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ハンディカムはなぜ消えた?動画の主役がミラーレスへ移った理由

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ハンディカムはなぜ消えた?動画の主役がミラーレスへ移った理由 カメラ豆知識

ハンディカムはなぜ消えた?動画の主役がミラーレスへ移った理由

かつて家庭で動画を録るなら、ビデオカメラを使うのが当たり前でした。

運動会、旅行、発表会、子どもの成長記録。右手をストラップへ通し、液晶モニターを開き、親指でRECボタンを押す。必要なら人差し指で電動ズームを操作する。何分、何十分と映像を録り続けることを前提に作られた、いわゆる「ハンディカム型」のビデオカメラです。

ところが現在、映像制作の世界で目立つのは一眼レフから発展したミラーレスカメラです。

形だけを見れば、写真を撮るためのカメラです。右手でグリップを握り、人差し指の位置にはシャッターボタン。左手で交換レンズを支え、必要ならファインダーをのぞく。その写真機の形で4K、6K、8K動画を録ることが当たり前になりました。

ハンディカム型のビデオカメラを長く使ってきた人からすると、ここにはかなりの違和感があります。

動画を録る道具なら、ハンディカムの形の方が自然ではないのか。

なぜ動画の主役は、動画専用機から写真機の形をしたミラーレスへ移ったのでしょうか。

この記事では、家庭用ビデオカメラが隆盛した時代から、2008年の一眼動画の転換点、スマートフォンの普及、ミラーレスの台頭までを追いながら、動画を録る道具の形がなぜ変わったのかを考えます。

現在のカメラ市場全体については、今のカメラ業界は6カテゴリーで分かるでも整理しています。

  1. かつて動画を録る道具は写真機とは別物だった
    1. 「ハンディカム型」には動画専用機としての理由があった
  2. ハンディカムの電動ズームは動画撮影に非常に合理的だった
  3. 長時間録画もハンディカムの得意分野だった
  4. 2008年、写真機が動画の世界へ入ってきた
    1. EOS 5D Mark IIが動画の常識を変えた
  5. 動画の目的が「記録」から「表現」へ広がった
  6. 交換レンズが動画の世界へ持ち込まれた
  7. 一眼動画には弱点も多かった
  8. その後ミラーレスが一眼動画の弱点を減らしていった
    1. ミラーレスでは静止画と動画が同じセンサーを中心に動く
  9. ハンディカムを本当に追い込んだのはスマートフォンだった
  10. ハンディカムは上からミラーレス、下からスマホに挟まれた
  11. ハンディカムが劣っていたから消えたわけではない
  12. 業務用では今もカムコーダー型が残っている
  13. ミラーレス動画は本格的になるほど機材が増える
    1. 写真機へ部品を足して動画機の形へ戻している
  14. ハンディカム経験者がミラーレス動画へ違和感を持つ理由
  15. ミラーレスは動画機として不合理なのか
  16. メーカーにとっても写真と動画を一台へまとめるメリットが大きい
  17. 写真と動画が一台になった結果、写真だけの人には逆の疑問も生まれた
  18. 「動画を録る」と「映像作品を作る」は同じではない
  19. スマートフォンは「記録する動画」をさらに変えた
  20. だから動画の主役はミラーレスへ移った
  21. 動画機としての形だけならハンディカムは今でも理にかなっている
  22. まとめ|ハンディカムが消えたのではなく動画の役割が分かれた

かつて動画を録る道具は写真機とは別物だった

フィルムカメラの時代、写真と動画は最初から別の機械でした。

写真は一枚ずつ記録するもの。動画は連続した映像と音声を記録するものです。

デジタル以前の家庭用動画では8ミリビデオ、VHS-C、Video8、Hi8、MiniDVなどさまざまな記録方式が使われましたが、共通していたのは「動画を録り続けるための機械」として設計されていたことです。

ソニーの「ハンディカム」は1985年に始まり、1989年には小型軽量のCCD-TR55が大ヒットしました。パスポートサイズをうたった小型ビデオカメラは、旅行や家庭行事へ気軽に持ち出せる動画撮影機として広く知られるようになります。

その後は液晶モニター、手ブレ補正、オートフォーカス、デジタル記録、ハイビジョンと進化し、「家庭の動画はビデオカメラで録る」という文化が定着していきました。

「ハンディカム型」には動画専用機としての理由があった

家庭用ビデオカメラの横長ボディは、単なるデザインではありません。

右手をストラップへ通して本体を横から包み込むように持つため、握力だけでカメラを支え続ける必要がありません。

親指の位置にはRECボタンがあり、人差し指付近にはズームレバーがあります。

左手を必ずレンズへ添える必要もありません。液晶モニターを開けば腰や胸の高さでも録画できます。

写真を一瞬撮ることより、何分間も被写体を追い続けることへ適した形です。

現在の写真機がどのようなカテゴリーへ分かれているのかは、今のカメラ業界は6カテゴリーで分かるを見ると、動画専用機の立ち位置がさらに分かりやすくなります。

ハンディカムの電動ズームは動画撮影に非常に合理的だった

ハンディカム型ビデオカメラを使ったことがある人がミラーレス動画へ移ると、特に違和感が出やすいのがズームです。

ビデオカメラでは、小さなズームレバーを押すだけでレンズが自動的に動きます。

軽く押せばゆっくり、大きく押せば速く動く機種もあります。

撮影者は構図を保ちながら滑らかに寄ったり引いたりできます。

一方、一般的な写真用ズームレンズでは左手でズームリングを回します。

静止画なら撮影前に焦点距離を決めれば問題ありません。しかし動画を録りながらズームリングを回すと、速度を一定にするのが難しく、カメラも揺れやすくなります。

写真用レンズとしては合理的でも、動画用として考えると電動ズームの方が扱いやすい場面は少なくありません。

長時間録画もハンディカムの得意分野だった

家庭用ビデオカメラは、運動会や発表会を長時間録ることを前提にしていました。

一度RECボタンを押したら、何十分も録り続けることがあります。

そのためバッテリー、放熱、記録媒体、操作系が長時間運用を考えて作られています。

大容量バッテリーを後方へ装着するモデルでは、バッテリーを交換して長時間運用することも容易でした。

レンズ交換をする必要もなく、電動ズームで広角から望遠まで一本で対応します。

「その場で起きていることを途切れず録る」という目的には、非常に合理的な機械でした。

2008年、写真機が動画の世界へ入ってきた

この住み分けが大きく変わったのが2008年です。

ニコンD90が登場し、デジタル一眼レフとして初めて動画撮影機能を搭載しました。

D90の動画は現在の基準から見れば機能的に限定されていましたが、重要だったのは「一眼レフの大型センサーと交換レンズを使って動画を録れる」という点です。

それまで家庭用ビデオカメラでは小型センサーが一般的でした。

一眼レフの大きなセンサーを動画へ使うことで、背景を大きくぼかした映像や、暗所でもノイズの少ない映像を作りやすくなりました。

そして同じ2008年、さらに大きな転換点となったのがキヤノンEOS 5D Mark IIです。

EOS 5D Mark IIが動画の常識を変えた

EOS 5D Mark IIは35mmフルサイズセンサーを搭載し、フルHD動画を録画できました。

当初から映画制作市場を狙って作られたシネマカメラではありません。

ところが、フルサイズセンサー、大口径EFレンズ、高感度性能による映像表現が映像制作者の注目を集めました。

浅い被写界深度を使った映像や、暗い環境での撮影など、それまで高価な映像制作機材で行っていた表現を比較的小さな一眼レフで実現できたためです。

キヤノン自身も後に、EOS 5D Mark IIの動画が映画・映像制作の世界から予想以上の反響を得たことを明らかにしています。

EOS 5D Mark IIというカメラそのものについては、EOS 5D Mark IIを今あえて使う理由でも詳しく紹介しています。

動画の目的が「記録」から「表現」へ広がった

ここがハンディカムと一眼動画を考えるうえで重要です。

家庭用ビデオカメラが得意だったのは「記録」です。

運動会を最初から最後まで録る。旅行先を録る。子どもの成長を録る。

被写体へピントを合わせ、手ブレを抑え、必要に応じてズームしながら長時間残すことが優先されます。

一方、一眼動画が注目された大きな理由は「映像表現」でした。

背景をぼかす。

大口径レンズを使う。

超広角や超望遠を使う。

単焦点レンズを交換する。

暗い場所で雰囲気のある映像を録る。

それまで一般的な家庭用ビデオカメラがあまり得意としていなかった映像を作れることに価値がありました。

交換レンズが動画の世界へ持ち込まれた

ハンディカム型ビデオカメラのレンズは基本的に固定式です。

一本の高倍率ズームで幅広い場面を撮れることが長所でした。

一眼動画では交換レンズを使えます。

魚眼、超広角、大口径標準、85mmのポートレートレンズ、300mmや600mmの超望遠まで、写真用に存在していた膨大なレンズ資産をそのまま映像へ持ち込めました。

これは映像制作者にとって非常に大きな変化です。

ハンディカムのように一本のレンズで何でも録る便利さとは逆に、目的に応じてレンズを変え、画角やボケを映像表現として選べるようになりました。

キヤノンのRF・EF・EF-Sなどレンズとカメラの関係は、Canonレンズ対応表|RF・RF-S・EF・EF-S・EF-Mはどのカメラで使える?で整理しています。

一眼動画には弱点も多かった

ただし、2008年前後の一眼動画がビデオカメラとして完成されていたわけではありません。

むしろ動画を録る道具として見ると、不便な部分も多数ありました。

連続録画時間の制約。

動画AFの弱さ。

手持ち撮影の難しさ。

写真用ズームリング。

音声機能。

発熱。

ローリングシャッター。

一眼レフでは動画録画中に光学ファインダーも使えません。

それでも映像制作者が使ったのは、それらの不便を上回る画質とレンズ表現があったからです。

その後ミラーレスが一眼動画の弱点を減らしていった

一眼レフからミラーレスへ移行すると、写真機で動画を録ることへの技術的な障害がさらに減っていきます。

ミラーレスはもともと、撮影中もセンサーから映像を読み出してEVFや背面液晶へ表示する構造です。

そのため静止画撮影と動画撮影の距離が、一眼レフより近くなりました。

像面位相差AFによる動画AF、高性能な被写体認識、ボディ内手ブレ補正、4K・8K記録、高フレームレート、高感度性能などが次々に進化します。

写真を撮る機械と動画を録る機械の技術的な境界が薄くなりました。

ミラーレスでは静止画と動画が同じセンサーを中心に動く

現在のミラーレスは、写真を撮っていない時間も撮像センサーから映像情報を読み出しています。

EVF表示、被写体認識AF、露出プレビューなどにもリアルタイム映像を利用します。

そこから動画録画機能へ発展するのは、フィルム一眼レフへビデオ機能を追加する場合ほど大きな飛躍ではありません。

この技術的な共通化が、写真と動画を一台へまとめる流れをさらに強くしました。

現在のEOS Rシリーズについては、EOS Rシリーズで広がる撮影表現|ミラーレスに最適なフルサイズの選び方でも紹介しています。

ハンディカムを本当に追い込んだのはスマートフォンだった

一眼レフやミラーレスが高画質動画市場を奪っていった一方、家庭用ビデオカメラにはもう一つ強力な競争相手が登場しました。

スマートフォンです。

家庭用ビデオカメラが得意としていた「日常を手軽に録る」という用途は、スマートフォンと非常に重なります。

スマートフォンなら常に持ち歩いています。

専用バッテリーもテープもメモリーカードも必要ありません。

録った直後に再生でき、家族へ送れます。

SNSへそのまま投稿できます。

画質も急速に向上しました。

日常の短い動画を残すだけなら、わざわざビデオカメラを持ち歩く必要性が小さくなっていきました。

ハンディカムは上からミラーレス、下からスマホに挟まれた

家庭用ビデオカメラ市場の縮小を分かりやすく表すと、上下から市場を奪われた形です。

高画質な映像を作りたい人は、大型センサーと交換レンズを使える一眼レフやミラーレスへ移りました。

気軽に日常を録りたい人は、スマートフォンへ移りました。

すると家庭用ビデオカメラが最も得意としていた中間領域が狭くなります。

「専用機を持つほど映像へこだわらない。でもスマートフォン以上の専用動画機が欲しい」という層です。

この層が小さくなれば、家庭用ビデオカメラのラインアップも縮小していきます。

ハンディカムが劣っていたから消えたわけではない

ここは重要です。

家庭用ビデオカメラが市場から目立たなくなった理由は、動画を録る道具として使いにくかったからではありません。

むしろ動画専用機としての操作性は非常によく考えられていました。

電動ズーム。

長時間録画。

安定した手持ち。

大容量バッテリー。

内蔵マイク。

可動液晶。

一本のレンズで広角から望遠まで対応。

家庭行事を連続して録画するなら、現在でもこの構成は合理的です。

問題は、その用途自体がスマートフォンと競合し、高画質を求めるユーザーは別方向へ移動したことです。

業務用では今もカムコーダー型が残っている

家庭用市場が縮小しても、カムコーダーという形そのものがなくなったわけではありません。

放送、取材、イベント収録、学校行事、舞台記録などでは現在も専用カムコーダーが使われています。

理由は明確です。

長時間録画が安定している。

電動ズームが使える。

XLR音声入力を備えられる。

NDフィルターを内蔵できる。

大容量バッテリーを使える。

熱停止を避けやすい。

一人で撮影を完結しやすい。

映像を「作品として作る」だけでなく、「長時間確実に収録する」現場では、専用機の形が今も合理的です。

ミラーレス動画は本格的になるほど機材が増える

ここには少し皮肉な現象があります。

ミラーレスは小型で高画質な動画を録れることが大きな長所でした。

ところが本格的に動画を録ろうとすると、カメラへさまざまな機材を取り付けることがあります。

ケージ。

トップハンドル。

外部モニター。

外部マイク。

外部レコーダー。

大型バッテリー。

フォローフォーカス。

ジンバル。

最初は小さな写真機だったものが、最終的にはかなり大きな動画撮影システムになります。

写真機へ部品を足して動画機の形へ戻している

トップハンドルを付ければ、カメラを低い位置から安定して持てます。

外部モニターを付ければ、撮影映像を大きく確認できます。

大型バッテリーを付ければ長時間録画できます。

外部マイクを付ければ音声を強化できます。

ケージを付ければ、それらを固定できます。

つまり写真機の形をしたカメラへ動画撮影機材を追加し、再び「動画を録りやすい形」へ作り変えているとも言えます。

動画向けに設計されたEOSについては、EOS R6 Vは動画時代の本命か?フルサイズVシリーズで変わる撮影体験でも紹介しています。

ハンディカム経験者がミラーレス動画へ違和感を持つ理由

ハンディカムから動画へ入った人と、写真用カメラから動画へ入った人では、動画機に対する基準が違います。

写真側から来た人にとっては、いつものカメラで動画まで録れることが便利です。

レンズも使い慣れています。シャッターや絞り、ISO感度の考え方も共通しています。

一方、ハンディカム側から来た人にとっては、なぜ動画を録るために写真機の形を使うのかという疑問が生じます。

長時間持ちにくい。

ズームリングを手で回す。

大型レンズを左手で支える。

動画撮影でもシャッターボタンのために作られたグリップを握る。

本格的に録るなら後からリグを付ける。

動画専用機を知っているほど、その構造が遠回りに見えるわけです。

ミラーレスは動画機として不合理なのか

それではミラーレスで動画を録ること自体が不合理なのでしょうか。

もちろんそうではありません。

ミラーレスにはハンディカム型にはない大きな長所があります。

フルサイズやAPS-Cの大型センサー。

膨大な交換レンズ。

大口径レンズ。

高度な被写体認識AF。

高感度性能。

写真と動画を一台で撮れること。

映像作品を作る場合には、操作形状の不便より映像表現の自由度が重要になることがあります。

そこで必要に応じてジンバルやリグを追加すればよいという考え方です。

メーカーにとっても写真と動画を一台へまとめるメリットが大きい

メーカー側にもハイブリッド化を進める理由があります。

写真専用機と動画専用機を別々に開発するより、一つのボディで両方へ対応できれば販売対象を広げられます。

現在のミラーレスでは撮像センサー、映像エンジン、AF、記録媒体など、静止画と動画で多くのハードウェアを共有しています。

静止画の高速連写へ必要な高速センサー読み出しは、高フレームレート動画にも利用できます。

被写体認識AFも写真と動画の双方で使えます。

カメラ市場全体が縮小した現在、一台で複数の需要へ対応できることはメーカーにとって大きな利点です。

写真と動画が一台になった結果、写真だけの人には逆の疑問も生まれた

写真と動画のハイブリッド化は、多くの人にとって便利です。

一方、動画をほとんど録らない写真ユーザーからすると別の疑問が生まれます。

なぜ写真を撮るために買うカメラへ、これほど大量の動画機能が必要なのか。

4K、6K、8K、RAW動画、Log、高フレームレート、タイムコードなどが新型機の主要な売りになる一方で、動画録画ボタンを一度も使わない人もいます。

そのため、動画向けカメラが独立して発展する現在だからこそ、逆に写真だけへ特化したカメラを求める考え方も出てきます。

このテーマについては、動画、録ってる?いま待たれる「スチル専用機」|写真だけに特化したカメラは復活するかで詳しく考察しています。

「動画を録る」と「映像作品を作る」は同じではない

ハンディカムとミラーレスを比較するときには、動画の目的そのものを分けて考える必要があります。

運動会を最初から最後まで録る。

旅行の風景を残す。

子どもの発表会を録る。

これは「記録」の要素が強い動画です。

一方、レンズを交換し、被写界深度を考え、照明を作り、カットごとに構図を決め、編集して一本の作品へ仕上げる。

こちらは「映像制作」です。

ハンディカムは前者に非常に強く、一眼・ミラーレスは後者の可能性を大きく広げました。

同じ動画でも、必要な道具は必ずしも同じではありません。

スマートフォンは「記録する動画」をさらに変えた

さらに現在では、「記録」という役割の多くをスマートフォンが担っています。

以前ならビデオカメラを取り出していた場面でも、今はポケットからスマートフォンを出して録画できます。

そのまま編集し、そのまま共有できます。

短い動画が中心なら、専用ビデオカメラより圧倒的に手軽です。

すると専用カメラに求められるのは、スマートフォンでは得にくいものになります。

超望遠。

大きなボケ。

暗所画質。

高度なAF。

高ビットレート記録。

レンズ交換。

そこはまさにミラーレスの得意分野です。

だから動画の主役はミラーレスへ移った

ここまでの流れを整理すると、家庭用ビデオカメラが単純にミラーレスへ置き換えられたわけではありません。

市場が二つへ分かれました。

日常の動画はスマートフォン。

高画質・高表現力を求める動画はミラーレス。

その間にあった家庭用専用ビデオカメラの領域が縮小したのです。

一方、長時間の確実な収録が必要な業務用途ではカムコーダー型が残っています。

つまり「ハンディカム型という形が間違っていた」のではありません。

家庭用動画市場の役割そのものが分解され、別の機械へ移ったと考える方が実態に近いでしょう。

動画機としての形だけならハンディカムは今でも理にかなっている

ミラーレスの動画性能がどれだけ高くなっても、純粋に「長時間、手持ちで動画を録る道具」として考えると、ハンディカム型の合理性は失われていません。

片手で保持しやすい。

RECボタンへ自然に指が届く。

電動ズームを操作できる。

レンズ交換が不要。

長時間録画しやすい。

バッテリー交換が容易。

映像と音声を一つの専用機で完結できる。

写真用カメラへ動画機能を追加する発想とは、出発点がまったく違います。

まとめ|ハンディカムが消えたのではなく動画の役割が分かれた

1980年代から2000年代にかけて、家庭で動画を録る代表的な道具はハンディカム型のビデオカメラでした。

動画専用機として考えれば、その形は非常によくできています。

横長のボディ、ハンドストラップ、RECボタン、電動ズーム、長時間録画、大容量バッテリー。すべてが動画を録り続ける目的へ向いていました。

しかし2008年、ニコンD90とEOS 5D Mark IIによって一眼動画という新しい流れが本格的に始まります。

特にEOS 5D Mark IIは、フルサイズセンサーと交換レンズによる動画表現を映像制作の世界へ広げました。

その後ミラーレスが登場し、動画AF、高感度、手ブレ補正、高解像度記録、高速読み出しが進化します。

高画質な映像を作りたい人はミラーレスへ向かいました。

一方、日常の記録はスマートフォンが担うようになりました。

その結果、家庭用ビデオカメラは上からミラーレス、下からスマートフォンに挟まれる形で市場を縮小していきました。

それでもカムコーダー型は業務用として残っています。

長時間録画、電動ズーム、音声入力、放熱、バッテリー、操作性という動画専用機の長所が、現在でも必要だからです。

そしてミラーレスで本格的に動画を録る人が、ケージ、トップハンドル、外部モニター、外部マイク、大型電源を追加していく姿を見ると、別の見方もできます。

写真機の形へ動画機能を入れ、その写真機へ機材を追加し、再び動画を録りやすい形へ近づけているとも言えるからです。

ハンディカムを使っていた人が、写真機の形で動画を録ることへ違和感を持つのは不思議なことではありません。

動画を録る道具としての形だけを見れば、ハンディカムは今でも非常に合理的です。

ハンディカムが動画機として敗れたから消えたわけではありません。

「日常を記録する」という役割はスマートフォンへ、「高画質な映像を作る」という役割はミラーレスへ分かれた結果、その間にいた家庭用ビデオカメラの居場所が狭くなったのです。

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