Canon EOS 20Daは天体撮影専用の異色モデル|Hα感度とライブビューで20Dを進化
Canon EOS 20Daは、2005年に登場した天体写真撮影向けのデジタル一眼レフです。ベースとなったEOS 20Dの約820万画素APS-C CMOSセンサー、DIGIC II、9点AF、最高約5コマ/秒の連写といった基本性能を受け継ぎながら、赤い星雲を撮影しやすくするためにHα輝線の透過率を高めたローパスフィルターを採用し、さらにキヤノンのデジタル一眼レフとして初めてライブビュー機能を搭載しました。
現在ではEOS Raをはじめ、天体撮影へ対応したカメラや天体撮影用に改造されたデジタルカメラも知られていますが、EOS 20Daが登場した2005年には、メーカー自身が天体写真撮影を目的として専用仕様のデジタル一眼レフを製品化すること自体が珍しいものでした。通常モデルの20Dを単純に赤外線へ強くしたカメラではなく、望遠鏡を使った精密なピント合わせまで考え、ライブビューという後のEOSでは一般的になる機能を先行して搭載した点にも大きな意味があります。
D30、D60、10D、20Dと続いてきたD00シリーズの中では特殊な派生モデルですが、20Daは単なる番外編ではありません。デジタル一眼レフを特定の撮影分野へ最適化するという考え方と、後のライブビュー撮影へつながる技術の両方を持っており、キヤノンのデジタル一眼レフ史を追ううえでも非常に興味深い一台です。
EOS 20DaはEOS 20Dを天体撮影向けに特化したモデル
EOS 20Daの基本となったEOS 20Dは、約820万画素APS-C CMOSセンサーとDIGIC IIを搭載し、最高約5コマ/秒の連写、9点AF、最高1/8000秒のシャッター、EF-Sレンズへの対応などによって、10Dから撮影性能を大きく高めた中級デジタル一眼レフでした。
20Daはその20Dの基本性能をほぼそのまま利用しながら、通常の写真撮影では重視されない天体写真特有の問題へ手を入れています。その中心となるのが、赤い星雲が発するHα輝線をより多く撮像素子へ届けるための光学系と、暗い天体を拡大しながら精密にピントを合わせるためのライブビューです。
つまり20Daは、20Dの性能を全面的に作り直した後継機ではなく、完成度の高かった20Dを土台として、天体写真で不足していた部分だけを狙って変更した専門モデルと見るとわかりやすくなります。
通常のEOS 20Dと基本性能は共通している
20Daの撮像素子は約820万画素のAPS-C CMOSで、画像処理エンジンにはDIGIC IIを採用し、記録媒体はCFカード、連写速度は最高約5コマ/秒、AFは9点、最高シャッター速度は1/8000秒という構成です。これらは基本的に20Dと共通しており、天体撮影専用だから通常撮影に必要な性能が削られたカメラではありません。
EFレンズだけでなくEF-Sレンズも使用できるため、天体望遠鏡との組み合わせだけでなく、広角レンズを使った星景写真や標準レンズを使った一般撮影にも対応できます。通常の中級一眼レフとしての機能を残したまま、天体撮影へ向けた追加要素を持っているところが20Daの特徴です。
ベースとなったEOS 20Dの特徴と10Dからの進化はこちら
20Dとの最大の違いはHα輝線への感度
天体写真では、肉眼では淡くしか見えない赤い星雲を撮影することがあります。その代表的な光の一つが波長約656.3nmのHα輝線で、水素が多く存在する星雲を撮影するときに非常に重要になります。
一般的なデジタルカメラでは、可視光以外の影響を抑えて自然な色再現を得るため、撮像素子前面のフィルターによって赤外領域付近の光を強く抑えています。その影響でHα輝線も弱くなり、肉眼では赤く見える星雲でも写真では赤色が十分に記録されにくい場合があります。
EOS 20Daではこの部分が天体撮影向けに変更され、Hα輝線の透過率が通常のEOS 20Dのおよそ2.5倍に高められました。カメラを改造しなくても、メーカー純正状態で赤い星雲を捉えやすくしたことが20Da最大の特徴です。
通常仕様のEOS 20Dと比較すると20Daの特殊性がよくわかります
EOS 20Daの基本スペック
| 受注開始 | 2005年2月 |
|---|---|
| 撮像素子 | APS-Cサイズ CMOS |
| 撮像面サイズ | 22.5×15.0mm |
| 有効画素数 | 約820万画素 |
| 総画素数 | 約850万画素 |
| 最大記録画素数 | 3504×2336 |
| 画像処理エンジン | DIGIC II |
| 対応レンズ | EFレンズ・EF-Sレンズ |
| 画角 | 35mm判換算約1.6倍相当 |
| AF | 9点AF |
| 連写速度 | 最高約5コマ/秒 |
| 連続撮影可能枚数 | JPEG Large/Fine 約23枚、RAW 約6枚 |
| ISO感度 | ISO100~1600、拡張ISO3200相当 |
| 最高シャッター速度 | 1/8000秒 |
| 記録形式 | JPEG、12bit RAW、RAW+JPEG |
| 記録媒体 | CFカード Type I・II |
| 液晶モニター | 1.8型 約11.8万画素 |
| ライブビュー | 中央部拡大表示対応 |
基本スペックの多くは20Dと共通しており、約820万画素、DIGIC II、約5コマ/秒という性能だけを見れば通常モデルとの違いはわかりません。20Daの価値はスペック表の画素数や連写速度ではなく、撮像素子前面のフィルター特性とライブビューという、天体撮影時に直接効いてくる二つの変更点にあります。
現在の高画素ミラーレスから見ると820万画素は少なく感じますが、天体撮影では画素数だけで結果が決まるわけではなく、淡い光をどれだけ記録できるか、正確にピントを合わせられるか、長時間露光を安定して行えるかといった要素も重要になります。
Hα輝線を約2.5倍透過する専用仕様
EOS 20Daを語るうえで最も重要なのが、撮像素子前面に配置されたローパスフィルターの特性です。通常の20Dでは自然な色再現を優先するためHα付近の光も大きくカットされますが、20DaではHα輝線の透過率を約2.5倍に高めることで、赤い散光星雲をより濃く記録できるようにしています。
天体写真では、オリオン大星雲、北アメリカ星雲、バラ星雲など、水素が発する赤い光を主体とした天体が数多くあります。通常のデジタル一眼レフでも撮影自体はできますが、カメラ内部でHα輝線が大きく抑えられるため、本来存在する赤い光を十分に記録するには露光時間や画像処理で補う必要がありました。
20Daではカメラ側の光学特性そのものを変更しているため、一般的な20Dより星雲の赤色を記録しやすく、天体写真用として販売された意味がここにあります。
単に赤色を強くする画像処理とは違う
Hα輝線への感度を高めることは、撮影後に赤色の彩度を上げることとは根本的に違います。撮像素子へ届いていない光は後処理で完全に復元できませんが、20Daでは撮影段階でHα付近の光をより多く取り込めるため、星雲が持つ情報そのものを記録しやすくなります。
特に長時間露光や複数枚の画像を重ねる天体撮影では、元データにどれだけ信号が含まれているかが重要であり、単純にJPEGの色を濃くする処理とは意味が異なります。現在の天体撮影用改造カメラが赤外カットフィルターの変更を行うのも、基本的には同じ理由です。
一般撮影向けEOS 20Dのセンサー特性と比較するならこちら
天体専用仕様は一般撮影にも影響する
Hα付近の透過率を高めれば天体撮影には有利になりますが、一般撮影では通常モデルとまったく同じ色になるとは限りません。人肌や赤い被写体、人工光源などでは20Dとは異なる色傾向が現れる可能性があり、20Daはあくまで天体撮影を優先して光学特性を変更したカメラです。
20Daでも通常の風景や人物を撮影できますが、一般撮影だけを目的とするなら通常の20Dを選ぶほうが自然です。現在20Daを中古で探す場合も、普通の20Dの代用品として見るより、メーカー純正の天体撮影仕様という希少性を楽しむカメラとして考えたほうが、このモデル本来の価値を理解しやすくなります。
キヤノン初のデジタル一眼レフ用ライブビュー
EOS 20Daのもう一つの重要な特徴がライブビューです。現在では背面モニターへ撮像素子の映像を表示して撮影することは当たり前ですが、20Daが登場した2005年には、一眼レフで撮像素子の映像をリアルタイム表示すること自体が非常に特殊でした。
キヤノンは20Daで、撮像素子からのライブ映像を背面液晶へ表示し、さらに画像中央部を拡大して確認できる機能を搭載しました。これは一般的なスナップ撮影のためというより、天体望遠鏡を使った撮影で星を拡大し、マニュアルフォーカスを細かく調整することを目的とした機能です。
そのため現在のEOSのライブビューと同じものとして考えると機能は限定的ですが、光学ファインダーだけでは難しかった天体撮影時の精密なピント合わせをデジタル技術で解決しようとした点で大きな意味があります。
現在のライブビューとは目的が違う
現在のミラーレスやライブビュー対応一眼レフでは、画面全体を見ながら構図を決め、AFを使い、そのまま撮影することができますが、20Daのライブビューは天体撮影時のピント確認を主目的とした機能であり、中央部分を拡大して表示する仕組みになっています。
画像中央のおよそ40%に相当する範囲、さらに約10%に相当する範囲を液晶全面へ拡大表示できるため、星の輪郭を確認しながらピントリングや望遠鏡のフォーカサーを調整できます。光学ファインダーでは暗く小さな星を見ながら厳密な焦点位置を判断するのが難しいため、この機能は天体撮影では非常に実用的でした。
後のEOSへつながる機能を先に搭載していた
20Daのライブビューは特殊用途向けでしたが、デジタル一眼レフで撮像素子の映像を液晶へ表示するという考え方は、後に一般的なEOSへ広がっていきます。ライブビューが一般化すると、三脚撮影、マクロ撮影、商品撮影、風景撮影などでも拡大表示を利用した精密なピント合わせができるようになり、さらに動画撮影へもつながっていきました。
その意味では20Daは、天体撮影専用モデルという狭いカテゴリーに収まる存在ではなく、後のデジタル一眼レフの撮影方法を先行して示したカメラでもあります。20Dとほぼ同じ外観の中に、後のEOSでは標準的になる機能の原型が入っていたところが、この機種を歴史的に見たときの面白い部分です。
約820万画素CMOSとDIGIC IIは20D譲り
EOS 20Daの撮像素子は22.5×15.0mmのAPS-C CMOSで、有効画素数は約820万画素です。最大記録サイズは3504×2336ピクセルで、画像処理エンジンには20Dと同じDIGIC IIを採用しています。
D30の約310万画素、D60と10Dの約630万画素、20Dと20Daの約820万画素と並べると、数年間で急速に高画素化していたことがわかりますが、20Daでは単純な解像力だけでなく、暗い天体を長時間露光で記録する際のノイズや色再現まで含めて写真を作ることになります。
現在の2000万画素や3000万画素を超えるAPS-Cカメラに比べれば画素数は少ないものの、天体写真では望遠鏡の焦点距離、追尾精度、空の状態、露光時間、複数画像の合成など多くの要素が結果を左右するため、820万画素だけを見て価値を判断することはできません。
RAW記録は天体写真との相性がよい
EOS 20Daは12bit RAW記録に対応しており、JPEGとRAWを同時に保存することもできます。天体写真では淡い星雲と明るい星が同じ画面に存在し、ホワイトバランスや明るさ、色を撮影後に細かく調整する機会が多いため、JPEGより多くの情報を残せるRAW記録が重要になります。
さらに同じ構図を複数枚撮影して重ねることで、ランダムノイズを減らしながら淡い天体の信号を強調する方法も使われます。現在の天体写真では一般的な手法ですが、20Daの時代にもデジタルならではの複数画像処理が大きな強みになっていました。
APS-Cの約1.6倍相当の画角は天体撮影でも特徴になる
EOS 20DaはAPS-Cセンサーを採用しているため、EFレンズやEF-Sレンズを使用した場合の画角は35mm判換算で表記焦点距離のおよそ1.6倍相当になります。たとえば200mmレンズなら約320mm相当、300mmなら約480mm相当の画角となり、月や比較的小さな天体を大きく捉える場合には使いやすい構成です。
一方、天の川や広い星野を撮影する場合は広角側が必要になるため、EF-S広角ズームや短焦点のEFレンズを選ぶことになります。20D世代からEF-Sレンズへ対応したことで、APS-Cに適した広角レンズを使用できるようになったことは、天体撮影でも大きな利点でした。
最高約5コマ/秒や9点AFも通常撮影では利用できる
天体撮影では高速連写やAFを使わない場面が多いため、20Daの最高約5コマ/秒や9点AFは主役になる機能ではありません。それでも基本部分は20Dなので、昼間の撮影では中級一眼レフとして通常通り使用でき、動く被写体を連写したり、AFポイントを選びながら人物や風景を撮影したりできます。
最高シャッター速度も1/8000秒まで使用できるため、明るい日中に大口径レンズを開放付近で使う場合や、速い動きを止める場合にも対応します。天体専用モデルでありながら、通常の20Dが持つ撮影能力をほぼ残しているため、用途が星空だけに完全固定されたカメラではありません。
天体撮影ではAFよりマニュアルフォーカスが中心になる
星は非常に小さく暗い被写体なので、通常のAFが得意とする人物や日中の被写体とは条件が異なります。特に望遠鏡へ接続して星雲や星団を撮影する場合はマニュアルフォーカスで追い込むことが多く、20Daではこの作業をライブビューの拡大表示で補助できるようにしています。
つまり20Daでは9点AFを強化する方向ではなく、天体撮影で実際に必要になるMFの精度を高める方向へ専用機能を加えています。通常モデルの20Dを単純に高感度化するだけではなく、撮影方法そのものを考えて機能を追加したことがわかります。
5コマ秒連写は月や一般撮影では利用価値がある
星雲の長時間露光では連写速度は重要ではありませんが、月の撮影や一般撮影では約5コマ/秒を利用できます。大気の揺らぎによって月面の見え方が瞬間ごとに変化する場合には複数枚を撮影して比較することもでき、20D譲りの連写性能がまったく無意味になるわけではありません。
さらに20Daを昼間の一眼レフとして利用する場合には、人物、イベント、動物などで約5コマ/秒をそのまま使用できます。20Daは天体撮影専用の特殊機でありながら、基本的な撮影機能を削らず残したことで、20Dに近い操作感を保っています。
長時間露光で20Daの本領が発揮される
赤い星雲を撮影する場合、短い露光を一枚行うだけでは淡い部分まで十分に記録できないため、数十秒から数分単位の露光や、赤道儀を利用した追尾撮影が行われます。露光時間が長くなるほどセンサー自身が発生するノイズや周囲の光害なども影響するため、天体写真では単純にシャッターを長く開ければよいわけではありません。
20DaのHα感度向上は、同じ露光条件でも赤い星雲の信号をより多く記録できることに意味があり、後処理で無理に赤を持ち上げるより元画像に情報を残しやすくなります。複数枚を撮影して画像を重ねれば、さらにノイズを抑えながら淡い構造を引き出すことができます。
赤道儀と組み合わせることで露光時間を伸ばせる
地球は常に自転しているため、固定した三脚のまま長時間露光すると星は点ではなく線として写ります。広角レンズではある程度長く露光できますが、望遠になるほど星の移動が目立ちやすくなるため、星雲や星団を本格的に撮る場合は地球の自転に合わせてカメラや望遠鏡を動かす赤道儀が重要になります。
20Daを赤道儀や天体望遠鏡と組み合わせれば、Hα感度の高さを生かしながら長時間露光ができ、肉眼ではほとんど見えない淡い星雲を画像として積み重ねていくことができます。カメラ単体の性能だけで完結する撮影ではなく、光学系、追尾、ピント、露光、画像処理を組み合わせて一枚を作るところに天体写真の特徴があります。
長秒時ノイズ低減と撮影枚数のバランス
長時間露光では熱ノイズやホットピクセルが目立ちやすくなるため、カメラ側の長秒時ノイズ低減を利用する方法があります。一方、ノイズ低減処理のために撮影と同程度の待ち時間が発生する場合には、同じ時間で撮影できる枚数が減るため、複数枚を重ねる天体撮影では撮影方法全体を考える必要があります。
現在ならダークフレームを別に撮影して後処理する方法も一般的で、20Daを使う場合もカメラ内処理だけに頼る必要はありません。古いデジタル一眼レフであっても、RAW現像やスタッキングを組み合わせれば、撮影当時とは違う現代の処理環境で画像を仕上げることができます。
DIGIC世代の初期EOS DIGITALから画像処理の進化を追うならこちら
現在EOS 20Daを使う意味
現在のカメラと比較すれば、EOS 20Daは約820万画素、1.8型液晶、CFカード、ISO100~1600を中心とする感度域など、多くの部分で古さがあります。天体撮影用としても、現在は高画素・高感度のミラーレスや冷却CMOSカメラなど選択肢が大きく広がっています。
それでも20Daには、メーカーが2005年の段階で天体写真だけを目的としたデジタル一眼レフを作り、Hα透過率とライブビューという二つの方向から問題を解決したという独自の価値があります。性能だけを求めるカメラではなく、キヤノンのデジタル一眼レフがどのように特殊用途へ展開していったのかを実物で体験できる一台です。
純正の天体撮影モデルであること自体に価値がある
一般的なデジタル一眼レフを天体撮影向けにする場合、撮像素子前面のフィルターを交換する改造が行われることがありますが、EOS 20Daは最初からキヤノン純正の製品として天体撮影向けの特性を持っています。改造機ではなくメーカー自身が天体写真のために設計したモデルであることは、現在中古で20Daを見るときにも大きな特徴です。
さらに生産台数や流通量が通常モデルの20Dより少ないため、D00シリーズを収集する場合にも特殊な存在になります。D30から90Dまで通常モデルだけを並べるのとは別に、20Daや後の60Daを加えることで、キヤノンがシリーズの途中でどのような派生機を作ったのかまで追うことができます。
通常モデルのEOS 20Dと並べると20Daの価値がさらに見えます
後のEOS 60Daへ続く系譜の始まり
20Daの考え方は一代限りで完全に消えたわけではなく、後にEOS 60Daとして再び天体撮影向けのEOSが登場します。通常モデルを基礎にHα輝線への感度を高め、メーカー純正の天体写真用デジタル一眼レフとして提供する考え方は、20Daから60Daへ受け継がれました。
D00シリーズを年代順に見ていくと、20Daは通常モデルの進化とは別の枝として突然現れ、その後60Daでもう一度同じ目的のモデルが登場することになります。そのため20Daを理解しておくと、後の60Daがなぜ存在するのか、その背景までわかりやすくなります。
中古EOS 20Daで確認したいポイント
EOS 20Daは2005年のモデルなので、現在中古市場に出てくる個体は20年以上経過しています。しかも通常の20Dより流通量が少なく、天体撮影で長時間露光を多く行ってきた個体も考えられるため、単純に外装の傷だけを見るより、撮像系、ライブビュー、記録系、操作系を実際に確認することが重要です。
希少なモデルだから外観がきれいならよいというものでもなく、20Daならではの機能が正常に使えるかどうかまで確認して初めて、このカメラを選ぶ意味があります。
最優先でライブビューが正常に動くか確認する
20Daを20Daとして使うなら、ライブビューが正常に動作し、中央部の拡大表示を利用できることは重要です。通常撮影だけなら20Dでも同じような性能を得られるため、20Da独自の機能が使えない個体では、このモデルを選ぶ価値が大きく下がります。
液晶自体も1.8型と古く、経年によって明るさや色に変化が出ている可能性がありますが、天体撮影時には星を確認してピントを合わせられる程度の表示状態が必要になります。メニュー表示だけで判断せず、可能ならライブ映像を実際に表示して確認したいところです。
ライブビューを搭載しない通常のEOS 20Dとの違いはこちら
センサーの状態は均一な被写体を撮影して見る
天体撮影では暗い背景の中に小さな星が写るため、センサーの異常やホットピクセルが気になる場合があります。白い壁や空など均一な被写体を絞って撮影する確認に加えて、暗い状態で長めの露光を行い、特定の位置に強い点状の異常が出ないかを見る方法もあります。
長時間露光では正常なセンサーでもノイズやホットピクセルが現れることがあるため、一つ見つけただけで故障と判断するものではありませんが、極端に多い場合や大きな異常がある場合には、天体撮影用途へ影響する可能性があります。
同世代のEOS 20Dで基本的な中古確認ポイントを見るならこちら
CFカードスロットと電源系も確認する
EOS 20Daの記録媒体はCFカードで、カード側に穴があり、カメラ側には多数の細いピンが並んでいます。カードを斜めに挿入した履歴がある個体ではピンが曲がっている可能性もあるため、カードを正常に認識し、RAWやJPEGを書き込み、再生できるところまで確認する必要があります。
また、天体撮影では長時間にわたってカメラを動作させるため、短時間のスナップ撮影より電源の安定性が重要になります。古い付属バッテリーの劣化とボディ側の問題を分けて判断できるよう、状態のよい電源を使って動作確認するほうが20Da本体の状態を把握しやすくなります。
EOS 20DaはD00シリーズの特殊モデルとして外せない
D30から始まる流れを追うと、D60で約630万画素へ高画素化し、10Dでカメラとしての完成度を高め、20Dで約820万画素、DIGIC II、約5コマ/秒、9点AF、EF-S対応へ一気に進化しました。その20Dから派生した20Daは、通常モデルの性能競争とは別の方向へ枝分かれした最初の重要なモデルです。
画素数や連写速度を上げるのではなく、Hα輝線をより多く取り込み、暗い星を拡大してピント合わせできるようにするという、撮影目的そのものから機能を決めたところに20Daの面白さがあります。
そのためD00シリーズを単なる歴代中級機として見るだけでなく、キヤノンがデジタル一眼レフをどのような用途へ展開したのかまで追うなら、20Daを飛ばすことはできません。
20Dの次に30Dへ進む前に20Daを見る意味
通常モデルだけを年代順に追えば20Dの次は30Dですが、20Daを間に入れることで、キヤノンが20Dの基本設計をどこまで展開できたのかがわかります。高速化や高画素化だけがデジタルカメラの進化ではなく、撮影分野へ合わせてセンサー前面の光学特性や表示方式を変更するという別の進化も存在していました。
特にライブビューは、20Daでは天体撮影向けの特殊機能だったものが、後のEOSでは一般撮影にも広がっていきます。その意味で20DaはD00シリーズの脇道ではありながら、後の主流機能へつながる技術を先に経験したモデルでもあります。
まとめ|EOS 20Daは天体撮影とライブビューの歴史を変えた特殊なEOS
Canon EOS 20Daは、EOS 20Dをベースとして2005年に登場した天体写真撮影向けデジタル一眼レフです。約820万画素APS-C CMOS、DIGIC II、9点AF、最高約5コマ/秒、最高1/8000秒、EF・EF-Sレンズ対応といった20Dの基本性能を維持しながら、Hα輝線の透過率を通常の20Dのおよそ2.5倍へ高めた専用仕様を採用しました。
この変更によって赤い散光星雲をより捉えやすくなり、一般的な20Dでは弱く記録されるHα付近の光をメーカー純正状態で効率よく撮影できることが、20Da最大の特徴です。単純に画像処理で赤色を強調する方法とは異なり、撮影段階でより多くの光をセンサーへ届けることに意味があります。
さらに20Daは、キヤノンのデジタル一眼レフとして初めて撮像素子からのライブ映像を背面液晶へ表示する機能を備え、画像中央部を拡大して天体撮影時のマニュアルフォーカスを追い込めるようにしました。現在では当たり前になったライブビューですが、20Daでは天体撮影という特殊な用途から先に導入されたことになります。
現在の高画素ミラーレスや天体用CMOSカメラと性能だけを比較すれば古さは明確ですが、EOS 20Daの価値は最新機との性能競争にはありません。通常モデルを特定の撮影分野へ純正状態で最適化したこと、Hα感度を高めたこと、ライブビューをいち早く搭載したこと、その後のEOS 60Daへ続く天体撮影専用EOSの系譜を始めたことにあります。
D30、D60、10D、20Dと続いてきたD00シリーズの流れの中で見ると、20Daは非常に特殊な存在です。そして、その特殊さこそが現在このカメラを振り返る意味でもあります。通常モデルの性能進化だけを追っていては見えない、キヤノンのデジタル一眼レフのもう一つの進化を示した一台がEOS 20Daです。



