キヤノンDual Pixel 3D Converterとは?対応EOS・RFレンズと写真を3D化する方法を解説
キヤノンのEOS Rシリーズで撮影した写真を、パソコン上で立体的に動かせるようになりました。2026年10月8日に提供が始まったWindows用ソフト「Dual Pixel 3D Converter」は、対応するカメラとレンズで撮影した1枚の画像から、奥行きを持つ3Dモデルを生成します。花を斜めから眺めたり、料理を立体的に見せたり、被写体だけを切り出して動画やプレゼンテーションへ配置したりできるのが特徴です。これまで3Dモデルといえば、専用のスキャナーで測定するか、多数の写真を異なる角度から撮影して合成する方法が一般的でした。それに対してキヤノンは、EOSのオートフォーカスに使ってきた技術を応用し、1回の撮影で立体表現へ進める仕組みを用意しました。
もっとも、「キヤノンの写真なら何でも3Dにできる」「普通のJPEGを入れるだけで完全な立体模型ができる」と理解すると、実際の仕様と食い違います。必要なのは対応するEOS RボディとRFレンズの組み合わせ、専用の距離情報を含んだ撮影データ、対応するWindowsパソコンです。さらに、カメラから見えなかった被写体の裏側を正確に復元するものではなく、光沢の強い物体や極端に細い形状では生成結果が崩れることもあります。そこでこの記事では、対応機種とレンズの具体的な一覧、Dual Pixel RAWと距離情報付きJPEGの違い、カメラの推奨設定、変換後にできることを順番に整理します。新製品を購入する必要があるのか、手持ちのカメラで利用できるのかまで、発表された仕様をもとに検討します。
Dual Pixel 3D Converterとは何か
写真を単に浮き上がらせる効果と、3Dモデル生成は違う
Dual Pixel 3D Converterは、対応する写真データから被写体や背景の奥行きを推定し、表面に撮影画像の色や模様を貼り付けた3Dモデルを作るソフトです。写真を平面的に左右へ動かしたり、画像の一部分を拡大したりするだけのエフェクトとは異なり、見える位置を少し変えたときに、手前の花と奥の葉の重なりが変わるような表現を目指しています。キヤノンは背景も含めて写真全体を立体化する「立体写真」と、主役だけを切り出す「3Dモデル」という二つの見せ方を用意しています。同じ写真でも、背景を残して空間の雰囲気を見せるか、被写体を独立した素材として扱うかで用途が大きく変わります。
特に重要なのは、撮影した実写画像をモデルの表面に利用することです。立体形状だけを作る方式では、表面の色や質感を別途描く作業が必要になりますが、このソフトはカメラが記録した色や模様を使ってリアルな見え方を作ろうとしています。一方、輪郭や奥行きの推定が正しくなければ、実写の質感があっても形は不自然になります。3D化によって写真の画素数やレンズの解像性能が増えるわけでもありません。撮影段階で細部をはっきり記録することが仕上がりを左右する点は、通常の写真と共通しています。カメラ側で画像が作られる仕組みは映像エンジンと画質の関係も参考になります。
デュアルピクセルCMOS AFの距離情報を利用する
「Dual Pixel」という名前は、キヤノンが長年採用してきたデュアルピクセルCMOS AFに由来します。この技術では、撮像素子の各画素に二つのフォトダイオードを配置し、その信号のずれを調べてピントの方向や量を判断します。通常は写真や動画のAFを制御するために活用する情報ですが、そこには被写体までの距離を推定する手掛かりも含まれています。Dual Pixel 3Dは、その位相差情報を独自のアルゴリズムで解析し、写真に写っている部分の立体的な起伏として利用します。すでにカメラが持っている仕組みを、ピント合わせ以外の表現へ広げた技術と考えると分かりやすいでしょう。
AFがデュアルピクセル方式であれば、すべてのEOSで利用できるわけではありません。センサーが距離を推定する情報を持っていても、その情報を対応形式でファイルへ記録し、ソフト側が読み取れる必要があります。画像の外見が同じでも、一般的なJPEG、通常のRAW、Dual Pixel RAWでは、内部に保持するデータの内容が異なります。また、距離情報は被写体の表面や撮影条件に左右され、レーザー測距のようにあらゆる部分の奥行きを確実に測るものでもありません。AFの基礎となる像面位相差方式と被写体追尾を理解するには、EOS R7のAF設定と被写体検出の解説も役立ちます。
OBJ・GLBの3DモデルとMP4動画を作成できる
作成した立体データは、OBJまたはGLB形式で出力できます。OBJは多くの3D制作ソフトで扱われてきた形式で、GLBはモデルの形状や見た目の情報を一つのファイルとして運用しやすい形式です。キヤノンは生成モデルをBlenderやPowerPointなどで利用する例を示しており、撮影した物を動画の素材やプレゼンテーションの一部分として使えることを訴求しています。3D制作を一から覚えて形を作る代わりに、実物を写真として撮ってモデル化するという入口が増えたことに意味があります。
ソフト自体には、背景を取り除いたモデルへ背景や効果を付け、プレビュー動画をMP4で書き出す機能もあります。3Dファイルを扱わない視聴者にも、普通の動画として見せられる点は便利です。一方、MP4は立体データそのものではなく、設定した視点や動きを動画に記録したものです。見る人が自由な角度へ回転できる形で公開したいなら、別途3Dモデルを表示する仕組みが必要になります。また、複数枚から作成する精密なフォトグラメトリーや3Dスキャンと、用途や精度が完全に同じになるわけではありません。静止画から映像素材を作る際の考え方は、動画の記録形式と画質の違いにもつながります。
対応EOS RシリーズとRFレンズを確認する
EOS R5・R7・R8などが対応、R50とR50 Vは対象外
2026年10月9日時点のキヤノン日本向け対応一覧には、EOS R5、EOS R5 Mark II、EOS R6 Mark II、EOS R6 Mark III、EOS R7、EOS R8、EOS R8 Mark II、EOS R10の8機種が掲載されています。発売時点で対応機種に含まれるEOS R5 Mark IIはファームウェアVer.1.3.1以上が指定されています。EOS R5のように以前から販売されているカメラも対象に入っているため、最新機種を買わなければ使えないサービスではありません。EOS R7とEOS R10が含まれていることから、対応はフルサイズだけに限定されず、APS-CのEOS Rでも利用できる構成です。
一方、EOS R50、EOS R50 V、EOS RP、初代EOS R、EOS R6などは、この対応一覧に掲載されていません。デュアルピクセルCMOS AFを搭載していても、対応リストにないボディで普通に撮った画像を変換できると考えることはできません。EOS R8 Mark IIは距離情報付きJPEGにも対応する機種として別に案内されており、この点がほかの対応EOSとの差になります。機種の名称がよく似ていても撮影できるデータ形式は異なるため、ソフトを利用する目的でカメラを選ぶ場合はモデル名まで照らし合わせる必要があります。R8の新旧の機能差については、EOS R8 Mark IIと初代R8の比較で整理しています。
対応レンズは12本で、すべてのRFレンズが使えるわけではない
ボディだけでなくレンズにも対応条件があります。発表時の対応レンズはRF24-70mm F2.8 L IS USM、RF24-50mm F4.5-6.3 IS STM、RF24-105mm F4 L IS USM、RF24-105mm F4-7.1 IS STM、RF35mm F1.8 MACRO IS STM、RF50mm F1.8 STM、RF70-200mm F2.8 L IS USM、RF70-200mm F4 L IS USM、RF85mm F2 MACRO IS STM、RF100mm F2.8 L MACRO IS USM、RF-S18-45mm F4.5-6.3 IS STM、RF-S18-150mm F3.5-6.3 IS STMの12本です。標準ズーム、望遠ズーム、単焦点、マクロを含み、比較的入手しやすい小型レンズも掲載されています。
この一覧に含まれないレンズは、RFマウントであっても動作対象と決めつけられません。RF24-240mm、RF100-500mmやEFレンズをマウントアダプターで使う構成、シグマやタムロンのRF用レンズも、発売時点の対応一覧へ記載がないことを区別する必要があります。距離情報を利用するため、同じ焦点距離のレンズなら自動的に置き換えられるという仕組みではないのです。とくにRF-S18-45mmとRF-S18-150mmが使える点は、EOS R7・R10の利用者にとって重要でしょう。手持ちの小型ズームを使いながら立体撮影へ進める可能性があります。マクロレンズを使った被写体選びはRFマクロレンズと撮影用途の違いでも確認できます。
Dual Pixel RAWと距離情報付きJPEGは別の記録方式
従来から対応するEOS Rボディでは、基本となる入力画像はDual Pixel RAW、略してDPRAWです。撮影メニューで記録画質をRAWにして、Dual Pixel RAWを有効にした状態で撮影します。名前が似ているC-RAWは対象外であり、通常のRAWを保存しただけでも必要な距離情報が得られるわけではありません。すでに保存してある写真を使いたい場合でも、当時の撮影時にDPRAWが設定されていなければ、新たに情報を追加することはできません。後からRAW現像ソフトで書き出したJPEGを使っても、元の撮影時に記録していない専用データは復元できないからです。
EOS R8 Mark IIでは別の方法として、距離情報を付加したJPEGの入力が用意されています。キヤノンの撮影ガイドでは、RAW+JPEGを選び、JPEGへの距離情報付加をON、DPRAW設定を「する」に設定すると案内されています。いずれの方式でもHDR PQは使用せず、色空間をsRGBにする設定が示されています。一般的なJPEG写真なら何でも変換できるという意味ではなく、カメラが専用の距離情報を記録したJPEGだけが対象です。EOS R8 Mark IIの撮影機能や対応レンズを整理する際は、EOS R8 Mark IIのレンズ選びと合わせると、使用するシステムを考えやすくなります。
3D化を成功させる撮影設定と被写体の選び方
F5.6以下・ISO1600以下を目安に、ボケとノイズを抑える
写真として魅力的な大きな背景ボケが、3D生成では有利に働くとは限りません。Dual Pixel 3D Converterは被写体の形や奥行きを推定するため、ピントの合った部分が狭く、主役の輪郭が大きくぼけていると立体の形を読み取りにくくなります。キヤノンが示す推奨絞り値はF5.6以下で、F8より大きい絞り値では3D生成できないと案内されています。ここでいう「F5.6以下」はF4やF5.6など数値の小さい側のことで、開放F1.2なら必ず適切という意味ではありません。主被写体の奥行きに応じて、輪郭や表面がなるべく鮮明になる絞り値を選ぶことが重要です。
ISO感度は1600以下が推奨され、ISO3200を超える設定では生成できないとされています。ノイズが増えると模様と凹凸の境界を判別しにくくなるため、暗い室内では照明を増やし、必要なら三脚やストロボを利用して低感度で撮影する方法が有効です。人物を開放で大きくぼかす撮影と、料理や花を立体化するために細部を記録する撮影は、同じレンズでも設定の優先順位が変わります。また、動く物体のブレも形状推定を妨げるため、静止した被写体を丁寧に撮るほうが適しています。絞りとピントの合う範囲の関係はRF35mm F1.8の絞りと被写界深度でも説明しています。
花・料理・陶器などは向くが、光沢や細い形状は難しい
キヤノンがDual Pixel 3Dの推奨被写体として挙げるのは植物と料理です。具体的には大きな葉、丸みのある花びら、形が分かりやすい食材、浅い皿、木製や陶器製の小物などが考えられます。立体を復元するには、表面の境界や模様を読み取れることが重要なので、被写体にある程度の面積があり、反射が少ない素材ほど試しやすくなります。画面の中で主役がはっきり分かれ、背景に余計な物が少ない状態なら、自動切り抜きの精度にも期待できます。小型の観葉植物や焼き菓子のように、立体感を見せたいけれど動かない対象は最初の題材に向いています。
反対に、鏡面仕上げの金属やガラス、強い反射のある包装、細い針金、複雑に重なる細枝、透明な容器などは苦手になりやすい素材です。こうした被写体は写る位置によって見た目が大きく変わり、光や背景が表面へ映り込むため、物体の本来の形と反射を区別しにくくなります。ガラス瓶やレンズの前玉のように透明な部分が多い製品は、立体化できても期待した形状からずれる可能性があります。撮影対象を少し変えるだけで結果が改善する場合もあり、例えば反射する金属のトレーより、マットな陶器の皿を選ぶと検証しやすくなります。小物や料理の撮影で使うレンズの特徴はRF35mm F1.8 MACROの近接撮影も参考になります。
撮影距離とアングルで死角を減らすことが重要
一枚撮影による立体化で見落としやすいのが、カメラから見えていない場所の扱いです。被写体の正面を撮影しただけでは、裏側の形や底面の凹凸は画像に写りません。Dual Pixel 3Dは撮影時に見えている範囲を中心にモデル化する技術であり、隠れた部分を正確に測定して完全な360度モデルにする仕組みではありません。極端に横から撮った皿や、花びらが何層も重なった植物では、視点を動かしたときに隠れていた部分が引き伸ばされたり、形が不自然になったりすることがあります。キヤノンが少し高い位置から見下ろす構図を勧めているのは、上面と側面を同時に写して死角を減らすためです。
撮影ガイドでは被写体を中央に配置し、周囲に余白を持たせることに加えて、焦点距離の5〜10倍を目安とする撮影距離も示されています。例えば50mmならセンサー面から約25〜50cmが目安で、最短撮影距離がその範囲に収まるレンズを使うことになります。被写体が大きすぎて端が切れる場合や、近すぎて強い遠近感が出る場合は、少し離れて撮るほうが安定するでしょう。これは印象的な写真を撮るための構図と必ずしも一致しません。立体化を目的にした元画像は、被写体を見せるための記録として撮り、仕上がりの演出は3D化した後に加えるという考え方が合っています。撮影距離による見え方はRF85mm F2 MACROの接写と撮影距離にも共通する話題です。
Windowsでの導入から3Dモデルの保存まで
Windows 11対応で、提供開始時は無料
Dual Pixel 3D Converterは2026年10月8日に提供が始まり、開始当初は無料で利用できます。キヤノンは将来の仕様や提供条件が変更される可能性にも触れていますが、2026年10月9日時点では無償で試せるソフトとして案内されています。対応OSはWindows 11の64bit版で、バージョン24H2以降が指定されています。macOS用のアプリは発表時点で用意されていません。Windowsパソコンであれば何でも快適に動くというわけではなく、処理する画像の大きさや生成するモデルの複雑さによって変換時間や操作感は変わります。
キヤノンの推奨環境はインテルCore i7以上、メモリー16GB以上で、最低条件としてインテルCore iシリーズ、メモリー8GB以上、ストレージの空き容量2GB以上が案内されています。画面の解像度は1024×768以上が必要です。配布されているバージョン1.0.0は約816MBのインストーラーで、圧縮ファイルを展開して実行ファイルから導入する方式です。インストールできたことと、手持ちの画像を変換できることは別なので、撮影データがDPRAWまたは対応する距離情報付きJPEGかどうかの確認も欠かせません。JPEGとRAWなど画像形式の違いについては、デジタル画像の記録と処理の仕組みも参考になります。
DPRAWを読み込み、背景と奥行きを調整する
基本的な流れは、対応EOS Rと対応RFレンズで画像を撮影し、そのファイルをWindowsパソコンへ取り込み、Dual Pixel 3D Converterで3Dへ変換するというものです。通常のRAW現像とは異なり、見た目の色を調整するだけでなく、写真に含まれる距離情報を解析して形状を推定します。ソフトには、背景を含む立体写真を作る方法と、主被写体を切り出してモデルにする方法があり、完成させたい作品によって選ぶことになります。例えば机の上に置いた花瓶を周囲の机ごと見せたいのか、花瓶だけを別の背景へ配置したいのかで変換の目的が変わります。
生成されたモデルの奥行きは調整でき、背景の削除や背景効果の追加にも対応しています。また、モデルの表面に使用する画像を、RAW現像で色調整したJPEGなど別の写真へ差し替える機能もあります。これにより形状の生成と色表現の調整を分けて考えられますが、写真の色を変えることで奥行きの推定精度まで改善するという意味ではありません。元の画像で輪郭が欠けている、被写体がぶれている、反射によって形状が読み取りにくいといった問題は、表面の画像だけを差し替えても残る可能性があります。撮影時点で細部を整えておくことが基本です。写真を作品として見せる際の画作りについては、マクロレンズと被写体の見せ方でも扱っています。
3DファイルとMP4では利用先が異なる
3Dモデルを完成させた後は、編集したり視点を変更したりする目的ならOBJまたはGLBで保存します。Blenderのような3D編集ソフトへ読み込めば、位置や向き、背景との組み合わせを変えた作品作りに進めます。PowerPointへ3D素材として取り込む場合も、静止画像だけを置く場合とは違い、見せたい角度を調整したり、立体的なプレゼンテーションを作ったりする用途があります。一方、完成した動きを視聴者に見せることが目的なら、ソフトのMP4出力を使うほうが扱いやすいでしょう。配信先や編集環境が3Dファイルに対応していなくても、一般的な動画として再生できるからです。
例えば料理を少し回転させて見せる10秒程度の映像を作り、通常の動画編集で文字やナレーションを追加する使い方が考えられます。撮影した商品の一部分を立体的に見せてから、通常のレビュー映像に戻す演出も可能です。逆にWebページ上で読者が自由にモデルを回転できる表示を実装するには、GLBなどを読み込む対応ビューアーやページ側の仕組みが必要です。ファイルを書き出しただけでWordPressの記事内に操作可能な3D表示が現れるわけではありません。完成する媒体に合わせて保存形式を選ぶことが重要です。動画へ素材を組み込む際の画質とファイル容量は、動画形式とビットレートの選び方でも整理しています。
どんな撮影者に価値があるのか
花・料理・小物の写真に新しい見せ方を加える
この機能を使いやすいのは、まず花や料理、工芸品などを撮影する人です。例えば花の写真を一枚撮影し、背景を残した立体写真へ変換すれば、平面画像では重なっていた葉や花びらの位置関係を、視点の動きとして見せることができます。陶器のカップや焼き菓子なら、形の丸みや表面の質感を伝える用途に向きます。特に被写体へ強い光が反射しない環境を作り、シンプルな背景で撮影すれば、自動切り抜きにも適した素材を用意しやすくなります。写真の撮り方を大きく変えなくても、撮影後の見せ方に一つ選択肢が増えるのが魅力です。
ネット販売や作品紹介の場面でも利用する余地があります。単なる商品写真では伝わりにくい厚みや丸みを短い動画で見せ、同じ写真から静止画と動画素材を作り分ける使い方が考えられます。3Dモデルの形が現物と少しでも異なると困る寸法確認や精密な製品設計には、正確な計測を目的とした3Dスキャンとは分けて考える必要があります。見た目を伝える表現用モデルとして使うのか、形状を測るためのデータとして使うのかで評価基準が異なるからです。植物を主役にした近接撮影については、RF85mm F2 MACROの花と小物の撮り方も参考になります。
YouTubeやブログでは動く写真という演出に使える
動画制作者やブロガーにとっては、既存の写真コンテンツへ短い動きを加えられることが実用上の利点です。レビュー記事のアイキャッチをそのまま立体モデルへ変換できるとは限りませんが、撮影時からDPRAWで記録した対応写真なら、被写体だけを切り出して動く紹介映像に発展させられます。カメラやレンズの解説動画で小物や料理の例を見せたり、観葉植物の変化を視点の動きで演出したりする使い方が考えられます。通常のカメラワークで被写体の横へ回り込めない環境でも、ソフト上で視点を少し動かせることが表現上の新しさになります。
一方、視点を大きく回転させると、撮影時に見えていない裏側や輪郭に不自然な伸びが現れる可能性があります。視聴者に自然な立体感を伝える目的なら、実際の撮影角度から大きく外れない範囲で視点を動かし、変換結果の破綻が見えない構成にするほうが適しています。SNS向けにはMP4、編集を重ねたい場合には3Dモデルといった使い分けができるため、撮影前に出力の用途を決めておくと素材を無駄にしません。通常の撮影動画と3Dモデル由来の映像を混ぜる場合も、色味と画角のつながりを意識すると違和感を減らせます。動画制作の設定については動画記録形式を使い分ける方法を参考にできます。
対応機種があっても全員に必要な機能とは限らない
Dual Pixel 3D ConverterはEOSの新しい可能性を示すソフトですが、すべての写真を立体化する必要はありません。ポートレートで大きなボケを楽しむ、風景を広く鮮明に記録する、野鳥の一瞬の動きを連写で捉えるといった目的では、完成した静止画そのものに価値があります。立体化のためにボケを抑え、被写体を中央に配置し、撮影距離を制限することが、写真作品としての自由度を下げる場合もあるでしょう。従来の写真とは別の表現を作る手段として利用し、すべての撮影でDPRAWにする必要はないと考えられます。
また、対応するカメラとレンズが手元にない場合、無料ソフトを使うためだけに機材を買い替える価値があるかは別の問題です。EOS R50 Vで動画やライブ配信を中心に利用しているなら、現時点でこの機能は直接の利益になりません。反対にEOS R7やEOS R5と対応RFレンズを持ち、料理や植物の撮影を楽しんでいるなら、新たな購入なしで試せる場合があります。キヤノンは開発者向けのDual Pixel 3D SDKを含む法人向け提供も2026年中に予定しており、今後の展開にも注目できますが、将来の対応拡大は正式な情報が出た時点で判断するべきでしょう。EOS R8 Mark IIのような新機能を備える機種の選択についてはEOS R8 Mark IIを買う価値と注意点でも検討しています。
まとめ
Dual Pixel 3D Converterは、キヤノンが2026年10月8日に提供を始めたWindows 11向けの3Dモデル生成ソフトです。対応するEOS RシリーズとRFレンズで撮影したDual Pixel RAW、またはEOS R8 Mark IIの距離情報付きJPEGを読み込み、デュアルピクセルCMOS AFの位相差情報から被写体の奥行きを推定します。背景を含む立体写真と、主被写体を切り出した3Dモデルを作ることができ、OBJ・GLB形式で保存したり、MP4動画として書き出したりできます。開始当初は無料で提供されており、すでに対応機材を持つ人なら新しい写真表現を試す入口になります。
対応するのはEOS R5、R5 Mark II、R6 Mark II、R6 Mark III、R7、R8、R8 Mark II、R10の8機種と指定された12本のレンズで、EOS R50・R50 Vなどは発売時点の一覧に含まれていません。DPRAWを使う場合は通常のRAWやC-RAWでは代用できず、絞りとISO感度にも生成条件があります。キヤノンはF5.6以下、ISO1600以下を推奨し、過度なボケ、強い反射、細い形状、カメラから見えていない部分が仕上がりを悪くする要因になると説明しています。一枚の写真から作るため、裏側まで完全に再現する精密な3Dスキャンとは違うことも理解しておきたい点です。
最初に試す題材は、マットな質感の料理、陶器、小物、花や大きな葉などが適しています。普段なら完成した静止画で終わる一枚を、少し視点の動く動画や、編集できる3D素材へ発展させられるのがこの機能の強みです。今後は対応機種やレンズ、ソフトの提供条件が変わる可能性がありますが、現時点で重要なのは、手持ちの機材が対応しているかと、立体化したい被写体があるかという二点です。写真そのものの価値を変える技術というより、撮影した写真を見せる方法を増やす新しい選択肢として注目できます。


