カメラの測距点とは?多いメリット・デメリットとAFの選び方を解説
カメラのスペックを見ていると、「測距点45点」「測距点61点」「AFエリア○○分割」といった表記を目にします。
測距点とは、簡単にいえばカメラがオートフォーカスでピントを合わせるために使う位置です。一般には数が多いほど高性能に見えますが、実際の使いやすさは測距点の数だけでは決まりません。
特に現在のミラーレスカメラでは、画面の広い範囲でAFが使え、人物や動物を自動認識して追尾する機能も普及しています。そのため、一眼レフ時代とは「測距点の多さ」の意味も少し変わってきました。
この記事では、測距点とは何か、測距点が多いメリットとデメリット、撮影時にどのように使い分ければよいのかを解説します。
測距点とは?AFでピントを合わせる位置
- 測距点はオートフォーカスがピントを検出する位置
- 一眼レフとミラーレスではAFの仕組みが異なる
- 測距点の数だけでAF性能を比較することは難しい
測距点はカメラがピントを検出する場所
測距点とは、オートフォーカスを使用するときに、カメラがピントを検出するための位置です。
ファインダーや背面モニターに四角い枠が表示され、その枠を被写体に合わせてシャッターボタンを半押しするとピントが合います。この四角い枠として表示される位置が、一般に測距点やAFポイントと呼ばれています。
たとえば人物を撮影するとき、画面中央の測距点だけを使うカメラでは、人物の顔を中央に置いてピントを合わせてから構図を変更する必要が生じることがあります。
画面の端まで測距点が配置されていれば、人物を画面の右側や左側に配置した構図でも、その位置にある測距点を選択して直接ピントを合わせられます。
このため測距点は、単純に「ピントが合うか」という問題だけでなく、構図を自由に決められるかという撮影のしやすさにも関係しています。
AFとMFそのものの違いについては、AFとMFの違いを解説した記事も参考になります。
一眼レフとミラーレスでは測距点の意味が少し違う
測距点という言葉は一眼レフ時代から使われていますが、現在のミラーレスカメラでは少し事情が変わっています。
一眼レフで光学ファインダーを使用する場合、カメラ内部にあるAF用のセンサーを使ってピントを検出します。そのため、ファインダー内の決められた位置に測距点が並んでおり、「9点AF」「45点AF」「61点AF」といった形で性能が示されていました。
上位機になるほど測距点が増え、さらに画面中央だけでなく広い範囲に配置されていることが大きな特徴でした。
ミラーレスカメラでは撮像センサー上でAFを行うため、画面のかなり広い範囲からAF位置を選択できます。そのため現在は、単純な測距点数よりも、AFが利用できる画面範囲、被写体検出能力、追尾性能などの重要性が高くなっています。
スペック表に非常に大きなAFポイント数が記載されていても、一眼レフの「測距点61点」と同じ基準で比較できるとは限りません。
測距点が多ければAF性能が高いとは限らない
測距点が多いことは大きなメリットですが、「測距点が多いカメラほどAFが速く正確」と単純に判断することはできません。
AF性能には、測距点の数以外にも、AFセンサーや撮像センサーの性能、画像処理エンジン、レンズのAF駆動速度、被写体認識、追尾アルゴリズムなど多くの要素が関係します。
たとえば測距点が非常に多くても、動いている被写体を追尾する能力が弱ければ、野鳥やスポーツ撮影では使いにくく感じる可能性があります。
反対に、測距点の数だけを見ると少なく感じるカメラでも、一度捉えた人物や動物を正確に追尾できれば、実際の撮影では非常に使いやすくなります。
特に現在のEOS Rシリーズのようなミラーレスでは、人物や動物などをカメラが認識し、その被写体を追い続ける撮影方法が一般的になっています。
そのためカメラを比較するときは、「測距点はいくつあるか」と同時に「どこまでAFが使えるか」「何を認識できるか」「どの程度追尾できるか」を確認することが重要です。
測距点が多いメリット
- 画面の広い範囲で直接ピントを合わせやすい
- 動く被写体を追い続けやすくなる
- 構図を決めてからピントを合わせやすい
画面の端にいる被写体にもピントを合わせやすい
測距点が多い最大のメリットは、画面内のさまざまな位置にいる被写体へ直接ピントを合わせやすいことです。
測距点が中央付近にしか存在しないカメラでは、画面の端に被写体を配置したい場合、一度中央でピントを合わせてからカメラの向きを変える「フォーカスロック」を使うことがあります。
この方法でも撮影できますが、被写界深度が浅い場合には、カメラを動かしたことによってわずかにピント位置がずれる場合があります。
測距点が画面の広い範囲に配置されていれば、最初から完成させたい構図のまま被写体に測距点を置けます。
人物の目を画面の左上付近に配置するポートレートや、飛んでいる鳥を画面の片側に配置して進行方向に空間を残す構図などでは、この違いが使いやすさに直結します。
撮影後にトリミングして構図を作る必要も減るため、カメラの画素を有効に利用しやすくなります。
動く被写体を追尾できる範囲が広くなる
スポーツ、野鳥、子ども、ペットなど動く被写体を撮影するときも、広いAF範囲は有利です。
被写体が一つの測距点から外れても、周囲に別の測距点があれば、カメラは次の測距点を利用して被写体を捉え続けることができます。
一眼レフでは、多数の測距点を連携させながら被写体を追尾することが上位機の大きな特徴の一つでした。
現在のミラーレスでは、さらに人物の顔や瞳、動物などを認識しながらAFエリア内を追尾できます。そのため撮影者が測距点を一つずつ移動させる必要は大幅に減っています。
野鳥撮影では、鳥が枝から飛び出した瞬間に画面中央から外れることも珍しくありません。広いAFエリアと被写体追尾を組み合わせることで、こうした場面でもピントを維持できる可能性が高まります。
実際の野鳥撮影でのAF設定については、EOS R6 Mark IIの野鳥撮影設定でも詳しく紹介しています。
構図を先に決めたまま撮影しやすい
測距点が多いカメラでは、「最初にピントを合わせ、その後に構図を決める」という撮影から、「構図を決め、その位置でピントを合わせる」という撮影へ変えやすくなります。
これは実際に撮影してみると大きな違いです。
三分割構図を使って人物を画面の端に置く場合や、花を画面下部に配置する場合、測距点を目的の位置まで移動させておけば、カメラをほとんど動かさずに撮影できます。
三脚撮影でも有効です。カメラの位置と構図を完全に決めたあと、ピントを合わせたい位置へAFポイントだけを移動できます。
現在のミラーレスでは背面モニターをタッチしてAF位置を指定できる機種も多いため、測距点が多いことによる操作の難しさも軽減されています。
測距点の多さは、AF性能の数字として見るだけでなく、構図を崩さず撮影できる自由度として考えると分かりやすくなります。
測距点が多いデメリット
- 一点ずつ選択すると移動に時間がかかることがある
- 自動選択では意図しない場所へ合焦する場合がある
- 測距点数だけで機種を比較すると性能を判断しにくい
測距点を一つずつ移動すると操作量が増える
測距点が多い場合に最も分かりやすいデメリットは、一点AFを手動で操作するときです。
選択できる位置が非常に多いカメラでは、画面の反対側までAFポイントを移動するために何度も十字キーを押す必要が生じることがあります。
シャッターチャンスが短い撮影では、この操作時間が問題になります。
現在のカメラでは、マルチコントローラー、タッチ&ドラッグAF、AFエリアの切り替えなどを利用できるため、すべての測距点を一点ずつ移動する必要はありません。
撮影内容によって一点AF、領域をまとめて使用するゾーンAF、カメラに被写体を追尾させる自動選択などを使い分けることが重要です。
測距点が多いこと自体が使いにくさにつながるわけではありません。選択方法が撮影スタイルに合っているかによって、操作性は大きく変わります。
自動選択では狙っていない被写体を選ぶことがある
多数の測距点をカメラに自動選択させると、撮影者が意図していない被写体にピントが移る場合があります。
たとえば鳥を撮影しているとき、鳥の手前に枝があると、枝を被写体として認識してしまう場合があります。人物撮影でも、画面内に複数の人物がいると、撮影したい人物とは別の顔を選択することがあります。
この場合、測距点が多いことが直接の原因というより、広いAFエリアをカメラ任せで使用していることが影響します。
狙う被写体が明確な撮影では、AF開始位置を指定したり、AFエリアを狭くしたりすることで改善できます。
逆に鳥の飛翔やスポーツのように被写体が大きく動く場合は、広いAFエリアを利用した方が追尾しやすくなります。
同じカメラでも、被写体によって最適な測距点の使い方は変わります。
測距点数だけを見るとカメラ選びを誤りやすい
カタログを見ると測距点数は数字で比較できるため、非常に分かりやすい性能指標に見えます。
ところが現在は、一眼レフとミラーレスでAFの仕組みが違い、メーカーや機種によってAFポイントの数え方も異なります。そのため単純に数字の大きい機種を選べば撮影しやすくなるとは限りません。
実際には、AFエリアの広さ、低照度でのAF性能、被写体検出、追尾性能、AFポイントの移動方法、レンズ側のAF速度などを含めて考える必要があります。
特にミラーレスでは、カメラが被写体そのものを認識して追尾するため、撮影者が「どの測距点を使うか」を意識する場面は以前より少なくなっています。
カメラ選びでは測距点数を一つの参考値として確認しつつ、実際に自分が撮影する被写体に対して使いやすいAFシステムかを見ることが重要です。
測距点は撮影内容に合わせて使い分ける
- 静止している被写体には一点AFが使いやすい
- 動く被写体には広いAFエリアと追尾が有効
- 測距点の位置を素早く変更できる設定も重要
風景や静物では一点AFが分かりやすい
風景、商品、料理、建物など、被写体がほとんど動かない撮影では、一点AFが扱いやすい方法です。
ピントを合わせたい場所を撮影者が明確に指定できるため、カメラが別の被写体を選択する可能性を抑えられます。
花を撮影する場合も、花全体ではなく雄しべなど特定の部分にピントを合わせたい場合には、一点AFやさらに小さなAFエリアが便利です。
測距点が多いカメラであれば、構図を決めたあとに目的の場所へAFポイントを移動できるため、フォーカスロックによる構図変更も必要ありません。
被写体が動かないからこそ、広いAFエリアを自動選択させる必要は少なく、撮影者自身がピント位置を決める方法が安定します。
測距点が多いカメラでも、常に多数のポイントを同時に使う必要はありません。
野鳥やスポーツでは広いAFエリアを活用する
野鳥、スポーツ、走る動物などでは、被写体が画面内を大きく移動します。
このような撮影で一点AFだけを使用すると、測距点から被写体が外れた瞬間にピントを失いやすくなります。
ゾーンAFや広いAFエリアを使えば、ある程度の範囲内でカメラが被写体を探すため、動きを追いやすくなります。
さらに現在のミラーレスでは、被写体検出AFと組み合わせることで、最初に被写体を認識させたあとはカメラに追尾を任せる撮影も可能です。
撮影者は被写体を画面内に入れ続けることに集中できるため、測距点を手動で移動する操作からかなり解放されます。
動体撮影では「測距点が何点あるか」という数字以上に、「一度捉えた被写体を画面のどこまで追い続けられるか」が重要になります。
測距点を素早く動かせる設定も確認する
AFを使いやすくするためには、測距点そのものの性能と同じくらい操作方法も重要です。
カメラによって、十字キー、マルチコントローラー、背面モニターのタッチ操作など、AFポイントを移動する方法が異なります。
よく使うAF方式をボタンに登録できる機種では、普段は一点AFを使い、動く被写体が現れた瞬間だけ広いAFエリアへ切り替えるといった使い方もできます。
EOS RPでAFポイントを移動する方法については、EOS RPのフォーカスポイント設定と操作方法で詳しく解説しています。
測距点が多いカメラほど、どのように選択するかが使いやすさを左右します。
購入時には測距点数だけを確認するのではなく、AFポイントをどの方法で選択できるのか、撮影中に素早く切り替えられるのかまで確認すると、自分に合ったカメラを選びやすくなります。
まとめ
測距点とは、カメラがオートフォーカスでピントを検出するための位置です。
測距点が多ければ、画面の広い範囲でピントを合わせられ、構図の自由度が高まり、動く被写体を追尾しやすくなります。
一方で、一点ずつ手動選択する場合には操作量が増え、自動選択では撮影者が意図していない被写体を選ぶこともあります。
現在のミラーレスカメラでは、画面の広範囲を利用したAFや人物・動物などの被写体検出が一般的になり、単純な測距点数の重要性は以前より低くなっています。
カメラを選ぶときは、測距点の数だけを見るのではなく、AFエリアの広さ、被写体認識、追尾性能、AFポイントの操作方法まで含めて確認することが重要です。



