AF-S VR Micro-Nikkor 105mm f/2.8G IF-EDレビュー|等倍マクロ・画質・VR・中古選び
AF-S VR Micro-Nikkor 105mm f/2.8G IF-EDは、ニコンFマウントの中望遠マイクロレンズです。105mmという焦点距離、最大撮影倍率1.0倍の等倍撮影、F2.8、レンズ内VR、超音波モーターSWMを組み合わせ、花や昆虫、小物の接写だけでなく、ポートレート、風景の切り取り、商品撮影まで幅広く使えます。
このレンズは最短撮影距離0.314mまでピントを合わせられます。ここでいう0.314mは撮像面から被写体までの距離であり、レンズ先端から31.4cm離れるという意味ではありません。等倍域では実際のワーキングディスタンスはもっと短くなりますが、50mm前後のマクロレンズより被写体から距離を取りやすく、昆虫や花へレンズを極端に近づけず撮影できることが105mmマクロの大きな利点です。
一方で、マクロ撮影では一般撮影と同じ感覚でVRやF2.8を考えると使い方を誤りやすい部分もあります。撮影倍率が高くなるほどVRの補正効果は低下し、近距離では有効F値も暗くなります。750gという質量も軽量とはいえません。AF-S VR Micro-Nikkor 105mm f/2.8G IF-EDは、スペックだけを見るより、等倍撮影で何が変わるのか、105mmという焦点距離がどんな撮影に向くのかを理解すると魅力が分かりやすいレンズです。
AF-S VR Micro-Nikkor 105mm f/2.8G IF-EDの基本性能
AF-S VR Micro-Nikkor 105mm f/2.8G IF-EDは、ニコンFマウントCPU内蔵GタイプのAF-Sマイクロレンズです。焦点距離105mm、開放F2.8、最大撮影倍率1.0倍を基本とし、12群14枚の光学系、EDレンズ1枚、ナノクリスタルコート、9枚羽根の円形絞り、レンズ内VRを備えています。
105mmで等倍撮影できる中望遠マイクロレンズ
最大撮影倍率1.0倍では、被写体を撮像面上へ実物と同じ大きさで写せます。たとえば実物で10mmの被写体なら、センサー上でも10mmの像として記録できます。通常の標準ズームや中望遠単焦点では0.1倍から0.3倍程度の最大撮影倍率が多いため、1.0倍まで拡大できることが本格的なマクロレンズとの大きな違いです。
105mmという焦点距離も重要です。短い焦点距離のマクロレンズは等倍まで寄るとレンズ先端が被写体へかなり接近しやすく、撮影者やレンズの影が被写体へかかったり、昆虫が逃げたりすることがあります。105mmでは同じ1.0倍でも一定の距離を取りやすく、自然光やストロボの光を被写体へ回しやすくなります。
また、105mmは接写以外では中望遠として使えます。花畑の一輪だけを切り取る、遠くの風景の一部分を抜き出す、人物の上半身を背景から分離するといった撮影にも対応します。マクロレンズそのものの特徴は、マクロレンズとは?特徴・選び方・使い方を初心者向けに解説でも詳しく紹介しています。
最短撮影距離0.314mとワーキングディスタンスの違い
このレンズの最短撮影距離は0.314mです。最短撮影距離は撮像面から被写体までの距離なので、レンズ先端から被写体まで31.4cm空くわけではありません。カメラボディ、マウントから前へ伸びる116mmの鏡筒、フードなどがその距離の中へ含まれます。等倍付近ではレンズ前面から被写体までの距離は約15cm前後となり、撮影時にはここを実際の作業空間として考える必要があります。
この距離は昆虫撮影やライティングで意味を持ちます。レンズを被写体へ数cmまで近づけなければならないレンズでは、カメラや撮影者自身が光を遮りやすくなります。105mmなら前から小型ストロボやLEDライトの光を入れやすく、花や昆虫へ近づく際にもレンズ先端が被写体へ接触する可能性を下げられます。
一方、105mmだから被写体から大きく離れて等倍撮影できるわけではありません。等倍域では依然としてかなり近づきます。撮影距離とワーキングディスタンス、最大撮影倍率は別の数値として理解した方が、マクロレンズの実際の使い勝手を判断しやすくなります。撮影距離による写真の変化は、被写体との距離で写真はどう変わる?撮影距離・焦点距離・構図の基本で詳しく解説しています。
750gの鏡筒と105mm中望遠としての存在感
最大径約83mm、全長約116mm、質量約750gで、一般的なF1.8クラスの中望遠単焦点より明確に大きく重いレンズです。VR機構、内部フォーカス、等倍まで対応する長いフォーカス移動量を持つため、軽量な単焦点と同じ感覚では扱えません。
それでも70-200mm F2.8クラスの望遠ズームよりは小さく、105mm単焦点としてカメラバッグへ収めやすい大きさです。D750、D780、D850などのフルサイズ一眼レフではボディとのバランスを取りやすく、左手で鏡筒を下から支えると安定します。小型のDXボディではレンズ側の重量感が強くなるため、グリップだけで保持するより左手をしっかり添えた方が扱いやすくなります。
フルサイズでは105mmらしい中望遠の画角、DXフォーマットでは35mm判換算約157.5mm相当の狭い画角になります。DXでは小さな被写体を画面内で大きく見せやすい一方、室内ポートレートや近距離の人物撮影では撮影距離が必要です。85mm、105mm、135mmの違いは、中望遠レンズとは?85mm・100mm・135mmの使い方と背景ボケ・圧縮効果で比較しています。
画質とボケから見る105mm F2.8マクロの魅力
AF-S VR Micro-Nikkor 105mm f/2.8G IF-EDは、接写時の細部描写を重視したレンズですが、単純に硬くシャープなだけではありません。ピント面の細かな情報を残しながら、背景を柔らかく整理しやすいことが特徴です。花や昆虫では細部と背景の差を作りやすく、ポートレートでは瞳や髪の毛を細かく描写しながら背景をぼかせます。
近接から通常距離まで高い解像感を得やすい
マクロレンズでは、通常距離で高画質でも最短撮影距離付近で性能が落ちてしまえば本来の用途を果たせません。このレンズは近接域で細部を記録することを前提に設計されており、花びらの繊維、昆虫の羽や毛、小物の表面、金属や布の質感などを細かく写し取りやすいレンズです。
通常撮影でも中央部は開放F2.8から解像感を得やすく、F4からF8付近へ絞ると画面全体を整えやすくなります。風景や商品撮影で平面的な被写体を画面全体へ配置する場合は、少し絞った方が周辺まで安定した結果を得やすくなります。反対にポートレートや花では、開放付近を使って背景を整理する意味があります。
F16やF22のように大きく絞れば被写界深度は広がりますが、回折による細部の低下も出やすくなります。マクロでは被写界深度を稼ぎたい場面が多いため、解像力と被写界深度のどこで折り合いをつけるかが重要です。解像力やシャープネスの見方は、レンズ解像度とは?解像力・シャープネスとの違いと画質を引き出す撮影方法で詳しく解説しています。
EDレンズが高コントラスト部分の色にじみを抑える
光学系は12群14枚で、EDレンズを1枚使用しています。望遠系レンズでは、ピント面の前後や強い明暗差の境界に紫や緑の色にじみが出ることがあります。マクロ撮影では白い花びら、昆虫の光沢、金属、ガラス、宝石などコントラストの高い細部を大きく写すため、色収差が目立つと質感が崩れやすくなります。
このレンズは色収差を抑えながら細部のコントラストを保ちやすく、商品撮影や植物撮影でも輪郭を整理しやすい設計です。完全に色収差が発生しないわけではなく、逆光や強い反射、開放付近では条件によって色づきが見えることもあります。撮影時には背景との明暗差や反射面の位置を変えることで、後処理以前に色にじみを抑えられる場合があります。
デジタル撮影ではRAW現像時に倍率色収差を補正することもできますが、ピント前後に出る軸上色収差は単純な一括補正では消しにくい場合があります。色収差がどこに出るかを理解しておくと、マクロ撮影で光沢の強い被写体を扱いやすくなります。詳しくは色収差とは?紫や緑のにじみが出る原因と撮影・補正方法で解説しています。
9枚羽根と105mmの焦点距離が背景を整理する
絞り羽根は9枚の円形絞りです。マクロ撮影では被写体へ近づくほど被写界深度が浅くなるため、F2.8で撮らなくても背景は大きくぼけます。等倍付近ではF5.6やF8まで絞っても背景が完全に鮮明になるわけではなく、ピント面の前後は急速にぼけていきます。
105mmの狭い画角も背景整理に有利です。50mmマクロでは背景の広い範囲が画面へ入りやすいのに対し、105mmでは狭い範囲だけを切り取れます。花の後ろに枝や葉が多い場所でも、撮影位置を少し変えて均一な色の背景を選べば、被写体だけを浮かび上がらせやすくなります。
ポートレートでも同様で、人物と背景の距離を取れば、105mm F2.8でも大きな背景ボケを作れます。F1.4やF1.8の人物用単焦点ほど開放F値は明るくありませんが、画角、撮影距離、背景までの距離を組み合わせれば十分に人物を分離できます。レンズの描写は解像力だけでは決まらず、ボケ、色収差、逆光耐性などを含めて考える必要があります。詳しくはレンズの光学性能とは?解像力・MTF・色収差・ボケの見方で紹介しています。
VRとAFをマクロ撮影でどう使うか
AF-S VR Micro-Nikkor 105mm f/2.8G IF-EDには、レンズシフト方式VRとSWMによるAF-Sを搭載しています。どちらも手持ち撮影を助ける機能ですが、マクロ撮影では一般撮影と同じ効果を期待すると結果が合わないことがあります。撮影倍率が上がるほど、手ブレ、前後方向のわずかな移動、AFの迷いが写真へ大きく影響します。
VRは3段相当でも近接するほど補正効果が小さくなる
VRの手ブレ補正効果は3.0段相当です。通常距離では105mmという焦点距離の手ブレを抑える効果があり、夕方、日陰、室内、静物、ポートレートなどで低速シャッターを使う場合に役立ちます。ファインダー像が安定することで、細かな構図を決めやすくなることも利点です。
重要なのは、撮影距離が約3mより近くなるにしたがって補正効果が徐々に低下することです。等倍付近で3段分そのまま使えるわけではありません。接写では角度方向の揺れだけでなく、カメラが前後左右へわずかに移動することでもピント位置が変わります。VRで画面上の揺れが減っても、被写界深度からピント面が外れれば写真は甘くなります。
そのため、等倍撮影ではVRを万能な機能として考えるより、構図を安定させる補助として使い、必要なシャッタースピードを確保する方が安定します。風で揺れる花や動く昆虫では被写体ブレもあるため、VRだけでは止められません。手ブレ補正と被写体ブレの違いは、手ブレ補正の仕組みと撮影シーン別の使い方で詳しく解説しています。
SWMとフォーカスリミッターでAFの移動範囲を減らす
AFには超音波モーターSWMを採用しています。通常距離では静かで滑らかなAFを使いやすく、ポートレートや風景では一般的な105mm単焦点として扱えます。一方、マクロレンズは最短撮影距離から無限遠までのフォーカス移動量が大きいため、被写体を見失うとAFが大きく往復することがあります。
このレンズにはFULLと∞〜0.5mのフォーカス制限切り換えがあります。遠くの人物、風景、舞台など0.5mより近い場所へピントを合わせる必要がない場合には∞〜0.5mへ設定すると、AFがマクロ域まで探しに行く動きを抑えられます。逆に等倍撮影や花、昆虫など近距離を使う場合はFULLへ戻します。
マクロ撮影では、小さな被写体の背景へAFが抜けると復帰に時間がかかることがあります。昆虫の目や花のしべを狙う場合、AFで大まかな位置へ合わせた後、身体を数mm前後させるかMFで最終調整する方法も有効です。ピント位置と被写界深度の関係は、ピントが作品力を左右する 写真表現を変える焦点操作の実践知識で詳しく紹介しています。
等倍付近では表示されるF値が大きくなる
AF-S VR Micro-Nikkor 105mm f/2.8G IF-EDでは、被写体へ近づき撮影倍率が上がるほど有効F値が大きくなります。F2.8に設定したから、等倍でも無限遠と同じ明るさのF2.8で撮影できるわけではありません。近接すると内部フォーカスによって実効的な明るさが低下し、対応するニコンカメラではその変化が絞り表示へ反映されます。
マクロ撮影で「F2.8に設定したのに表示がF4やそれ以上になる」と感じる場合がありますが、故障ではありません。近接撮影では有効F値が変化するためです。TTL測光やTTL調光を使う場合はカメラ側で露出を補正するため、通常は露出倍数を手計算する必要はありません。
同時に、等倍撮影では被写界深度が非常に浅くなります。花のしべ全体や小物の奥行きを写したい場合、F2.8開放ではピント面が薄すぎることがあります。F5.6、F8、F11などへ絞りながら、必要に応じてISO感度、ストロボ、三脚を組み合わせます。F値と被写界深度の関係は、F値とは?絞りで変わる明るさ・ボケ・被写界深度で詳しく解説しています。
マクロ以外でも使える105mm F2.8
AF-S VR Micro-Nikkor 105mm f/2.8G IF-EDは等倍撮影だけの専用レンズではありません。無限遠までピントを合わせられるため、通常の105mm単焦点として人物、風景、街中の切り取り、舞台、小動物などを撮影できます。マクロ性能を持ちながら通常撮影でも使えることが、このレンズを一本持ち出しやすくしている理由です。
ポートレートでは105mmの距離感と細部描写を生かす
フルサイズで105mmは、人物の顔や上半身を自然な距離から切り取りやすい焦点距離です。85mmより少し距離を取りやすく、背景へ写り込む範囲も狭くできます。公園や街中で背景に看板、建物、人などが多い場合でも、撮影位置を調整して不要な要素を画面外へ外しやすくなります。
マクロレンズらしい高い解像感は人物撮影でも現れます。瞳、まつ毛、髪、衣装、アクセサリーなどを細かく残せる一方、肌の細かな質感まで写りやすくなります。柔らかい光を使う、少し絞る、撮影後に肌の質感を整えるなど、目的に応じた使い分けが必要です。
F2.8は人物専用の105mm F1.4のような大口径レンズほど明るくありませんが、背景まで十分な距離を取れば大きなボケを得られます。マクロレンズを人物撮影へ使う際の特徴は、マクロレンズでポートレートは撮れる?デメリット・焦点距離・設定を解説で詳しく整理しています。
風景では遠景の一部分を切り取るレンズになる
風景撮影では、広角で景色全体を入れる方法だけが正解ではありません。105mmを使うと、山の稜線、遠くの建物、光が当たった木々、水面の反射など、広い風景の中から必要な部分だけを切り取れます。背景の山を大きく見せたり、複数の稜線を重ねたりする構図にも使いやすい焦点距離です。
近くの花や葉を前景として入れ、遠くの風景を背景にする撮影にも向きます。被写体へ近づけばマクロ域へ入り、少し離れれば中望遠の風景レンズとして機能するため、一つの場所で撮影倍率を大きく変えられます。広い景色から細部まで視点を切り替えられることが105mmマイクロの強みです。
中望遠では画角が狭い分、撮影位置のわずかな違いが背景の重なりへ反映されます。85mm、105mm、135mmを風景や人物でどう使い分けるかは、中望遠レンズの使い方ガイド|85mm・105mm・135mmの違いと撮影のコツで紹介しています。
スナップでは広い景色から一部分だけを選び取る
105mmで街を歩くと、標準レンズとは写真の作り方が変わります。目の前にある街全体を写すのではなく、少し離れた場所にある看板、窓、人物、光と影、建物の一部分などを選んで撮ります。画角が狭いため、背景を整理しやすく、一つの被写体へ視線を集中させやすくなります。
マクロ性能もスナップで利用できます。街角の花、古い看板の文字、金属の質感、時計、料理、小物など、気になった細部へそのまま寄れます。通常の中望遠単焦点では最短撮影距離の制約で寄れない場面でも、0.314mまでピントを合わせられるこのレンズなら撮影を続けられます。
750gあるため小型軽量なスナップレンズとはいえませんが、人物から小物まで一本で焦点距離を変えずに撮影できる点は独特です。中望遠で街を切り取る考え方は、中望遠スナップ撮影ガイドで詳しく解説しています。
FマウントとZシリーズで使う場合の違い
AF-S VR Micro-Nikkor 105mm f/2.8G IF-EDはFマウントレンズなので、ニコンのFマウント一眼レフへ直接装着できます。ZシリーズではFTZまたはFTZ IIを介して使用します。AF-Sレンズなので、FTZ経由でもAFを利用できる点が、ボディ内モーターを必要とする古いAF-Dレンズとの大きな違いです。
Fマウント一眼レフではAF-SとVRをそのまま使える
D850、D780、D750、D500などの対応Fマウント一眼レフでは、AF、VR、自動絞り、撮影距離情報などレンズ本来の機能を利用できます。AF-Sレンズ自身がSWMを搭載しているため、ボディ側のAFモーターへ依存しません。
DX機では35mm判換算約157.5mm相当の画角になります。焦点距離そのものは105mmのままですが、フルサイズより狭い範囲だけを記録するため、小さな昆虫や花を画面内で大きく見せやすくなります。一方、ポートレートでは人物との距離が長くなり、室内では構図を作りにくい場合があります。
Fマウントは長い歴史の中でAI、AF、AF-D、AF-S、Gタイプなど複数世代へ進化しており、同じFマウントでもAFの互換性はレンズによって異なります。このレンズの位置づけを含むマウントの変遷は、ニコンFマウントからZマウントまでの歴史|AI・AF-S・FTZの互換性を時系列で解説で確認できます。
ZシリーズではFTZを介してAF-Sレンズとして使える
Z5、Z6シリーズ、Z7シリーズ、Z8、Zf、Z50シリーズなどではFTZまたはFTZ IIを使って装着できます。アダプター内部にレンズを持たないため、105mmという焦点距離やF2.8という基本的な光学特性が変化するわけではありません。
Zシリーズでは撮像面上でAFを行うため、一眼レフとはフォーカスの確認方法が変わります。拡大表示やピーキングを使ったMFも利用しやすく、等倍撮影で花のしべや昆虫の目へ細かくピントを合わせる場合に便利です。AF-SレンズなのでFTZ経由でもAFを使え、AF-DレンズのようにZボディでAFが使えなくなる組み合わせとは異なります。
一方、FTZを挟むため全長は長くなります。750gのレンズにアダプターが追加されるので、Zボディへ装着しても小型軽量なシステムにはなりません。FマウントレンズとZマウントの互換性を理解して使うことが重要です。マウントをまたいだレンズ運用の考え方は、EF100mm F2.8マクロの接写性能と中望遠としての使い方でも、マクロレンズを別システムで活用する際の参考になります。
Z MC 105mm F2.8 VR Sとは世代と設計思想が違う
ZマウントにはNIKKOR Z MC 105mm f/2.8 VR Sがあります。焦点距離105mm、F2.8、等倍マクロという基本構成は似ていますが、同じレンズをマウントだけ変更した製品ではありません。Z MC 105mmはZマウント専用に光学系、AF、VRを新設計したS-Lineレンズです。
Z MC 105mmは質量約630g、最短撮影距離0.29m、4.5段相当のVRを備え、AF-S VR Micro-Nikkor 105mm f/2.8G IF-EDより軽く、近接性能や補正性能も新しい世代へ更新されています。光学性能でもZマウントの設計自由度を活用し、無限遠から等倍までを高い水準でまとめています。
一方、Fマウント105mmはFマウント一眼レフへ直接使えること、中古で入手しやすいこと、FTZを利用すればZシリーズへも継続して使えることが強みです。新しいZレンズと単純に優劣だけで比べるより、所有するボディ、価格、使用頻度で選ぶ方が現実的です。他社の中望遠マクロと比較したい場合は、FE 90mm F2.8 Macro G OSSレビューも参考になります。
中古でAF-S VR Micro-Nikkor 105mm f/2.8G IF-EDを選ぶポイント
AF-S VR Micro-Nikkor 105mm f/2.8G IF-EDは旧製品となっているため、現在は中古を中心に探すことになります。マクロレンズは通常の単焦点よりフォーカス機構の移動範囲が広く、VRやAFの電子機構も搭載しているため、外観だけでなく実際の動作確認が重要です。
AFは近距離から無限遠まで実際に動かして確認する
中古では、AFが一度動いたから正常と判断せず、最短撮影距離付近、中距離、無限遠付近を行き来させて確認したいところです。マクロレンズはフォーカス移動量が大きいため、特定の位置だけで引っ掛かりや異音が出る個体も考えられます。
FULLで近距離から遠距離まで往復させ、∞〜0.5mのフォーカスリミッターへ切り替えたときも正常に動くかを見ます。AF後にフォーカスリングを回し、M/AでMF微調整ができるかも確認対象です。フォーカスリングに極端な重さ、空転、引っ掛かりがないかも重要です。
マクロ撮影では数mmのピント位置の差が写真へ直接現れるため、AFやMFの操作感は一般的なレンズ以上に重要になります。フォーカス動作の基礎は、ピントが作品力を左右する 写真表現を変える焦点操作の実践知識で詳しく解説しています。
VRの作動音とファインダー像の安定を確認する
VRをONにして半押しすると補正機構が作動します。正常な個体でも作動開始や停止時に機構音が聞こえることはありますが、明らかな異音、継続的な大きな振動、ファインダー像が急激に跳ね続けるような状態は確認した方がよい部分です。
VRが動作するかは、静止した細かな被写体を105mmで拡大して見ると分かりやすくなります。VR OFFとONでファインダー像の細かな揺れ方を比較し、ONで構図が安定するかを確認します。低速シャッターで数枚撮影し、結果を拡大して比較する方法もあります。
一方、VRだけで中古レンズ全体を判断する必要はありません。マクロ撮影では近接するほどVR効果が低下するため、光学系、AF、絞り、フォーカスリングなどとの総合判断になります。手ブレ補正を備える他のマクロレンズとの違いは、EF100mm F2.8マクロで描く接写世界も比較材料になります。
カビ・クモリ・絞り・マウント周辺も確認する
レンズ内部では、強いカビ、クモリ、バルサム切れのような異常、目立つ傷を確認します。小さなチリが数個ある程度なら撮影画像へほとんど影響しない場合がありますが、面全体へ広がるクモリは逆光時のコントラスト低下につながります。LEDライトを強く当てると微細なチリまで大量に見えるため、量だけでなく状態を見ることが重要です。
絞りは開閉が滑らかか、撮影後に戻らない症状がないかを確認します。電子接点に強い腐食がないか、金属マウントに大きな変形がないか、フィルター枠がつぶれていないかも確認対象です。フードHB-38や前後キャップの有無は撮影そのものには直結しませんが、追加購入が必要になる場合があります。
マクロレンズは花、昆虫、小物など屋外や地面に近い位置で使われることも多いため、鏡筒の外観だけで保管状態を判断できません。撮影結果と各機構の動作を優先して確認する方が現実的です。別メーカーの中望遠マクロを含めて中古レンズの性格を比較する場合は、EF180mm F3.5L Macro USMで撮る望遠マクロも参考になります。
まとめ
AF-S VR Micro-Nikkor 105mm f/2.8G IF-EDは、105mm F2.8、最大撮影倍率1.0倍、最短撮影距離0.314m、レンズ内VR、SWMを組み合わせたFマウントの中望遠マイクロレンズです。12群14枚、EDレンズ1枚、ナノクリスタルコート、9枚円形絞りを採用し、花、昆虫、小物、商品などの接写から、人物、風景、スナップまで対応します。
105mmの焦点距離によって、等倍撮影でも短い焦点距離のマクロレンズより被写体との距離を取りやすく、光を回しやすいことが特徴です。背景へ写る範囲も狭いため、花や昆虫を背景から分離した構図を作りやすくなります。通常距離では中望遠単焦点として、人物や風景の一部分を切り取る撮影にも使えます。
VRは3.0段相当ですが、撮影距離が短くなるほど補正効果は低下します。等倍付近ではカメラの前後移動によってピント面が外れやすく、被写体ブレもVRでは止められません。また、撮影倍率が上がるほど有効F値が大きくなるため、近接時は表示される絞り値がF2.8より暗くなる場合があります。マクロ撮影ではVR、AF、絞り、シャッタースピードを一つずつ理解して使う必要があります。
Fマウント一眼レフではそのまま使用でき、ZシリーズではFTZまたはFTZ IIを介してAFも利用できます。Z MC 105mm F2.8 VR Sのような新世代レンズと比べると大きく重く、光学性能やVRも世代差がありますが、FマウントボディとZボディの両方で使い回せること、中古で入手しやすいことは現在でも大きな特徴です。
マクロ撮影だけの一本として見ると750gは軽くありません。一方、等倍マクロ、105mm中望遠、F2.8、VR、AF-Sを一本へまとめたレンズとして見ると用途は広く、花や昆虫を撮った直後に人物や遠景へそのまま切り替えられます。AF-S VR Micro-Nikkor 105mm f/2.8G IF-EDは、接写性能だけで評価するより、中望遠単焦点と等倍マクロを一つにしたレンズとして使うことで持ち味が明確になります。



