Nikon AF DC-NIKKOR 135mm F2Dレビュー|DC機構・ボケ・使い方を解説
Nikon AF DC-NIKKOR 135mm F2Dは、135mm F2という大口径中望遠に、ニコン独自のデフォーカスイメージコントロールを組み合わせたFマウント単焦点レンズです。通常のレンズでは焦点距離、絞り値、撮影距離、被写体と背景の距離によってボケの大きさや見え方を変えますが、このレンズではさらにDCリングを操作し、球面収差の補正状態を意図的に変えることで前ボケまたは後ボケの描写を調整できます。
焦点距離は135mm、開放F値はF2、最小絞りはF16、レンズ構成は6群7枚、絞り羽根は9枚です。最短撮影距離は1.1m、最大撮影倍率は1/7.1倍、約0.14倍となり、フィルター径は72mm、最大径約79mm、全長約120mm、質量は約815gです。フォーカシングにはリアフォーカス方式を採用し、鏡筒には引き出し式のフードも内蔵されています。
現在の135mm大口径レンズには、最新の光学設計、高速AF、高度なコーティングなどを備えたモデルがあります。それでもAF DC-NIKKOR 135mm F2Dには、解像性能だけでは語れない独自性があります。ボケを偶然の結果として受け入れるのではなく、撮影者がDCリングによって描写へ介入するという設計思想です。この記事ではDC機構の仕組みと使い方、F2開放の描写、135mmポートレート、AF互換性、105mm F2D DCやNIKKOR Z 135mm F1.8 S Plenaとの違い、中古購入時の注意点まで詳しく解説します。
AF DC-NIKKOR 135mm F2Dの基本性能と135mm F2の特徴
AF DC-NIKKOR 135mm F2Dは、ボケを調整するDC機構に注目が集まりやすいレンズですが、その土台にあるのは135mm F2という大口径中望遠です。DCリングを0の位置へ戻せば、通常の135mm F2単焦点として使用できます。狭い画角、長い撮影距離、浅い被写界深度を組み合わせることで、人物や静物を背景から大きく分離できます。
135mm F2が人物と背景を大きく分離する
135mmはフルサイズで対角約18度の狭い画角を持ちます。人物を同じ大きさで写す場合、85mmより撮影者が後方へ下がることになるため、遠くの背景から必要な部分だけを大きく切り取りやすくなります。そこへF2の浅い被写界深度が加わることで、背景の輪郭を大きくぼかしながら人物だけへ視線を集める構図を作れます。
135mmは室内では長すぎることがありますが、屋外ポートレートではその撮影距離が長所になります。人物のすぐ後ろにある背景をぼかすだけでなく、遠くにある木々、建物、花、イルミネーションなどを選んで背景へ配置できます。85mm・105mm・135mmの画角と使い分けについては中望遠レンズとは?85mm・100mm・135mmの使い方と背景ボケ・圧縮効果で詳しく整理しています。
F2開放はボケだけでなくシャッタースピードにも余裕を作る
開放F2は背景をぼかすためだけの仕様ではありません。F2.8より1段多く光を取り込めるため、同じISO感度ならシャッタースピードを速くできます。手ブレ補正を搭載していない135mmレンズでは、夕方や室内でシャッタースピードを確保できる意味は大きくなります。人物が動く撮影では、手ブレだけでなく被写体ブレを抑えるためにも明るさが役立ちます。
一方、F2では被写界深度が浅くなります。人物の目へピントを合わせても顔の角度によって反対側の目がピント面から外れる場合があり、近距離ではさらにシビアです。F2を使う意味は常に最大限ぼかすことではなく、背景の情報量とピントの深さを見ながらF2、F2.8、F4を使い分けることにあります。単焦点の明るさと撮影距離の関係は単焦点レンズの魅力と難しさでも詳しく解説しています。
815gの金属感ある鏡筒と内蔵フードが時代を感じさせる
質量は約815gで、現在の軽量中望遠単焦点と比べるとずっしりしています。最大径約79mm、全長約120mmというサイズだけなら極端に巨大ではありませんが、手にすると金属部品を多く使った世代らしい密度を感じます。フィルター径は72mmで、レンズ前部には引き出し式フードが内蔵されています。
内蔵フードは別体フードを持ち歩く必要がなく、必要なときに前へ引き出して使えます。古いレンズではフードが欠品している中古品も珍しくありませんが、このレンズでは鏡筒と一体なので紛失しにくいことも特徴です。一方、815gを長時間手持ちするならボディを含めた重量は無視できません。レンズ設計が世代ごとにどのように変化してきたかはレンズ設計の進化で変わる撮影体験でも確認できます。
デフォーカスコントロールは何を変える機構なのか
AF DC-NIKKOR 135mm F2Dの中心となる機能がDC、Defocus Image Controlです。名称から「ピントをわざと外すレンズ」と受け取られることがありますが、基本的な目的はピントを外すことではありません。球面収差の補正状態を変えることで、ピント面の前後に生じるボケの性質を調整する機構です。
R側は後ボケ、F側は前ボケの描写を調整する
DCリングには中央の0を挟んでRとFの目盛りがあります。RはRearを示し、人物の後方にある背景側のボケを滑らかにしたいときに使います。FはFrontで、被写体より手前にある前景のボケを整えたいときに使います。リングにはF2、F2.8、F4、F5.6に対応する目盛りが設けられています。
通常のポートレートでは人物の後ろに背景を置く場面が多いため、R側を利用する機会が増えます。一方、花や葉などをレンズの手前へ置き、前ボケとして人物を囲む構図ではF側を使う意味があります。DCは単純な露出設定用リングとは役割が異なり、ボケ描写だけを変化させる特殊な操作部です。DC機構と一般的なコントロールリングの違いはRFレンズのコントロールリングとニコンのデフォーカスコントロールでも紹介しています。
撮影絞りとDCリングの値を合わせるのが基本になる
DCを使用するときは、実際に撮影する絞り値とDCリングの数値を対応させるのが基本です。例えばF2で撮影するときに背景側のボケを調整したいならR2、F2.8ならR2.8といった使い方です。前ボケを整える場合は同じ数値をF側へ設定します。
DCリングを撮影絞りより大きく動かすと、ピント面まで軟化し、いわゆるソフトフォーカスに近い効果が強くなります。これは故障ではなく、球面収差を意図的に大きく残した結果です。ただし人物の目や髪をシャープに残しながら背景だけを整えたい撮影では、むやみに大きな値へ動かさない方が使いやすくなります。絞り値とボケの関係そのものについては絞り羽根の枚数でボケと光芒はどう変わる?でも詳しく解説しています。
DCリングを動かした後はピントを合わせ直す必要がある
DCリングを動かすと光学系の状態が変化し、実際のピント位置も変わります。そのため、先にピントを合わせてからDCリングを操作し、そのままシャッターを切ると狙った場所からピントがずれる場合があります。DCを設定した後に改めてピントを合わせることが基本です。
デジタルカメラなら撮影直後に拡大表示して、ピント面とボケを確認できます。フィルム時代には撮影結果を見るまで効果を確認できなかったため、DC機構には経験が必要でした。現在は同じ構図で0、R2、R2.8などを撮り比べ、ボケとピント面の変化をその場で比較できます。AFとMFを状況によって使い分ける方法はAFとMFの違いとは?で詳しく整理しています。
実写で見る描写力とボケの特徴
AF DC-NIKKOR 135mm F2Dはボケ専用レンズのように語られることがありますが、DCを0にした通常状態でも大口径中望遠として十分な解像力を持っています。一方、設計世代の古さは軸上色収差や逆光などで現れやすく、最新の135mmレンズとは描写傾向が異なります。その違いも含めて使うレンズです。
F2開放でもピント面を残しながら背景を大きくぼかせる
DCリングを0にしてF2で撮影すると、135mmと大口径の組み合わせによる浅い被写界深度をそのまま利用できます。人物では目やまつげへピントを置きながら背景を大きくぼかし、静物では狙った文字や輪郭だけを浮かび上がらせる撮影ができます。少し絞るとコントラストと解像感が安定し、F4からF5.6付近では通常の中望遠単焦点として使いやすくなります。
重要なのは「開放は柔らかく、絞ればシャープ」という単純な二分ではありません。DCの設定、撮影距離、光の状態によってコントラストやボケの見え方が変化します。ピント面の解像とボケの質を別々に観察すると、このレンズの特徴を理解しやすくなります。解像力と見かけのシャープネスの違いはレンズ解像度とは?解像力・シャープネスとの違いで詳しく解説しています。
開放付近では軸上色収差が見えやすい場面がある
F2という大口径と設計年代の組み合わせから、ピント面の前後に紫や緑の色づきが見える場面があります。逆光の髪、白い衣服、金属、木の枝など高コントラストの境界では確認しやすく、ボケの輪郭へ色が乗ると背景の滑らかさにも影響します。
絞ることで軸上色収差は減少しやすく、F2.8やF4へ変更すると描写の印象も変わります。DCを使う撮影では球面収差の状態も変化するため、色収差だけを切り離して考えるより、ピント面のシャープさ、ボケ、コントラストを一緒に確認する方が実写では分かりやすくなります。紫や緑のにじみが発生する仕組みについては色収差とは?紫や緑のにじみが出る原因と撮影・補正方法で詳しく紹介しています。
ボケはDC設定だけでなく背景までの距離によって大きく変わる
DCリングをR側へ設定すれば、どんな背景でも均一に滑らかになるわけではありません。人物のすぐ後ろに細かな枝や金網がある場合と、数十m先に木々や光源がある場合では、同じR2でも見え方が変わります。ボケの大きさと質は、焦点距離、F値、撮影距離、被写体から背景までの距離、背景の模様、DC設定が重なって決まります。
135mm F2の能力を活かすなら、撮影前に人物だけでなく背景を見ることが重要です。遠くの木漏れ日、花、街灯などを背景へ置けば、大きなボケの中へ色や光を配置できます。DCはその背景描写を仕上げる追加手段と考えると扱いやすくなります。レンズの光学性能とボケの見方についてはレンズの光学性能とは?解像力・MTF・色収差・ボケの見方で整理しています。
135mmをポートレートと風景で使いこなす
135mmは50mmや85mmより撮影場所を選ぶ焦点距離です。人物の全身を収めようとすると相応の距離が必要になり、狭い室内や人通りの多い場所では構図を作れないことがあります。しかし撮影距離を確保できる屋外では、背景を整理しやすく、135mmならではの写真を作れます。
ポートレートでは撮影者と人物の距離を確保する
135mmで人物を撮るときは、85mmより一歩二歩という程度ではなく、構図によってかなり後方へ下がる必要があります。バストアップなら比較的扱いやすい一方、全身を入れるにはさらに広い場所が必要です。その距離によって顔の遠近感が穏やかになり、背景の一部分を大きく使った人物写真を作りやすくなります。
距離が長くなると撮影者とモデルの会話はしにくくなるため、ポーズや立ち位置を事前に決める場面も増えます。135mmを単に「85mmよりボケるレンズ」と考えるより、撮影者、人物、背景の三者の位置関係を設計するレンズと考える方が実践的です。135mm特有の撮影距離については135mm単焦点が使いにくい理由で詳しく解説しています。
遠い背景を大きく配置して密度の高い構図を作れる
135mmでは画角が狭いため、遠くの背景から必要な範囲だけを切り出せます。人物の背後に離れた桜並木がある場合、撮影者が人物から距離を取り135mmで切り取ると、花を背景いっぱいへ配置できます。街中なら遠くの建物やイルミネーションを人物の周囲へまとめることもできます。
一般に圧縮効果と呼ばれる見え方は、焦点距離だけが直接作るものではなく、望遠レンズを使うために撮影者が後方へ移動することと、狭い画角で遠方を切り取ることが組み合わさって生まれます。135mmで背景を設計する考え方は望遠レンズの圧縮効果とは?で詳しく整理しています。
風景では広い景色から一部分だけを選ぶ
135mmは風景でも利用できます。24mmや35mmでは目の前に広がる場所全体を画面へ入れやすいのに対し、135mmでは遠くの山頂、斜面に当たる光、霧の層、建物、木々など一部分だけを選んで大きく写します。広大さを直接見せるのではなく、景色の中から主題を発見して切り取る焦点距離です。
山並みを重ねたり、遠くの建物と月を同じ画面へ配置したりすると、中望遠らしい密度の高い構図になります。F2を使って前景をぼかす風景も可能ですが、遠景の解像を重視するならF5.6やF8へ絞る撮影も有効です。135mmで風景を切り取る方法については135mm単焦点で風景を撮るで詳しく解説しています。
AF-DレンズとしてのAFとFマウントでの互換性
AF DC-NIKKOR 135mm F2Dを中古で使うときに、DC機構と同じくらい重要なのがAF互換性です。このレンズはAF-Sのようなレンズ内AFモーターを搭載していません。Fマウント側から機械的に駆動するタイプなので、装着できることとAFが動くことは同じではありません。
AFにはボディ側のAF駆動モーターが必要になる
AF DC-NIKKOR 135mm F2Dは、カメラボディ側のモーターからレンズへ機械的に力を伝えてピントを動かします。そのため、AF駆動モーターを内蔵するFマウント一眼レフではAFを利用できますが、ボディ内モーターを持たない機種ではマニュアルフォーカスになります。
中古レンズの商品説明で「AFレンズ」と書かれていても、所有するボディで自動的にAFが使えるとは限りません。AF-S、AF-P、AF-Dなど世代ごとに駆動方式が異なることがニコンFマウントの互換性を複雑にしています。Fマウントの世代とAF方式についてはニコンFマウントからZマウントまでの歴史で詳しく整理しています。
Dタイプは被写体までの距離情報をカメラへ伝える
製品名末尾のDは、レンズが撮影距離情報をカメラへ伝達するDタイプであることを示します。初期のAF DC-NIKKOR 135mm F2からDタイプへ発展し、フラッシュ調光などで距離情報を利用できるようになりました。絞りリングも残されているため、Fマウントの機械操作と電子連携が混在した時代らしい構造です。
対応するデジタル一眼レフでカメラ側から絞りを操作する場合は、レンズの絞りリングを最小絞りF16へ合わせてロックして使用するのが基本になります。古いFマウントでは「同じマウントだから機能も全部同じ」という関係ではないため、ボディとの組み合わせを確認することが重要です。ニコンを含む各社のシステムの違いはカメラメーカー一覧|各社の特徴と違いでも確認できます。
ZシリーズではFTZを使ってもAFは作動しない
Nikon ZシリーズへはFTZまたはFTZ IIを介して装着できますが、AF DC-NIKKOR 135mm F2Dのようなボディ駆動式AF-DレンズではAFを利用できません。FTZ系アダプターにはFマウント一眼レフのボディが持っていたスクリュードライブ用AFモーターが搭載されていないためです。Zボディではマニュアルフォーカスを前提として使います。
Zシリーズには拡大表示やフォーカス確認などMFを補助する機能があるため、静止した人物や作品撮りなら手動で合わせる使い方は可能です。一方、動く人物を連続的に追う用途ではAF-SやZマウントレンズの方が扱いやすくなります。FからZへの移行とFTZの役割についてもニコンFマウントからZマウントまでの歴史で詳しく解説しています。
105mm F2D DC・105mm F1.4E・Plenaと何が違うのか
ニコンの中望遠には、同じDC機構を持つ105mm F2D、F1.4の大口径を追求した105mm F1.4E ED、Zマウントの135mm F1.8 S Plenaなど、ボケ描写を重視したレンズが複数あります。AF DC-NIKKOR 135mm F2Dの特徴を理解するには、これらと何が違うのかを見ると分かりやすくなります。
105mm F2D DCより画角が狭く撮影距離も長くなる
AF DC-NIKKOR 105mm F2Dは135mm F2Dと同じDC機構を持つ兄弟レンズです。105mmの方が画角が広く、同じ人物を同じ大きさで写す場合には撮影者が近い位置へ立てます。スタジオや比較的狭い場所では105mmの方が扱いやすく、135mmは広い屋外で背景をさらに整理しやすい性格です。
どちらもF2、9枚絞り、72mmフィルター、DC機構という共通点がありますが、105mmは約620g、135mmは約815gで、135mmの方が重量も増えます。焦点距離による人物との距離や背景の入り方を理解するには被写体との距離で写真はどう変わる?が参考になります。
105mm F1.4E EDはDCではなく大口径と新しい光学設計でボケを作る
AF-S NIKKOR 105mm f/1.4E EDはF1.4というさらに明るい開放値を持ち、DCリングによる球面収差の調整ではなく、光学設計そのものによって解像とボケを両立する方向へ進んだレンズです。レンズ内AFモーターを搭載し、AF-D世代より新しいカメラシステムとの親和性も高くなっています。
135mm F2Dは撮影者がボケの性格へ手動で介入できること、105mm F1.4EはDC操作なしで大きなボケと高い描写性能を得ることが違いです。ボケの作り方そのものが異なるため、スペック表のF値だけでは比較できません。105mm F1.4Eの特徴はNIKKOR 105mm f/1.4E EDで詳しく解説しています。
NIKKOR Z 135mm F1.8 S Plenaは同じ135mmでも設計思想が大きく異なる
NIKKOR Z 135mm F1.8 S Plenaは、同じ135mmの大口径単焦点でもZマウント用として設計された新しい世代のレンズです。開放F1.8、最新の光学設計、レンズ内AFを組み合わせ、画面周辺まで大きく滑らかなボケを作ることを重視しています。DCリングを操作して球面収差を変える135mm F2Dとは、ボケへのアプローチが根本的に異なります。
Plenaは撮影者がDC量を調整する必要がなく、カメラのAF機能と組み合わせて素早く撮影しやすいレンズです。135mm F2Dは操作項目が一つ増える代わりに、前ボケと後ボケを撮影者が意識して変化させられます。135mmという焦点距離が世代を越えてどう進化したかを見る場合はNIKKOR Z 135mm F1.8 S Plenaと比べると違いが明確です。
中古でAF DC-NIKKOR 135mm F2Dを選ぶときの注意点
AF DC-NIKKOR 135mm F2Dは中古で探すことが中心になるため、一般的な光学状態だけでなくDCリング、AF駆動、絞りリング、内蔵フードなど、このレンズ特有の操作部も確認したいところです。特殊機構を持つレンズだけに、単純に前玉がきれいかどうかだけでは判断できません。
DCリングが0・R・F側へ正常に動くか確認する
最も重要な確認項目の一つがDCリングです。中央の0からR側、F側へ動かし、各目盛りで操作できるか、ロック機構に異常がないかを確認します。リングの動作だけでなく、実際に0、R、Fで撮影し、ボケやピント位置に変化が現れるかを見ると機構の状態を確認しやすくなります。
DC機構はこのレンズを選ぶ最大の理由なので、ここに不具合がある個体は通常の135mm F2として使えても本来の価値が大きく失われます。ボケそのものは単なる量だけでなく輪郭や二線ボケ、口径食など複数の要素で決まります。ボケを評価するときの基本はレンズの光学性能とは?で詳しく整理しています。
AF駆動とピント精度は実写で確認したい
ボディ内モーターを搭載した一眼レフが使える場合は、近距離と遠距離を交互にAFさせ、途中停止や異常音がないか確認します。大口径F2では被写界深度が浅いため、AFが動くだけでなく狙った位置へ安定して合うかも重要です。ボディとレンズの組み合わせによってAF微調整が必要になる可能性もあります。
DCリングを動かすとピント位置も変化するため、DCを設定した状態でAFし直して撮影するテストも役立ちます。中古レンズではレンズ側だけでなくボディ側のAF精度も結果へ影響するため、一枚だけで判断せず複数回撮影して傾向を見る方が確実です。ピント精度を含むAFとMFの使い分けはAFとMFの違いとは?で詳しく解説しています。
カビ・曇り・絞り・フード・フィルターねじまで確認する
光学系では前玉と後玉の傷、内部のカビ、曇り、強い埃を確認します。大口径レンズは開放撮影で使用する機会が多いため、曇りによるコントラスト低下や逆光時のフレアは写りへ影響しやすくなります。絞り羽根に油が回っていないか、F2からF16まで正常に動くかも確認したい部分です。
内蔵フードがスムーズに引き出せるか、固定できるか、72mmフィルターねじが変形していないかも見ておきます。外装がきれいでも長期間保管された個体では内部状態が異なるため、外観ランクだけで判断しないことが重要です。古いFマウントを含めたレンズの価値や世代差を広く比較する場合は神レンズ総合ガイドも参考になります。
AF DC-NIKKOR 135mm F2Dならではの価値
現代の135mmレンズと比較すると、AF DC-NIKKOR 135mm F2Dには明確な古さがあります。レンズ内AFモーターはなく、手ブレ補正もなく、ZシリーズではFTZを介してもAFを利用できません。開放付近では色収差も現れやすく、DCリングを使えば撮影手順も増えます。それでも、このレンズには新しいレンズへ置き換えただけでは得られない操作と描写があります。
ボケを撮影前に意識させるDCリングが写真の作り方を変える
通常のレンズではピントを合わせ、絞りと構図を決めれば撮影へ進みます。135mm F2Dではさらに「前ボケをどうするか」「後ボケをどうするか」を考えてDCリングへ手を伸ばします。撮影者が背景の形や距離を観察するきっかけになるため、ボケを単なるF値の結果として扱わなくなります。
R2と0を比較して差が小さい場面もあれば、背景の枝や点光源で印象が変わる場面もあります。この効果の強弱を探すこと自体が撮影プロセスの一部です。ニコンのポートレートレンズが世代によってどのように変化したかはニコンはポートレートに不向き?でも中望遠レンズを含めて紹介しています。
135mm F2という基本性能だけでも中望遠単焦点として成立する
DCリングを常に使う必要はありません。0へ戻せば通常の135mm F2として撮影でき、狭い画角、大きな背景ボケ、明るい開放値を利用できます。人物撮影だけでなく、舞台、静物、風景の切り取りなど、135mmが適する被写体ならDCを使わない撮影でも成立します。
特殊機構を持つレンズだからといって毎回特殊効果を加える必要はなく、通常状態で撮り、背景が気になる場面だけDCを利用する使い方もできます。135mmという焦点距離自体の特徴を理解するには135mm単焦点が使いにくい理由を見ると、必要な撮影距離と画角を整理できます。
Canon EF135mm F2L USMとは同じ135mm F2でも方向性が違う
同時代の代表的な135mm F2としてCanon EF135mm F2L USMがあります。こちらはリングUSMによる高速AFとシンプルな操作、高い光学性能を重視したレンズで、DCリングのようなボケ調整機構はありません。焦点距離と開放F値が同じでも、ニコンは球面収差を操作してボケへ介入し、キヤノンはレンズ本来の描写としてボケを完成させる方向です。
両者を比較すると、レンズの個性は焦点距離やF値だけでは決まらないことが分かります。AF方式、光学補正、操作部、ボケへの設計思想まで含めて写真の作り方が変わります。EF135mm F2L USMの特徴はCanon EF135mm F2L USMで詳しく解説しています。
まとめ
Nikon AF DC-NIKKOR 135mm F2Dは、135mm F2という大口径中望遠にデフォーカスイメージコントロールを組み合わせた、Fマウントを代表する特殊単焦点レンズです。レンズ構成は6群7枚、9枚絞り、最短撮影距離1.1m、最大撮影倍率1/7.1倍、フィルター径72mm、最大径約79mm、全長約120mm、質量約815gという仕様を持ち、リアフォーカスと内蔵フードを採用しています。
DCリングは中央の0からR側とF側へ動かすことで球面収差の補正状態を変え、R側では後ボケ、F側では前ボケの描写を調整します。撮影絞りとDCリングの数値を対応させる使い方が基本で、設定を大きく外すとピント面まで軟化するソフトフォーカス的な描写が現れます。またDCリングを動かすとピント位置も変わるため、設定後に改めてピントを合わせる必要があります。
135mmとF2の組み合わせだけでも人物を背景から大きく分離でき、屋外ポートレートでは遠くの背景を選んで狭い画角へ取り込めます。DCを使わない0設定でも通常の大口径中望遠として利用できる一方、開放付近では軸上色収差など設計世代を感じる描写もあります。最新レンズのようにすべてを強く補正する方向とは異なり、その特性を理解して使うタイプのレンズです。
AF-DレンズなのでAFにはボディ側の駆動モーターが必要で、ZシリーズではFTZまたはFTZ IIを介して装着できてもAFは利用できません。中古で選ぶ際には光学状態だけでなく、DCリング、AF駆動、絞り、内蔵フードまで確認する必要があります。操作の手間まで含めてボケを作り込むという独自の撮影体験こそが、AF DC-NIKKOR 135mm F2Dが他の135mm大口径単焦点と大きく異なる部分です。


