EF600mm F4L IS III USMレビュー|約3,050gの軽量化と画質・AF・中古選びを徹底解説
EF600mm F4L IS III USMは、600mm F4という大口径超望遠レンズの画質と明るさを維持しながら、従来のEF600mm F4L IS II USMから約870gもの軽量化を実現したEFマウントの超望遠Lレンズです。焦点距離600mm、開放F4、質量約3,050gという仕様は、野鳥、野生動物、スポーツ、航空機など、遠距離の動く被写体を狙う撮影で大きな意味を持ちます。
600mm F4というクラスは、単に遠くを大きく写すことだけを目的としたレンズではありません。F4の明るさによって高速シャッターを確保しやすく、浅い被写界深度で背景を整理でき、蛍石レンズを中心とした光学設計によって超望遠で問題になりやすい色収差を抑えます。その一方で、大型で高価なレンズであり、600mm固定という画角にも慣れが必要です。
III型では光学系とメカ構造が大きく見直され、軽量化だけでなく、約5段分の手ブレ補正、リングUSM、電子式フォーカスリング、フォーカスプリセット、パワーフォーカスなど、実際の撮影現場で使うための機能も充実しています。EF一眼レフだけでなく、マウントアダプターを介してEOS Rシリーズでも使用できるため、EFマウント末期の超望遠レンズでありながら、現在のミラーレスシステムでも活用できる一本です。
EF600mm F4L IS III USMの設計と軽量化
EF600mm F4L IS III USMで最も分かりやすい進化は重量です。600mm F4では大きな前玉と長い鏡筒が必要になるため、一般的な望遠ズームのような小型化は困難です。その条件の中でIII型は約3,050gまで軽量化され、II型とは実際の撮影方法まで変わるほどの重量差を作りました。
II型から約870g軽くなった約3,050gのボディ
EF600mm F4L IS II USMの質量は約3,920gですが、III型は約3,050gです。差は約870gで、20%を超える軽量化になります。最大径は約168mm、全長は約448mmなので、鏡筒を大幅に短くして軽量化したレンズではありません。光学系や内部構造を見直し、600mm F4として必要な大口径を維持したまま重量を削っています。
約3kgという数字だけを見れば依然として重いレンズですが、約4kgのII型との差は手持ち撮影で明確に現れます。飛翔する鳥を追ってレンズを左右へ振る、遠くから近づく選手を追い続ける、航空機を上空まで追うといった撮影では、レンズを持ち上げるだけでなく、方向転換と停止を繰り返します。870g軽くなることで腕への負担だけでなく、レンズを振り始める動作や被写体の位置で止める操作も行いやすくなります。
一脚や三脚を使用する場合にも軽量化は無駄になりません。機材を撮影場所まで運ぶ負担が減るほか、雲台上で向きを変える際にも扱いやすくなります。600mm F4を完全な三脚専用レンズとして考える必要がなくなり、状況によって手持ち、一脚、三脚を使い分けやすくなったことがIII型の大きな特徴です。レンズの重量と取り回しの関係は、小型軽量設計から形状・重量の全体像まで:レンズ設計の魅力でも詳しく解説しています。
13群17枚と蛍石2枚・スーパーUDレンズ1枚の光学系
レンズ構成は13群17枚で、蛍石レンズ2枚とスーパーUDレンズ1枚が使われています。600mmのような超望遠では、焦点距離が長くなるほど色収差の補正が重要になります。明るい空を背景にした鳥の輪郭、黒いユニフォームと白いラインの境界、航空機と青空の境目など、高いコントラストの部分では色にじみが見えやすいためです。
蛍石は一般的な光学ガラスとは異なる分散特性を持ち、望遠レンズで問題となる色収差の補正に適しています。EF600mm F4L IS III USMでは2枚の蛍石とスーパーUDレンズを組み合わせ、600mm F4という厳しい条件で高解像と高コントラストを狙った設計になっています。画面中央だけを鋭くするのではなく、遠距離の細かな羽毛、毛並み、文字や輪郭を安定して描くことが超望遠Lレンズでは重要です。
大口径超望遠では、レンズそのものの解像力が高くても、大気の揺らぎや撮影距離、ピント精度、シャッタースピードによって結果が変わります。特に夏場の地面付近では陽炎の影響を受けやすく、遠くへ行くほど空気の層を多く通過するため、レンズ性能だけでは解決できない画質低下も発生します。解像力、色収差、コントラスト、ボケなどの見方については、レンズの光学性能とは?解像力・MTF・色収差・ボケの見方で詳しく整理しています。
ASCやフッ素コーティングと屋外撮影を考えた設計
EF600mm F4L IS III USMにはASCなどの反射防止技術が使われ、逆光時のフレアやゴーストを抑えることが考慮されています。超望遠では画角が狭いため太陽そのものが画面へ入る場面は多くありませんが、水面や競技場の照明、車体や航空機からの強い反射光などが画面へ影響することがあります。コントラスト低下を抑えることは、細かな羽毛や遠距離の被写体を鮮明に見せるうえで重要です。
レンズ表面には汚れを拭き取りやすくするフッ素コーティングも採用されています。野鳥やスポーツでは雨、水滴、砂ぼこりなどが避けられないことがあり、レンズそのものが大型になるほど撮影中の取り扱いも慎重になります。防じん・防滴に配慮した構造と合わせて、屋外で長時間使用することを前提とした仕様です。
白い鏡筒にも意味があります。大口径超望遠は屋外で直射日光を受け続ける場合があり、内部温度の上昇は避けたい要素です。III型では遮熱性能を意識した外装が採用されており、炎天下の競技場や野鳥撮影地で長時間使用するレンズとしての信頼性を高めています。コーティングが画質へ与える役割については、光を操る魔法:レンズコーティングの秘密でも紹介しています。
600mm F4が生む画質と表現
EF600mm F4L IS III USMを選ぶ理由は600mmという焦点距離だけではありません。600mmまで届くズームレンズは多数ありますが、その多くは望遠端でF6.3、F7.1、F8などになります。600mmでF4を維持できることに、このレンズの大きな価値があります。
F4の明るさが高速シャッターを確保しやすくする
野鳥やスポーツでは、手ブレより先に被写体ブレを止めなければならない場面が多くあります。飛んでいる鳥、走る選手、旋回する航空機などは、手ブレ補正が強力でも被写体自身が動けば止まりません。そこで1/1000秒、1/2000秒、それ以上の高速シャッターが必要になります。
F4はF5.6より1段明るく、F8より2段明るいため、同じシャッタースピードならISO感度を低くできます。逆に同じISO感度ならシャッタースピードを上げられます。晴天の日中だけならF7.1やF8でも撮影できますが、朝夕、曇天、木陰、スタジアム照明下などではF4の差が大きくなります。
EF600mm F4L IS III USMではF4開放を単なる非常用として考える必要がなく、開放から積極的に使用することを前提とした設計です。画質を上げるために毎回F5.6やF8へ絞るレンズではなく、F4の明るさを使って高速シャッターと低いISO感度を確保することが本来の使い方になります。F値とシャッタースピード、ISO感度の関係は、F値を知れば広がるカメラの世界 撮影表現を変える明るさとボケのコントロール術でも詳しく解説しています。
600mm F4では背景を大きく整理できる
600mmという長い焦点距離とF4の組み合わせでは被写界深度が浅くなり、被写体と背景の距離が取れるほど背景を大きくぼかせます。野鳥では枝や葉が複雑に重なる場所でも鳥だけを浮かび上がらせやすく、スポーツでは観客席や広告看板の情報量を減らし、選手へ視線を集中させることができます。
背景のボケ量は焦点距離とF値だけで決まるわけではありません。撮影者と被写体の距離、被写体と背景の距離も大きく影響します。600mmだから必ず背景が完全に溶けるわけではなく、鳥のすぐ後ろに枝があれば枝の形は残ります。撮影位置を少し動かして背景との距離を確保できれば、同じF4でも背景の見え方は大きく変わります。
一方、被写界深度が浅いことはピントの難しさにもつながります。鳥の目に合わせたいのに翼へピントが移る、斜めに走る選手の顔から胸へピントがずれるなど、600mm F4では小さなフォーカスの違いが結果へ出やすくなります。被写体との距離と写真表現の関係は、被写体との距離で写真はどう変わる?撮影距離・焦点距離・構図の基本でも詳しく説明しています。
最短撮影距離4.2mと最大撮影倍率0.15倍の意味
最短撮影距離は4.2m、最大撮影倍率は0.15倍です。一般的なレンズから見れば4.2mは長い距離ですが、600mm F4という巨大な超望遠として見ると、比較的近い被写体にも対応できます。鳥が予想以上に近くへ止まった場合や、動物園などで一定の距離を保ちながら動物の顔を大きく狙う場合にも使えます。
600mmでは画角が非常に狭いため、4.2m付近まで近づくと被写体の一部しか画面へ入らない場合があります。大型の鳥なら顔や羽毛の一部分を切り取る撮影となり、小型の鳥でもかなり大きく写ります。単焦点なので被写体が近づきすぎてもズームアウトできず、撮影者が後ろへ下がれない場所では構図を変更できないことがあります。
600mm単焦点は、撮影距離がある程度読める環境ほど使いやすいレンズです。遠くの小さな被写体を確実に大きく写す能力は非常に高い一方、近距離から遠距離まで頻繁に変化する状況では100-500mmや200-800mmなどのズームの方が構図変更は容易です。600mmという焦点距離そのものの用途は、600mmレンズの使い道 野鳥・月・航空機・風景で生かす超望遠撮影でも詳しく紹介しています。
AF・MF・手ブレ補正の実用性
大口径超望遠では、光学性能だけでなく、被写体へどれだけ速く正確にピントを運べるかが重要です。EF600mm F4L IS III USMにはリングUSM、撮影距離範囲切り換え、AFストップ、電子式MF、フォーカスプリセット、パワーフォーカス、3種類のISモードが備わっています。
リングUSMと3段階の撮影距離範囲切り換え
AF駆動にはリングUSMが使われています。旧記事ではナノUSMと記載されていましたが、EF600mm F4L IS III USMはリングUSMを採用したレンズです。超望遠ではフォーカス群を正確かつ高速に動かす必要があり、キヤノンの大口径超望遠で長く使われてきた方式です。
撮影距離範囲はFULL、4.2m~16m、16m~∞の3段階から選択できます。遠くを飛ぶ鳥や航空機だけを撮る場合には16m~∞へ設定しておくことで、AFが手前へ大きく移動する範囲を減らせます。比較的近い動物や鳥を撮るなら4.2m~16m、被写体がどの距離へ現れるか読めない場合はFULLという使い分けができます。
600mmでは一度背景へピントが抜けると、再び被写体までフォーカスを戻す移動量が大きくなります。撮影距離がある程度分かっているならフォーカスリミッターを利用することで、無駄なフォーカス移動を減らせます。リングUSMを含むキヤノンのAFモーターの違いは、USMとは?リングUSM・マイクロUSM・ナノUSMの違いを徹底解説で詳しく紹介しています。
電子式MF・フォーカスプリセット・パワーフォーカス
III型ではフォーカスリングが電子式になっています。リングの回転を機械的にフォーカス機構へ直接伝えるのではなく、回転操作を検出してモーターでフォーカスを動かします。マニュアルフォーカス速度は3段階から選択でき、大きくピント位置を移動したい場合と、わずかな位置を細かく追い込みたい場合を使い分けられます。
フォーカスプリセットは、あらかじめ決めた撮影距離を記憶し、再生リングの操作でその距離へフォーカスを戻す機能です。止まり木へ繰り返し戻ってくる鳥、ゴール前など狙う位置が決まっているスポーツ、特定地点を通過する車両などでは、毎回AFで距離を探す必要がありません。操作方法によって2点の撮影距離を登録することもできます。
パワーフォーカスでは再生リングを使ってピントを電動で滑らかに移動でき、動画撮影で急激なフォーカス移動を避けたい場合にも利用できます。枝やフェンスが被写体の手前へ重なってAFが迷う状況では、AFだけに頼らずMFへ移る選択肢も重要です。AFとMFの役割の違いは、AFとMFの違いとは?オートフォーカスとマニュアルフォーカスの使い分けで詳しく解説しています。
約5段分のISとMODE 1・MODE 2・MODE 3
EF600mm F4L IS III USMの手ブレ補正効果は約5段分です。600mmではわずかな角度の揺れでもファインダー内では大きな移動として見えるため、ISは撮影画像のブレを減らすだけでなく、被写体を画面内へ保持するためにも役立ちます。
MODE 1は一般的な静止被写体向けで、通常の手ブレを補正します。MODE 2は流し撮りなど一定方向へカメラを動かす撮影に対応し、意図したパンニングを妨げにくい補正を行います。MODE 3は不規則に動く被写体を追う場面を想定したモードで、スポーツや野鳥など急に進行方向が変わる被写体を追いやすくするためのものです。
約5段分という補正量があっても、飛翔する鳥を低速シャッターで止められるわけではありません。ISはカメラ側の揺れを補正する機能であり、被写体の動きはシャッタースピードで止めます。止まりものではISを生かしてシャッタースピードを落とせる場面がありますが、飛翔やスポーツでは高速シャッターを優先する必要があります。手ブレと被写体ブレの違いは、Canonの手ブレ補正を徹底解説|IS・ボディ内手振れ補正・協調制御の仕組みと撮影シーン別の使い方でも整理しています。
野鳥・スポーツ・航空機でどう使うか
EF600mm F4L IS III USMは用途が明確なレンズです。一般的な旅行用望遠や日常撮影ではなく、被写体へ近づけない状況で遠距離の被写体を大きく写し、高速シャッターと背景分離まで求める撮影で本領を発揮します。
野鳥では600mm F4と軽量化の両方が生きる
小型の野鳥は、撮影者が近づけば逃げてしまうため、焦点距離そのものが撮影距離の余裕につながります。400mmでは鳥の周囲に大きく余白が残る距離でも、600mmなら鳥をより大きく写せます。さらにF4の明るさがあるため、早朝、夕方、林の中など光量が少ない場面でも高速シャッターを維持しやすくなります。
止まっている鳥では目へ正確にピントを合わせ、F4の浅い被写界深度で背景を整理できます。飛翔では600mmの狭い画角へ鳥を入れ続ける技術が必要ですが、約3,050gまで軽量化されたIII型はII型よりレンズを振りやすく、飛び出しから旋回まで手持ちで追う撮影にも対応しやすくなっています。
600mm固定なので、鳥が急に近づけば画面からはみ出します。150-600mmのように一度400mmへ戻して鳥を捕捉し、追いながら600mmへ伸ばすことはできません。撮影場所と鳥の飛行経路が分かっている場面ほど単焦点600mmの強みを生かしやすくなります。ズームとの違いは、150-600mmレンズの使い道|野鳥・飛行機・スポーツ・動物を撮る超望遠ズーム活用法と比較すると分かりやすくなります。
スポーツではF4が高速シャッターと背景分離に効く
サッカー、ラグビー、野球、陸上競技などでは、撮影位置から遠い選手を大きく写す必要があります。競技場の反対側まで届く600mmは、撮影位置を自由に変えられない場面で有効です。選手の全身だけでなく、上半身や表情を大きく切り取ることもできます。
スポーツ撮影では動きを止めるため高速シャッターが必要です。夕方や曇天では、望遠端F6.3やF7.1のレンズとF4ではISO感度に明確な差が出ます。F4を使って1/1000秒や1/2000秒を維持しながらISO感度を抑えられることは、600mm F4を使用する大きな理由になります。
モータースポーツではMODE 2を使った流し撮りにも対応できます。600mmは画角が狭いため流し撮りの難度は高くなりますが、遠くのコーナーを切り取り、車両を大きく写すことができます。シャッタースピードを上げて車両を止める撮影と、速度を落として背景を流す撮影を使い分けられます。実践的な考え方は、モータースポーツ撮影 疾走するマシンが描く一瞬の軌跡でも紹介しています。
航空機や鉄道では遠距離に強い一方で画角固定が制約になる
航空機では、空港の外周や展望場所から遠くの機体を狙うときに600mmが威力を発揮します。離陸後に高度を上げた機体、遠い滑走路上の機体、旋回中の航空機など、400mmでは小さく感じる距離からでも画面内へ大きく配置できます。
その一方で、航空機が撮影者へ近づくと600mmでは機体全体が入らなくなります。ズームなら500mm、400mmへ戻せますが、単焦点では撮影者が下がるか、機体の一部分を切り取る構図へ切り替えることになります。鉄道でも同様で、列車が近づいたときに画角を広げられないことを前提に撮影位置を決める必要があります。
400mmは600mmより画角が広く、接近する被写体を追いやすい反面、遠距離では被写体が小さくなります。600mmを使うか400mmを使うかは、単純に長い方が有利という関係ではなく、被写体までの距離と構図で決まります。両者の違いは、400mmレンズの使い道 野鳥・スポーツ・航空機・風景で生かす超望遠撮影も参考になります。
エクステンダーとEOS Rで用途を広げる
EF600mm F4L IS III USMは600mm F4単体で完結するレンズではなく、EXTENDER EF1.4×IIIやEXTENDER EF2×IIIを使ってさらに焦点距離を伸ばせます。また、マウントアダプター EF-EOS Rを介せばEOS Rシリーズでも使用できます。
EXTENDER EF1.4×IIIでは840mm F5.6になる
EXTENDER EF1.4×IIIを装着すると、焦点距離は840mm、開放F値はF5.6になります。600mmからさらに被写体を大きく写せる一方、光量低下は1段なので、超望遠域を伸ばす方法として比較的使いやすい組み合わせです。
遠くの小型野鳥や野生動物では600mmでも画面内で小さいことがあります。840mmまで伸ばせば同じ場所から被写体をより大きく写せます。撮影後に600mmの画像を大きくトリミングする方法もありますが、被写体へ十分な画素数を使いたい場合には1.4倍エクステンダーが選択肢になります。
840mmになると画角はさらに狭くなり、手ブレ、ピントずれ、大気の揺らぎの影響も見えやすくなります。焦点距離を伸ばせば常に細部が増えるわけではなく、遠距離では空気の状態によって600mmの方が結果が安定する場面もあります。対応レンズや倍率による違いは、EFエクステンダーの使い方 対応レンズと1.4倍・2倍テレコンの選び方で詳しく解説しています。
EXTENDER EF2×IIIでは1200mm F8になる
EXTENDER EF2×IIIでは焦点距離1200mm、開放F値F8になります。600mmの2倍という極端に狭い画角になり、遠くの野鳥、航空機、月などを大きく写すことができます。その代わり光量は2段低下するため、600mm F4の明るさを生かした高速シャッター撮影とは性格が変わります。
2倍エクステンダーでは1.4倍より光学系への要求も厳しくなります。わずかなピントずれや大気の揺らぎまで大きく見えるため、1200mmへ伸ばせば必ず600mmの2倍の細部が記録できるわけではありません。撮影条件によっては600mmや840mmで撮影してトリミングした方が扱いやすい場合もあります。
1200mmでは被写体をファインダーへ入れること自体が難しく、動体を追う難度も大幅に上がります。一方、被写体の位置が予測できる状況では600mmでは得られない画面の大きさを得られます。1200mmという焦点距離の特徴については、RF1200mm F8L IS USMの記事も比較材料になります。
EOS Rシリーズではマウントアダプターを介して使用できる
EF600mm F4L IS III USMはEFマウントなので、RFマウントのEOS Rシリーズへ直接装着することはできません。マウントアダプター EF-EOS Rをカメラとレンズの間へ入れることで、EFレンズとしての電子通信を維持したまま使用できます。
EOS Rシリーズでは、対応ボディの被写体検出や追尾機能と組み合わせて600mm F4を使用できます。AFモーター自体はレンズ側のリングUSMですが、どの被写体を追うかという認識はボディ側のAFシステムが担当します。EF時代の光学性能と新しいボディのAF機能を組み合わせられることは、EF600mm F4L IS III USMを現在使う大きな意味になります。
Canon APS-CのEOS R7などでは、600mmを装着した場合の画角は35mm判換算約960mm相当になります。レンズの実焦点距離が960mmへ変化するわけではありませんが、フルサイズより狭い範囲を記録するため、小さな野鳥を画面内へ大きく配置しやすくなります。RFマウント機でEFレンズを利用する仕組みは、EOS RでEFレンズを使う方法|マウントアダプター・互換性・デメリットを解説で詳しく紹介しています。
II型・RF600mmとの違いと中古選び
EF600mm F4L IS III USMを現在選ぶ場合、比較対象になるのがEF600mm F4L IS II USMとRF600mm F4 L IS USMです。どれも600mm F4ですが、重量、手ブレ補正、操作性、マウント、入手価格などに違いがあります。
EF600mm F4L IS II USMとは約870gの重量差がある
II型は約3,920g、III型は約3,050gで、約870gの差があります。最大径と全長はどちらも約168mm×448mmなので、外形寸法だけを見ると大きな差はありません。III型の進化は、小さくしたことより内部の重量を大幅に削減したことにあります。
手ブレ補正はII型の約4段分に対してIII型は約5段分です。最短撮影距離もII型の4.5mからIII型では4.2mへ短縮されています。III型では電子式フォーカスリングも採用され、マニュアルフォーカス速度を3段階で切り換えられます。
II型も蛍石レンズ2枚を使った高性能な600mm F4であり、III型へ変更すれば写真そのものが別物になるという関係ではありません。III型では画質を維持しながら重量、IS、操作性を改良した点が大きく、特に手持ちや一脚で頻繁にレンズを振る撮影では870gの差が重要になります。II型の特徴は、EF600mm F4L IS II USMの記事でも確認できます。
RF600mm F4 L IS USMはIII型と非常に近い光学設計を持つ
RF600mm F4 L IS USMは、EF600mm F4L IS III USMから光学系を全面的に別設計へ変えたレンズではありません。蛍石2枚とスーパーUDレンズ1枚を含む13群17枚という基本的な光学設計を受け継いでRFマウントへ対応しています。
EF III型は約3,050g、RF600mm F4 L IS USMは約3,090gです。レンズ単体の重量だけならEF III型の方が約40g軽くなります。ただしEOS RシリーズでEF III型を使う場合にはマウントアダプターも加わるため、実際のシステム重量では関係が変わります。RF版はアダプターなしでRFボディへ直接装着できることが最大の違いです。
RF600mmでは手ブレ補正効果が5.5段分へ強化されています。EF III型をすでに持っている場合にはアダプター経由でEOS Rシリーズへ移行できますが、新たにRFシステム専用として構成する場合にはRF600mmの直接装着という利点があります。RF版の仕様や特徴については、RF600mm F4L IS USMの記事でも詳しく紹介しています。
中古では光学系だけでなく電子機構と付属品も確認したい
EF600mm F4L IS III USMを中古で見る場合には、前玉の傷、内部のカビやクモリ、マウント部分の摩耗だけでなく、電子機構の動作も重要です。リングUSMによるAF、IS、電子式フォーカスリング、フォーカスプリセット、再生リング、撮影距離範囲切り換え、AFストップボタンなど、一般的な単焦点レンズより確認する機能が多くあります。
大口径超望遠では三脚座やフードも頻繁に使用されます。三脚座の回転や固定に異常がないか、フードの固定部分が傷んでいないか、ドロップインフィルターホルダーが揃っているかも実用上重要です。大型レンズ専用のフードやケースなどは、一般的なレンズ用品より代替が難しいため、本体価格だけでなく付属品まで含めて比較する必要があります。
実際に撮影できる状態であれば、近距離と遠距離の両方でAFを動かし、ISの作動、MFリング、フォーカスプリセットなどを一通り確認すると、外観だけでは分からない状態差を見つけやすくなります。EFレンズをEOS一眼レフとEOS Rシリーズの両方で使う考え方については、Canon EFとは?EFレンズ・EF-Sとの違い・対応カメラ・EOS Rでの使い方を徹底解説でも整理しています。
まとめ
EF600mm F4L IS III USMは、600mm F4という大口径超望遠の画質と明るさを維持しながら、II型の約3,920gから約3,050gへ約870g軽量化したことが最大の特徴です。600mm F4としては依然として大型ですが、手持ちで鳥や航空機を追う、スポーツで被写体へレンズを振り続けるといった撮影の現実性はII型より大きく高まっています。
13群17枚の光学系には蛍石レンズ2枚とスーパーUDレンズ1枚が使われ、超望遠で問題となりやすい色収差を抑えながら、高解像と高コントラストを狙った設計です。F4の明るさは背景をぼかすためだけでなく、朝夕や曇天でも高速シャッターを確保しやすくするために重要です。600mmまで届く暗いズームとは、同じ焦点距離でも撮影できる条件が異なります。
リングUSM、3段階の撮影距離範囲切り換え、電子式MF、フォーカスプリセット、パワーフォーカス、約5段分のIS、3種類のISモードなど、動体撮影を前提とした機能も充実しています。III型の価値は単純な解像力だけではなく、600mm F4を実際のフィールドで動かし続けるための操作性まで含めて考える必要があります。
EXTENDER EF1.4×IIIでは840mm F5.6、EXTENDER EF2×IIIでは1200mm F8となり、さらに遠距離の被写体へ対応できます。マウントアダプター EF-EOS Rを使えばEOS Rシリーズでも利用できるため、EFマウントのレンズでありながら新しいボディの被写体検出AFと組み合わせることもできます。
II型との比較では約870gの軽量化が大きく、RF600mm F4 L IS USMとは基本的な光学設計が近い関係にあります。EF600mm F4L IS III USMは、EF時代の600mm F4を軽量化と操作性の両面から完成度を高めたモデルであり、野鳥、野生動物、スポーツ、航空機など、遠距離の動体をF4の明るさで狙いたい撮影に特化した超望遠レンズです。



