春の訪れを告げる安行寒桜を見に行くなら、カメラとレンズの選択が作品の印象を左右します。今回はEOS R5とEF85mm F1.2L USMを使い、北浅羽桜堤公園での撮影に挑みました。ミラーレスの高解像力と大口径レンズの豊かなボケ表現を活かすことで、桜のやわらかな空気感や自然な光の揺らぎを写し取ることができます。この記事では、撮影環境や設定の工夫を交えながら、EFレンズの魅力を最大限に引き出すポイントを具体的に解説します。
EOS R5とEF85mm F1.2L USM 北浅羽桜堤公園で安行寒桜を楽しむ春の撮影レビュー
EOS R5 EF85mm F1.2L USM F2.8 1/5000秒 ISO 100
EF85mm F1.2L USMの描写力をEOS R5で活かすためには、開放絞りの特性やフォーカスの精度を把握しておくことが重要です。とくに背景が複雑になりがちな公園での撮影では、構図の取り方や絞り設定の違いが写真の印象を大きく変えます。高解像センサーとの組み合わせにより、花びらの縁や空気の透明感を損なうことなく写し出せるのがこのシステムの強みです。安行寒桜をより印象的に撮るための工夫を、実際の撮影体験をもとに紹介していきます。
安行寒桜と春の一日
EOS R5 EF85mm F1.2L USM F4 1/320秒 ISO 100
- 桜撮影の難しさと天候の影響
- 北浅羽桜堤公園と安行寒桜の魅力
- 当日の撮影状況と機材構成
桜撮影の難しさと天候の影響
EOS R5 EF85mm F1.2L USM F1.2 1/2500秒 ISO 100
桜というのは、本当に難しい被写体です。特にソメイヨシノは、あと少しで満開になりそうだからと撮影を控えていると、「今だ!」と思ったときにはすでに散ってしまっている、ということもよくあります。また、桜の季節は天候も不安定で、晴れるのを待っているうちに花が終わってしまうこともあります。
河津桜や、今回撮影に訪れた安行寒桜のように、比較的開花期間の長い桜なら少し余裕があるはずなのですが、今年はちょうど天候不順と重なってしまいました。
今回は、早朝から撮影に出かけたのですが、肝心の桜は辛うじて「撮り方次第では咲いているように見える」といった状況でした。
北浅羽桜堤公園と安行寒桜の魅力
EOS R5 EF85mm F1.2L USM F2.8 1/640秒 ISO 100
北浅羽桜堤公園の安行寒桜は、平成12年(2000年)から整備が進められてきたようです。越辺川の堤防下に2列に並んで植えられており、綺麗に刈り払われた草地の上を歩きながら、桜を楽しむことができます。全体の長さはおよそ2kmほどで、ゆっくり歩いて30分ほどの散策にちょうど良い距離です。
川の流れに沿って堤防がゆるやかにカーブしているため、桜並木も自然な曲線を描いています。そのため、アングルを工夫すれば、手前から奥まで桜の連なりを活かして、美しく撮影することができます。また、堤防の上はサイクリングロードになっており、上から見下ろすような構図で眺めることも可能です。
安行寒桜の鮮やかなピンクに加え、スイセンやアブラナの黄色い花が加わると、春らしさが一層引き立つと感じています。花の色の組み合わせが柔らかく、ファインダー越しに見える風景がとても華やかです。
当日の撮影状況と機材構成
EOS R5 EF85mm F1.2L USM F4 1/1600秒 ISO 100
当日は早朝に現地へ向かいましたが、花はほとんど散っていて、撮影目的の人の姿は見られませんでした。土手の上をランニングしている人が数人いるだけという静かな雰囲気でした。朝は深い霧が立ち込めており、「幻想的に写せるかもしれない」と思ったものの、あまりにも濃すぎて幻想的というより視界不良という印象でした。ただ、陽が昇るにつれて徐々に霧が晴れ、光が差し込み始めると、桜が次第に美しく見えるようになっていきました。
この日はEOS R5にEF85mm F1.2(I型)を装着して撮影を行いました。このレンズは以前にも同じ場所で使ったことがあり、その描写力に感動したため、今回も迷わず選びました。また、メジロが現れるかもしれないと考えて、リュックにはRF100-500mm F4.5-7.1 L IS USMを用意していましたが、今回は出番がありませんでした。
今回の撮影機材
EOS R5 EF85mm F1.2L USM F2 1/3200秒 ISO 100
- EOS R5
- EF85mm F1.2L USM
- RF100-500mm F4.5-7.1 L IS USM
EOS R5
EOS R5は有効約4500万画素のフルサイズCMOSセンサーを搭載し、高解像と高速連写を両立したミラーレスカメラである。デュアルピクセルCMOS AF IIによる高精度なオートフォーカス機能に加え、最大8段分のボディ内手ブレ補正も備えており、静止画・動画の両面で高い性能を発揮する。電子ビューファインダーは約576万ドットで、表示の滑らかさと解像感に優れ、光学ファインダーからの移行も自然に行える設計となっている。連写性能は電子シャッターで最大20コマ/秒、メカシャッターで最大12コマ/秒に対応しており、動体撮影にも対応可能である。動画は8K 30pのRAW記録や4K 120pに対応しており、映像作品制作にも十分なスペックを持っている。デュアルカードスロットを搭載し、CFexpressとSD UHS-IIの両方をサポートすることで、記録形式に柔軟性を持たせている。操作性は一眼レフに近く、グリップ形状やボタン配置も手に馴染みやすい構成となっており、RFレンズとの親和性を最大限に活かせる設計が施されている。

EF85mm F1.2L USM
EF85mm F1.2L USMはキヤノンのEFマウントを代表する大口径中望遠単焦点レンズであり、開放F1.2という明るさと柔らかく美しいボケ味が特長である。9枚羽根の円形絞りにより自然なボケ描写を実現し、被写体を際立たせる立体的な表現が可能となる。レンズ構成には高屈折率レンズを含む8群9枚を採用し、色収差を抑えながら高い解像力を確保している。USM(超音波モーター)によるオートフォーカスは静音性と精度に優れ、ポートレートや静物撮影での使用に適している。最短撮影距離は95cmで、近接撮影にも柔軟に対応できる設計となっている。レンズ径と重量はやや大きく、携帯性には難があるものの、その描写性能の高さから撮影意図を明確に伝える表現力を求めるユーザーには高く評価されている。マニュアルフォーカスリングも滑らかな操作感があり、精密なピント合わせが可能である。

RF100-500mm F4.5-7.1 L IS USM
RF100-500mm F4.5-7.1 L IS USMは、キヤノンRFマウント用の超望遠ズームレンズであり、100mmから500mmまでの焦点距離をカバーする高倍率ズームである。Lレンズならではの堅牢性と高描写性能を備えつつ、軽量かつコンパクトに仕上げられており、野鳥やスポーツなどの長距離撮影に適している。レンズ構成にはUDレンズとスーパーUDレンズが使用され、色収差やフリンジの発生を効果的に抑制しながら、ズーム全域で高い解像力を維持する。手ブレ補正効果は最大5段分に対応しており、動きのある被写体や望遠撮影においても手持ちで安定した撮影が可能である。デュアルナノUSMによるAF駆動は、高速かつ静粛で追従性も高く、EOS Rシリーズのカメラと組み合わせることで被写体認識AFと連動して高精度なピント合わせを実現する。ズームリングのトルク調整機構や滑らかな操作性も評価されており、幅広いシーンに対応する柔軟性の高いレンズである。

北浅羽桜堤公園とは?完全ガイド
EOS R5 EF85mm F1.2L USM F1.2 1/8000秒 ISO 100
- 概要
- 歴史
- アクセス
概要
EOS R5 EF85mm F1.2L USM F1.2 1/4000秒 ISO 100
北浅羽桜堤公園は埼玉県坂戸市を流れる越辺川の堤防沿いに広がる桜の名所で、安行寒桜が約2kmにわたり二列に植えられています。整備された芝生の上を歩きながら桜を楽しむことができ、散策路としても人気があります。開花時期は2月下旬から3月中旬にかけてで、他の桜よりも一足早く見頃を迎えるため、春の訪れを告げるスポットとして知られています。堤防のカーブに沿って続く桜並木は、撮影アングルによって奥行きや流れを感じさせる構図が生まれやすく、写真愛好家にも親しまれています。また、堤防の上はサイクリングロードとして整備されており、上からの眺望を楽しむこともできます。早咲きの桜とともにスイセンやアブラナの黄色い花が咲き、鮮やかな色のコントラストも魅力のひとつです。
歴史
EOS R5 EF85mm F1.2L USM F2 1/8000秒 ISO 100
北浅羽桜堤公園に植えられている安行寒桜は、2012年ごろから地域住民や行政の協力によって整備が進められたもので、もともとは水防施設としての堤防に季節の彩りを添える目的で始まりました。安行寒桜は埼玉県川口市で育成された品種で、早咲きかつ耐寒性に優れ、花付きも良いため、地域の花木として注目されてきました。坂戸市では、この品種を活用しながら地域振興や観光資源としての整備を進め、現在では県内でも有数の早春の花見スポットとして認知されています。地域イベントや撮影会も不定期に開催されており、観光名所というよりも地元に根ざした静かな花の道として親しまれています。
アクセス(日本全国各地主要都市より)
①航空機でのアクセス
- 北海道(新千歳空港):新千歳空港 → 羽田空港 → 京急線 品川駅 → JR山手線 池袋駅 → 東武東上線 坂戸駅または北坂戸駅 → 川越観光バス「今西」下車 → 徒歩
- 東北(仙台空港):仙台空港 → 羽田空港 → 京急線 品川駅 → JR山手線 池袋駅 → 東武東上線 坂戸駅または北坂戸駅 → 川越観光バス「今西」下車 → 徒歩
- 北陸(小松空港):小松空港 → 羽田空港 → 京急線 品川駅 → JR山手線 池袋駅 → 東武東上線 坂戸駅または北坂戸駅 → 川越観光バス「今西」下車 → 徒歩
- 中部(中部国際空港):中部国際空港 → 羽田空港 → 京急線 品川駅 → JR山手線 池袋駅 → 東武東上線 坂戸駅または北坂戸駅 → 川越観光バス「今西」下車 → 徒歩
- 近畿(関西国際空港):関西国際空港 → 羽田空港 → 京急線 品川駅 → JR山手線 池袋駅 → 東武東上線 坂戸駅または北坂戸駅 → 川越観光バス「今西」下車 → 徒歩
- 中国(広島空港):広島空港 → 羽田空港 → 京急線 品川駅 → JR山手線 池袋駅 → 東武東上線 坂戸駅または北坂戸駅 → 川越観光バス「今西」下車 → 徒歩
- 四国(松山空港):松山空港 → 羽田空港 → 京急線 品川駅 → JR山手線 池袋駅 → 東武東上線 坂戸駅または北坂戸駅 → 川越観光バス「今西」下車 → 徒歩
- 九州(福岡空港):福岡空港 → 羽田空港 → 京急線 品川駅 → JR山手線 池袋駅 → 東武東上線 坂戸駅または北坂戸駅 → 川越観光バス「今西」下車 → 徒歩
- 沖縄(那覇空港):那覇空港 → 羽田空港 → 京急線 品川駅 → JR山手線 池袋駅 → 東武東上線 坂戸駅または北坂戸駅 → 川越観光バス「今西」下車 → 徒歩
②新幹線でのアクセス
- 北海道(新函館北斗駅):新函館北斗駅 → 東京駅(東北・北海道新幹線)→ JR山手線 池袋駅 → 東武東上線 → 坂戸駅または北坂戸駅 → 川越観光バス「今西」下車 → 徒歩
- 東北(仙台駅):仙台駅 → 東京駅(東北新幹線)→ JR山手線 池袋駅 → 東武東上線 → 坂戸駅または北坂戸駅 → 川越観光バス「今西」下車 → 徒歩
- 北陸(富山駅・金沢駅):富山駅・金沢駅 → 東京駅(北陸新幹線)→ JR山手線 池袋駅 → 東武東上線 → 坂戸駅または北坂戸駅 → 川越観光バス「今西」下車 → 徒歩
- 中部(名古屋駅):名古屋駅 → 東京駅(東海道新幹線)→ JR山手線 池袋駅 → 東武東上線 → 坂戸駅または北坂戸駅 → 川越観光バス「今西」下車 → 徒歩
- 近畿(新大阪駅):新大阪駅 → 東京駅(東海道新幹線)→ JR山手線 池袋駅 → 東武東上線 → 坂戸駅または北坂戸駅 → 川越観光バス「今西」下車 → 徒歩
- 中国(広島駅):広島駅 → 東京駅(東海道・山陽新幹線)→ JR山手線 池袋駅 → 東武東上線 → 坂戸駅または北坂戸駅 → 川越観光バス「今西」下車 → 徒歩
- 九州(博多駅):博多駅 → 東京駅(東海道・山陽新幹線)→ JR山手線 池袋駅 → 東武東上線 → 坂戸駅または北坂戸駅 → 川越観光バス「今西」下車 → 徒歩
③電車でのアクセス
- 東武東上線「坂戸駅」北口 → さかっちワゴン にっさい線「今西」下車 → 徒歩約5分
- 東武東上線「北坂戸駅」西口 → 川越観光バス 入西団地循環線 または ニューシティにっさい入口行き「今西」下車 → 徒歩約10分
④バスでのアクセス
- 川越観光バス「今西」バス停 → 徒歩約10分(入西団地循環線・ニューシティにっさい入口行き)
- さかっちワゴン にっさい線「今西」バス停 → 徒歩約5分
⑤車でのアクセス
- 関越自動車道「坂戸西スマートIC」から車で約10分
- 駐車場:常設駐車場あり(約80台)/桜の季節は臨時駐車場(約550台)も開設される
まとめ
EOS R5 EF85mm F1.2L USM F1.2 1/8000秒 ISO 100
EOS R5とEF85mm F1.2L USMの組み合わせは、北浅羽桜堤公園に咲く安行寒桜の撮影において、その描写力と柔らかいボケ味が最大限に活かされる構成でした。特に背景を大きくぼかすことで主題の花を際立たせることができ、絞り開放時の立体感ある描写は大口径レンズならではの魅力です。EOS R5の高解像センサーが、細かい花びらの輪郭や色の階調を正確に捉え、後処理なしでも印象的な写真に仕上がります。公園の緩やかなカーブを活かした構図や、朝の光が差し込むタイミングを狙うことで、さらに印象的な画を生み出すことができました。高性能機材を使いこなすだけでなく、現場での光と構図の選び方が写真の仕上がりに直結するという点を実感できる撮影体験となりました。