35mm単焦点で風景を撮る方法|構図・設定・24mm・50mmとの違い
35mm単焦点は、風景全体を広く写しながら、写真の中に明確な主役も置きやすい焦点距離です。
24mmのような広角感を強く出しすぎず、50mmほど写る範囲を狭めないため、山や海、街並み、旅行先の景色などを自然な距離感でまとめられます。
一方、35mmを付けただけで風景写真がまとまるわけではありません。画角が適度に広いため、主役を決めずに撮ると、空、山、道路、建物、草木などが同じ強さで入り、何を見せたい写真なのか分かりにくくなります。
35mm単焦点で風景を撮るときに重要なのは、焦点距離そのものよりも、撮影位置、前景、奥行き、画面の端、絞りを意識することです。
この記事では、35mm単焦点で風景を撮るための構図、撮影設定、24mm・50mmとの違い、街並みや旅行での使い方まで具体的に解説します。
35mm単焦点が風景撮影で使いやすい理由
- 広がりと主役の見せやすさを両立できる
- 前景から遠景まで使った奥行きを作りやすい
- 風景から街並み、旅行まで一本で対応しやすい
広い景色の中でも主役を残しやすい
35mm単焦点は、風景を広く取り込みながら、写真の中の主役も見せやすい焦点距離です。
24mmなどの広角レンズでは、山、海、空、建物など広い範囲を一枚へ収めやすくなります。その反面、遠くの主役が画面の中で小さくなりやすく、周囲の情報量も増えます。
50mmでは写る範囲が狭くなり、風景の一部分を整理して切り取りやすくなります。広大な場所では、もう少し周囲を入れたいと感じる場面もあります。
35mmはその中間に位置します。
山の頂上を主役にしながら手前の草原を入れる、海岸の岩を見せながら水平線まで入れる、建物を中心にしながら周囲の街並みを残す、といった構図を作りやすい画角です。
風景全体を記録するだけで終わらせず、「この景色の中で何を見せたいか」を写真へ入れやすいことが35mmの強みです。
35mmを風景以外でどう使えるかについては、35mm単焦点の使い道でも詳しく紹介しています。
前景を入れると35mmらしい奥行きを作れる
35mmで風景を撮る場合、遠くの景色だけを見ると平面的な写真になりやすいことがあります。
そこで使いたいのが前景です。
手前に花、岩、草、道路、柵、木の枝などを配置し、その奥に主役、さらに遠景を置きます。
例えば山を撮る場合、山だけを中央へ置くと記録写真に近い見え方になります。手前に草原や道を入れると、写真を見る人の視線が手前から山へ移動し、距離感が伝わります。
街並みでも同じです。
手前に道路、中間に建物、奥に空や遠くの街を配置すると、一枚の中に前後方向の流れができます。
35mmは超広角ほど前景が極端に大きくなりにくいため、自然な奥行きを作りやすい焦点距離です。
前景を大きく入れすぎると主役が弱くなるので、最初は画面の下部や左右へ少量入れる程度から試すと構図を整えやすくなります。
焦点距離と画角による見え方の違いは、画角の違いが変える写真の世界でも解説しています。
旅行や街歩きでは一本だけでも撮りやすい
35mm単焦点は、純粋な自然風景だけでなく、旅行や街歩きでの風景撮影にも使いやすいレンズです。
旅先では、山や海だけを撮るとは限りません。
駅、道路、建物、店、看板、料理、人、乗り物など、次々に被写体が変わります。
35mmなら、街全体の雰囲気を撮ったあと、そのまま少し近づいて建物や看板を撮ることもできます。
人物を風景の中へ入れる場合も、周囲の場所が分かる程度の背景を残しやすくなります。
単焦点なのでズーム操作はできません。写る範囲を変えたい場合は、自分が前後左右へ動きます。
この制約は旅行中に不便になる場面もありますが、同じ35mmの画角で撮り続けることで、写真全体に統一感を出しやすくなります。
小型の35mm単焦点なら機材も軽くできるため、長時間歩く旅行や街歩きとの相性も良好です。
35mm単焦点で風景を撮る構図の作り方
- 最初に写真の主役を一つ決める
- 前景・中景・遠景を使って奥行きを作る
- 画面の四隅まで確認して不要な物を外す
広い景色の中から主役を一つ決める
35mmで風景を撮るときは、シャッターを切る前に主役を一つ決めます。
山、一本の木、建物、夕日、雲、花、道路など、何でも構いません。
重要なのは、「きれいな景色だから全部入れる」という状態から一歩進めることです。
例えば山と湖と空が見える場所でも、山を主役にするのか、湖面の反射を主役にするのかでカメラ位置が変わります。
山を見せるなら空を減らし、山を大きく配置します。湖面を見せるならカメラ位置を下げ、水面の面積を増やします。
35mmは周囲が適度に入るため、主役を中央に小さく置くだけでは周囲へ視線が散りやすくなります。
三分割構図、道路や柵を使った導線、左右の木を額縁のように利用する構図などを使い、視線が主役へ向かうように整理します。
風景の中に人物を置く場合も同じです。人物を小さく配置しすぎると存在感が消えるため、背景との大きさのバランスを見ながら撮影位置を調整します。
前景・中景・遠景の三層を意識する
35mmで奥行きのある風景を作りたい場合は、前景、中景、遠景の三つを意識すると構図を作りやすくなります。
例えば山の風景なら、前景に草や岩、中景に湖や森、遠景に山を配置できます。
街並みなら、前景に道路や手すり、中景に人物や建物、遠景に高層ビルや空を配置できます。
画面の中に距離の違う物を置くことで、二次元の写真に奥行きが生まれます。
35mmは手前へ少し近づくだけで前景の大きさが大きく変化します。
前景が弱いと感じたら焦点距離を変えることはできないので、自分が一歩、二歩前へ動きます。
反対に前景が大きすぎる場合は後ろへ下がります。
単焦点を使うと、この撮影位置の調整がそのまま構図作りになります。
ズームリングで画角を整える撮影とは違い、自分が動くことで前景と背景の大きさの関係まで変化するため、35mmの特徴を理解しやすくなります。
画面の端まで確認すると写真が整う
35mmは写る範囲がある程度広いため、撮影者が気づかなかった物が画面の端へ入りやすくなります。
電柱、看板、ゴミ箱、他の観光客、切れかけた木の枝、道路標識などです。
ファインダー中央の主役だけを見て撮影すると、家へ帰って写真を確認したときに初めて気づくことがあります。
シャッターを切る直前に、左上、右上、左下、右下の四隅を順番に確認します。
不要な物があれば、少し左右へ移動する、カメラの高さを変える、数歩近づくといった方法で外します。
35mm単焦点ではズームで切り取れないため、この一歩の移動が重要です。
逆に考えると、撮影位置を丁寧に決める習慣がつきやすい焦点距離でもあります。
単焦点を使いにくく感じる理由と撮影位置の考え方については、単焦点レンズの難しさと使い方でも詳しく紹介しています。
35mmで風景を撮るときのカメラ設定
- 風景全体を見せるならF5.6~F8を基準にする
- 手持ちでは被写体の動きも見てシャッタースピードを決める
- 開放F値は前景や光を主役にするときに使う
F5.6~F8を基準にすると風景をまとめやすい
山、海、街並みなど風景全体を見せたい場合は、F5.6からF8付近を一つの基準にできます。
適度に絞ることで被写界深度を確保しやすくなり、前景から遠景まで広い範囲を見せられます。
常にF8へ固定する必要はありません。
遠景だけを撮る場合はF4やF5.6でも十分なことがあります。前景をカメラの近くへ大きく入れ、遠景まで見せたい場合にはF8、F11などへ絞る場面もあります。
絞り込みすぎると回折の影響が出やすくなるため、必要以上にF16やF22を使う必要はありません。
まずF8程度で撮影し、前景と遠景の両方を拡大表示して確認します。
必要な範囲にピントが来ていれば、その設定で十分です。
逆に前景がぼけすぎている場合は少し絞るか、ピント位置を調整します。
35mmでは超広角ほど被写界深度が深くならないため、前景へ極端に近づく構図では特にピント位置を意識します。
手持ちはシャッタースピードも確認する
風景撮影では被写体が止まって見えるため、シャッタースピードを気にしなくなることがあります。
実際の風景には、風で揺れる葉、草、波、人、車、雲など動く物があります。
手持ち撮影なら、まず1/125秒前後を一つの基準にし、状況に合わせて調整すると扱いやすくなります。
風で木の葉が大きく揺れているなら1/250秒、1/500秒などへ上げます。
夕方や日陰でシャッタースピードが落ちる場合は、ISO感度を上げます。
手ブレ補正付きのレンズやボディであれば、静止した景色ではさらに遅いシャッタースピードを使える場合があります。
それでも手ブレ補正は葉や人など被写体の動きを止める機能ではありません。
三脚を使用する場合は、低ISOと遅いシャッタースピードを組み合わせることで、画質を重視した撮影や水面を滑らかに見せる撮影もできます。
F1.4やF1.8は風景の一部を見せるときに使う
35mm単焦点にはF1.4やF1.8など明るいレンズがあります。
風景だから常に絞る必要はありません。
前景の花、葉、標識、人物など一つの被写体を主役にし、背景に風景を残したい場合は開放付近が有効です。
例えば手前の花へ近づきF1.8で撮れば、花をはっきり見せながら、奥の山や街並みを柔らかくぼかせます。
背景を完全に消すのではなく、「どこで撮ったのか分かる程度に残す」のが35mmらしい使い方です。
朝夕や室内から外を撮る場面など、光量が少ない状況でも明るいF値は役立ちます。
シャッタースピードを確保しやすくなり、ISO感度を抑えられる場合があります。
RFマウントで35mmを一本選ぶ場合には、近接撮影もできるRF35mm F1.8 Macro IS STMも、風景から花や小物まで用途を広げやすいレンズです。
35mm・24mm・50mmで風景の見え方はどう変わるか
- 24mmは広がりと前景を強調しやすい
- 35mmは広さと主役のバランスを取りやすい
- 50mmは風景の一部分を整理して切り取りやすい
24mmは広い場所を大きく見せやすい
24mmは35mmと比べて広い範囲を写せます。
雄大な山、広い空、海岸、建築物、狭い室内など、撮影者が後ろへ下がれない場所でも広い景色を収めやすくなります。
カメラへ近い物を大きく、遠い物を小さく見せやすいため、前景を大胆に使った構図にも向いています。
一方、遠くの山や建物は画面の中で小さくなりやすく、主役を明確にするには構図の整理が必要です。
広い景色そのものを見せたい場合は24mm、風景の中にある一つの主役もある程度大きく見せたい場合は35mmが使いやすくなります。
同じ場所で24mmと35mmを撮り比べると、35mmでは余計な周囲が自然に切れ、主役へ視線が集まりやすいことがあります。
35mmはその場の雰囲気と主役を両立しやすい
35mmは、広角らしい広がりを残しながら、画面内の情報を整理しやすい焦点距離です。
旅行先の街並みを撮る場合、建物一棟だけを写すのではなく、道路や周囲の建物、人なども一緒に入れられます。
自然風景では山だけを大きく切り取るのではなく、手前の森や湖なども組み合わせられます。
撮影場所そのものの雰囲気を見せたい写真との相性が良好です。
35mmで撮った写真が散漫に感じる場合、焦点距離の問題より、画面へ入れる物が多すぎる可能性があります。
数歩前へ進む、カメラの高さを変える、左右へ移動することで不要な要素を減らします。
35mm単焦点はズームできないため、撮影者自身の位置が写真の整理に直結します。
50mmは風景から一部分を切り出しやすい
50mmは35mmと比べて画角が狭く、風景の一部分を整理して撮る用途に向いています。
山並みの一部、街の一角、一軒の建物、一本の木など、主役を大きく見せやすくなります。
周囲の不要な物も画角の外へ出しやすいため、構図を簡潔にまとめられます。
一方、広い山岳風景や狭い街中では、写したい範囲を入れるために後ろへ下がる必要があります。
撮影場所によってはそれ以上下がれないこともあります。
35mmと50mmで迷った場合、風景と周囲の雰囲気まで一緒に残したいなら35mm、風景の中から主役を選んで切り取りたいなら50mmという考え方ができます。
35mm単焦点をAPS-Cで使う場合の注意点
- キヤノンAPS-Cでは約56mm相当の画角になる
- フルサイズ35mmと同じ広がりにはならない
- 風景の切り取りには使いやすい標準域になる
キヤノンAPS-Cでは約56mm相当になる
キヤノンAPS-Cカメラへ35mmレンズを装着すると、35mm判換算では約56mm相当の画角になります。
レンズそのものの焦点距離が変わるわけではありません。APS-Cセンサーではフルサイズの中央部分を使うため、写る範囲が狭くなります。
そのため、この記事で説明しているフルサイズ35mmの広がりをそのまま期待すると、思ったより狭く感じます。
EOS 90D、EOS R7、EOS R10などで35mmレンズを使う場合には、標準レンズに近い感覚になります。
広い風景を一枚へ入れる用途では、APS-Cなら20mmから24mm前後のレンズも候補になります。
APS-Cでは風景を整理して切り取る使い方が向く
約56mm相当になることは欠点ではありません。
風景全体を広く写す用途から、風景の中にある主役を切り取る用途へ性格が変わります。
遠くの山、建物、木、夕日などを周囲から整理して撮りやすくなります。
フルサイズ35mmでは周囲の情報が多すぎると感じる場所でも、APS-Cでは自然に画面外へ外せることがあります。
街中でも看板、店先、人物などを切り取るスナップ撮影へ使いやすい画角です。
使用するカメラのセンサーサイズによって同じ35mmレンズでも用途が変化することを理解しておけば、購入後の画角の違いに戸惑いにくくなります。
購入前にズームレンズを35mm付近へ固定して試す
35mm単焦点を購入する前に、自分が35mmの画角を使いやすいか確認する方法があります。
24-70mm、24-105mmなどのズームレンズを持っている場合は、ズーム位置を35mmへ合わせ、そのまま動かさずに撮影します。
一日35mmだけで街や公園を撮ると、「もう少し広く写したい」「この範囲がちょうどいい」「もう少し狭い方が好き」といった感覚が分かります。
APS-Cの場合も同じ方法で確認できます。
単焦点レンズを買ってから画角が合わないことに気づくより、手持ちのズームで事前に試した方が確実です。
35mmの画角が合えば、その後でF1.4やF1.8といった単焦点ならではの明るさ、小型軽量性、最短撮影距離などを基準に製品を選べます。
まとめ
- 35mmは風景の広がりと主役を両立しやすい
- 前景と撮影位置を意識すると奥行きのある写真になる
- 24mm・50mmとの違いを理解すると使い分けやすい
35mmは風景全体を自然にまとめやすい
35mm単焦点は、広い景色を写しながら主役も残しやすい焦点距離です。
山、海、森林、街並み、旅行先など、多くの風景へ対応できます。
24mmほど画面内の情報が増えず、50mmほど写る範囲が狭くならないため、一つの焦点距離でさまざまな場所を歩いて撮る用途にも向いています。
風景専用の特殊なレンズではなく、日常の延長で風景を撮れることが35mmの魅力です。
35mmでは自分が動くことが構図作りになる
35mm単焦点にはズーム機能がありません。
写る範囲を変えるには、撮影者が動きます。
前へ進めば前景が大きくなり、後ろへ下がれば周囲を広く入れられます。左右へ移動すれば、背景の重なりや道路、建物の線も変化します。
この小さな移動を繰り返すことで、35mmの画角に合った構図を見つけられます。
ズームできないことが、撮影位置を考えるきっかけになります。
風景専用記事として35mmの撮り方を深掘りする
35mm単焦点には、スナップ、ポートレート、旅行、室内、料理など風景以外にも多くの使い道があります。
それらをまとめて知りたい場合は、35mm単焦点の使い道 スナップから風景まで生かす撮影方法で詳しく紹介しています。
人物撮影で35mmを使う場合には、撮影距離による顔の見え方も重要です。35mmポートレートで気になる顔の歪みでは、人物との距離と構図を詳しく解説しています。
風景撮影では、主役を決め、前景と奥行きを使い、画面の端まで確認する。この三つを意識するだけでも35mmの写真はかなり整理しやすくなります。
35mm単焦点は、目の前の景色を広く記録するためだけのレンズではありません。撮影者がどこに立ち、何を入れ、何を外すかを写真へ反映しやすい焦点距離です。





