New FD100-300mm F5.6Lレビュー|EF版との違い・マクロ性能・中古選び
Canon New FD100-300mm F5.6Lは、1985年11月に発売されたFDマウント用の高性能望遠ズームレンズです。100mmから300mmまでの焦点距離をカバーし、ズーム全域で開放F5.6を維持する設計を採用しています。蛍石とUDレンズを組み合わせることで、望遠レンズで発生しやすい色収差を補正した、キヤノンのLシリーズに属する一本です。
このレンズの特徴は、単に300mmまで撮影できることだけではありません。100~200mmの焦点距離ではマクロ機構を使用でき、最大撮影倍率0.3倍の近接撮影に対応しています。遠くの風景や動物を撮影する望遠ズームとしてだけでなく、花や昆虫などの小さな被写体を大きく写せることが魅力です。
1987年にはEFマウント用のEF100-300mm F5.6Lが登場し、オートフォーカスに対応しました。両レンズは焦点距離、開放F値、蛍石とUDレンズの採用などに共通点がありますが、ピント合わせの方式、最短撮影距離、最大撮影倍率、対応するカメラには違いがあります。現在、中古で選ぶ場合には、それぞれの特徴を理解することが重要です。
この記事では、キヤノンカメラミュージアムの公表仕様を基に、New FD100-300mm F5.6Lの光学性能、100~300mmの画角、マクロ機構、EF版との違い、FDマウントの使い方、中古品の確認ポイントを詳しく解説します。現代のEOS Rシリーズへ装着する方法や、フィルムカメラで使用する魅力も取り上げます。発売から40年以上が経過したLレンズを、現在どのように楽しめるのか整理していきます。
New FD100-300mm F5.6Lとは?1985年発売の望遠Lレンズ
New FD100-300mm F5.6Lは、FDマウント時代の末期に登場した3倍望遠ズームレンズです。発売当時の価格は95,000円で、高性能なLシリーズを比較的手の届きやすい価格で提供することを目的として開発されました。蛍石とUDレンズを採用した本格的な光学系を、710gのレンズにまとめたことが特徴です。
1985年11月発売のNew FDマウント用Lレンズ
New FD100-300mm F5.6Lが発売された1985年は、キヤノンがFDマウントの一眼レフカメラを展開していた時代です。1987年にEOSシステムとEFマウントが登場する前の製品であり、マニュアルフォーカスを基本とした設計になっています。New F-1、A-1、AE-1 Program、T90などのFDマウントカメラと組み合わせて使用するレンズです。
当時のキヤノンは、Lシリーズを高画質レンズの系列として展開していました。大口径望遠レンズだけでなく、ズームレンズにも特殊光学材料を採用し、色収差や各種収差の補正を進めています。New FD100-300mm F5.6Lもその流れの中で開発され、100~300mmという実用的な焦点距離と高い光学性能を両立しています。
発売時価格95,000円という設定も、このレンズの位置付けを理解する手掛かりになります。通常のNew FD100-300mm F5.6と比較すると高価ですが、蛍石とUDレンズを採用したLシリーズとしては価格と携帯性を重視した製品です。開放F値をF5.6に抑えることで、レンズの大型化を避けながら望遠域の性能を高めています。
FDマウント時代のカメラと交換レンズの関係については、Canon FDマウントとは?フィルムカメラとFDレンズの選び方・使い方で詳しく解説しています。
蛍石とUDレンズを採用した10群15枚の光学設計
New FD100-300mm F5.6Lの光学系は10群15枚で構成されています。キヤノンの公式資料では、第2レンズに蛍石、第7レンズにUDガラスを採用したことが説明されています。これらの特殊光学材料は、望遠レンズで問題となる色収差の補正に重要な役割を果たします。
色収差は、光の波長によって屈折の仕方が異なることから発生する現象です。望遠レンズでは、明暗差の大きい部分に紫色や緑色の色づきが現れたり、輪郭の鮮明さが低下したりすることがあります。特に300mmクラスのレンズでは、長い焦点距離に伴う色収差の補正が画質を左右します。
蛍石は通常の光学ガラスとは異なる分散特性を持ち、色収差を効果的に抑えるために使用されます。UDガラスも異常分散特性を持つ特殊な光学材料で、蛍石と組み合わせることで残存する色収差の補正に役立ちます。New FD100-300mm F5.6Lでは、この2種類の材料によって二次スペクトルを抑え、望遠域での鮮明な描写を実現する設計となっています。
現在のLレンズにも特殊光学材料を使用する設計思想は引き継がれています。光学性能と収差補正の基本的な関係については、レンズの光学性能とは?解像力・MTF・色収差・ボケの見方でも紹介しています。
New FD100-300mm F5.6Lの基本スペック
New FD100-300mm F5.6Lは、100~300mmの焦点距離をカバーするF5.6通しの望遠ズームレンズです。レンズ構成は10群15枚、絞り羽根は8枚で、最小絞りはF32となっています。フィルター径は58mmで、最大径71.4mm、全長172mm、質量710gという仕様です。
| 項目 | 仕様 |
|---|---|
| 製品名 | Canon New FD100-300mm F5.6L |
| 発売年月 | 1985年11月 |
| 発売時価格 | 95,000円 |
| マウント | Canon New FD |
| 焦点距離 | 100~300mm |
| 開放F値 | F5.6 |
| 最小絞り | F32 |
| レンズ構成 | 10群15枚 |
| 特殊光学材料 | 蛍石1枚、UDレンズ1枚 |
| 絞り羽根 | 8枚 |
| 通常時の最短撮影距離 | 2m |
| マクロ時の最短撮影距離 | 1m |
| 通常時の最大撮影倍率 | 0.18倍 |
| マクロ時の最大撮影倍率 | 0.3倍(200mm時) |
| フィルター径 | 58mm |
| 最大径 | 71.4mm |
| 全長 | 172mm |
| 質量 | 710g |
| フォーカス方式 | マニュアルフォーカス |
| 手ブレ補正 | 非搭載 |
全長172mmという寸法は、100~300mmの望遠ズームとして比較的コンパクトな設計です。F5.6通しのため大口径F2.8ズームほどの明るさは得られませんが、重量や携帯性を抑えられます。フィルムカメラで持ち歩くことを考えても、710gという質量は扱いやすさにつながります。
なお、New FD100-300mm F5.6Lはマニュアルフォーカスレンズです。1987年発売のEF100-300mm F5.6Lとは異なり、カメラ本体によるオートフォーカス駆動には対応していません。同じ100~300mmのEFレンズとの違いを理解するには、EF100-300mm F5.6レビュー|中古で使う価値・画質・L版やUSMとの違いも参考になります。
New FD100-300mm F5.6Lの画質と描写の特徴
New FD100-300mm F5.6Lの画質を評価するうえでは、100~300mmの焦点距離ごとの役割と、蛍石・UDレンズによる色収差補正が重要です。キヤノンは、このレンズを高コントラストで鮮明な描写を実現する望遠ズームとして開発しました。発売当時の光学設計を理解すると、現在のレンズと比較したときの特徴も整理しやすくなります。
100~200mmでは人物や風景を撮りやすい
100mmから200mmの範囲は、人物、花、風景の一部を切り取る撮影に使いやすい焦点距離です。100mm側では人物の上半身や背景を含む構図を作りやすく、200mm側では被写体をさらに大きく写せます。ズームによって画角を調整できるため、撮影位置を大きく変えずに構図を整えられます。
開放F値は100mmから300mmまでF5.6で一定です。可変F値の望遠ズームとは異なり、焦点距離を変更しても設定したF値を維持できるため、マニュアル露出で撮影するときにも扱いやすくなります。フィルムカメラでは特に、ズーム操作によって露出設定が変化しないことが便利です。
人物撮影では、F5.6でも望遠レンズ特有の背景ボケを作れます。被写体と背景の距離を確保し、200mm側で撮影すると背景の写る範囲が狭くなり、人物を中心とした構図になります。開放からF8へ絞れば被写界深度が広がり、顔や衣服などを鮮明に写す範囲を調整できます。
風景撮影では、100mm側で遠くの山並みや建物を切り取り、200mm側ではその一部分を強調する使い方ができます。広角レンズで景色全体を写す方法とは異なり、被写体の形や配置を整理した写真を作りやすくなります。F値と背景ボケの関係については、F値を知れば広がるカメラの世界|明るさとボケのコントロール術で詳しく解説しています。
300mm側では野鳥・鉄道・スポーツ撮影に対応
300mmの焦点距離は、遠くの被写体を大きく写す望遠撮影に適しています。野鳥、鉄道、飛行機、屋外スポーツなどでは、撮影者が被写体へ近づけない場面が数多くあります。100~300mmのズームを備えていることで、遠くにいる被写体を探しながら、距離や動きに合わせて画角を変更できます。
35mm判フルサイズでは300mmの望遠レンズとなり、APS-Cサイズのデジタルカメラでは約480mm相当の画角になります。APS-Cでは撮像面の中央部分を使用するため、同じレンズでも写る範囲が狭くなります。小さな野鳥を画面内で大きく捉える場合には、この画角の違いが撮影結果に影響します。
New FD100-300mm F5.6Lはオートフォーカスを搭載していないため、動く被写体を撮影する際には手動でピントを調整します。飛行中の野鳥や高速で移動する乗り物では、被写体の動きに合わせた操作が必要です。止まっている野鳥や遠景、あらかじめ動く位置を予測できる鉄道などでは、ピントを固定して撮影する方法も使用できます。
手ブレ補正機構も内蔵していないため、300mmで撮影するときにはシャッタースピードの設定が重要です。デジタルカメラで手持ち撮影する場合、静止した被写体なら1/500秒程度から検討し、動く被写体では1/1000秒以上を使用する方法があります。300mm望遠レンズの活用については、300mm単焦点レンズの使い道|野鳥やスポーツで活きる望遠描写でも解説しています。
蛍石とUDレンズによる色収差補正と解像性能
New FD100-300mm F5.6Lの大きな特徴は、望遠域での色収差補正を重視した設計です。300mmクラスのレンズでは、被写体の輪郭に色づきが発生すると、写真全体の鮮明さにも影響します。蛍石とUDレンズを組み合わせることで、通常の光学ガラスだけでは補正しにくい収差を抑えています。
色収差の違いを確認しやすい被写体には、青空を背景にした木の枝、白い建物、逆光気味の金属部分などがあります。明るい部分と暗い部分の境界を拡大し、紫色や緑色の縁取りがどの程度生じているかを観察します。レンズの状態やピント精度も結果に影響するため、同じ撮影条件で比較すると光学的な特徴が分かりやすくなります。
また、レンズの性能を評価するときには、画面中央だけでなく周辺部にも注目します。100mm、200mm、300mmで同じ被写体を撮影し、F5.6とF8の画像を比較すると、焦点距離や絞りによる描写の変化を確認できます。特に細かな模様や文字のある被写体は、解像力を比較する用途に適しています。
レンズの解像性能は、単純なシャープさだけでなく、細部のコントラストや収差の状態によっても変わります。MTFなどの指標を理解すると、レンズの性能を整理しやすくなります。測定値の見方については、MTF50とは?レンズ解像力を数値で比較するときの見方と注意点でも紹介しています。
New FD100-300mm F5.6Lのマクロ性能を解説
New FD100-300mm F5.6Lは、通常の望遠撮影に加えてマクロ機構を搭載しています。通常時の最短撮影距離は2mですが、マクロ設定では1mまで接近できます。最大撮影倍率は0.3倍で、望遠ズームを使用した近接撮影にも対応しています。
100~200mmで使えるマクロ機構
キヤノンの日本語公式資料では、New FD100-300mm F5.6Lのマクロ機構は100~200mmのズーム域で使用できると説明されています。通常撮影では最短撮影距離が2mですが、マクロ設定では1mまで近づけます。最大撮影倍率0.3倍は200mmで得られる仕様です。
望遠ズームにマクロ機構を組み込む利点は、遠景と近接撮影を一本のレンズで使い分けられることです。例えば、遠くにいる鳥を300mmで撮影し、近くの花を写したい場合にはマクロ対応域へ変更できます。別のマクロレンズへ交換することなく、撮影対象を切り替えられます。
100mmから200mmの範囲で近接撮影ができるため、被写体との距離や背景の写り方を調整できます。100mm側では周囲の環境を含めた構図を作り、200mm側では小さな被写体を大きく写す方法が考えられます。焦点距離と撮影倍率の関係を理解すると、マクロ機構を活用しやすくなります。
一般的なマクロレンズには等倍撮影に対応する製品もあり、0.3倍とは撮影できる大きさが異なります。撮影倍率と被写体の大きさの関係については、マクロレンズとは?特徴・選び方・使い方を初心者向けに解説で詳しく紹介しています。
最大撮影倍率0.3倍でどこまで大きく写せるか
最大撮影倍率0.3倍とは、実物の大きさに対してフィルム面や撮像面に0.3倍の大きさで像を結ぶことを意味します。例えば、実物の幅が100mmの被写体を撮影すると、撮像面上では約30mmの幅になります。35mm判フルサイズの横幅は36mmなので、100mm程度の被写体を画面いっぱいに近い大きさで写せます。
倍率0.3倍で35mm判フルサイズを使用する場合、画面いっぱいに写せる被写体の範囲は約120×80mmです。これは、はがきよりも少し小さい範囲を撮影できる計算になります。花全体、比較的大きな昆虫、時計、アクセサリー、小型の電子機器などを撮影する用途に適しています。
APS-Cサイズのデジタルカメラで使用した場合も、レンズ自体の最大撮影倍率は0.3倍です。APS-Cでは撮像面が小さいため、同じ倍率でも画面内に入る被写体の範囲が狭くなります。キヤノンAPS-Cの画面幅を約22.3mmとすると、最大倍率では約74mmの幅が画面いっぱいになります。
| 撮影倍率 | 35mm判で画面いっぱいに写る範囲 |
|---|---|
| 0.18倍 | 約200×133mm |
| 0.26倍 | 約138×92mm |
| 0.3倍 | 約120×80mm |
| 0.5倍 | 約72×48mm |
| 1.0倍 | 36×24mm |
0.3倍は等倍マクロほどの拡大率ではありませんが、望遠ズームとしては実用的な近接撮影能力です。花の一部分や昆虫の全身を写す用途では、被写体との距離を確保しながら撮影できます。焦点距離と撮影距離が写真の見え方へ与える影響については、被写体との距離で写真はどう変わる?撮影距離・焦点距離・構図の基本でも解説しています。
花や昆虫を撮影するときの設定と使い方
New FD100-300mm F5.6Lのマクロ機構は、花や昆虫などの近接撮影に活用できます。200mmの焦点距離を使用すれば、被写体へ極端に近づかずに大きく写すことができます。昆虫を撮影する場合には、撮影者が近づくことで逃げられる状況を減らしやすくなります。
マクロ撮影では、ピントが合って見える範囲が非常に狭くなります。F5.6の開放では背景を大きくぼかす表現ができますが、花の中心部分だけにピントが合い、花びらの一部がぼけることもあります。F8やF11へ絞ることで被写界深度を広げ、写したい部分の鮮明さを確保します。
小さな昆虫を撮影する場合には、被写体の目や頭部にピントを合わせる方法が基本となります。マニュアルフォーカスでは、ピントリングを動かすだけでなく、撮影者自身が前後へ移動してピント位置を調整する方法も使用できます。デジタルミラーレスカメラなら拡大表示を利用できるため、細かなピント合わせが容易になります。
風が吹いている場所では、花や草が動くことでピント位置が変化します。シャッタースピードを速くする、風が弱まる瞬間を待つ、被写体が動かない位置から撮影するなどの工夫が効果的です。キヤノンのマクロレンズの種類については、Canonマクロレンズ一覧|RF・EF・EF-S・EF-Mを比較して用途別に選ぶでも紹介しています。
New FD100-300mm F5.6LとEF100-300mm F5.6Lの違い
New FD100-300mm F5.6LとEF100-300mm F5.6Lは、名称が似ているだけでなく、光学設計にも共通する特徴があります。どちらも100~300mmのF5.6通しで、蛍石とUDレンズを採用した10群15枚構成です。しかし、マウントとフォーカス方式が異なるため、使用できるカメラや操作方法には明確な違いがあります。
発売年・光学構成・最短撮影距離・重量の比較
New FD100-300mm F5.6Lは1985年11月発売で、EF100-300mm F5.6Lは1987年6月発売です。EF版はEOSシステムの登場に合わせて開発されたレンズで、FD版とは異なりオートフォーカスに対応しています。発売時価格はFD版が95,000円、EF版が93,800円でした。
光学構成はいずれも10群15枚で、絞り羽根は8枚、最小絞りはF32です。フィルター径も58mmで共通しており、基本的な光学仕様には近い部分が数多くあります。蛍石とUDレンズによる色収差補正を重視した設計思想も共通しています。
| 項目 | New FD100-300mm F5.6L | EF100-300mm F5.6L |
|---|---|---|
| 発売年月 | 1985年11月 | 1987年6月 |
| 発売時価格 | 95,000円 | 93,800円 |
| マウント | New FD | EF |
| 焦点距離 | 100~300mm | 100~300mm |
| 開放F値 | F5.6 | F5.6 |
| 光学構成 | 10群15枚 | 10群15枚 |
| 特殊光学材料 | 蛍石・UD | 蛍石・UD |
| 絞り羽根 | 8枚 | 8枚 |
| 最小絞り | F32 | F32 |
| 最短撮影距離 | 通常2m/マクロ1m | 1.5m |
| 最大撮影倍率 | マクロ0.3倍 | 0.26倍 |
| フィルター径 | 58mm | 58mm |
| 最大径 | 71.4mm | 75mm |
| 全長 | 172mm | 166.6mm |
| 質量 | 710g | 695g |
| フォーカス | MF | AF |
| 手ブレ補正 | なし | なし |
FD版はマクロ設定で1mまで接近でき、最大0.3倍の撮影倍率を実現します。EF版は最短撮影距離1.5m、最大撮影倍率0.26倍となっており、近接撮影性能に違いがあります。重量ではEF版が15g軽く、全長も短くなっています。
両者は同じ焦点距離と開放F値を持つLシリーズですが、撮影環境によって使い勝手が変わります。フィルムカメラでマニュアルフォーカスを楽しむならFD版、EFマウントのEOSでオートフォーカスを使うならEF版という違いが明確です。EF版の特徴については、EF100-300mm F5.6Lの画質・使い方・中古購入の注意点でも詳しく紹介しています。
FD版はMF、EF版はAFに対応する
New FD100-300mm F5.6Lは、レンズ側の操作によってピントを合わせるマニュアルフォーカス方式です。FDマウントのフィルム一眼レフでは、ファインダーを見ながらピントリングを操作して撮影します。オートフォーカスモーターを搭載していないため、被写体の動きに合わせて撮影者自身がピントを調整します。
EF100-300mm F5.6Lは、EOSシステム用のオートフォーカスレンズです。カメラ本体から電子信号を受け取り、レンズ内部の駆動機構によってピントを調整します。EF版はUSM搭載モデルではなく、初期EFレンズに採用されていたAF駆動方式を使用しています。
絞りの操作方法にも違いがあります。FD版ではレンズに設けられた絞りリングを使用し、対応するFDカメラでは自動露出に必要な設定も行えます。EF版は電子制御によって絞りを動かす仕組みで、対応するEOSカメラからF値を設定します。
現代のEOS Rシリーズで使用する場合にも、装着方法が異なります。FD版はFD-RF変換アダプターを使用し、EF版はEF-EOS Rマウントアダプターを使用します。対応するレンズとカメラの関係については、Canonレンズ対応表|RF・RF-S・EF・EF-S・EF-Mはどのカメラで使える?で詳しく解説しています。
通常のFD100-300mm F5.6やEF100-300mm USMとの違い
キヤノンには、100~300mmの焦点距離を持つ複数のレンズが存在します。New FD100-300mm F5.6Lのほかに、通常のNew FD100-300mm F5.6、EF100-300mm F5.6、EF100-300mm F5.6L、EF100-300mm F4.5-5.6 USMなどがあります。中古販売ページでは名称が似ているため、型番を正確に確認することが重要です。
1980年発売の初期New FD100-300mm F5.6は、9群14枚構成で質量835g、最短撮影距離2m、最大撮影倍率0.18倍という仕様でした。1985年には改良型が登場しており、通常モデルでも構成や近接撮影機能が変更されています。New FD100-300mm F5.6Lは、蛍石とUDレンズを採用した10群15枚構成のLモデルとして区別できます。
また、EF100-300mm F4.5-5.6 USMは1990年に登場した別系列のズームレンズです。100mm側でF4.5、300mm側でF5.6となる可変F値方式を採用し、USMによるオートフォーカス駆動に対応しています。重量は540gで、F5.6通しのLモデルとは光学設計も操作性も異なります。
中古市場でNew FD100-300mm F5.6Lを探すときには、レンズ前部の赤いリングとL表記、New FDマウントであることを確認します。名称の似たモデルを価格だけで比較すると、異なる光学系や仕様の製品を選んでしまいます。EF100-300mm F4.5-5.6 USMについては、EF100-300mm F4.5-5.6 USMレビュー|540gの軽量望遠ズームでも解説しています。
New FD100-300mm F5.6Lの中古購入とEOS Rでの使い方
New FD100-300mm F5.6Lは、現在では中古市場で入手するレンズです。発売から長い年月が経過しているため、レンズの外観や光学系だけでなく、ズーム機構、ピントリング、絞り羽根、マウント部分の状態も確認する必要があります。現代のデジタルカメラで使用する場合には、マウントの互換性も重要な確認項目です。
中古購入時に確認したいレンズの状態
中古のNew FD100-300mm F5.6Lを購入する際には、最初にレンズの光学系を確認します。前玉と後玉の傷、内部のカビ、曇り、コーティングの劣化などを観察します。望遠ズームでは複数のレンズ群を使用しているため、内部の状態が写真のコントラストや鮮明さに影響します。
レンズ内部にカビや曇りがある場合、逆光時に白っぽい写りになったり、細部のコントラストが低下したりすることがあります。特に蛍石やUDレンズを採用した高性能レンズでは、光学系の状態を重視したいところです。前玉の小さな傷だけでなく、内部の広い範囲に発生した曇りやカビを確認することが重要です。
次に、ズーム操作とピントリングの動作を確認します。New FD100-300mm F5.6Lでは、焦点距離を変更する操作とピント調整を手動で行います。リングが極端に重い、途中で引っ掛かる、操作すると異音がする、鏡筒に大きながたつきがあるといった状態は、機械部分の劣化を確認する手掛かりになります。
絞り羽根についても、F5.6からF32までの設定を確認します。絞り羽根に油が付着している場合や、動きが遅い場合には、正常な露出制御に影響します。中古レンズの点検方法については、Canon EFマウントの安い神レンズ9選|中古で今買うならどれ?でも紹介しています。
EOS RシリーズではFD-RFアダプターを使用する
New FD100-300mm F5.6Lは、FDマウントのフィルム一眼レフ用レンズとして設計されています。現在のEOS Rシリーズへ装着するには、FDマウントからRFマウントへ変換する機械式アダプターを使用します。キヤノン純正のEF-EOS RマウントアダプターはEFレンズ用なので、このレンズには使用できません。
FDマウントのフランジバックは42mm、RFマウントは20mmです。この差をアダプターで確保することで、補正光学系を使用せずに無限遠までピントを合わせることができます。レンズの焦点距離は変化せず、フルサイズのEOS Rでは100~300mmの画角で撮影できます。
EOS R7やEOS R50などのAPS-Cカメラでは、約160~480mm相当の画角になります。被写体を大きく切り取る望遠撮影では、APS-Cの画角を活用できます。レンズはマニュアルフォーカスのため、拡大表示やフォーカスピーキングを使用してピントを合わせます。
FDレンズの絞りを操作するためには、アダプター側の絞り連動機構も確認します。アダプターによっては、OPENとLOCKの切り替え機構を備え、レンズの絞り羽根を手動で動かせます。マニュアルフォーカスレンズの撮影方法については、EOS R使いこなし完全ガイド|撮影テクニック・操作方法・レンズ活用術でも紹介しています。
今から購入する価値とEF版を選ぶ場合の違い
New FD100-300mm F5.6Lを現在購入する魅力は、FDマウント時代のLレンズを楽しめることです。蛍石とUDレンズを採用した光学系、F5.6通しの100~300mmズーム、最大0.3倍のマクロ機構など、現在でも興味深い仕様を備えています。マニュアルフォーカスを使用して撮影することも、フィルム時代のレンズならではの楽しみです。
EF100-300mm F5.6Lを選ぶ場合には、オートフォーカスとEFマウントの互換性が利点になります。EFマウントのEOS一眼レフでは直接装着でき、EOS RシリーズでもEF-EOS Rマウントアダプターを介して使用できます。動く被写体を撮影する機会が多い場合には、AF対応という違いが使い勝手に影響します。
一方、New FD100-300mm F5.6Lは、マクロ時に最大0.3倍の撮影倍率を得られることが特徴です。花や昆虫の近接撮影を重視する場合には、この仕様を活用できます。また、FDマウントのフィルムカメラを所有している人にとっては、当時のカメラとレンズを組み合わせて撮影できることも魅力です。
現在の望遠ズームには、手ブレ補正や高速AF、さらに長い焦点距離を備えた製品もあります。New FD100-300mm F5.6Lを選ぶ場合には、最新機能ではなく、光学設計と撮影操作の特徴を理解することが重要です。EF望遠ズームの種類については、Canon EF望遠ズームレンズ完全ガイド|300mm以上まで届くモデルを比較でも紹介しています。
まとめ
Canon New FD100-300mm F5.6Lは、1985年11月に発売されたキヤノンFDマウント用の高性能望遠ズームレンズです。100~300mmの焦点距離をカバーし、ズーム全域で開放F5.6を維持します。蛍石とUDレンズを採用した10群15枚の光学系によって色収差を補正した、FDマウント時代を代表するLシリーズの一本です。
通常時の最短撮影距離は2mですが、マクロ機構を使用すると1mまで接近できます。100~200mmのズーム域でマクロ撮影に対応し、200mmでは最大撮影倍率0.3倍を実現します。風景や人物、野鳥などの望遠撮影に加えて、花や昆虫の近接撮影にも活用できることが魅力です。
1987年発売のEF100-300mm F5.6Lとは、光学構成や焦点距離に共通点がありますが、マウント、フォーカス方式、最短撮影距離、最大撮影倍率が異なります。FD版はマニュアルフォーカスで最大0.3倍のマクロ撮影に対応し、EF版はオートフォーカスに対応しています。使用するカメラや撮影対象に合わせて選ぶことで、それぞれの特徴を生かせます。
中古で購入する際には、レンズ内部のカビや曇り、ズーム機構、ピントリング、絞り羽根、マウント部分の状態を確認します。EOS RシリーズではFD-RF変換アダプターを使用することで、デジタルカメラでも撮影できます。New FD100-300mm F5.6Lは、蛍石とUDレンズによる光学性能と、フィルム時代のマニュアル操作を楽しめるクラシックな望遠Lレンズです。


