Canon EOS一眼レフの型番完全ガイド|1桁D・2桁D・8000D/9000D・Kissの違いを整理
キヤノンのEOS一眼レフを見ていると、最初に戸惑いやすいのが機種名です。EOS 7D、EOS 90D、EOS 9000D、EOS Kiss X9i。数字だけを見ると、9000Dが最上位で7Dが最も下のようにも見えます。しかし実際の位置づけはまったく違います。
さらに厄介なのが、EOS 7D Mark IIとEOS 90Dのような関係です。シリーズとしては7D系がAPS-C上位機、90Dは中級機ですが、発売年が5年違うため、画素数や動画、ライブビューなどでは90Dの方が進んでいます。
つまりキヤノンEOSの型番は、「数字が大きいほど上」「桁数が少ないほど必ず高性能」という単純な規則では読めません。機種名にはシリーズの位置づけと世代の違いが同時に入っているためです。
この記事では、日本国内で販売されたEOS一眼レフを中心に、1桁D系、2桁D系、8000D・9000D系、EOS Kiss系がどのような関係になっているのかを整理します。
最初に結論|EOSの数字は性能順位そのものではない
APS-C一眼レフだけを大まかに並べれば、基本的な位置づけは次のようになります。
| 位置づけ | 代表シリーズ | 代表機種 |
|---|---|---|
| APS-C上位 | 7D系 | EOS 7D、EOS 7D Mark II |
| APS-C中級 | 2桁D系 | EOS 70D、80D、90Dなど |
| 中級と入門の間 | 8000D・9000D系 | EOS 8000D、EOS 9000D |
| 入門 | EOS Kiss系 | Kiss X9i、X9、X10i、X10など |
これだけなら簡単ですが、実際には発売時期が違います。古い上位機と新しい中級機を比較すると、新しい中級機の方がスペック表では上回る項目が出てきます。
「格」と「新しさ」を分けると理解しやすい
たとえばEOS 7D Mark IIは2014年、EOS 90Dは2019年のカメラです。
7D Mark IIはAPS-C上位機として作られ、65点オールクロスAF、最高約10コマ/秒、AF操作用のジョイスティック、デュアルカードスロットなど、動体撮影を強く意識した構成になっています。
一方の90Dはシリーズ上では中級機ですが、約3250万画素、最高約10コマ/秒、デュアルピクセルCMOS AF、バリアングルタッチ液晶、4K動画など、5年後の技術を搭載しています。
そのため「シリーズ上の位置づけは7D Mark IIが上」「新しい機能や一部のスペックでは90Dが上」という状態になります。
EOS 7D Mark IIについては、EOS 7D Mark IIの特徴と動体撮影性能で詳しく紹介しています。
数字の大きさだけで比べると逆転してしまう
7D、90D、9000Dだけを見ると、数字は7、90、9000と大きくなります。しかし位置づけは数字の大小とは逆です。
APS-C機としての基本的な系列なら、7D系、2桁D系、8000D・9000D系、Kiss系という順番になります。
9000Dという名前だから90Dより上という意味ではありません。9000Dは80Dより下側に置かれた機種です。
EOS一眼レフ全体の機種構成は、キヤノン大全でも確認できます。
1桁D系は一つのシリーズではない
「1桁D」とひとまとめにすると分かりにくくなる理由があります。
EOS-1D、EOS 5D、EOS 6D、EOS 7Dは、数字が一桁という共通点はありますが、それぞれ性格の異なるシリーズです。
| シリーズ | 主な位置づけ | センサー |
|---|---|---|
| 1D系 | プロ向け最上位 | 世代により異なる |
| 5D系 | 本格フルサイズ | フルサイズ |
| 6D系 | 小型・比較的手頃なフルサイズ | フルサイズ |
| 7D系 | APS-C上位 | APS-C |
つまり「1桁D」という名前だけで同じ階級だと考えることはできません。
7DはAPS-Cの上位機として誕生した
EOS 7DはAPS-Cセンサーを搭載しながら、高速連写や本格的なAF、上位機らしい操作系を備えたシリーズです。
その後継EOS 7D Mark IIでは最高約10コマ/秒、65点オールクロスAFを搭載し、野鳥、鉄道、航空機、スポーツなど高速で動く被写体を強く意識したカメラになりました。
同じAPS-Cでも、Kissや2桁Dより動体撮影を重視した設計です。
APS-C一眼レフ全体については、Canon APS-C一眼レフが選ばれる理由で各シリーズをまとめています。
5Dや6Dと7Dは単純な上下関係ではない
5Dと6Dはフルサイズ、7DはAPS-Cです。ここでも数字だけでは関係を判断できません。
たとえば6Dはフルサイズへの入口を担うシリーズでしたが、7DはAPS-Cの上位機です。「6Dだから7Dより上」「7Dだから6Dより上」という比較ではなく、そもそも狙っている用途が違います。
フルサイズを重視する5D・6D系に対し、7DはAPS-Cによる望遠側の画角や高速連写を生かす方向へ発展しました。
キヤノン一眼レフの各シリーズについては、キヤノン一眼レフの魅力とEFレンズ資産でも紹介しています。
2桁D系はAPS-C中級機の中心
EOS 10D、20D、30D、40D、50D、60D、70D、80D、90Dと続いてきたのが2桁D系です。
現在振り返ると、キヤノンAPS-C一眼レフの中級クラスを約20年にわたって担った中心的なシリーズです。
なお、その前身にはEOS D30とEOS D60があります。D30、D60から10Dへ続いたため、D00シリーズとして一つの系譜として扱うことができます。
10Dから90Dまで同じ役割を受け継いだ
2桁D系は、Kissより本格的な操作性を備えながら、7Dほど動体撮影へ特化しないバランス型として発展しました。
40Dではライブビュー、60Dではバリアングル液晶や動画、70DではデュアルピクセルCMOS AF、80Dでは45点AF、90Dでは約3250万画素と最高約10コマ/秒、4K動画へと進化しています。
約20年間の変化については、Canon D00シリーズ完全ガイドでD30から90Dまで年代順に紹介しています。
90Dが7D Mark IIより高性能に見える理由
ここが型番を理解するときに最も混乱しやすい部分です。
7D Mark IIはAPS-C上位機、90DはAPS-C中級機です。それでもスペック表を見ると90Dの方が上に見える部分があります。
| 項目 | EOS 7D Mark II | EOS 90D |
|---|---|---|
| 発売年 | 2014年 | 2019年 |
| 有効画素数 | 約2020万画素 | 約3250万画素 |
| 最高連写 | 約10コマ/秒 | 約10コマ/秒 |
| ファインダーAF | 65点オールクロス | 45点オールクロス |
| 背面液晶 | 固定式 | バリアングル・タッチ対応 |
| 4K動画 | 非対応 | 対応 |
画素数、ライブビュー、液晶、動画などは90Dが新しいため進んでいます。一方でファインダーAFの測距点数や動体撮影用の操作系などは7D Mark IIに上位機らしい装備が残ります。
つまり、型番が示しているのは発売年を無視した絶対的な性能順位ではありません。
90Dを含む歴代2桁Dの変化は、D00シリーズ歴代モデル完全ガイドで比較できます。
8000Dと9000DはKissと2桁Dの間
さらに一段分かりにくくしたのがEOS 8000DとEOS 9000Dです。
日本ではこの2機種だけが存在し、Kissシリーズより本格的な操作系を持ちながら、70Dや80Dなど2桁Dより下側へ置かれていました。
単純化すれば、次の位置です。
Kiss系 → 8000D・9000D系 → 2桁D系 → 7D系
この系列は8000Dと9000Dの2世代で終了しました。
8000DはKiss X8iに近い中身だった
EOS 8000Dは2015年発売で、約2420万画素、19点オールクロスAF、最高約5コマ/秒など、同時期のEOS Kiss X8iと主要性能がかなり近いカメラでした。
大きな違いは操作系です。8000Dには上面液晶やサブ電子ダイヤルがあり、Kissより上位機に近い操作ができます。
そのため当時のイメージを簡単に表すと、Kiss X8iと70Dの間に8000Dが入る形です。
APS-C一眼レフの各モデルは、Canon APS-C一眼レフ一覧でも確認できます。
9000DはKiss X9iと80Dの間に入った
EOS 9000Dは2017年発売です。約2420万画素、DIGIC 7、45点オールクロスAF、最高約6コマ/秒、デュアルピクセルCMOS AFを備えています。
同じ2017年に登場したKiss X9iも、約2420万画素、DIGIC 7、45点オールクロスAF、最高約6コマ/秒、デュアルピクセルCMOS AFという基本構成を持っています。
9000Dはそこへ上面液晶やサブ電子ダイヤルなどを加え、操作系を一段本格的にしています。
一方、その上には80Dが存在しました。そのため位置関係は、Kiss X9i、9000D、80Dという並びになります。
9000Dの詳細については、EOS 9000Dの特徴と操作性で紹介しています。
EOS KissはAPS-C入門シリーズ
EOS KissはキヤノンAPS-C一眼レフの入門シリーズとして長く展開されました。
小型軽量なボディ、自動撮影機能、分かりやすい操作を重視し、初めてレンズ交換式カメラを使う人にも扱いやすい設計になっています。
ただしKissも世代が増えるにつれて枝分かれし、X7とX7i、X9とX9i、X10とX10iのように、同じ世代に複数機種が存在するようになりました。
Kissの「i」はX6iから使われた
EOS Kiss X6iは2012年に登場しました。この「i」にはIntegrateとIntelligentという意味が込められています。
X6iではハイブリッドCMOS AF、動画サーボAF、バリアングルタッチ液晶などが採用され、従来のKiss X5から機能が大きく進化しました。
その後もX7i、X9i、X10iと「i」を付けたモデルが登場しています。
EOS Kissシリーズを含むAPS-C一眼レフの構成は、キヤノン大全から確認できます。
X9iとX9は同じカメラではない
2017年にはEOS Kiss X9iとEOS Kiss X9が存在しました。
名前だけを見ると末尾にiが付いただけですが、中身にはかなり違いがあります。
X9iは45点オールクロスAF、最高約6コマ/秒。X9は9点AF、最高約5コマ/秒です。
どちらも約2420万画素、DIGIC 7、デュアルピクセルCMOS AFを搭載していますが、ファインダーAFや連写性能ではX9iの方が充実しています。
つまりこの世代では、Kissシリーズの中でもX9iが上側、X9がより小型軽量な側という分け方になっています。
X9iについては、EOS Kiss X9iの性能と特徴で詳しく紹介しています。
同じ時代の機種を縦に並べると関係が分かる
型番を一台ずつ見るより、同じ時代の機種を縦に並べるとキヤノンの狙いが見えやすくなります。
2015年前後のAPS-C一眼レフ
2015年前後なら、おおむね次のような位置関係でした。
EOS 7D Mark II
↓
EOS 70D
↓
EOS 8000D
↓
EOS Kiss X8i
7D Mark IIは動体重視の上位APS-C、70Dは中級機、8000Dは中級と入門の間、Kiss X8iは入門系という構成です。
当時のAPS-C各シリーズを横断して見る場合は、Canon APS-C一眼レフの機種一覧も参考になります。
2017年前後になると境界がかなり近くなる
2017年前後では次のようになります。
EOS 7D Mark II
↓
EOS 80D
↓
EOS 9000D
↓
EOS Kiss X9i
↓
EOS Kiss X9
この時代になると9000DとX9iの主要性能はかなり近づいています。80Dとの間にも共通する機能が増え、シリーズ間の境界は以前より狭くなりました。
9000Dが2世代目で終了した背景を考える際にも、この機種間の近さは重要です。
EOS 9000Dについては、EOS 9000Dの詳細記事でも確認できます。
90Dの時代には8000D・9000D系が消えた
2019年にEOS 90Dが登場した時期には、8000D・9000D系の後継モデルは登場しませんでした。
Kiss X10、後のKiss X10iなどは存在しましたが、9000Dの次に「10000D」のような日本向けモデルが追加されることはありませんでした。
一眼レフ市場そのものが縮小し、キヤノンの中心がEOS Rシリーズへ移っていった時期でもあります。細かく階層を分けて多数の一眼レフを並べる必要性も薄れていきました。
一眼レフからミラーレスへの流れは、Canon EOS Rシリーズ大全を見ると現在の機種構成までつながります。
数字より「シリーズ」と「発売年」を見る
中古のEOS一眼レフを比較するとき、型番だけで性能を判断すると間違えやすくなります。
7Dより90Dの数字が大きいから90Dが上、9000Dはさらに数字が大きいから最上位、という読み方はできません。
見るべきなのは、その機種がどのシリーズに属しているのか、何年に登場したのか、どの用途を重視して作られたのかです。
古い上位機と新しい中級機では逆転が起こる
7D Mark IIと90Dの関係が代表例です。
7D Mark IIは2014年のAPS-C上位機、90Dは2019年のAPS-C中級機です。
上位機としてのボディ設計やAF操作系では7D Mark IIに強みがあり、一方で画素数、ライブビュー、バリアングル液晶、4K動画などは新しい90Dが進んでいます。
これはカメラに限らず、古い上級モデルと新しい中級モデルを比較すると起こる現象です。
D00シリーズの世代ごとの進化については、Canon D00シリーズ完全ガイドで確認できます。
どちらが上かより、何を撮るかで見る方が分かりやすい
野鳥やスポーツを光学ファインダーで追い続けるなら、7D Mark IIの65点AFや動体向け操作系が生きます。
高画素で撮ってトリミングしたい、ライブビューを使いたい、4K動画も撮りたいなら90Dの新しい機能が生きます。
9000DならKiss系に近い軽さを保ちながら上面液晶やサブ電子ダイヤルを使えます。Kissなら小型軽量で扱いやすいことが強みになります。
APS-C機とレンズの組み合わせについては、EFマウントAPS-Cで使いたいレンズでも紹介しています。
EOS一眼レフの型番を一枚で整理する
| 系列 | 代表モデル | 主な役割 |
|---|---|---|
| 1D系 | 1D X Mark IIIなど | プロ向け最上位 |
| 5D系 | 5D Mark IVなど | 本格フルサイズ |
| 6D系 | 6D、6D Mark II | 小型・比較的手頃なフルサイズ |
| 7D系 | 7D、7D Mark II | APS-C上位・動体重視 |
| 2桁D系 | 10D~90D | APS-C中級 |
| 8000D・9000D | 8000D、9000D | Kissと2桁Dの中間 |
| Kiss X○i | X7i、X9i、X10iなど | Kiss系の高機能側 |
| Kiss | X7、X9、X10など | 小型軽量な入門機 |
まとめ
キヤノンEOS一眼レフの型番は、数字をそのまま性能順位として読むことはできません。
1桁Dには1D、5D、6D、7Dという性格の異なるシリーズがあり、7D系はAPS-C上位機です。10Dから90Dまでの2桁D系はAPS-C中級機として長く続きました。
8000Dと9000Dは、Kissと2桁Dの間を埋めるために登場した2世代だけの系列です。そしてKissはAPS-C入門シリーズとして展開され、一部の世代ではX9iとX9のように複数のモデルへ分かれました。
APS-Cだけを単純化すると、基本的な位置づけは次のようになります。
7D系
↓
2桁D系
↓
8000D・9000D系
↓
Kiss X○i系
↓
Kissの小型モデル
ただし、これが絶対的な性能順位になるわけではありません。7D Mark IIと90Dのように、発売年が大きく違えば新しい中級機が古い上位機を上回る項目もあります。
EOSの型番を見るときは「数字が大きいか小さいか」ではなく、「どのシリーズか」「何年の機種か」「何を重視したカメラか」の3点を見ると、複雑だったキヤノン一眼レフのラインナップが理解しやすくなります。



