RFレンズは暗いのか?F7.1・F8・F9・F11が増えた理由と実用性を解説
キヤノンのRFレンズを見ていると、RF24-105mm F4-7.1 IS STM、RF100-400mm F5.6-8 IS USM、RF100-500mm F4.5-7.1 L IS USM、RF200-800mm F6.3-9 IS USM、さらにRF600mm F11 IS STMやRF800mm F11 IS STMなど、望遠側の開放F値がF7.1、F8、F9、F11になるレンズが目につきます。そのため「RFレンズはEFレンズより暗くなったのではないか」「F8やF11では撮影しにくいのではないか」と感じる人がいるのも自然です。
実際、同じ焦点距離と同じシャッタースピードで比較すれば、開放F値が大きいレンズほどセンサーへ届く光量は少なくなります。F2.8とF5.6、F4とF8では撮影条件に明確な差が出るため、「暗い」という指摘自体が間違っているわけではありません。一方、RFマウントにはRF28-70mm F2 L USM、RF50mm F1.2 L USM、RF85mm F1.2 L USM、RF24-70mm F2.8 L IS USMなど非常に明るいレンズも存在します。
つまりRFレンズ全体が暗いのではなく、RFシステムでは大口径・高性能を優先したレンズと、小型軽量・長焦点・価格・携帯性を優先したレンズの両方向へ設計の幅が広がっています。F7.1、F8、F9、F11という数値だけを見て評価すると、それぞれのレンズが何を得るために明るさを抑えたのかを見落としてしまいます。
この記事では「RFレンズは暗いのか」という疑問を、F値と露出の基本、RFレンズが高いF値を採用する理由、手ブレ補正とISO感度で補える範囲、野鳥やスポーツで問題になる場面、明るいRFレンズとの違いまで具体的に整理します。
RFレンズが「暗い」と言われる理由
レンズの明るさを比較するときに使われるのが開放F値です。RFレンズには開放F値が小さい大口径レンズも多数ありますが、普及価格帯の標準ズームや軽量超望遠ではF7.1、F8、F9、F11まで大きくなるモデルがあります。EF時代の一般的な望遠ズームと比べると数値が目立つため、「RFレンズは暗い」という印象につながっています。
F値が大きいほど同じ時間に取り込める光は少なくなる
F値はレンズの焦点距離と有効口径の関係から決まる数値で、F値が小さいほど多くの光を取り込めます。F2.8、F4、F5.6、F8、F11という並びは、おおむね1段ずつ光量が変化する代表的な系列です。F4からF5.6になると光量は半分、F5.6からF8でも半分、F8からF11でもさらに半分になります。
例えばF4で1/1000秒、ISO400の露出が適正だった場面で、F8のレンズを使い同じ明るさを得ようとすると、ISO感度を1600へ上げる、シャッタースピードを1/250秒へ落とす、あるいは両方を少しずつ調整する必要があります。F値の差は数字上だけの違いではなく、実際のシャッタースピードとISO感度へ直接影響します。
そのため夕方の野鳥や室内スポーツのように高速シャッターが必要な撮影では、明るいレンズの価値が大きくなります。反対に日中の風景や静止した被写体では、シャッタースピードを下げたり手ブレ補正を利用したりできるため、開放F値が大きくても問題になりにくくなります。F値と明るさ、ボケ、被写界深度の関係はF値とは何かを詳しく解説した記事でも整理しています。
RF24-105mmやRF100-400mmの開放F値が印象を強くしている
RFレンズが暗いと言われる背景には、手頃な価格帯で選ばれやすいレンズに可変開放F値のモデルが多いことがあります。RF24-105mm F4-7.1 IS STMは広角端F4から望遠端F7.1、RF100-400mm F5.6-8 IS USMは望遠端でF8です。RF24-105mm F4-7.1 IS STMは約395g、RF100-400mm F5.6-8 IS USMは約635gと軽量で、この携帯性と引き換えに開放F値を抑えています。
特にRF100-400mm F5.6-8 IS USMは、400mmまで使えるフルサイズ対応超望遠ズームとして非常に軽く、持ち歩きやすいレンズです。F8という数値だけをEF100-400mm F4.5-5.6L IS II USMなどと比較すれば暗くなっていますが、重量、サイズ、価格帯まで同じ条件ではありません。
日中の野鳥、飛行機、動物、運動会などではF8でも高速シャッターを確保できる光量があることが多く、約635gという軽さが撮影機会そのものを増やします。RF100-400mmのF8が実際の撮影へどう影響するかはRF100-400mm F5.6-8 IS USMは暗いのかを検証した記事で詳しく解説しています。
RFマウント自体が暗いわけではない
RFレンズの一部にF7.1やF11があることから、RFマウントそのものが暗い設計だと考えるのは適切ではありません。RFマウントではRF28-70mm F2 L USMのようにズーム全域F2を実現したレンズや、RF50mm F1.2 L USM、RF85mm F1.2 L USMのような大口径単焦点も存在します。
RF28-70mm F2 L USMは28-70mmをF2通しで使える一方、重量は約1,430gあります。明るさを優先すれば光学系の口径が大きくなり、レンズ枚数、鏡筒、フィルター径なども大型化しやすくなります。RF50mm F1.2 L USMも約950gあり、標準単焦点としては重量級です。
RFマウントの特徴は「レンズを暗くすること」ではなく、短いフランジバックや大口径マウントを生かして設計上の選択肢を広げられる点にあります。その自由度をF2やF1.2の大口径へ使うレンズもあれば、F8やF11として小型軽量化へ使うレンズもあります。RF28-70mm F2 L USMの性格についてはRF28-70mm F2 L USMの特徴を解説した記事でも確認できます。
なぜF7.1・F8・F9・F11のRFレンズが増えたのか
RFレンズで開放F値を大きくしたモデルが存在する最大の理由は、単純なコスト削減だけではありません。望遠レンズでは焦点距離が長くなるほど必要な有効口径が大きくなるため、明るさを維持するとレンズそのものが急激に大型化します。キヤノンはRFシステムで、従来なら非常に大きく重くなった焦点距離を、現実的に持ち歩けるサイズへ落とし込む設計を積極的に採用しています。
明るさを抑えると望遠レンズを大幅に軽量化できる
レンズのF値は、おおまかには焦点距離を有効口径で割った関係になります。600mm F4なら非常に大きな口径が必要ですが、600mm F11なら必要な光学系を大幅に小型化できます。RF600mm F11 IS STMは焦点距離600mmでありながら約930gです。超望遠単焦点としては非常に軽く、収納時には鏡筒を縮められる構造も採用されています。
同じ考え方でRF800mm F11 IS STMも約1,260gに抑えられています。800mmという焦点距離は、従来なら巨大な大口径超望遠レンズを連想する領域ですが、F11固定とすることで手持ちや小型バッグでの移動まで現実的になりました。
もちろんF11では夕方や林の中でシャッタースピードを確保しにくくなります。それでも晴天の野鳥や航空機、月、遠景などでは800mmを約1.26kgで使用できる利点があります。RF600mm F11 IS STMの設計と実用性についてはRF600mm F11 IS STMの特徴を解説した記事でも詳しく紹介しています。
ズームレンジを広げるために望遠端のF値を大きくする設計もある
RF200-800mm F6.3-9 IS USMは、200mmから800mmまで4倍のズーム域を一本でカバーします。望遠端800mmでF9となりますが、重量は約2,060gです。800mmを含む超望遠ズームとして考えると、焦点距離の広さと携帯性を両立するためのF値と見ることができます。
もし800mmまでF5.6の明るさを維持しようとすれば、前玉を含む光学系はさらに大型化し、重量や価格も大きく変わります。F9を採用することで、200mmから800mmという広い範囲を一本で持ち歩き、鳥が近づいたときは200mm側へ戻し、遠ければ800mmへ伸ばせる柔軟性が得られます。
単焦点の800mm F11より明るく、従来型の大口径800mmより軽く、さらにズームまでできるという中間的な位置にあるレンズです。超望遠ズームでは明るさだけでなく、焦点距離の可変範囲、重量、AF、手ブレ補正を合わせて考える必要があります。RF200-800mmを含む野鳥向けレンズの違いは野鳥撮影用レンズを整理した記事でも紹介しています。
RFマウントの設計自由度は明るさと軽さの両方に使われている
RFマウントではフランジバックが短く、レンズ後部と撮像面の配置自由度が高まっています。これによって広角レンズや大口径レンズの設計だけでなく、携帯性を重視したズームや超望遠でも多様な設計が可能になりました。
重要なのは「RFマウントだから小型になる」「RFマウントだから明るくなる」と一方向に考えないことです。RF28-70mm F2 L USMは明るさを優先したため約1,430gあります。一方、RF100-400mm F5.6-8 IS USMは明るさを抑えて約635gにしています。同じRFマウントでも設計目標がまったく異なります。
レンズを小さくするのか、開放F値を小さくするのか、ズーム倍率を広げるのか、近接性能を高めるのかは一つの設計の中で相互に影響します。RFレンズの違いを見るときはF値単独ではなく、焦点距離、質量、全長、価格、IS、最短撮影距離まで含めて見る必要があります。こうした設計上の違いはRFズームレンズの特徴と選び方でも詳しく整理しています。
暗いRFレンズで実際に何が困るのか
開放F値が大きいことによる影響は、単にファインダーが暗く見えるという話ではありません。ミラーレスでは電子ビューファインダーが表示明るさを調整するため、F8やF11でもファインダー自体は見やすく表示できます。しかし実際にセンサーへ入る光量は減っているため、シャッタースピード、ISO感度、被写界深度、AF条件には影響します。
最も大きな弱点は高速シャッターを使うとISO感度が上がること
F8やF11が最も不利になるのは、光量が少ない場所で動く被写体を高速シャッターで止めたい撮影です。野鳥の飛翔なら1/1600秒や1/2000秒以上、スポーツでも競技によって1/1000秒以上が必要になることがあります。シャッタースピードを落とせないため、F値の差をISO感度で補うことになります。
F5.6からF8では1段、F5.6からF11では2段の差があります。同じシャッタースピードなら、F5.6でISO800だった場面はF8でISO1600、F11ならISO3200が必要になります。センサー性能が向上して高ISOを使いやすくなっても、ISO感度を上げればノイズとダイナミックレンジへの影響は残ります。
特に夕方、曇天、林の中、屋内競技ではこの差が大きくなります。反対に晴天の屋外ならISO400やISO800程度で高速シャッターを確保できることもあり、F8やF11でも十分に撮影できます。動体撮影でのシャッタースピード設定についてはCanonカメラのシャッタースピード設定ガイドで詳しく解説しています。
F値が大きくても望遠レンズなら背景は十分ぼかせる
「F8やF11では背景がぼけない」と考えるのも単純すぎます。背景ボケはF値だけで決まらず、焦点距離、被写体までの距離、被写体と背景の距離、センサーサイズなど複数の条件で変化します。
600mmや800mmでは画角が非常に狭く、遠くの被写体を大きく写します。鳥と背景の距離が十分に離れていれば、F11でも背景を大きくぼかすことができます。RF800mm F11 IS STMで野鳥を撮ると、背景の草木が大きくぼけて被写体が浮き上がる場面は珍しくありません。
一方、50mm F1.2のような大口径標準レンズとはボケ方の作り方が異なります。50mm F1.2では近距離でも浅い被写界深度を得やすいのに対し、800mm F11では長い焦点距離と撮影距離を利用して背景を整理します。F値だけでボケ量を判断せず、撮影距離まで含めて考える必要があります。背景とボケの関係は背景処理とボケ表現を解説した記事でも詳しく紹介しています。
AFはF値だけで決まらないが暗所では条件が厳しくなる
一眼レフ時代はレンズの開放F値によって使用できるAF測距点やAFそのものに制限が出る機種がありました。EOS Rシリーズでは撮像センサー上でAFを行うため、RF600mm F11 IS STMやRF800mm F11 IS STMのようなF11固定レンズでもAF撮影が成立しています。
それでも「F11でもAFできる」ことと「F1.2と同じ条件でAFできる」ことは同じではありません。実際にセンサーへ届く光が少なくなるため、夕方や暗い林、コントラストの低い被写体ではAFにとって難しい条件になります。被写体検出性能が高いカメラでも、光そのものが不足すれば撮影条件は厳しくなります。
野鳥撮影ではF値だけでなく、背景へ枝が重なっているか、鳥の大きさが画面内で十分か、シャッタースピードが確保できているかもAF結果へ影響します。AFとMFをどのように使い分けるかはAFとMFの特徴を解説した記事で詳しく整理しています。
手ブレ補正や高感度性能で「暗さ」はどこまで補えるか
RFレンズのF値が大きくても、レンズ内IS、ボディー内手ブレ補正を搭載するEOS Rシリーズの一部機種、高感度性能、RAW現像などによって撮影可能な範囲は広がっています。一方、これらはF値の差そのものを消す機能ではありません。何を補えて何を補えないのかを分けて考える必要があります。
手ブレ補正は静止した被写体には強いが被写体ブレは止められない
RF24-105mm F4-7.1 IS STM、RF100-400mm F5.6-8 IS USM、RF100-500mm F4.5-7.1 L IS USM、RF200-800mm F6.3-9 IS USM、RF600mm F11 IS STM、RF800mm F11 IS STMなどにはレンズ内ISが搭載されています。対応するボディでは、ボディー側の手ブレ補正と協調して補正できる組み合わせもあります。
手ブレ補正によって低速シャッターを使いやすくなるため、風景、建築物、止まっている鳥、静物などではF値が大きいレンズでもISO感度を低く保ちやすくなります。例えば1/250秒が必要だった手持ち撮影を1/60秒まで下げられれば、露出上は2段分の余裕が生まれます。
一方、鳥が羽ばたいている、選手が走っている、子どもが動いているといった被写体の動きはISでは止められません。カメラが揺れなくても被写体が動けば写真はぶれます。この違いを理解すると、F8やF11が困る場面を判断しやすくなります。レンズ内ISとボディー内手ブレ補正の違いはCanonの手ブレ補正を解説した記事で詳しく紹介しています。
高ISOはF値の不足を補えるが画質との交換になる
ミラーレスカメラではISOオートを利用して、必要なシャッタースピードを維持しながら明るさを確保できます。F8やF11の超望遠で飛翔する鳥を撮影するなら、Mモードで1/2000秒など必要なシャッタースピードを設定し、開放F値を使い、ISOオートへ任せる方法が実用的です。
これによって露出不足を避けられますが、ISO感度を上げるほどノイズが増え、細部や階調が失われやすくなります。特に羽毛や毛並みのような細かな質感では、高ISOノイズ処理によって微細な模様が滑らかになることがあります。
それでもISO感度を恐れてシャッタースピードを必要以上に遅くし、被写体ブレを起こせば細部はさらに失われます。動体では低ISOを最優先するのではなく、必要なシャッタースピードを先に確保し、その結果として必要なISO感度を受け入れるほうが撮影成功率を高めやすくなります。センサーと高感度ノイズの関係は撮像センサーの構造と高感度性能を解説した記事でも詳しく取り上げています。
RAW現像は露出を調整できるがレンズを明るくする機能ではない
RAW現像では露出補正、シャドウ、ハイライト、ノイズ低減などを細かく調整できます。暗めに撮影した画像を後から持ち上げることも可能で、現在の現像ソフトでは高感度ノイズをかなり自然に処理できるようになっています。
しかし画像編集で露出を上げることは、撮影時に取り込めなかった光そのものを増やすことではありません。大きく持ち上げれば暗部ノイズも強調され、白飛びして失われた情報を完全に復元することもできません。F2.8のレンズをF8のレンズで置き換えて、後処理だけで同じ撮影条件にできるわけではありません。
画像編集はF値の弱点を消す手段ではなく、撮影時に得られた情報を整える工程です。F値、シャッタースピード、ISO感度を撮影時に適切に組み合わせ、そのうえでRAW現像を使うほうが画質を保ちやすくなります。RFレンズの光学性能そのものについてはRFレンズの解像力とボケを解説した記事も参考になります。
明るいRFレンズと暗いRFレンズは何が違うのか
RFシステムにはF1.2、F2、F2.8の明るいレンズと、F7.1、F8、F9、F11のレンズが同時に存在します。この違いは単純な性能の上下ではなく、撮影目的の違いです。明るさを取れば大型化しやすく、軽さや長い焦点距離を取れば開放F値が大きくなりやすいため、用途に応じた選択が必要です。
RF50mm F1.2やRF85mm F1.2は暗所とボケを優先した設計
RF50mm F1.2 L USMやRF85mm F1.2 L USMは、RFマウントを代表する大口径単焦点です。F1.2ではF2.8より2段以上、F5.6より4段以上多くの光を取り込めるため、室内、夕方、夜間などで高速シャッターを維持しやすくなります。
人物撮影では浅い被写界深度を利用し、背景を大きくぼかして被写体だけを浮かび上がらせることもできます。F1.2は単に暗い場所を明るく撮るためだけでなく、ピント面を薄くして写真表現を変えるための機能でもあります。
その代わりRF50mm F1.2 L USMは約950gあり、軽量な標準単焦点ではありません。明るさ、解像力、ボケを重視するためにサイズと重量を受け入れたレンズです。大口径RF単焦点の特徴はRF単焦点レンズの特徴と使い方でも詳しく紹介しています。
RF24-70mm F2.8とRF24-105mm F4-7.1は目的が違う
標準ズームでも考え方は同じです。RF24-70mm F2.8 L IS USMはズーム全域F2.8で、暗所、人物、ブライダル、イベントなどで高速シャッターとボケを確保しやすいレンズです。重量は約900gあり、携帯性より明るさと光学性能を優先しています。
RF24-105mm F4-7.1 IS STMは約395gで、24mmから105mmまでを一本でカバーできます。70mmを超えて105mmまで使え、重量はRF24-70mm F2.8 L IS USMの半分以下です。その代わり望遠側ではF7.1になります。
旅行や日常撮影で長時間カメラを持つなら395gの軽さは大きな利点です。室内イベントで人物の動きを止めるならF2.8の価値が高くなります。同じ標準ズームでも、どちらが上という関係ではなく、何を優先した設計かが異なります。RF24-70mm F2.8の人物撮影での特徴はRF24-70mm F2.8 L IS USMのポートレート撮影を解説した記事で詳しく紹介しています。
超望遠ではF値を下げるほどサイズと価格が大きく変わる
超望遠では明るさの違いがレンズサイズへ特に大きく影響します。RF800mm F11 IS STMは約1,260gですが、800mmでF5.6を実現する大口径Lレンズになると、レンズの直径も重量も大きくなります。必要な有効口径がまったく異なるためです。
RF800mm F11 IS STMはF11に固定することで、800mmを比較的軽量な機材として持ち歩けるようにした製品です。晴天の野鳥や月、航空機などを中心に撮るなら、F11よりも800mmを手持ちで運べることを優先する価値があります。
一方、早朝や夕方の野生動物、曇天のスポーツなどでは、より明るい超望遠レンズが有利です。撮影時間帯と被写体によって「明るさ」と「機動力」のどちらを優先するかが変わります。RF800mm F11 IS STMの特徴はRF800mm F11 IS STMを詳しく解説した記事でも確認できます。
撮影ジャンル別にRFレンズの暗さを考える
F値の数字だけを見ても、自分の撮影で問題になるかは分かりません。必要なシャッタースピード、撮影時間帯、被写体の動き、焦点距離によって重要度が大きく変わります。RFレンズを選ぶときは「暗いか明るいか」より、そのF値が自分の撮影条件でどこまで影響するかを見るほうが実用的です。
旅行や日常撮影では小型軽量レンズの利点が大きい
旅行、散歩、家族写真、風景、街中のスナップでは、常に高速シャッターが必要なわけではありません。静止した建物や風景なら手ブレ補正を使ってシャッタースピードを下げることができ、日中ならF7.1でも十分な光量があります。
この用途では、RF24-105mm F4-7.1 IS STMの約395gという軽さや、24mmから105mmまで一本で撮れる便利さが大きな価値になります。F2.8ズームを持ち歩いても、実際の風景撮影ではF5.6やF8へ絞ることも多いため、常に明るいレンズが必要とは限りません。
日中中心で軽装を優先するなら、開放F値が大きくても撮影上の弱点が出にくくなります。RFマウントにはこうした軽量ズームから大口径Lレンズまで選択肢があり、用途で使い分けられます。RF標準ズーム全体の違いはCanon RF標準ズームレンズをまとめた記事でも確認できます。
野鳥や飛行機では日中と夕方で評価が変わる
RF100-400mm F5.6-8 IS USM、RF100-500mm F4.5-7.1 L IS USM、RF200-800mm F6.3-9 IS USMは、野鳥や飛行機で使われる代表的なRF超望遠ズームです。日中の晴れた環境ならF7.1、F8、F9でも高速シャッターを確保しやすく、軽さや焦点距離の長さを生かせます。
状況が変わるのは夕方や曇天です。飛翔する鳥を1/2000秒で止めようとするとISO感度が急上昇し、F5.6との差が明確になります。林の中の鳥では日中でも光量が少ないため、同じ問題が起きます。
野鳥用レンズを選ぶなら、焦点距離の長さだけでなく「何時ごろ撮ることが多いか」も重要です。明るい昼間中心なら軽量なF8ズームでも使いやすく、日の出直後や日没前を重視するなら大口径レンズの価値が上がります。RF超望遠のラインアップと使い分けはRFマウントとレンズ構成を解説した記事でも紹介しています。
室内・夜景・人物撮影では明るいレンズの効果が大きい
室内イベント、ライブ、人物、夜のスナップなどでは、明るいレンズが直接的な利点になります。被写体が動く人物撮影では手ブレ補正だけでは解決できないため、F1.2、F1.8、F2、F2.8などの開放F値を使ってシャッタースピードを確保できることが重要です。
例えばF2とF8では4段の差があります。F2でISO800なら、同じシャッタースピードをF8で維持するにはISO12800が必要になります。この差は高感度性能の進歩だけで完全に埋めるのが難しく、明るいレンズを使う意味がはっきり表れます。
人物では大きなボケも表現の一部になるため、明るい単焦点やF2.8ズームが使いやすくなります。RF50mm F1.2 L USMのようなレンズは、光量と浅い被写界深度の両方を利用できるのが強みです。大口径標準単焦点の描写はRF50mm F1.2 L USMの作例と描写を紹介した記事でも詳しく確認できます。
まとめ
RFレンズの中にF7.1、F8、F9、F11という開放F値のレンズがあるため、「RFレンズは暗い」という印象が生まれています。実際、同じ焦点距離、シャッタースピード、ISO感度で比較すれば、F値が大きいレンズほどセンサーへ届く光量は少なくなります。夕方や室内で動く被写体を撮る場合には、高速シャッターを維持するためISO感度が上がりやすく、明るいレンズとの差が明確に出ます。
一方、RFレンズ全体が暗いわけではありません。RF28-70mm F2 L USM、RF50mm F1.2 L USM、RF85mm F1.2 L USM、RF24-70mm F2.8 L IS USMなど、RFマウントには非常に明るいレンズも揃っています。RFシステムでは、明るさを優先するレンズと、小型軽量、長い焦点距離、ズームレンジ、携帯性を優先するレンズが明確に作り分けられています。
RF100-400mm F5.6-8 IS USMが約635g、RF600mm F11 IS STMが約930g、RF800mm F11 IS STMが約1,260gであることからも、開放F値を大きくすることで超望遠を大幅に軽量化していることが分かります。RF200-800mm F6.3-9 IS USMも、200mmから800mmまでの広い焦点距離を約2,060gで実現しています。
手ブレ補正や高ISO性能によってF値の大きいレンズでも撮影できる範囲は広がっていますが、手ブレ補正は被写体ブレを止めることはできず、高ISOにはノイズとの交換があります。RAW現像も撮影後の調整には有効ですが、撮影時に入らなかった光を取り戻す機能ではありません。
RFレンズを選ぶときは、「F8だから暗い」「F1.2だから優れている」と数字だけで判断するより、自分が何を撮り、どの時間帯で使い、どの程度の重量を持ち歩けるのかを見ることが重要です。旅行や日中の風景では軽量なF7.1ズーム、日中の野鳥ではF8やF9の超望遠、室内や夜間の人物ではF1.2やF2.8というように、撮影条件ごとに必要な明るさは変わります。
RFレンズでF値が大きいモデルが増えたことは、単純な性能低下ではありません。大口径RFマウントの設計自由度を、圧倒的な明るさへ振り向けたレンズと、軽量化や超望遠化へ振り向けたレンズが同じシステムに共存していることがRFレンズの特徴です。「RFレンズは暗いのか」という疑問への答えは、暗いモデルは確かに存在するものの、そのF値にはサイズ、重量、焦点距離、価格との明確な理由があり、撮影条件に合えば大きな実用性を持つ、ということになります。



