Canon EF85mm F1.2L USMレビュー|初代85mm F1.2Lの描写・使い方・II型との違い
Canon EF85mm F1.2L USMは、1989年9月に発売されたEFマウントの大口径中望遠単焦点レンズです。85mmという人物撮影で使いやすい焦点距離に開放F1.2という非常に明るい光学系を組み合わせ、後のEF85mm F1.2L II USM、さらにRF85mm F1.2 L USMへと続くキヤノン85mm F1.2シリーズの原点となりました。
現在のレンズと比較するとAF速度は速くなく、重量も約1025gあります。それでも、85mm F1.2による非常に浅い被写界深度、7群8枚という比較的シンプルな光学構成、研削非球面レンズとフローティング機構を組み合わせた設計には、現在でも撮影に持ち出す理由があります。
特にポートレートでは、単に背景をぼかすだけでなく、瞳から髪、肩、背景へとピントが滑らかに外れていくことで、人物を立体的に見せることができます。F1.2を使いこなすには、絞りを開けばよいというだけでは足りません。被写体との距離、背景までの距離、ピント位置、シャッタースピードまで含めて撮影方法を組み立てる必要があります。
この記事では、初代EF85mm F1.2L USMの基本仕様、II型との違い、F1.2を生かした具体的な撮り方、AFとマニュアルフォーカスの使い分け、EOS Rシリーズでの使用方法、中古で選ぶ際の確認点まで詳しく解説します。
EF85mm F1.2L USMとはどのようなレンズか
- 1989年に登場した初代85mm F1.2L
- 7群8枚の光学系とF1.2の大口径
- 約1025gの重量と0.95mの最短撮影距離
1989年に登場した初代85mm F1.2L
EF85mm F1.2L USMは1989年9月に発売されました。EFマウントが登場したのは1987年なので、EFシステムのかなり初期から存在したLレンズです。
焦点距離は85mm、開放F値はF1.2です。フルサイズで85mmを使うと、50mmより画角が狭くなり、人物から少し距離を取って撮影できます。顔を極端に誇張しにくく、背景を整理しやすいため、ポートレートで長く使われてきた焦点距離です。
85mmより長い135mmや200mmでも人物撮影はできますが、撮影者がさらに後ろへ下がる必要があります。逆に50mmでは周囲の背景が多く写ります。85mmは人物の存在感を保ちながら、背景を適度に整理しやすい位置にあります。
そこへF1.2を組み合わせたのがEF85mm F1.2L USMです。単に暗い場所で撮れるレンズとして設計されたものではなく、85mmとF1.2によって非常に浅い被写界深度を作れることが大きな特徴です。
キヤノンのEFレンズを焦点距離や種類から確認したい場合は、キヤノン大全も参考になります。
7群8枚の光学系とF1.2の大口径
EF85mm F1.2L USMのレンズ構成は7群8枚です。高精度の非球面レンズを使用し、さらにフローティング機構を採用することで、撮影距離の変化による収差を補正しています。
現在の大口径レンズでは10枚を大きく超えるレンズを使用する製品も多く、RF85mm F1.2 L USMも初代EF85mmとは大きく異なる構成です。初代は8枚という比較的少ない枚数で85mm F1.2を成立させています。
開放F1.2では被写界深度が非常に浅くなります。人物の瞳へピントを合わせた場合、撮影距離によっては耳がすでに大きくぼけます。顔を斜めに向ければ、手前の瞳と奥の瞳でさえ同じピント範囲に収まらない場合があります。
この性質は扱いにくさにもなりますが、EF85mm F1.2L USMを使う最大の理由でもあります。写真全体を均一に鮮明にするのではなく、どこを見せ、どこからぼかすかを撮影者が決められます。
絞りと被写界深度の関係については、F値を知れば広がるカメラの世界でも詳しく解説しています。
約1025gの重量と0.95mの最短撮影距離
最大径は91.5mm、全長は84mm、重量は約1025gです。長さだけを見ると比較的短いレンズですが、1kgを超えるため、実際に持つと非常に密度の高いレンズだと分かります。
フィルター径は72mm、最短撮影距離は0.95m、最大撮影倍率は0.11倍です。現在の85mmレンズの中にはさらに近距離まで寄れる製品がありますが、初代EF85mm F1.2L USMは近接撮影を主目的としたレンズではありません。
顔を大きく写そうとして前へ出すぎると、0.95mより内側ではピントが合いません。その場合は一度後ろへ下がり、必要なら撮影後に少しトリミングします。
ポートレートでは最短撮影距離だけを見るのではなく、被写体との距離によって顔の見え方や背景の入り方も変わります。85mmの特徴を生かすなら、被写体へ必要以上に近づかず、少し離れた位置から構図を作る方法が使いやすくなります。
焦点距離と撮影距離の関係は、焦点距離で変わる写真表現も参考になります。
85mm F1.2だから作れる写真
- 人物を背景から大きく分離できる
- ピント面からボケへ滑らかにつなげられる
- 暗い場所でも高速シャッターを使いやすい
人物を背景から大きく分離できる
85mm F1.2の大きな特徴は、人物と背景を分離しやすいことです。背景に木、建物、フェンス、看板などがある場所でも、撮影条件を整えれば背景を大きくぼかし、人物だけを浮かび上がらせることができます。
ここで重要なのは、F1.2だけに頼らないことです。人物のすぐ後ろに壁がある場合、F1.2でも壁の模様は残ります。人物を背景から離し、さらに撮影者も85mmで構図を作れる位置まで下がることで、背景は大きくぼけます。
例えば公園で人物を撮る場合、木の幹のすぐ前に立ってもらうより、木々から数m以上離れた場所に立ってもらいます。撮影者はそこからさらに距離を取り、85mmで上半身や全身を切り取ります。
「F1.2を使う」だけで終わらず、「被写体と背景を離す」という操作を加えることで、大口径85mmらしい写真を安定して作れるようになります。
背景との距離や整理方法については、背景処理で写真の印象を変える撮影テクニックも参考になります。
ピント面からボケへ滑らかにつなげられる
ポートレートでF1.2を使う場合、背景だけを見るのではなく、人物自身のどこまでピントを残すかを考えます。
正面を向いている人物なら、左右の瞳までの距離が近いため、F1.2でも両目を比較的合わせやすくなります。顔が斜めになるほど左右の瞳までの距離差が大きくなり、手前の目に合わせると奥の目がぼけやすくなります。
そのため、人物の顔の角度に合わせて絞りを変えます。真正面ならF1.2、少し斜めならF1.4からF1.8、顔全体をより確実に残したいならF2程度まで絞るという使い方ができます。
F1.2を所有しているから常にF1.2で撮る必要はありません。開放を使えることが重要なのであり、撮影目的に応じてF1.4やF2を選べることも大口径レンズの利点です。
ピント位置によって写真の印象を変える方法は、ピントが作品力を左右する 写真表現を変える焦点操作でも解説しています。
暗い場所でも高速シャッターを使いやすい
F1.2の利点はボケだけではありません。取り込める光が多いため、暗い場所でもシャッタースピードを確保しやすくなります。
室内ポートレートでは、人物が座っていても完全に静止しているわけではありません。表情が変わり、顔が動き、髪や身体もわずかに動きます。手ブレを防げても被写体が動けば写真はぶれます。
85mmで人物を撮るなら、静かな場面でも1/160秒から1/250秒程度を一つの出発点にできます。人物が歩いているなら1/500秒以上、動きが大きいなら1/800秒や1/1000秒まで上げます。
光量が不足する場合は、ISO感度を上げる前にF1.2の明るさを利用できます。それでも不足すればISO感度を上げます。低ISOにこだわってシャッタースピードを下げるより、必要なシャッタースピードを確保することが人物撮影では重要です。
シャッタースピードと被写体ブレについては、シャッタースピードで変わる写真表現も参考になります。
EF85mm F1.2L USMでポートレートを撮る方法
- 最初に撮影距離と背景を決める
- 瞳へ正確にピントを合わせる
- F1.2・F1.8・F2を撮り分ける
最初に撮影距離と背景を決める
EF85mm F1.2L USMで人物を撮る場合、最初に絞りを設定するより、撮影する位置を決める方が写真を作りやすくなります。
まず人物をどこに立たせるか決めます。次に、その後ろに何があるかを確認します。背景を大きくぼかしたい場合は、人物と背景の距離をできるだけ取ります。
その後、撮影者が後ろへ下がりながら85mmで構図を整えます。顔だけを撮るのか、上半身なのか、全身なのかによって必要な距離は変わります。
この順序で場所を決めてからF1.2やF1.8を選ぶと、単に背景がぼけているだけの写真ではなく、背景の色や形まで計算したポートレートを作りやすくなります。
人物撮影の構図については、ポートレート写真を変える機材と撮影テクニックも参考になります。
瞳へ正確にピントを合わせる
F1.2で最も難しいのがピントです。人物撮影では、基本的にカメラに近い側の瞳へピントを合わせます。
一眼レフを使う場合、中央のAFポイントで合わせたあと大きくカメラを振って構図を変える方法は、F1.2ではピント位置がずれることがあります。完成する構図に近いAFポイントを選び、その位置で瞳へ合わせる方が確実です。
撮影後は背面モニターで瞳を拡大します。まつ毛だけが鮮明で瞳がわずかに外れている場合や、眉へピントが移っている場合もあります。
一枚だけ撮って終わらず、同じ構図で数枚撮影することも有効です。F1.2では人物自身のわずかな前後移動でもピント位置が変化するためです。
AFの仕組みとUSMについては、USMの仕組みと種類を知るも参考になります。
F1.2・F1.8・F2を撮り分ける
EF85mm F1.2L USMを初めて使う場合、同じ構図で絞りだけを変更して撮影すると特徴を理解しやすくなります。
まずF1.2で撮影します。次にF1.8、最後にF2程度で撮ります。撮影後に瞳、耳、髪、肩、背景を順番に比較します。
F1.2では瞳の存在感が強くなり、背景は大きくぼけます。一方で人物の情報も急速にぼけていきます。F1.8からF2では顔の情報を残しながら背景を十分にぼかせる場面が増えます。
撮影する人物、顔の角度、背景との距離によって最適な絞りは変わります。この比較を数回行うと、撮影現場で「今回はF1.2」「今回はF2」と判断しやすくなります。
ボケの量と描写を調整する考え方は、描写力とボケ表現の秘密も参考になります。
屋外・室内・逆光での具体的な設定
- 屋外では高速シャッターを優先する
- 室内ではF1.2の光量を生かす
- 逆光では露出とフレアを確認する
屋外では高速シャッターを優先する
屋外ポートレートなら、Avモードを使う方法とMモードを使う方法があります。撮影テンポを重視するならAvモードで絞りを決め、ISOオートを併用すると扱いやすくなります。
静かなポートレートなら、F1.2からF2、シャッタースピード1/250秒以上を一つの基準にします。人物が歩くなら1/500秒以上、髪を動かしたり振り返ったりする撮影では1/800秒以上を目安にします。
明るい晴天下では逆にF1.2が明るすぎる場合があります。ISO100まで下げてもカメラの最高シャッタースピードを超えるなら、F1.4やF2へ絞るかNDフィルターを使います。
せっかくF1.2のレンズを使うからといって、露出オーバーのまま開放へ固執する必要はありません。光量に応じて設定を変えます。
屋外撮影の露出設定については、写真の露出を決める基本も参考になります。
室内ではF1.2の光量を生かす
室内ではF1.2が使いやすくなります。窓からの自然光だけで人物を撮る場合でも、F1.2ならシャッタースピードを維持しやすいためです。
例えばF1.2、1/250秒を先に設定し、必要なISO感度を選びます。光量が足りなければISO800、1600、3200と上げます。
ここでISO感度を低く抑えるために1/60秒や1/80秒まで下げると、手ブレだけでなく人物の動きによる被写体ブレが増えます。人物撮影では必要なシャッタースピードを確保したうえでISO感度を決める方が安定します。
窓際では人物を窓へ正対させるだけでなく、斜め45度程度から光が入る位置を試すと、顔に立体感を作りやすくなります。
室内で光を作る方法については、スタジオ撮影 光と道具で非日常を形にするも参考になります。
逆光では露出とフレアを確認する
夕方の逆光と85mm F1.2は相性のよい組み合わせです。人物の背後に太陽を置くと、髪の輪郭が明るくなり、背景のボケと組み合わせて柔らかな写真を作れます。
撮影時は人物の顔へ露出を合わせます。背景の空が完全に白く飛ぶ場合は少し露出を下げ、必要なら人物側へレフ板や補助光を加えます。
初代EF85mm F1.2L USMは1989年設計のレンズなので、最新レンズと同じ逆光耐性を想定する必要はありません。強い光源が画面内や画面のすぐ外にある場合は、フレアやゴーストが出ることがあります。
撮影位置を数十cm変えるだけでも光の入り方は変化します。フードを使う、少し角度を変える、手で余計な光を遮るなどして比較します。逆にフレアを残して柔らかな表現に利用する方法もあります。
光の方向を使った人物撮影については、ライティングで写真を変える方法も参考になります。
AFとマニュアルフォーカスの特徴
- 初代はAF速度を理解して使う
- 電子式フォーカスリングの特性を知る
- 動く人物は撮影位置を予測する
初代はAF速度を理解して使う
EF85mm F1.2L USMを現在使う場合、AF速度は理解しておきたい部分です。後継のEF85mm F1.2L II USMでは、高速CPUとAFアルゴリズムの最適化によって初代から最大約1.8倍AFが高速化されました。
つまり初代は、II型より明確にAFが遅いレンズです。近距離から遠距離へ大きくフォーカスを移す場面では、この差を感じやすくなります。
そこで人物撮影では、撮影距離を大きく変え続けない方法が有効です。上半身を撮る位置を決めたら、同じ距離付近で表情や顔の角度を変えて撮影します。
AFが遅いから撮れないのではなく、AFを何度も全域移動させない撮影方法にすると使いやすくなります。
AF方式の特徴については、オートフォーカスの種類と使い分けも参考になります。
電子式フォーカスリングの特性を知る
EF85mm F1.2L USMは、フォーカスリングとレンズ群が機械的に直結している一般的なMFレンズとは異なり、電子制御によってフォーカスを動かします。
そのため、カメラへ装着して電源を入れた状態でフォーカスリングを操作する使い方が基本になります。中古個体を確認する場合も、リングが単に回転するかを見るだけでは足りません。実際にボディへ装着し、フォーカス位置が動くことを確認する必要があります。
F1.2でAFを合わせたあと、撮影者が意図した場所へ少しだけピントを調整したい場合はMFも有効です。ライブビューやミラーレスの拡大表示を使えば、瞳を拡大しながら調整できます。
AFとMFを組み合わせる考え方については、フルタイムマニュアルフォーカスで直感操作も参考になります。
動く人物は撮影位置を予測する
初代EF85mm F1.2L USMで動く人物を撮るなら、最新レンズのようにAFへすべて任せるより、人物が来る位置を予測して撮る方法が有効です。
例えば人物にこちらへ向かって歩いてもらう場合、長い距離をAFで追い続けるのではなく、背景や構図が最もよくなる場所を先に決めます。その位置へ人物が来る少し前からAFを合わせ、構図へ入った瞬間に撮影します。
舞台やイベントでも同じです。演者が頻繁に止まる場所、振り返る場所、光が当たる場所を把握すると、AFの速度だけに依存せず撮影できます。
古いレンズほど、撮影者が次の動きを読むことで使いやすさが変わります。
中望遠で被写体を狙う方法については、中望遠レンズで磨くスナップ撮影にも共通する考え方があります。
初代EF85mm F1.2L USMとII型の違い
- 基本仕様は非常によく似ている
- II型ではAFが最大約1.8倍高速化
- 初代とII型は撮影目的から選ぶ
基本仕様は非常によく似ている
| 項目 | EF85mm F1.2L USM | EF85mm F1.2L II USM |
|---|---|---|
| 発売 | 1989年9月 | 2006年3月 |
| 焦点距離 | 85mm | 85mm |
| 開放F値 | F1.2 | F1.2 |
| レンズ構成 | 7群8枚 | 7群8枚 |
| 絞り羽根 | 8枚 | 8枚・円形絞り |
| 最小絞り | F16 | F16 |
| 最短撮影距離 | 0.95m | 0.95m |
| 最大撮影倍率 | 0.11倍 | 0.11倍 |
| フィルター径 | 72mm | 72mm |
| 最大径×長さ | 91.5×84mm | 91.5×84mm |
| 質量 | 約1025g | 約1025g |
初代とII型を数字だけで比較すると、非常によく似ています。焦点距離、明るさ、レンズ構成、最短撮影距離、大きさ、重量まで共通する項目が多数あります。
II型は85mm F1.2という基本設計を大きく変更するモデルではなく、初代の特徴を引き継ぎながら操作性やデジタル撮影への対応を改良した後継機です。
そのため中古で両方を見たときは、「II型だからまったく別の写り」と単純に考えず、AFやコーティングなど改良された部分を見る必要があります。
EFレンズの世代ごとの違いについては、Canon EFレンズの歴史も参考になります。
II型ではAFが最大約1.8倍高速化
II型で大きく改良された部分がAFです。高速CPUの採用とAFアルゴリズムの最適化により、初代と比較して最大約1.8倍の高速化が行われました。
初代とII型を実用面から選ぶなら、この違いは無視できません。静物やじっくり撮るポートレートなら初代でも対応できますが、人物の動きへ素早く追従したい場合はII型の方が扱いやすくなります。
II型ではデジタルカメラ使用時のフレアやゴーストを考慮してレンズ配置とコーティングも最適化されています。また円形絞りが採用され、絞った状態でのボケ形状にも配慮されています。
初代の価値は、II型と同じ性能を持つことではありません。1989年に登場した最初のEF85mm F1.2Lそのものを使えることにあります。
レンズの世代による描写の違いを考える場合は、神レンズの真価とは なぜ写真が変わるのかも参考になります。
初代とII型は撮影目的から選ぶ
初代とII型のどちらを選ぶかは、撮影する被写体から考えると分かりやすくなります。
人物を一人ずつゆっくり撮る、静物を撮る、MFも積極的に利用する、初代EFレンズそのものを楽しみたいという場合は、初代でも十分に撮影できます。
一方、人物の表情や動きを次々に追う、イベントや結婚式でテンポ良く撮る、少しでもAF待ち時間を減らしたいという用途ならII型の高速化に意味があります。
価格差だけで決めるのではなく、自分の撮影でAF速度がどこまで必要なのかを考えます。初代が安価でも、撮りたい被写体に合わなければ結果的に使わなくなる可能性があります。
85mmという焦点距離全体から選びたい場合は、キヤノン85mm単焦点レンズガイドも参考になります。
EOS Rシリーズで初代85mm F1.2Lを使う
- EF-EOS Rを介して装着する
- 瞳検出AFをF1.2の撮影に利用する
- RF85mm F1.2とは役割を分ける
EF-EOS Rを介して装着する
EF85mm F1.2L USMはEFマウントなので、EOS Rシリーズへ直接取り付けることはできません。マウントアダプター EF-EOS Rをカメラとレンズの間へ取り付けます。
標準のEF-EOS Rには焦点距離を変更する光学系がないため、フルサイズEOS Rへ装着した場合も85mmとして使用します。
EOS R7、R10、R50などAPS-CのRFマウント機で使用すると、画角は35mm判換算で約136mm相当になります。顔や上半身を大きく捉えやすくなりますが、全身を撮るにはフルサイズより広い撮影距離が必要です。
85mmらしいポートレートの距離感を重視するならフルサイズ、さらに狭い画角を利用したいならAPS-Cという使い分けができます。
EFレンズをEOS Rで使用する方法は、EOS RでEFレンズを使う方法でも詳しく解説しています。
瞳検出AFをF1.2の撮影に利用する
EOS Rシリーズで初代EF85mm F1.2L USMを使う利点の一つが、対応するボディの人物・瞳検出AFです。
一眼レフでは使用するAFポイントを選び、その場所へ瞳を合わせる撮影方法が基本でした。ミラーレスでは画面内から瞳を検出できるため、構図の自由度が高くなります。
レンズそのもののAF駆動速度が高速になるわけではありませんが、どこへピントを合わせるかという操作は大きく変わります。F1.2のようにピント位置が重要なレンズでは、この違いは実用上大きな意味があります。
撮影後は瞳を拡大して確認します。瞳検出AFを利用しても、人物の前後移動によって撮影直前にピントが外れることはあります。重要なカットでは複数枚撮っておく方が確実です。
ミラーレスでの人物撮影については、Canon EOS Rシリーズ完全ガイドも参考になります。
RF85mm F1.2とは役割を分ける
RF85mm F1.2 L USMも同じ85mm F1.2ですが、初代EF85mm F1.2L USMとは世代も設計思想も大きく異なります。
RF85mm F1.2 L USMは9群13枚で、BR光学素子、UDレンズ、研削非球面レンズを使用し、最短撮影距離0.85m、最大撮影倍率0.12倍、9枚の円形絞りを採用しています。
最新のRFボディで高い解像性能やAF性能を重視するならRF85mm F1.2 L USMが有力です。初代EF85mm F1.2L USMを選ぶ理由は、RF版と同じ性能を安く得るためではありません。
1989年のEF大口径レンズによる描写、操作感、被写界深度を現在のデジタルカメラで使うことに価値があります。両者は同じ85mm F1.2でも、選ぶ目的を分けた方が理解しやすくなります。
RF単焦点レンズの特徴については、RF単焦点レンズで広がる写真表現も参考になります。
中古EF85mm F1.2L USMを選ぶ方法
- AFと電子式MFを実際に動かす
- レンズ内部と絞りを確認する
- 外観より動作状態を優先する
AFと電子式MFを実際に動かす
中古で初代EF85mm F1.2L USMを購入する場合、最初にAFを確認します。
近距離へピントを合わせた状態から遠距離へ動かし、次に遠距離から近距離へ戻します。何度か繰り返し、途中で止まらないか、異常な音が出ないか、動作が極端に不安定ではないかを確認します。
次にMFを確認します。このレンズは電子式フォーカスなので、フォーカスリングが物理的に回るだけでは正常動作の確認になりません。カメラへ装着して電源を入れ、リングを回したときに実際にピント位置が移動することを確認します。
AF/MF切替スイッチも数回操作します。古い個体ではレンズそのものの見た目より、こうした電子系統が正常かどうかの方が撮影への影響は大きくなります。
中古レンズの基本的な確認方法については、中古レンズの選び方とチェックポイントも参考になります。
レンズ内部と絞りを確認する
光学系は前玉だけで判断しません。前玉、後玉、内部を光へかざし、カビや曇り、大きな傷がないかを確認します。
発売から長い年月が経過しているため、小さなホコリが数個入っている個体は珍しくありません。それより注意したいのは、広範囲に白く見える曇りや菌糸状に広がったカビです。
絞りも確認します。F1.2だけで撮影せず、F2、F4、F8、F16と変更し、正常に露出が変化するかを見ます。絞り羽根の動作に異常がある場合、設定したF値どおりにならないことがあります。
可能なら撮影した画像を拡大し、画面の一部だけが極端に不鮮明ではないかも確認します。古い大口径レンズでは、光学系の状態を実写で確認する意味があります。
レンズの解像やシャープネスを見る方法については、レンズ解像度とは?解像力・シャープネスとの違いも参考になります。
外観より動作状態を優先する
中古レンズでは、外装に小さな傷がある個体より、外観がきれいでもAFやMFに問題がある個体の方が撮影では困ります。
EF85mm F1.2L USMは1989年発売なので、使用感があること自体は珍しくありません。マウント部の擦れ、鏡筒の小傷、フードの使用跡などがあっても、撮影機能が正常なら実用品として使えます。
確認する優先順位は、AF、電子式MF、絞り、光学系、マウント、外観の順に考えると分かりやすくなります。
また、初代を購入する前にII型の中古価格も確認しておきます。価格差が小さい場合はAFが高速化されたII型も比較対象になります。逆に初代とII型の価格差が大きく、撮影対象が静かなポートレート中心なら初代を選ぶ余地があります。
オールドレンズを現在のカメラで使う考え方については、オールドレンズをデジタルカメラで楽しむ方法も参考になります。
まとめ
Canon EF85mm F1.2L USMは、1989年9月に登場したキヤノン初代の85mm F1.2Lです。7群8枚、最短撮影距離0.95m、最大撮影倍率0.11倍、フィルター径72mm、最大径91.5mm、全長84mm、約1025gという仕様を持っています。
最大の特徴は、85mmという人物撮影で扱いやすい焦点距離とF1.2の組み合わせです。瞳へピントを合わせ、そこから髪、肩、背景へと大きくぼかすことで、人物を背景から分離できます。
使い方の基本は、最初に人物と背景の位置を決め、撮影者が85mmで構図を作れる場所まで下がり、その後で絞りを決めることです。背景を大きくぼかしたいなら、人物を背景から離します。F1.2だけでボケを作ろうとするより、この距離関係を利用する方が効果的です。
絞りは常にF1.2である必要はありません。正面を向いた人物ならF1.2、少し顔が斜めならF1.4からF1.8、顔全体の情報を残したいならF2程度という使い分けができます。
シャッタースピードも重要です。静かな人物なら1/160秒から1/250秒程度、歩いている人物なら1/500秒以上、動きの大きい場面なら1/800秒から1/1000秒程度を一つの出発点にできます。F1.2の明るさを利用して高速シャッターを確保し、それでも光量が足りなければISO感度を上げます。
初代とEF85mm F1.2L II USMは、85mm F1.2、7群8枚、最短0.95m、最大撮影倍率0.11倍、72mmフィルター、91.5×84mm、約1025gという多くの基本仕様を共有しています。一方、II型ではAFが初代に対して最大約1.8倍高速化され、デジタル撮影を意識したコーティングや円形絞りも採用されています。
EOS Rシリーズではマウントアダプター EF-EOS Rを介して使用できます。対応ボディなら人物・瞳検出AFを利用できるため、F1.2で難しかった瞳へのピント合わせをカメラ側から補助できます。
中古で選ぶ場合は、外観のきれいさだけで決めず、AF、電子式MF、絞り、内部のカビや曇りを確認します。初代は発売から長い年月が経過しているため、モデル名より個体の状態を見ることが重要です。
EF85mm F1.2L USMは、現在の基準では軽量でも高速でもありません。それでも、初代85mm F1.2Lならではの浅い被写界深度と85mmの距離感を利用し、一枚ずつ人物と背景を組み立てて撮るための中望遠単焦点として、現在でも特徴のはっきりした一本です。






