Joseph Petzval Métamorphose 35mm F1.8をCanon RFで使う|7段階ボケコントロールと描写の特徴
Joseph Petzval Métamorphose 35 f/1.8 Focus-coupled Bokeh Control Art Lensは、Lomographyが2026年10月に予約受付を開始したフルサイズミラーレス向け35mm F1.8レンズです。Canon RF、Nikon Z、Sony Eの3マウントが用意され、Canon RF版はEOS Rシリーズへ直接装着できます。最大の特徴は、Petzvalレンズで知られるぐるぐるボケに加えて、周辺像が中心から外側へ引き伸ばされるような光学的なワープ表現を7段階で調整できることです。
一般的な35mm F1.8は、画面全体の解像力、収差補正、AF速度、近接性能などを競います。Métamorphose 35 f/1.8はその方向から大きく離れ、補正し切らない光学的な癖を写真や映像の表現へ積極的に利用します。ボケレベルを変えるだけで同じ被写体と背景の見え方を大幅に変えられるため、35mm単焦点を交換せずに複数の描写を作れることが、このレンズの中心的な価値です。
Joseph Petzval Métamorphose 35mm F1.8の特徴
Canon RFへ直接装着できるフルサイズ対応35mm F1.8
Canon RF版はフルサイズ対応として設計されているため、EOS R5シリーズ、EOS R6シリーズ、EOS R8、EOS RPなどで35mm本来の画角を使えます。35mmは標準レンズより広く、超広角ほど遠近感が強くならないため、人物と背景を一緒に見せる環境ポートレート、街中のスナップ、室内、風景、映像などへ使いやすい焦点距離です。開放F1.8なので被写体へ近づけば背景を大きくぼかせますが、このレンズでは単純なボケ量だけでなく、ボケの形や周辺像の流れ方まで撮影表現へ組み込めます。
一方でAFレンズではありません。フォーカスは完全なマニュアル操作で、電子接点も搭載していません。カメラからレンズへAF指示を出したり、ボディ側のダイヤルから絞りを変更したりするレンズではなく、ピント、絞り、ボケレベルをレンズ側で操作します。RFマウントにはAF対応レンズとMF専用レンズが混在しているため、フルサイズ用サードパーティレンズを探している場合は、この違いを最初に分けて考える必要があります。RFマウントで使える製品全体の考え方はRFマウントのサードパーティ製フルサイズレンズの選び方でも整理しています。
7段階のボケコントロールが普通の35mm単焦点との最大の違い
Métamorphose 35 f/1.8には、専用のボケコントロールリングが設けられています。ボケレベルは1から7まで変更でき、低いレベルでは画面周辺へ向かって柔らかさが増し、背景の点光源にはシャボン玉のようなボケが現れます。レベルを上げるにつれてPetzvalらしいぐるぐるした流れと、中心から外側へ像が引き伸ばされるようなワープ表現が強まり、レベル7では中央の被写体を残しながら周辺が大きく動いて見える描写を作れます。
さらにフォーカス連動ボケコントロール機構を採用しており、ボケレベルを変える操作とピント位置の関係を考慮した設計になっています。一般的なレンズでは光学系を動かして収差の状態を変えるとピント位置まで動きやすくなりますが、Métamorphoseではボケ調整時のフォーカスシフトを抑えながら効果を変更できることが特徴です。RFマウントではSIGMAやTAMRONのAFレンズが注目されやすい一方、こうした特殊なMFレンズもサードパーティならではの選択肢です。現在のRF用サードパーティレンズ全体はRFマウント サードパーティレンズおすすめで確認できます。
35mm F1.8・最短35cm・67mmフィルター径の基本仕様
焦点距離は35mm、開放F値はF1.8で、絞りはF22まで設定できます。レンズ構成は5群6枚、最短撮影距離は0.35m、フィルター径は67mmです。一般的な35mm F1.8として見れば最短35cmはマクロレンズほど寄れる仕様ではありませんが、人物の上半身、小物、料理、花、商品などを背景と一緒に撮る距離としては使いやすく、近距離ほどボケとワープの変化も確認しやすくなります。
35mmは撮影者が一歩動くだけで背景との位置関係が大きく変わります。被写体へ近づけば主役を大きくしながら背景をぼかしやすくなり、少し離れれば周囲の情報を残した構図になります。その変化へ7段階のボケコントロールが加わるため、Métamorphoseでは焦点距離を変えなくても、撮影距離、絞り、ボケレベルの組み合わせによって写真の印象をかなり変えられます。35mmという焦点距離自体の使い方は35mm単焦点レンズが難しい理由と使いこなす方法も参考になります。
7段階のボケコントロールで描写はどう変わる?
ボケレベル1は周辺が柔らかくなる穏やかな描写
ボケレベル1では、Métamorphoseの効果を最も控えめに使えます。中央付近の主役を明確に残しながら画面端へ向かって徐々に柔らかくなり、背景の点光源には丸みのあるボケが現れます。一般的な現代レンズの均質な描写とは違いますが、レベル7ほど強烈なワープは出ないため、人物、街中のスナップ、日常的な映像などでもレンズの個性を残しながら使いやすい設定です。
ポートレートでは、人物を画面中央付近へ置き、背後へ街灯、イルミネーション、木漏れ日、葉、建物の窓などを配置すると、背景の変化を確認しやすくなります。35mmでは人物だけを大きく切り取るより、周辺環境まで構図へ入れられるため、被写体の周囲へ独特の柔らかさを作るMétamorphoseとの組み合わせが成立します。35mmで人物と背景を一緒に扱う方法はRF35mm F1.8でポートレートを撮る方法でも詳しく扱っています。
中間レベルではぐるぐるボケとワープの強さを構図に合わせられる
7段階の意味は、レベル1と7の二択で使うことではありません。中間レベルを使うことで、被写体の周囲へどの程度の流れを作るかを構図に合わせられます。背景へ細かな枝葉が多い場面、夜の点光源が並ぶ場面、建物の直線が続く場所では、効果を少し強めるだけでも周辺の方向性が見えやすくなります。反対に、背景が単色の壁や空だけの場合は、ボケレベルを上げても効果を視覚的に確認しにくくなるため、背景選びまでレンズ表現の一部になります。
通常のレンズでは、背景を整理するためにF値、焦点距離、撮影距離を変えます。Métamorphoseではそこへもう一つ「光学効果の強さ」という要素が加わります。同じF1.8、同じ撮影距離でもボケコントロールリングを動かせば周囲の印象が変わるため、撮影者が写真の視線誘導をレンズ側で調整できます。背景ボケは単純に大きければ成立するものではなく、主役との関係で使う必要があります。通常の35mm F1.8がどの程度ボケるのかを確認する場合はRF35mm F1.8 MACRO IS STMの特徴と撮り方と比較すると違いを整理しやすくなります。
ボケレベル7では中央へ視線を集める強いワープ表現になる
レベル7はMétamorphoseの個性を最も強く出す設定です。中央付近は被写体を認識できる状態に残しながら、周辺像が外側へ引き伸ばされるように変化し、画面全体に強い動きを作ります。静止している人物でも背景が流れることで速度感を加えられ、映像ではめまい、混乱、緊張、夢、回想など、現実とは異なる心理状態を表す視覚効果として使えます。
強い効果ほど、被写体の配置も重要です。主役を画面端へ置くと、主役自身まで周辺のワープへ巻き込まれやすくなります。中央に顔や目など見せたい部分を置き、周辺に流れを作る要素を配置すると、Petzval系レンズの中心から外側へ向かう描写を利用しやすくなります。レンズの解像力だけを比較して選ぶ一般的な方法とは評価軸が異なり、収差や周辺描写まで作品へ使うレンズです。レンズ描写を解像力だけで判断しない考え方はレンズの光学特性と描写の違いでも扱っています。
Canon EOS Rシリーズで使うときの操作方法
電子接点がないためピント合わせは完全なマニュアル操作
Canon RF版には電子接点がなく、AFには対応しません。フォーカスリングを自分で回してピントを合わせます。開放F1.8では被写界深度が浅くなるため、人物の目、小物の文字、商品のエッジなど、写真で最も見せたい部分へピント位置を合わせる必要があります。EOS Rシリーズには電子ビューファインダーと背面モニターがあるため、一眼レフの光学ファインダーだけでMFを行う場合と比べ、拡大表示やフォーカスピーキングを利用しやすい環境です。
フォーカスピーキングでは合焦している輪郭を色で確認し、最終的なピントは拡大表示で確認する使い方が適しています。静止した人物、商品、花、風景、建築、物撮りなどでは時間をかけてピントを追い込めますが、高速で動く野鳥やスポーツを追い続ける用途ではAFレンズの方が扱いやすくなります。Métamorphoseは動体追従性能を求めるレンズではなく、撮影者がピント位置と光学効果を決めるレンズです。MF撮影の基本はAFとMFの違いとマニュアルフォーカスの使い分けで確認できます。
EOS R7やR50では約56mm相当の画角になる
Canon RFマウントなので、APS-CのEOS R7、EOS R10、EOS R50、EOS R50 V、EOS R100にも装着できます。キヤノンのAPS-Cでは35mm判換算約1.6倍の画角になるため、35mmレンズは約56mm相当です。フルサイズで使う35mmより写る範囲が狭くなり、標準レンズに近い感覚で人物、スナップ、小物などを撮れます。F1.8の明るさ自体は変わらないため、暗い場所でシャッタースピードを確保する用途にも使えます。
ただし、Métamorphoseの特徴である周辺のぐるぐるボケやワープ効果を考えると、APS-Cではフルサイズと同じ見え方にはなりません。APS-Cはレンズが作るイメージサークルの中央部分を使用するため、フルサイズで大きく現れる画面周辺の描写が切り取られます。そのため、35mm本来の広い画角と周辺効果を最大限に使うならフルサイズ、約56mm相当の画角で中央寄りの描写を使うならAPS-Cという違いが生まれます。APS-C機で使うレンズ選び全体はCanon APS-Cで使いやすいレンズの選び方でも整理しています。
動画では180度のフォーカススローとMOD 0.8ギアを活用できる
Métamorphoseは静止画だけを想定したレンズではなく、映像制作を強く意識した機械設計になっています。フォーカスリングの回転角は180度あり、短い回転だけで無限遠から近距離まで一気に移動するレンズに比べ、ピント位置を細かく調整できます。フォーカス、絞り、ボケコントロールの各リングはクリックレスで、MOD 0.8のフォローフォーカスギアにも対応しています。撮影中にピントやボケレベルを滑らかに変える使い方が想定されています。
レンズ側には1/4インチのレンズサポートも備え、動画リグへ組み込んだ際の支持にも利用できます。ボケレベル1から7へ撮影中に変化させれば、同じカットの中で穏やかな描写から強いワープ描写へ移行する演出も可能です。AFが勝手に別の被写体へ移動しないため、撮影者がピント移動を完全に管理したい映像ではMFが利点になります。静止画用と動画用の機材運用を分ける考え方は静止画と動画でカメラを分ける考え方でも扱っています。
RF35mm F1.8や普通の35mm単焦点と何が違う?
RF35mm F1.8 MACRO IS STMは実用性、Métamorphoseは描写表現を優先する
Canon純正RF35mm F1.8 MACRO IS STMも同じ35mm F1.8ですが、性格は大きく異なります。RF35mm F1.8はAF、最大撮影倍率0.5倍のハーフマクロ、最短撮影距離0.17m、レンズ内手ブレ補正を備え、人物、風景、旅行、料理、小物、日常スナップまで一本で対応しやすい実用型の35mm単焦点です。EOS Rシリーズの人物検出や瞳検出AFも利用できるため、失敗を減らしながら幅広い撮影へ使えます。
Métamorphoseは最短0.35mでAFも手ブレ補正もなく、電子接点もありません。その代わり、純正RF35mmでは作れない7段階のぐるぐるボケとワープ描写をレンズだけで作れます。両者は同じ焦点距離とF値を持っていても、置き換え関係として考える必要はありません。日常撮影を一本で広く処理するなら純正RF35mm、撮影段階から独特の描写を作るならMétamorphoseという役割の違いがあります。純正35mmの実用性はCanon RF35mm F1.8 MACRO IS STMレビューで詳しく確認できます。
ポートレートでは人物だけでなく背景そのものが重要になる
Métamorphoseをポートレートで使う場合、人物だけを見て撮影場所を決めると、このレンズの特徴を十分に使えません。ぐるぐるボケやワープは背景の模様や点光源によって見え方が変わるため、木々、街灯、イルミネーション、窓、建物の反復模様、看板、車のライトなど、周辺へ変化を作れる場所が重要です。被写体を中央付近へ置き、背景を周辺へ広げる構図では、人物へ視線を集めながらPetzvalらしい描写を出しやすくなります。
35mmで顔だけを大きく写そうとすると人物へ近づく必要があり、鼻や頬などカメラに近い部分が相対的に大きく見えやすくなります。Métamorphoseの周辺効果も加わるため、自然な顔立ちを残したい撮影では顔のアップだけに限定せず、上半身、全身、人物と環境を組み合わせた構図の方が35mmらしさを使えます。逆に遠近感や歪みまで作品へ取り込みたい場合には、近距離撮影も表現として成立します。人物撮影で焦点距離を選ぶ考え方はCanonポートレートレンズの選び方で整理しています。
高性能な万能35mmを探す人ではなく描写を作り込みたい人向け
Métamorphose 35 f/1.8は、画面全体を均一にシャープに写すこと、AFで素早く撮ること、一本で何でも処理することを最優先したレンズではありません。電子接点がなく、ピントも絞りもボケレベルも撮影者が操作します。撮影テンポはAFレンズより遅くなりますが、その操作自体が写真や映像の見え方へ直接つながります。ボケレベルを一段変え、撮影距離を変え、背景位置を変えながら描写を追い込むような撮影と相性があります。
特に、ポートレート、ファッション、ミュージックビデオ、短編映像、作品撮り、幻想的なスナップ、ライブ撮影など、普通のレンズでは得られない視覚効果を最初から狙う場合に存在価値が明確になります。反対に、子どもや動物をAFで追いたい場合、旅行で素早く記録したい場合、周辺まで癖の少ない描写を求める場合には、通常のRF35mmや他のAF単焦点の方が扱いやすくなります。RFマウントでは純正以外の選択肢も増えているため、特殊レンズを含めて選ぶ場合はRFマウントの弱点とサードパーティレンズの現状も合わせて確認できます。
まとめ
Joseph Petzval Métamorphose 35 f/1.8 Focus-coupled Bokeh Control Art Lensは、Canon RFへ直接装着できるフルサイズ対応35mm F1.8のマニュアルフォーカスレンズです。2026年10月に予約受付が始まり、国内直販価格は79,800円、発送開始は2026年12月が予定されています。Canon RF、Nikon Z、Sony Eの3マウントがあり、Canon RF版ではフルサイズEOS Rシリーズだけでなく、EOS R7やR50などのAPS-C機でも使用できます。
最大の特徴は、Petzvalレンズ特有のぐるぐるボケと、周辺像が外側へ引き伸ばされるようなワープ表現を7段階で調整できることです。レベル1では周辺が柔らかくなる比較的穏やかな描写となり、レベルを上げるにつれて背景の流れが強まり、レベル7では中央の主役を残しながら周辺へ強烈な動きを作れます。焦点距離35mm、開放F1.8、最短撮影距離0.35m、フィルター径67mm、5群6枚構成で、通常の絞りに加えて差し込み式の特殊絞りプレートも利用できます。
電子接点やAFを備えないため、一般的なRF35mm F1.8 MACRO IS STMの代用品として選ぶレンズではありません。EOS Rシリーズの拡大表示やフォーカスピーキングを使いながら手動でピントを合わせ、背景、撮影距離、絞り、ボケレベルを組み合わせて描写を作ります。180度のフォーカススロー、MOD 0.8ギア、クリックレスリング、1/4インチレンズサポートも備えるため、動画でピントやボケの変化を撮影中に演出する用途にも対応します。
普通の35mm単焦点で得られる自然で均質な描写とは明確に方向が異なり、収差や周辺の崩れまで撮影表現へ利用するレンズです。RFマウントでAF性能や万能性を求める場合には他の選択肢がありますが、撮影後の加工だけに頼らず、レンズ内部の光学効果によって写真や映像の雰囲気を変えたい場合には、Métamorphose 35 f/1.8ならではの役割があります。


