マクロレンズでポートレートは撮れる?デメリット・焦点距離・設定を解説
マクロレンズは花や昆虫を大きく写すためのレンズという印象がありますが、ポートレート撮影にも使用できます。
50mm、85mm、100mm前後のマクロレンズは、人物を自然な形で写しやすい焦点距離です。高い解像力を生かして、目元、髪、衣装、アクセサリーまで細かく描写できます。
一方、肌の質感が強く出やすい、ピントが浅くなる、一般的なポートレート用単焦点レンズと比べて開放F値が暗いといった特徴があります。マクロレンズの描写に合わせて、光、絞り、撮影距離、背景を調整することが重要です。
この記事では、マクロレンズでポートレートを撮るメリットとデメリット、焦点距離による違い、肌を自然に見せる設定、CanonのRF・EFマクロレンズの選び方を解説します。
マクロレンズの基本的な仕組みや撮影倍率は、マクロレンズとは?小さな被写体を大きく写す仕組みで詳しく紹介しています。
マクロレンズでポートレートは撮れる
- マクロレンズは人物撮影にも使える
- 50mmから100mmはポートレート向きの画角になる
- 接写性能が人物写真の表現を広げる
マクロレンズは人物撮影にも使える
マクロレンズは、近距離にある小さな被写体へピントを合わせられるように設計されています。近接撮影を行わない場合も、一般的な単焦点レンズと同じように人物、風景、スナップを撮影できます。
特に85mmから100mm前後のマクロレンズは、人物撮影で使いやすい中望遠の画角です。顔の形を自然に整えやすく、背景に入る範囲も狭いため、人物を画面内で目立たせられます。
マクロレンズは近接撮影に対応するため、撮影距離によってピント位置を細かく調整できます。人物の全身、上半身、顔、目元、手元、アクセサリーという順番で、同じレンズを使ったまま撮影範囲を変えられます。
一般的なポートレート撮影では、最短撮影距離まで近づく必要はありません。人物との間に十分な距離を取り、マクロレンズを中望遠単焦点として使うと、自然な形と背景ボケを得られます。
人物との距離によって顔や背景の見え方が変わる仕組みは、被写体との距離で写真はどう変わる?撮影距離と焦点距離の基本で解説しています。
50mmから100mmはポートレート向きの画角になる
マクロレンズには、35mm、50mm、85mm、90mm、100mmなどの焦点距離があります。焦点距離によって、人物との距離、背景の入り方、顔の見え方が変わります。
50mm前後は、人物と周囲の環境を一緒に写しやすい焦点距離です。室内や狭い場所でも構図を作りやすく、全身、上半身、日常的なスナップポートレートに向いています。
85mmから100mm前後は、顔や上半身を中心にした撮影に適しています。人物から少し離れて撮影するため、鼻や頬の遠近感が強くなりにくく、顔全体を落ち着いた形で写せます。
APS-C機へ85mmマクロを装着すると、フルサイズ換算で約136mm相当の画角になります。顔や上半身を大きく写しやすい一方、室内では撮影距離を確保しにくくなります。
焦点距離を選ぶ際は、ボケの大きさだけを基準にせず、撮影場所で人物から何m離れられるかを確認します。室内中心なら35mmから50mm、屋外中心なら85mmから100mmが扱いやすい選択です。
Canonの中望遠レンズ全体から人物撮影用を選ぶ場合は、Canonの中望遠単焦点レンズをポートレート用に選ぶ方法も参考になります。
接写性能が人物写真の表現を広げる
マクロレンズをポートレートに使う強みは、人物全体から細部の撮影まで1本で対応できることです。
顔全体を撮影した後、そのまま目元、唇、髪飾り、指輪、時計、衣装の刺繍へ近づけます。撮影途中でレンズを交換せず、人物写真と小物の写真を同じ描写でそろえられます。
結婚式では、人物の表情、指輪、ブーケ、髪飾り、衣装の生地を1本で撮影できます。商品紹介を兼ねた人物撮影では、モデルが身に着けたアクセサリーや化粧品の質感を大きく写せます。
目元や手元へ近づくほど、ピントが合って見える範囲は狭くなります。まつ毛の先にピントを合わせるのか、瞳に合わせるのかを決め、撮影後に拡大表示で確認します。
接写時は被写体との距離が短いため、カメラやレンズが人物の顔へ近づきます。撮影前に、どの部分をどの距離から撮るかを伝えると、人物が構えすぎることを防げます。
マクロレンズで人物を撮るデメリット
- 肌の毛穴や細かな質感が強く写りやすい
- 近距離ではピントが合う範囲が狭くなる
- 開放F値とAF速度が用途に合わない場合がある
肌の毛穴や細かな質感が強く写りやすい
マクロレンズは小さな被写体の模様を細かく記録するため、高い解像力を持つ製品が多くあります。その解像力はポートレートでも働き、毛穴、産毛、乾燥、化粧の境目まで写りやすくなります。
細部まで写ること自体は欠点ではありません。肌の質感を生かした力強い人物写真、男性ポートレート、職人、スポーツ選手、年齢を重ねた人物の表情では、細かな描写が写真の説得力につながります。
肌を滑らかに見せたい撮影では、硬い直射光を避けます。窓から入る柔らかい光、曇天、レースカーテンを通した光を使うと、毛穴や凹凸に生じる影を弱められます。
カメラ内のシャープネスや明瞭度を強く設定している場合は、数値を下げます。RAW撮影では、現像時にテクスチャー、明瞭度、シャープネスを調整し、目や髪の解像感を残しながら肌を整えます。
写真編集ソフトの種類とRAW現像の基本は、写真編集ソフトおすすめ7選で紹介しています。
近距離ではピントが合う範囲が狭くなる
マクロレンズは被写体へ近づくほど、ピントが合って見える範囲が狭くなります。顔を斜めから撮影すると、手前の目にピントが合っていても、奥の目がぼけることがあります。
顔全体を撮影する場合は、人物の両目とカメラの距離が大きく変わらない角度を選びます。正面に近い角度では両目を同じピント面へ置きやすく、斜めから撮る場合はF値を少し大きくします。
最初はF2.8からF4を基準にし、両目、鼻、口元まで必要な範囲が合っているかを確認します。顔へ大きく近づく撮影では、F5.6も候補になります。
絞ると背景のボケは小さくなります。背景を人物から離し、カメラを少し近づけると、F4やF5.6でも背景を整理できます。
背景の選び方と人物を目立たせる構図は、背景処理で写真の印象を変える撮影方法で解説しています。
開放F値とAF速度が用途に合わない場合がある
100mm前後の本格的なマクロレンズは、開放F2.8の製品が中心です。85mm F1.2やF1.4のポートレート用単焦点と比べると、同じ撮影距離では背景のボケが小さくなります。
F2.8でも人物と背景の距離を確保すれば、十分に大きなボケを作れます。背景を遠くへ置き、木漏れ日や街灯などの点光源を入れると、丸いボケを生かせます。
マクロレンズは無限遠から最短撮影距離まで広い範囲へピントを合わせる構造です。製品や設定によっては、ピントが外れた際にレンズが大きく前後し、人物へ戻るまで時間がかかることがあります。
フォーカスリミッターを搭載するレンズでは、ポートレート撮影時に近接側を除外します。撮影距離を制限すると、AFが不要な範囲まで移動することを防げます。
歩く人物や動きのある撮影では、サーボAF、人物検出、瞳検出を使います。静止している人物では、ワンショットAFで瞳へ合わせ、構図を大きく変えた際にピントを取り直します。
焦点距離別にマクロレンズを使い分ける
- 35mmから50mmは環境を入れた人物撮影に向く
- 85mmから100mmは顔と上半身を整えやすい
- APS-C機では換算画角と撮影距離を確認する
35mmから50mmは環境を入れた人物撮影に向く
35mmから50mmのマクロレンズは、人物と周囲の風景を一緒に写すポートレートに向いています。
35mmでは、室内、店舗、仕事場、街並みなどを背景へ入れやすく、人物がどの場所にいるのかを伝えられます。全身撮影や複数人の撮影にも使いやすい焦点距離です。
人物へ近づきすぎると、顔の中央が大きく、耳や輪郭が小さく見えることがあります。顔を大きく写す場合は、人物から少し離れ、撮影後に必要な範囲を切り出します。
35mmで顔の形を自然に写す距離と構図は、35mmポートレートで顔の歪みを防ぐ撮影方法で詳しく解説しています。
50mmは、人物と背景の割合を調整しやすい焦点距離です。全身、上半身、座った人物、室内撮影に対応し、人物へ声を掛けやすい距離を保てます。
背景を大きくぼかす撮影を重視する場合は、マクロ機能を持たないF1.8の50mm単焦点も候補になります。RF50mm F1.8 STMで撮るポートレートでは、背景ボケを中心にした使い方を紹介しています。
85mmから100mmは顔と上半身を整えやすい
85mmから100mmのマクロレンズは、顔、上半身、バストアップの撮影に適しています。人物から距離を取りながら大きく写せるため、顔の立体感と背景の整理を両立できます。
85mmは、屋外と広めの室内で使いやすい焦点距離です。人物との会話を保てる距離から、上半身や全身を撮影できます。
100mmは85mmより画角が狭く、背景へ入る範囲も減ります。公園、街中、イベント会場など、背景に余計な物が多い場所で人物を切り取りやすくなります。
100mmで顔を大きく写す場合は、人物から十分に離れます。必要以上に近づくと顔の一部だけへピントが合い、会話もしにくくなります。
RF85mm F2 MACRO IS STMを人物撮影へ使う方法は、RF85mm F2 MACRO IS STMでポートレートとマクロを撮る方法で紹介しています。
RF100mm F2.8 L MACRO IS USMの人物描写は、RF100mm F2.8 L MACRO IS USMで撮るポートレートで詳しく解説しています。
APS-C機では換算画角と撮影距離を確認する
CanonのAPS-C機では、レンズの焦点距離に約1.6を掛けた画角になります。
35mmマクロは約56mm相当となり、人物と背景を自然に写しやすい標準域になります。50mmマクロは約80mm相当となり、上半身や顔を中心にした人物撮影に向きます。
85mmマクロは約136mm相当、100mmマクロは約160mm相当です。人物を大きく写しやすい反面、室内ではカメラを後ろへ下げる場所が不足する場合があります。
APS-C機で100mmマクロを使う場合は、屋外、体育館、舞台、イベントなど、人物との距離を確保できる場所に適しています。自宅や狭いスタジオでは、35mmまたは50mmが扱いやすくなります。
同じレンズでも、全身、上半身、顔のどこまで写すかによって必要な距離が変わります。購入前に現在のズームレンズを同じ焦点距離へ合わせ、撮影場所で構図を確認すると判断しやすくなります。
肌を自然に写す設定と撮り方
- 絞りはF2.8からF4を基準にする
- 瞳AFと速いシャッタースピードでピントを守る
- 柔らかい光と離れた背景で人物を整える
絞りはF2.8からF4を基準にする
マクロレンズでポートレートを撮る場合は、開放F2.8からF4を基準にします。
F2.8では背景をぼかしやすく、目元を強調した写真に向きます。顔を斜めから撮る場合や、両目から口元までピントを合わせたい場合はF3.2からF4へ絞ります。
上半身や全身では、顔の接写と比べて被写界深度が広くなるため、F2.8でも人物全体へピントを合わせやすくなります。複数人を撮影する場合は、F4からF8を使い、全員の顔を同じ距離へ並べます。
肌の細かな描写を少し抑えたい場合も、ピントを外して柔らかくする方法は使いません。瞳へ正確に合わせ、光とRAW現像で肌の見え方を調整します。
背景ボケを大きくしたい場合は、F値を開くことに加え、人物と背景の距離を広げます。人物のすぐ後ろに壁がある状態では、F2.8でも壁の模様が残りやすくなります。
瞳AFと速いシャッタースピードでピントを守る
ポートレートでは人物が静止しているように見えても、呼吸、まばたき、表情の変化によって顔の位置が少しずつ動きます。
シャッタースピードは1/250秒を基準にします。人物が歩く、髪が風で動く、笑いながら身体を動かす場面では、1/500秒から1/1000秒へ速くします。
手ブレ補正はカメラやレンズの揺れを抑えますが、人物の動きは止められません。瞳へピントが合っているのに顔がぶれている場合は、シャッタースピードを速くします。
EOS Rシリーズでは人物検出と瞳検出を有効にし、動きがある場合はサーボAFを使います。瞳が前髪や眼鏡で隠れる場合は、顔全体や頭部を追尾する状態を確認します。
顔へ大きく近づいた撮影では、瞳AFがまつ毛や眉へ移ることがあります。撮影後に瞳を拡大し、虹彩やまつ毛のどこへピントが合っているかを確認します。
柔らかい光と離れた背景で人物を整える
マクロレンズの高い解像力を人物撮影で生かすには、光を整えることが重要です。
晴天の直射光では、目の下、鼻、毛穴、しわに濃い影が生じます。建物の日陰、窓からの光、曇天を使うと、肌の凹凸に生じる影を弱められます。
窓際では、人物を窓へ正面から向けると顔全体へ均一に光が回ります。窓に対して斜めへ立たせると、顔の片側に影が生まれ、立体感を作れます。
背景は人物から離します。人物と背景の間に数mの距離があれば、F2.8からF4でも背景を滑らかにぼかしやすくなります。
背景に明るい葉、街灯、水面の反射を配置すると、円形のボケを作れます。背景の線が人物の頭や首を横切らない位置へカメラを動かし、撮影前に画面の四隅まで確認します。
Canonのマクロレンズをポートレート用に選ぶ
- RF35mmとRF85mmは日常の人物撮影に使いやすい
- RF100mmは接写と中望遠ポートレートを両立する
- EF100mmはEOS Rシリーズでも活用できる
RF35mmとRF85mmは日常の人物撮影に使いやすい
RF35mm F1.8 MACRO IS STMは、室内、スナップ、全身撮影、人物と背景を一緒に写す用途に適しています。F1.8の明るさがあり、暗い場所でもシャッタースピードを確保しやすいレンズです。
人物へ近づいて顔を大きく写すと遠近感が強くなるため、顔中心のポートレートでは少し離れて撮影します。手元、料理、小物などへ近づけるため、日常の記録を1本で撮る用途にも向いています。
RF35mm F1.8 MACRO IS STMの人物撮影は、RF35mm F1.8 MACRO IS STMで撮るポートレートで詳しく紹介しています。
RF85mm F2 MACRO IS STMは、人物撮影で使いやすい85mmの画角と近接性能を備えています。顔、上半身、全身、花、小物を1本で撮影したい場合に選びやすいレンズです。
RF85mm F2はF2の明るさがあるため、F2.8の100mmマクロと比べてシャッタースピードを確保しやすく、背景も大きくぼかせます。
RF100mmは接写と中望遠ポートレートを両立する
RF100mm F2.8 L MACRO IS USMは、人物から距離を取りながら顔や上半身を大きく写せる中望遠マクロレンズです。
背景へ入る範囲を狭くできるため、公園、街中、イベント会場でも人物の後ろを整理しやすくなります。100mmの圧縮感を生かし、背景を人物の近くへ引き寄せたように見せる表現も可能です。
接写では目元、アクセサリー、衣装、花を大きく写せます。人物写真と細部の写真を同じレンズでそろえたい撮影に向いています。
SAコントロールリングを搭載しており、前ボケと後ボケの見え方を調整できます。人物撮影で使用する際は、リングを中央位置にした通常描写から始め、効果を確認しながら少しずつ動かします。
100mmは室内で全身を写す際に長い撮影距離が必要です。顔、上半身、屋外ポートレートを中心に使う場合に適しています。
EF100mmはEOS Rシリーズでも活用できる
EF100mm F2.8L マクロ IS USMは、EFマウントの一眼レフ用マクロレンズです。EOS Rシリーズでは、マウントアダプター EF-EOS Rを介して使用できます。
マウントアダプターに光学レンズは入っていないため、焦点距離と開放F値は変わりません。100mm F2.8の中望遠マクロとして使用できます。
EF100mm F2.8L マクロ IS USMは、接写時の角度ブレとシフトブレに対応するハイブリッドISを搭載しています。ポートレートでは一般的な角度ブレを抑えながら撮影できます。
中古で選ぶ際は、AFの動作、手ブレ補正の作動音、フォーカスリング、前玉と後玉、鏡筒、スイッチ、付属フードを確認します。
EF100mm F2.8L マクロ IS USMの人物撮影は、EF100mm F2.8L マクロ IS USMで撮るポートレートで詳しく解説しています。
まとめ
マクロレンズは接写専用のレンズではなく、ポートレート撮影にも使用できます。
50mm前後は人物と背景を一緒に写しやすく、85mmから100mm前後は顔や上半身を自然な形で切り取りやすい焦点距離です。
高い解像力によって、瞳、髪、衣装、アクセサリーを細かく描写できます。肌の毛穴や細かな質感も強く写りやすいため、柔らかい光を使い、シャープネスやRAW現像で仕上がりを整えます。
顔を大きく撮る場合はF2.8からF4、シャッタースピード1/250秒以上を基準にします。人物が動く場面では1/500秒以上へ速くし、瞳AFとサーボAFを使用します。
RF35mm F1.8 MACRO IS STMは室内や環境を入れた人物撮影、RF85mm F2 MACRO IS STMは一般的なポートレート、RF100mm F2.8 L MACRO IS USMは顔、上半身、細部の撮影に適しています。
EF100mm F2.8L マクロ IS USMも、マウントアダプターを使えばEOS Rシリーズで活用できます。
撮影場所の広さ、人物との距離、写したい範囲を確認し、焦点距離と開放F値が撮影目的に合うマクロレンズを選ぶことが重要です。



