Canonの85mm F1.2Lシリーズは、長年にわたって写真愛好家に愛され続けてきました。最新の光学技術を搭載したRF85mm F1.2L USMと、クラシックで独特な描写が魅力のEF85mm F1.2L USM（I型）は、それぞれ異なる個性を持っています。どちらも唯一無二の表現力を備えていますが、その性能や特徴には大きな違いがあります。
最新技術のRF85mmと味わい深いEF85mm（I型）を徹底比較
最新技術のRF85mmと味わい深いEF85mm（I型）を徹底比較し、描写力やコストパフォーマンス、投資価値の観点から両者の魅力を詳しく解説します。あなたの撮影スタイルや目的に最適なレンズを見つけるための参考になれば幸いです。
Canon 85mm F1.2Lシリーズの進化と背景
– EF85mm F1.2L USM（I型）の登場と革新
– EF85mm F1.2L II USMへの進化と改良点
– RF85mm F1.2L USMの登場と現代への適応
EF85mm F1.2L USM（I型）の登場と革新
Canon EF85mm F1.2L USM（I型）は、1989年に登場したクラシックなレンズで、開放F1.2という非常に明るい設計が特徴です。このレンズは当時の技術としては画期的で、浅い被写界深度による独特のボケ味を可能にし、ポートレートやスタジオ撮影で高い評価を受けていました。CanonはこのレンズでUSM（ウルトラソニックモーター）を搭載し、静音かつ高速なオートフォーカスを実現しましたが、現代の水準に比べるとAF速度はやや遅めです。また、色収差や逆光耐性においても、現代レンズと比べるとコーティング技術が未熟だったため、特有のフレアが出ることがありました。しかし、このフレアや収差も含めた描写が、ユーザーに独特の味わいとして好まれていました。Canonにとっても、F1.2のレンズは技術力を示す象徴的な製品であり、後継モデルの開発に繋がる礎となりました。
EF85mm F1.2L II USMへの進化と改良点
2006年には、EF85mm F1.2L II USMが登場し、I型からの改良が施されました。II型では、AF速度が向上し、色収差の抑制やコーティング技術の強化が行われ、I型で見られたフレアやゴーストが軽減されました。特に、ポートレートだけでなく、自然な色再現が求められるシーンでも優れた描写を提供できるよう改良されています。このモデルは、CanonのEFレンズの中でも高性能な「L」レンズシリーズの一員として、プロフェッショナルから愛用されてきました。改良されたコーティング技術により、特に逆光下での性能が向上し、よりシャープな画像を提供できるようになりました。また、II型の登場により、Canon 85mm F1.2はポートレート撮影に限らず、あらゆるシーンで使える高性能レンズとしての地位を確立しました。この進化は、後のRFマウント用レンズの開発にも影響を与え、さらなる技術革新へと繋がります。
RF85mm F1.2L USMの登場と現代への適応
そして2019年、CanonはRF85mm F1.2L USMを発表し、85mm F1.2シリーズに新たな進化をもたらしました。RFマウント用に設計されたこのレンズは、EF85mm F1.2L II USMと比べて、さらに高い解像力や色収差の抑制が実現されています。また、Canon独自のBR（Blue Spectrum Refractive Optics）を採用し、色収差を抑えることで、クリアな描写を提供することが可能になりました。RFレンズはミラーレスカメラ用として、デジタル時代の高解像度を最大限に引き出すために開発されたもので、電子制御が強化され、瞳AFや高速デュアルピクセルAFに対応しています。このように、I型からII型、そしてRFモデルへと進化する過程で、Canonの光学技術が進化し、最新モデルではこれまでにない描写力と利便性を提供しています。
RF85mm F1.2L USMとEF85mm F1.2L USM I型の基本的な特徴
– RFマウントとEFマウントの違い
– 光学性能とボケ表現の比較
– 重量とサイズの違い
RFマウントとEFマウントの違い
RF85mm F1.2L USMはCanonのミラーレス用のRFマウントシステム向けに設計されており、ミラーレスカメラに最適化された構造を持っています。一方、EF85mm F1.2L USM I型は一眼レフカメラのEFマウントを使用しています。これにより、RFレンズはマウント径の広さとフランジバックの短さを活かし、より優れた設計自由度を実現しています。この違いにより、RFバージョンはシャープネスや周辺光量の均一さなど、画質面での向上が図られています。また、RFレンズは電子制御が高度に行われており、より高速なデータ通信と操作性が実現しています。これにより、フォーカス精度や応答性も向上しており、RFマウントのメリットが発揮されています。これに対し、EF85mm I型はアダプターを介してミラーレスカメラでも使用可能ですが、操作性や通信速度の面ではRFマウントに劣ることが多いです。
光学性能とボケ表現の比較
RF85mm F1.2L USMは最新の光学設計とコーティング技術が採用されており、特に逆光撮影時や明暗差の大きなシーンでのフレア・ゴースト抑制性能に優れています。EF85mm F1.2L USM I型も美しいボケ表現で知られていますが、RFモデルはそれに加え、さらに滑らかなボケを実現しています。また、RFレンズではBRレンズ（Blue Spectrum Refractive Optics）を採用しており、色収差を極限まで抑えています。これにより、開放F1.2の明るさでも被写体の輪郭がくっきりと描写され、自然な色再現が可能となっています。対して、EF85mm I型はやや色収差が見られる場面もあり、特に絞り開放での描写に独特の味わいがあるため、クラシックな表現を好むユーザーに支持されています。
重量とサイズの違い
RF85mm F1.2L USMは、EF85mm F1.2L USM I型よりもやや軽量化されていますが、それでも比較的重いレンズです。RFバージョンはミラーレスボディとの組み合わせを考慮した設計で、グリップ感やバランスが向上しています。EF85mm I型は、一眼レフボディと組み合わせた際の重量バランスが取られていますが、アダプター経由でミラーレスカメラに装着すると、やや前傾気味になることがあります。また、RFレンズは新しい素材を活用することで、堅牢性を保ちながらも軽量化が図られています。重量とサイズにおいては両者に大きな差はありませんが、RFレンズは装着時の取り回しが良く、長時間の撮影でも疲れにくい点が特徴です。
RF85mm F1.2L USMとEF85mm F1.2L USM I型の操作性とフォーカス性能
– AF速度の比較
– フォーカス精度の違い
– マニュアルフォーカス操作感
AF速度の比較
RF85mm F1.2L USMは、最新のデュアルピクセルAFを活かして非常に高速なオートフォーカス性能を発揮します。特に顔検出や瞳AFとの連動で精度が高く、被写体が動いても素早くピントを合わせることができます。EF85mm F1.2L USM I型も高いAF性能を備えていますが、RFモデルに比べるとやや遅く、静止した被写体向けの設計です。両者の違いは、特に動体撮影で顕著に現れ、RFバージョンの優れた追従性が実感できる場面が多くなります。また、RFレンズはノイズも少なく、静音性が向上しているため、静かな場所での撮影にも向いています。
フォーカス精度の違い
RF85mm F1.2L USMは、EFマウントレンズと比較してフォーカス精度が非常に高く、特に開放F1.2の浅い被写界深度でその精度が活きます。EF85mm I型も高精度なピント合わせが可能ですが、RFモデルは最新の電子制御技術を取り入れることで、さらに細かい調整が可能となっています。特に、瞳AF機能と組み合わせることで、人物撮影において瞳にピントを正確に合わせることができ、ピントずれが少なくなります。これにより、RF85mm F1.2L USMは、シビアなシーンでの信頼性が高く、ピントがより安定した描写を提供します。
マニュアルフォーカス操作感
RF85mm F1.2L USMには、コントロールリングが搭載されており、マニュアルフォーカス時に精密な調整が可能です。EF85mm I型は従来のフォーカスリングのみを搭載していますが、RFバージョンでは、操作性が向上し、カスタマイズ可能なコントロールリングにより、撮影者の意図に沿った設定が行えます。特に、RFバージョンのリング操作は滑らかで、非常に軽い力で操作できるため、手ぶれを抑えつつ微調整が可能です。この点において、RFレンズの方が取り回しやすく、マニュアル操作を頻繁に行うユーザーには魅力的な特徴と言えます。
RF85mm F1.2L USMとEF85mm F1.2L USM（I型）の描写力と色収差の抑制性能
– BRレンズの有無による違い
– コーティング技術の差異
– 開放時の描写特性
BRレンズの有無による違い
RF85mm F1.2L USMは、Canon独自のBR（Blue Spectrum Refractive Optics）レンズを採用しています。このBRレンズは青色の波長に特化した補正機能を持ち、色収差を徹底的に低減することが可能です。これにより、特に被写体の輪郭部分での色ズレが抑えられ、自然で鮮やかな発色が実現されています。対照的に、EF85mm F1.2L USM（I型）にはBRレンズが搭載されておらず、開放F1.2で撮影する際にはわずかに色収差が生じることがあります。しかし、I型の描写はその独特の柔らかさと温かみを持っており、色収差がかえって写真に個性をもたらすこともあります。この差は、RFモデルがクリアで鮮明な描写を追求するのに対し、EF（I型）はクラシックでフィルムライクな表現を好むユーザーに支持される要因となっています。
コーティング技術の差異
RF85mm F1.2L USMには、最新のASC（Air Sphere Coating）やSWC（Sub Wavelength Structure Coating）が施されており、逆光時のフレアやゴーストの発生を効果的に抑制しています。このコーティングにより、RFレンズは強い光源が画面に入るシーンでもシャープでクリアな描写が可能です。特に逆光環境での性能が向上しており、被写体の鮮明さを保ちながら背景のフレアやゴーストを最小限に抑えられるため、RF85mm F1.2L USMは風景や建物の撮影でもその性能を発揮します。一方、EF85mm F1.2L USM（I型）はスーパー・スペクトラ・コーティングが採用されていますが、RFモデルに比べるとわずかに逆光耐性で劣る部分があり、フレアやゴーストが発生しやすい傾向があります。この差異が、RFモデルの鮮明でクリアな描写と、EF（I型）のクラシックな風合いの違いに現れています。
開放時の描写特性
RF85mm F1.2L USMとEF85mm F1.2L USM（I型）は、どちらも開放F1.2の明るさが特徴的ですが、描写の傾向には大きな違いがあります。RF85mm F1.2L USMは、開放で撮影した際にも高い解像力を維持し、被写体の輪郭がくっきりと再現されます。また、ボケ味も滑らかで、被写体を立体的に浮かび上がらせるような描写が可能です。これに対し、EF85mm F1.2L USM（I型）はややソフトフォーカス的な描写が特徴で、被写体が柔らかく溶け込むような印象を与えます。特に、絞り開放での撮影では、背景のボケが独特の柔らかさを持ち、温かみのある表現が好まれます。RF85mm F1.2L USMがシャープでモダンな描写に適しているのに対し、EF85mm F1.2L USM（I型）はクラシックで夢のような雰囲気を求める撮影に適していると言えます。
RF85mm F1.2L USMとEF85mm F1.2L USM（I型）の画質とコストパフォーマンス
– 解像力とディテール再現力の差
– 色収差の補正性能
– コストパフォーマンスと投資価値
解像力とディテール再現力の差
RF85mm F1.2L USMは、Canonの最新設計技術を駆使しており、非常に高い解像力とディテール再現力を誇ります。特に、画面の隅々まで鮮明な描写が可能で、被写体の微細なディテールを忠実に表現します。EF85mm F1.2L USM（I型）も優れた解像力を持っていますが、RFレンズと比べると、特に周辺部での描写が若干甘くなることがあります。RFレンズは、ミラーレスカメラと組み合わせることで、その性能を最大限に発揮し、高解像度の現代的な描写を実現します。EF（I型）も独特の柔らかい描写が特徴で、開放時の柔らかさを活かしたクラシックな雰囲気を出すことができるため、用途や好みに応じた選択が可能です。RF85mm F1.2L USMの高解像度は、特に大判プリントや作品制作において顕著な効果を発揮し、プロフェッショナルな表現を追求するユーザーに適しています。
色収差の補正性能
RF85mm F1.2L USMには、Canon独自のBRレンズ（Blue Spectrum Refractive Optics）が搭載されており、色収差の補正性能が向上しています。このBRレンズにより、開放での使用時でも色収差がほぼ感じられず、非常に自然で鮮明な描写が可能です。EF85mm F1.2L USM（I型）も色収差はある程度抑えられていますが、特に開放時には被写体のエッジ部分でわずかな色ズレが見られることがあります。この違いは、特に高解像度のシーンや被写体の輪郭がくっきりと描かれるシーンで顕著に現れます。RFレンズのBRレンズは、シャープな画像を提供するだけでなく、自然な色再現を実現し、色収差の少ないクリアな描写を提供します。RF85mm F1.2L USMの色収差補正性能は、現代の高画質基準に合致しており、ディテールや色彩にこだわるユーザーに最適です。
コストパフォーマンスと投資価値
RF85mm F1.2L USMは最新のミラーレス専用設計を採用しており、非常に高性能でプレミアムな価格が設定されています。しかし、初期購入価格が高いため、中古で手放す際には価格の差が大きくなりやすく、売却時にある程度の負担が生じる可能性があります。対照的に、EF85mm F1.2L USM（I型）は比較的手頃な価格で購入できるため、初期コストを抑えやすい利点があります。さらに、EFレンズは中古市場でも一定の需要があり、手放す際の価格変動も少ないため、気軽に売買しやすい点が魅力です。
RFレンズは、Canonのミラーレスシステムを使用するユーザーにとって、将来的なアップグレードや高解像度機材に対応する投資として価値が高いといえますが、購入と売却を考慮した総コストの観点では、EF85mm F1.2L USM（I型）の方が手軽でコストパフォーマンスに優れています。どちらのレンズも価格に見合った性能を持ちますが、長期的な資産として考える場合、RFレンズの投資価値は高い一方で、負担を抑えたいユーザーにはEF85mm F1.2L USM（I型）が選ばれやすい理由となっています。
RF85mm F1.2L USMとEF85mm F1.2L USM（I型）比較表
| 項目 | Canon RF85mm F1.2L USM | 評価 | Canon EF85mm F1.2L USM（I型） | 評価 |
|---|---|---|---|---|
| 焦点距離 | 85mm | 〇 | 85mm | 〇 |
| 最大絞り | F1.2 | 〇 | F1.2 | 〇 |
| レンズ構成 | 13群14枚 | 〇 | 7群8枚 | × |
| 絞り羽根数 | 9枚 | 〇 | 8枚 | × |
| 最短撮影距離 | 0.85m | 〇 | 0.95m | × |
| フィルター径 | 82mm | 〇 | 72mm | × |
| 重量 | 約1195g | × | 約1020g | 〇 |
| 防塵・防滴性能 | あり | 〇 | なし | × |
まとめ
RF85mm F1.2L USMとEF85mm F1.2L USM（I型）は、Canonの85mm F1.2シリーズとして、それぞれ異なる特徴と魅力を持つレンズです。RF85mm F1.2L USMは、最新のBRレンズや高性能コーティングにより色収差の抑制、逆光耐性、そして開放での解像力が向上しており、現代的でクリアな描写を求める撮影に適しています。一方、EF85mm F1.2L USM（I型）は、クラシックな柔らかい描写と温かみのあるボケ味が特徴で、特有の風合いを楽しめる点が魅力です。
また、価格面ではRFモデルはプレミアムレンズとして高額な投資が必要ですが、ミラーレスシステムの将来性を考慮すれば投資価値が高いと言えます。対してEF（I型）は比較的手頃な価格で入手でき、手放す際の価格差も小さいため、コストパフォーマンス重視のユーザーに向いています。それぞれの特徴や価格を考慮し、求める表現や使用シーンに合わせて最適なレンズを選ぶことが重要です。
