画素 |
| 映像エンジン | DIGIC X |
| 常用ISO感度 | ISO100~102400 |
| 拡張ISO感度 | ISO50相当~819200相当 |
| ファインダー連写 | 最高約16コマ/秒 |
| ライブビュー連写 | 最高約20コマ/秒 |
| ファインダーAF | 最大191点・最大155点クロス |
| 記録媒体 | CFexpress Type B×2 |
| 動画 | 5.5K RAW、4K DCI/UHD、Full HD |
| モニター | 3.2型・約210万ドット・タッチ対応 |
| 質量 | 約1440g(バッテリー・カード含む) |
EOS一眼レフの仕組みや、現在も一眼レフを使う意味については、キヤノン一眼レフの魅力と活用術で詳しく紹介しています。
約2010万画素は高速撮影を優先した画素数
現在は4000万画素、5000万画素を超えるフルサイズ機も珍しくないため、約2010万画素という数字だけを見ると少なく感じます。しかしEOS-1D X Mark IIIは、風景を巨大プリントするための高画素機ではありません。高速で動く被写体を大量に撮り、短時間で保存・選別・転送することを優先しています。
画素数を抑えることで1枚あたりのデータ量を抑えられ、連写、バッファ、高感度、保存、転送のすべてに利点があります。新聞、Web、スポーツ報道、一般的な印刷では約2000万画素でも十分な解像度があり、撮影後の処理速度まで含めると合理的な設計です。
高画素より連写と高感度を重視したセンサー設計
約2010万画素のフルサイズセンサーでは、一画素あたりの受光面積を比較的大きく確保できます。画素数だけで画質が決まるわけではありませんが、高速シャッターを多用するスポーツや野鳥ではISO感度を上げる場面が多いため、高感度時の信号品質は重要です。
実写比較でもEOS-1D X Mark IIIは高感度で良好な結果を示しており、先代EOS-1D X Mark IIと比べても高ISO域のノイズ処理と細部描写が改善しています。低ISOではダイナミックレンジも広く、RAW現像でシャドー部を持ち上げる余裕があります。
画素数、画素ピッチ、ノイズ、ダイナミックレンジがどのように関係するかは、センサー構造の進化が描写力を変えるで詳しく解説しています。
常用ISO102400まで使えることが動体撮影で効く
常用ISO感度は100~102400で、拡張設定ではISO50相当からISO819200相当まで設定できます。極端な拡張感度は常用画質を得るための設定ではありませんが、暗所で記録を残す必要がある報道用途では設定できること自体に意味があります。
スポーツ撮影では、夜間照明のスタジアムでも1/1000秒や1/2000秒といった高速シャッターが必要になります。レンズをF2.8まで開いても光量が不足すればISO感度を上げる必要があり、この場面では低ISOでの最高解像力より高ISOで破綻しにくい画質の方が重要です。
約2010万画素ならトリミング耐性では高画素機に譲りますが、撮影時点で構図を追い込み、高速連写とAFで決定的なコマを残すという1D系の考え方には合っています。ISO感度とノイズの関係については、カメラのノイズとは?写真がザラつく原因と抑える方法で詳しく紹介しています。
連写はファインダー16コマ秒、ライブビュー20コマ秒
EOS-1D X Mark IIIの連写性能で混同しやすいのが、ファインダー撮影とライブビュー撮影の速度です。光学ファインダーを使用する通常の一眼レフ撮影では最高約16コマ/秒、ライブビューでは最高約20コマ/秒となります。
ライブビューではメカシャッターだけでなく電子シャッターも使用でき、AF・AE追従で最高約20コマ/秒に対応します。一眼レフでありながら、背面モニターを使うと高速ミラーレスに近い撮影方法へ切り替わる点がEOS-1D X Mark IIIの特徴です。
光学ファインダーで最高約16コマ秒を実現する
一眼レフで16コマ/秒を実現するには、シャッターだけでなくミラーも高速で上下させる必要があります。シャッターを切るたびにミラーを上げ、撮像し、ミラーを戻して再びAFと被写体確認を行うため、電子シャッターだけで連写するミラーレスとは機械的な負荷が大きく異なります。
EOS-1D X Mark IIIは、この機械動作を繰り返しながらAIサーボAFとAEを追従させて最高約16コマ/秒を実現します。CFexpressカード使用時には、キヤノンの試験条件でJPEG、RAW、RAW+JPEGを1000枚以上連続撮影できる設定もあり、短い連写を何度も行うスポーツ撮影ではバッファをあまり意識せず撮影できます。
連写速度はシャッタースピード、絞り、使用レンズ、バッテリー残量、温度、フリッカー低減などによって低下する場合があります。高速連写を安定させる設定については、Canonカメラの連写設定と高速連続撮影で詳しく解説しています。
光学ファインダーは表示遅延なしで被写体を追える
光学ファインダーは、レンズを通った光をミラーとペンタプリズムで直接見る方式です。電子映像へ変換して表示するEVFと異なり、表示処理による遅延やリフレッシュレートを意識せず被写体を追えます。
EOS-1D X Mark IIIのファインダーは視野率約100%、倍率約0.76倍です。スポーツや飛行機など動きが速い被写体では、実際の光を見ながらフレーミングできる感覚を好む撮影者もいます。撮影直前の露出結果やホワイトバランスをファインダー内で確認できない点はEVFとの違いですが、電力消費の少なさにもつながっています。
OVFとEVFの仕組みや見え方の違いは、ファインダー越しとは カメラで見える世界と写真表現の意味で詳しく紹介しています。
ライブビューでは20コマ秒とデュアルピクセルCMOS AFを使える
ライブビューへ切り替えると、EOS-1D X Mark IIIは撮像センサーを使ってAFを行います。デュアルピクセルCMOS AFによって画面の広い範囲でピントを合わせられ、人物の顔や瞳の検出にも対応します。
手動でAF位置を選択する場合は最大3869ポジションから選択でき、自動選択では525分割を利用します。AFエリアは横方向約90%、縦方向約100%まで広がるため、光学ファインダー用AFセンサーより画面周辺へ被写体を配置しやすくなります。
この状態ではミラーを上げたまま撮影するため、一眼レフでありながら動作原理はミラーレスへ近づきます。一眼レフとミラーレスの操作や撮影方法の違いは、意外とカンタン一眼レフ|ミラーレスより難しいと思っている人へでも整理しています。
191点AFとスマートコントローラーが動体撮影を支える
光学ファインダー撮影時には新開発のHigh-res AFセンサーを使用し、最大191点、そのうち最大155点をクロス測距点として利用できます。測距点の数だけでなく、約40万画素のRGB+IR測光センサーから得た色、輝度、形状情報も被写体追尾へ利用します。
ディープラーニング技術を利用した被写体認識も導入され、人の顔や頭部を認識して追尾できます。一方、後発のEOS R3のような犬、猫、鳥、車、バイクなどを対象にした専用被写体検出までは搭載していません。ここは世代差が明確な部分です。
ファインダーAFは人の顔や頭部を追尾できる
従来の一眼レフAFでは測距点へ被写体を重ね続ける操作が重要でしたが、EOS-1D X Mark IIIでは測光センサーから得た情報も利用し、被写体認識とAF追尾を行います。特にスポーツでは、顔が一時的に横を向いたり、ヘルメットを装着したりするため、瞳だけではなく人物全体の特徴を使って追う考え方が重要です。
AF-ONボタンには「スマートコントローラー」が組み込まれています。ボタン上で親指を滑らせることでAFフレームを移動できるため、ファインダーから目を離さず測距位置を変更できます。マルチコントローラーとは異なる操作感ですが、動体を追いながらAF位置を大きく移動する場面では便利です。
後発のミラーレスでは被写体認識がさらに発展しています。EOS R3との世代差を見る場合は、EOS R3で広がる撮影の可能性でAFや高速撮影の特徴を確認できます。
光学ファインダーとライブビューでAFシステムが変わる
EOS-1D X Mark IIIは、ファインダーとライブビューで別のAFシステムを使う点が重要です。ファインダーでは専用AFセンサーによる位相差AF、ライブビューでは撮像素子上のデュアルピクセルCMOS AFを使用します。
ファインダーでは最高約16コマ/秒と光学ファインダーの即時性を利用でき、ライブビューでは画面周辺まで広がるAFエリアと瞳検出、最高約20コマ/秒を使えます。撮影者は被写体によって二つの方法を使い分けられます。
ミラーレスでは撮像センサーを常にAFにも利用するため、この二重構造はありません。EOS-1D X Mark IIIは、一眼レフの専用AFとミラーレス的な撮像面AFの両方を一台へ搭載した過渡期ならではの構成です。キヤノン一眼レフの操作やAFを含めた特徴は、Canon EOS 5D Mark IV 写真と映像を極めるカメラでも確認できます。
大型ボディは重量と引き換えに耐久性と操作性を得ている
EOS-1D X Mark IIIは約1440gあります。小型フルサイズミラーレスと比較すると非常に重く、旅行や散歩で気軽に持ち歩くタイプのカメラではありません。
一方、縦位置グリップを一体化し、大容量バッテリー、光学ファインダー、マグネシウム合金外装、通信端子、CFexpressダブルスロットを収めたプロ用ボディとして見る必要があります。EF400mm F2.8やEF600mm F4など大型望遠レンズと組み合わせると、軽いボディとは異なる安定感もあります。
約50万回のシャッター作動試験と防塵防滴構造を備える
シャッターユニットは約50万回の作動試験をクリアした設計です。16コマ/秒で連写するカメラでは、一度の撮影で数百枚、スポーツイベント一日で数千枚撮ることもあるため、一般的なカメラ以上に機械部分の耐久性が求められます。
外装にはマグネシウム合金を使用し、接合部や操作部には水滴や砂塵の侵入を抑える構造が採用されています。防水カメラではありませんが、報道、スポーツ、野外競技など撮影環境を選びにくい用途を前提とした設計です。
防塵・防滴構造の意味と、水滴を完全に防ぐ防水との違いは、風雨に負けない撮影の味方、防塵・防滴構造の魅力で詳しく解説しています。
ボディ内手振れ補正は搭載していない
EOS-1D X Mark IIIにはボディ内手振れ補正はありません。手ブレ補正を利用する場合は、ISを搭載したEFレンズ側の補正機構を使用します。
スポーツや野鳥では1/1000秒以上の高速シャッターを使う場面が多いため、静止画ではボディ内手振れ補正の有無が撮影結果を左右しにくいケースもあります。一方、夜景、静物、低速シャッター、手持ち動画では、ボディ側でも補正できるEOS R3やEOS R1の方が自由度は高くなります。
また、手ブレ補正は被写体の動きを止める機能ではありません。動く人物や鳥を止めるには十分なシャッタースピードが必要です。レンズ内ISとボディ側補正の違いについては、Canonの手ブレ補正を徹底解説で詳しく紹介しています。
バッテリーと光学ファインダーはミラーレスにない強み
EOS-1D X Mark IIIはLP-E19を使用し、ファインダー撮影では常温で約2850枚が目安となっています。ライブビューでは約610枚なので、光学ファインダーを使ったときの電力消費の少なさが分かります。
実際の撮影枚数は連写、画像確認、通信、気温などで変わりますが、一日中スポーツを撮影する場合に頻繁なバッテリー交換を減らせることは大きな利点です。EVFを常時表示するミラーレスとは根本的な電力の使い方が異なります。
長時間のスポーツ撮影では2850枚の目安が効く
プロスポーツや航空機、野鳥では、シャッターチャンスがいつ来るか分からないためカメラの電源を長時間入れたままにします。光学ファインダーは被写体を見るだけならセンサーや液晶を常時駆動する必要がなく、待機中の消費電力を抑えられます。
また、光学ファインダーは明るい屋外でも表示輝度を上げる必要がありません。直射日光下のスポーツ撮影ではEVFの見え方を調整する必要がある場合がありますが、光学ファインダーでは実際の光をそのまま見ます。
一眼レフの光学ファインダー、バッテリー持続時間、EFレンズ資産を含めた現在の使い方は、キヤノン一眼レフの魅力と活用術でも詳しく紹介しています。
固定式液晶はローアングル撮影では弱点になる
背面モニターは3.2型、約210万ドットのタッチパネルですが、バリアングルやチルトには対応していません。目線より低い位置や高い位置でライブビュー撮影を行う場合は、画面を正面から見にくくなります。
スポーツカメラでは可動機構を減らすことで堅牢性を確保する考え方もありますが、現在のEOS Rシリーズでは可動液晶が一般的です。地面近くから野鳥を撮る、頭上から群衆越しに撮る、動画で自分側へ画面を向けるといった用途では明確な世代差があります。
一眼レフとミラーレスの操作性や構造上の違いを確認する場合は、意外とカンタン一眼レフも参考になります。
5.5K RAW動画まで内部記録できる一眼レフ
EOS-1D X Mark IIIは静止画だけのカメラではありません。5.5K RAW動画をカメラ内で記録でき、4K DCI、4K UHD、Full HDにも対応します。一眼レフのフラッグシップでありながら、動画機としてもかなり本格的な仕様です。
外部マイク端子、ヘッドフォン端子、Canon Log、HDMI出力なども備え、映像制作を意識した構成になっています。一眼レフ時代の1D系としては、静止画と動画を一台で扱うハイブリッド性が大きく高まりました。
5.5K RAWと4K60pに対応する
動画は5.5K RAWの内部記録に対応し、4K DCIと4K UHDでは最高約60p、Full HDでは最高約120pまで使用できます。RAW動画はファイル容量が非常に大きくなりますが、編集時に色や階調を追い込む用途では大きな余裕があります。
Canon Logも利用できるため、撮影時の見た目を完成形にせず、編集段階で色を作る映像制作にも対応します。静止画主体の一眼レフに動画機能を追加しただけの構成ではなく、本格的な映像素材を収録できるところまで進化しています。
静止画カメラを使った動画制作やフレームレートの考え方は、カメラを使った動画制作の基本で詳しく紹介しています。
CFexpressダブルスロットが高速連写と高ビットレート動画を支える
EOS-1D X Mark IIIがCFexpress Type Bを2枚使用する理由は、単なる容量確保ではありません。16コマ/秒、20コマ/秒のRAW連写や5.5K RAW動画では非常に大きなデータが連続して発生するため、カードへの書き込み性能が撮影性能へ直接影響します。
高速カードを使用するとバッファからカードへの排出が速くなり、連写後に次の撮影へ移りやすくなります。2スロットあるため、同時記録、振り分け記録、カードを切り替えながらの運用にも対応できます。
高ビットレート動画ではカードごとに対応可能な記録形式が異なる場合があるため、単にCFexpress Type Bなら何でも同じという考え方はできません。バッファと記録メディア、動画データ量の関係については、動画撮影の熱停止とバッファ制限で詳しく解説しています。
EOS-1D X Mark IIとの違いは連写だけではない
先代EOS-1D X Mark IIも約2020万画素のフルサイズ一眼レフであり、数字だけを見るとMark IIIとの違いは小さく見えます。しかし実際には映像エンジン、AF、ライブビュー、記録媒体、高感度、動画、通信など多くの部分が変更されています。
Mark IIから16コマ秒・20コマ秒へ高速化した
EOS-1D X Mark IIはファインダー撮影で最高約14コマ/秒、ライブビューでは最高約16コマ/秒でした。Mark IIIではそれぞれ最高約16コマ/秒、約20コマ/秒へ高速化しています。
さらにMark IIIはCFexpressを2スロット採用し、連続撮影可能枚数も大きく増えています。単に一秒あたりの枚数を増やすだけでなく、長い連写を維持する方向へ進化した点が重要です。
AFも61点から最大191点へ変わり、被写体認識、スマートコントローラー、ライブビューでの瞳検出などが加わりました。先代の位置付けと性能は、EOS-1D X Mark II 信頼と画質を両立する動体撮影のための本格一眼レフで確認できます。
EOS 5D Mark IVとは目的が大きく違う
同じキヤノンEFマウントのフルサイズ一眼レフでも、EOS 5D Mark IVとは方向性が異なります。5D Mark IVは約3040万画素で、EOS-1D X Mark IIIより高い解像度を持ちます。一方、連写は最高約7コマ/秒で、縦位置グリップは一体型ではありません。
高画素なら5D Mark IV、高速撮影なら1D X Mark IIIという性格
風景、商品、建築、スタジオ、トリミングを多用する撮影では、約3040万画素の5D Mark IVが扱いやすい場面があります。ボディも1D X Mark IIIより小さく軽いため、日常的な携帯性では有利です。
一方、スポーツ、野鳥、報道では1D X Mark IIIの連写、バッファ、AF、バッテリー、耐久性が生きます。同じフルサイズEF一眼レフでも「どちらが上」という単純な関係ではなく、撮影目的に合わせて設計思想が異なります。
EOS 5D Mark IVの画素数や連写、AF、動画性能は、Canon EOS 5D Mark IV 写真と映像を極めるカメラで詳しく紹介しています。
EOS R3と比べると一眼レフとミラーレスの差が明確になる
EOS R3はEOS-1D X Mark IIIの後に登場した縦位置一体型の高速フルサイズミラーレスです。両機はスポーツ、報道、野鳥など対象とする撮影分野が近いため、世代交代を理解するうえで比較しやすい組み合わせです。
R3は30コマ秒・被写体認識・ボディ内手振れ補正へ進化した
EOS R3は約2410万画素の積層型CMOSセンサーを搭載し、電子シャッターで最高約30コマ/秒に対応します。人物だけでなく犬、猫、鳥、モータースポーツなどの被写体検出にも対応し、ボディ内手振れ補正も搭載しています。
一方、EOS-1D X Mark IIIには光学ファインダーがあります。高速連写中でも実際の光景を光学的に見られ、ファインダー撮影時の電池持続時間も長くなります。また、EFレンズを直接装着できるため、長年蓄積したEF超望遠レンズをアダプターなしで使えます。
本体のみの質量はEOS R3が約822g、EOS-1D X Mark IIIが約1250gなので、ミラーレス化による軽量化も大きな違いです。EOS R3の詳しい性能については、EOS R3で広がる撮影の可能性で紹介しています。
現在EOS-1D X Mark IIIを使う意味
高速ミラーレスが進化したことで、連写速度や被写体認識だけを見ればEOS Rシリーズの上位機が先へ進んでいます。そのためEOS-1D X Mark IIIを選ぶ理由は、単純に「一番速いキヤノンだから」ではなくなっています。
現在このカメラを選ぶ意味は、光学ファインダー、EFマウント、大容量バッテリー、1D系の操作性、一眼レフとしての堅牢性を必要とするかどうかにあります。
EFレンズを直接使える最後期のプロ用ボディとして価値がある
EOS-1D X Mark IIIはEFマウントなので、EF24-70mm F2.8L II USM、EF70-200mm F2.8L IS III USM、EF300mm F2.8L、EF400mm F2.8L、EF500mm F4L、EF600mm F4Lなど、一眼レフ時代に蓄積された膨大なEFレンズを直接装着できます。
EOS RシリーズでもEF-EOS Rアダプターを使えばEFレンズを利用できますが、1D X Mark IIIではアダプター分の長さや接点が増えません。特に大型超望遠をすでに所有している場合、EFマウントのまま使い続けるという選択には機材全体で見る意味があります。
EFレンズの焦点距離、ズーム、単焦点、中古での選び方は、Canon EFレンズ一覧|焦点距離・種類別に選び方とおすすめを解説で確認できます。
中古ではシャッター回数だけでなくボディ全体を見る
EOS-1D X Mark IIIは約50万回のシャッター作動試験をクリアしていますが、中古個体の状態を50万回という数字だけで判断することはできません。スポーツ現場で大量に連写された個体では、シャッターだけでなくミラー駆動、ボタン、ダイヤル、縦位置操作部、カードスロット、端子カバーなども長時間使われています。
確認できる場合はシャッター回数やシャッターユニット交換歴を見ます。さらに高速連写を実際に行い、連写テンポが不自然に乱れないか、CFexpressカードへ正常に記録できるか、AFが近距離から遠距離まで安定して動くかを確認すると状態を把握しやすくなります。
スマートコントローラー、AF-ONボタン、縦位置シャッター、マルチコントローラーは1D X Mark IIIで頻繁に使われる部分なので、反応も重要です。LP-E19は劣化度をカメラで確認できるため、付属バッテリーの状態も見ておくと実際の追加費用を読みやすくなります。
1D系のシャッター耐久と中古で見るべき部分については、EOS-1D Xのシャッター耐久性能と中古で見るべきポイントで詳しく解説しています。
EOS-1D X Mark IIIは一眼レフの完成形に近い高速フラッグシップ
EOS-1D X Mark IIIは、約2010万画素のフルサイズCMOSセンサーとDIGIC Xを組み合わせ、光学ファインダーで最高約16コマ/秒、ライブビューで最高約20コマ/秒を実現したプロ向け一眼レフです。ファインダー撮影では最大191点・最大155点クロスのAF、ライブビューではデュアルピクセルCMOS AFを使用し、一眼レフとミラーレス双方の撮影方法を一台にまとめています。
約2010万画素という数字は高画素競争を狙ったものではなく、高速連写、高感度、バッファ、転送速度を重視したものです。スポーツや報道では高速シャッターによってISO感度が上がりやすいため、高画素より高感度での安定性や大量の画像を処理できることが重要になります。
さらにCFexpress Type Bのダブルスロット、約50万回のシャッター作動試験、約2850枚のファインダー撮影可能枚数、マグネシウム合金を使用した大型ボディ、有線LANなど、撮影現場で長時間使い続けるための仕様が揃っています。5.5K RAWや4K60p動画にも対応し、静止画専用機に近かった過去の高速一眼レフとは異なるハイブリッド性も持っています。
一方、約1440gという重量、固定式背面液晶、ボディ内手振れ補正なし、人物以外の高度な被写体認識を持たないことなどは、EOS R3やEOS R1と比べると世代差が表れます。電子シャッター連写や自動認識を重視する場合は新しいミラーレスの方が機能は豊富です。
それでも、光学ファインダーで実際の被写体を直接追う感覚、EFレンズを直接使えること、大容量バッテリー、1D系の縦位置一体型操作、シャッターやミラーを含めた機械としての一眼レフを求める場合、EOS-1D X Mark IIIには現在も明確な個性があります。一眼レフ時代のキヤノンが積み上げた高速撮影技術を一台へ集約したモデルとして、単なる旧型機では片付けられない存在です。



