Canon EF50mm F1.2L USMレビュー|F1.2のボケと描写、中古で選ぶ価値
Canon EF50mm F1.2L USMは、開放F1.2という大口径を備えたEFマウントの標準単焦点Lレンズです。
2007年に発売されたレンズですが、単に古い50mmとして片付けられる存在ではありません。現在のレンズが解像性能や収差補正を高い水準まで追求する一方、EF50mm F1.2L USMには開放付近の柔らかさ、浅い被写界深度、大きなボケを組み合わせた独特の描写があります。
特に人物撮影では、被写体の輪郭だけを鋭く切り出すのではなく、ピント面から前後へ緩やかに描写が変化していくことで、写真全体に立体感を作りやすいレンズです。
EFマウントの一眼レフではもちろん、マウントアダプター EF-EOS Rを使えばEOS Rシリーズでも使用できます。RF50mm F1.2 L USMとは設計思想が大きく異なるため、単純に「新しいRFの方が上」と考えるより、どのような写真を撮りたいのかで選ぶ方が分かりやすいでしょう。
この記事ではEF50mm F1.2L USMの基本スペック、F1.2ならではの描写、ボケ、AF、一眼レフとEOS Rシリーズでの使い方、他の50mmレンズとの違い、中古で選ぶ際のポイントまで詳しく見ていきます。
EF50mm F1.2L USMの基本スペック
| 焦点距離 | 50mm |
| 開放F値 | F1.2 |
| 最小絞り | F16 |
| レンズ構成 | 6群8枚 |
| 絞り羽根 | 8枚 |
| 最短撮影距離 | 0.45m |
| 最大撮影倍率 | 0.15倍 |
| フィルター径 | 72mm |
| 最大径 | 約85.8mm |
| 長さ | 約65.5mm |
| 質量 | 約590g |
| AF駆動 | USM |
| マウント | Canon EF |
50mm F1.2というスペックが最大の特徴
EF50mm F1.2L USMを特徴づけているのは、やはり開放F1.2です。
50mmは標準域に分類される焦点距離で、人物、スナップ、風景、室内、テーブルフォトなど幅広い被写体に対応できます。その50mmへF1.2という極めて大きな開口を組み合わせたことで、一般的な標準レンズとは大きく異なる写真表現が可能になっています。
F1.2はF1.4より約1/3段明るく、F1.8に対しては1段強の差があります。数字だけを見るとF1.2とF1.4の差は小さく感じますが、実際の撮影では被写界深度やボケの大きさに違いが現れます。
特に人物へ近づいて撮影すると、ピント面の前後が急速にボケていきます。背景を単に見えなくするのではなく、ピントを置いた部分だけが浮き上がって見えるような表現を作れるところにF1.2の魅力があります。
F値とボケの関係については、F値とは?絞りで変わる明るさ・ボケ・被写界深度でも詳しく解説しています。
6群8枚という比較的シンプルな光学構成
EF50mm F1.2L USMは6群8枚という光学構成です。
現在の大口径標準レンズでは、収差補正や周辺画質を追求するため多数のレンズを使用する設計が増えています。例えばRF50mm F1.2 L USMは9群15枚で、EF50mm F1.2L USMとは構成そのものが大きく異なります。
EF50mm F1.2L USMは、開放から画面全体を均一に鋭く描くことだけを目的にしたレンズではありません。F1.2では収差を完全に消してしまう方向ではなく、柔らかさを含んだ描写を残しながら主題を立体的に見せます。
絞るにつれて描写が整っていくため、一つのレンズの中で性格の違う描写を使い分けられることも特徴です。
EF標準単焦点レンズ全体を比較する場合は、Canon EF標準単焦点レンズ一覧も参考になります。
約590gの重量は大口径Lレンズとしては扱いやすい
EF50mm F1.2L USMの質量は約590gです。
一般的な50mm F1.8クラスと比べれば明らかに重いものの、大口径Lレンズとして見ると極端に大型ではありません。全長も約65.5mmに抑えられているため、カメラへ装着したときに巨大なレンズが前へ長く伸びる感覚はありません。
EOS 5DシリーズやEOS-1D系など、ある程度大きな一眼レフとの重量バランスは良好です。EOS Rシリーズで使用する場合はマウントアダプターが追加されるため全長が伸びますが、それでもRF50mm F1.2 L USMよりレンズ本体はかなり小型です。
50mmという焦点距離そのものについては、画角とは?焦点距離との関係と広角・標準・望遠の違いで詳しく解説しています。
EF50mm F1.2L USM最大の魅力は開放F1.2の描写
開放ではシャープさだけでは語れない描写になる
EF50mm F1.2L USMをF1.2で使うと、最新レンズとは異なる描写が見えてきます。
ピントを合わせた部分には芯がありますが、その周囲にはわずかな柔らかさが残ります。そこから前後へ急速にボケが広がるため、主題だけが空間から浮き出てくるように見えます。
人物の目にピントを合わせた場合、目の周辺には細かな描写を残しながら、髪や耳、背景へ向かって徐々に描写が溶けていきます。
現在の高性能レンズには、開放から細部まで明瞭に描き切るものが増えています。それに対してEF50mm F1.2L USMは、解像度だけで写真を作るタイプではありません。
この性格はポートレートとの相性がよく、肌を必要以上に硬く見せず、人物そのものを柔らかな空気の中へ置くことができます。
背景の扱い方については、背景処理で写真の印象を変える撮影テクニックも合わせて見ると、F1.2を使う意味が分かりやすくなります。
F2からF2.8へ絞ると描写の印象が変わる
EF50mm F1.2L USMは、常にF1.2だけで使うレンズでもありません。
F1.2では柔らかさや浅い被写界深度が強く現れますが、F2付近まで絞るとピント面の明瞭さが増し、さらにF2.8からF4付近では標準単焦点らしい安定した描写へ変わっていきます。
この変化を利用すると、一つのレンズで異なる性格の写真を撮れます。
人物を大きく浮かび上がらせるならF1.2、顔全体へある程度ピントを合わせたいならF2前後、複数人やスナップではF2.8からF5.6といった使い分けができます。
開放が使えることと、常に開放を使うことは別です。F1.2という選択肢を持ちながら、被写体に必要な被写界深度へ調整できるところが大口径レンズの強みです。
絞りによるボケや光芒の変化については、絞り羽根の枚数でボケと光芒はどう変わる?でも解説しています。
暗い場所ではF1.2の明るさそのものが役立つ
F1.2のメリットはボケだけではありません。
室内、夕方、夜の街などでは、レンズへ多くの光を取り込めることでシャッタースピードを確保しやすくなります。
例えば同じISO感度なら、F1.8よりF1.2の方が速いシャッタースピードを選択できます。人物のようにわずかに動く被写体では、手ブレ補正だけでは防げない被写体ブレを抑えるためにも明るいレンズが有利です。
現在のデジタルカメラは高感度性能が向上していますが、ISO感度を上げることとレンズを明るくすることは同じではありません。F1.2では露出だけでなく、被写界深度そのものが変化します。
明るさとボケを同時に利用できることが、F1.2レンズを使う大きな理由です。
大口径レンズの使い方は、F値と写真表現の関係でも詳しく確認できます。
ボケを生かすなら撮影距離と背景が重要
F1.2にするだけで必ず大きくぼけるわけではない
EF50mm F1.2L USMを使えば、どのような場面でも背景が大きくぼけるわけではありません。
ボケの大きさにはF値だけでなく、被写体までの距離と、被写体から背景までの距離が大きく影響します。
人物を小さく写すほど撮影距離が長くなり、同じF1.2でも背景の形が残りやすくなります。反対に人物へ近づき、人物と背景との距離を広く取れば、背景は大きくぼけます。
50mmは85mmや135mmほど望遠効果が強くありません。そのため背景を完全に消すことだけを考えるより、背景を少し残しながら人物を浮き上がらせる使い方にも向いています。
人物がどの場所にいるのかを写真へ残しながら、背景だけを柔らかく整理する撮影は50mmならではです。
撮影距離とボケの関係を理解する場合は、背景処理で写真の印象を変える方法も参考になります。
最短撮影距離0.45mはマクロ向きではない
EF50mm F1.2L USMの最短撮影距離は0.45m、最大撮影倍率は0.15倍です。
花、小物、料理などへある程度近づくことはできますが、本格的な接写を得意とするレンズではありません。
被写体へ近づけば被写界深度はさらに浅くなるため、F1.2で最短撮影距離付近を使うとピント面は非常に薄くなります。
小物を撮影するときには、何でもF1.2にするより、必要に応じてF2やF2.8まで絞る方が被写体の形を見せやすくなります。
接写そのものを目的とする場合はマクロレンズの方が適しています。マクロ撮影との違いは、マクロレンズとは?特徴・選び方・使い方で詳しく解説しています。
AFと操作性は現在でも十分使える
USMによるAFとフルタイムマニュアルに対応
EF50mm F1.2L USMはUSMを採用し、AF撮影に対応しています。
またAFでピントを合わせた後、そのままフォーカスリングを操作できるフルタイムマニュアルフォーカスにも対応しています。
F1.2では被写界深度が非常に浅いため、AF性能だけでなく、撮影者がどの位置へピントを置くかが重要です。
一眼レフでは使用するAF測距点、被写体との距離、構図によって結果が変わります。撮影後に拡大表示し、意図した位置へピントが来ているかを確認する使い方が向いています。
静物ではAFでおおよその位置へ合わせた後、ライブビューやMFを使って細かく調整する方法もあります。
CanonレンズのAF方式については、STMとUSMとVCMの違いでまとめています。
一眼レフとEOS RシリーズではAFの使い方が変わる
EF50mm F1.2L USMはEOS 5Dシリーズなどの一眼レフで使うことを前提に設計されたレンズです。
一眼レフでは位相差AFセンサーを使うため、F1.2の浅い被写界深度を使いこなすにはボディ側のAF性能や調整状態も重要になります。
EOS Rシリーズでは、マウントアダプター EF-EOS Rを介して使用できます。
ミラーレスでは撮像センサー上でピントを判断するため、一眼レフとはAFの仕組みが異なります。人物撮影では対応するボディの顔検出や瞳検出を利用できるため、F1.2で人物の目へピントを合わせる撮影も行いやすくなります。
古いEFレンズであっても、EOS Rシリーズへ持っていくことで撮影方法が変わるのは大きな利点です。
EFレンズをEOS Rシリーズで使う方法は、EOS RでEFレンズを使う方法で詳しく解説しています。
EF50mm F1.2L USMと他の50mmレンズの違い
EF50mm F1.4 USMとは価格だけでなく性格が違う
EF50mm F1.4 USMも明るい標準単焦点で、50mmという焦点距離は同じです。
F1.4とF1.2の明るさの差は約1/3段なので、露出だけを考えれば非常に大きな差ではありません。
EF50mm F1.2L USMを選ぶ理由は、その1/3段だけではありません。
Lレンズとしての鏡筒、F1.2での浅い被写界深度、開放付近での柔らかな描写、ボケへのつながりを含めたレンズ全体の性格が違います。
軽さや価格を優先するならF1.4やF1.8にも大きな意味があります。F1.2の描写そのものを使いたい場合にEF50mm F1.2L USMを選ぶことになります。
EF50mmをまとめて比較する場合は、Canon EF標準単焦点レンズ一覧から確認できます。
RF50mm F1.2 L USMは同じ50mm F1.2でも別のレンズ
EOS RシリーズにはRF50mm F1.2 L USMがあります。
こちらも50mm F1.2ですが、EF50mm F1.2L USMとは設計思想がかなり異なります。
RF50mm F1.2 L USMは9群15枚、最短撮影距離0.40m、最大撮影倍率0.19倍、質量約950gです。高い解像性能を求めた大規模な光学設計で、開放から細部を明瞭に描くことを重視しています。
一方、EF50mm F1.2L USMは6群8枚、約590gです。RFより小型軽量で、開放では柔らかさを残した描写になります。
RF50mm F1.2 L USMは現代的な高性能大口径標準レンズ、EF50mm F1.2L USMは描写の変化やボケを楽しむ大口径標準レンズという違いがあります。
EOS Rを使っているから必ずRF50mmを選ぶ必要はありません。EFレンズ特有の描写を目的に、EF-EOS Rを介してEF50mm F1.2L USMを使う方法もあります。
EFとRFのシステム全体を確認する場合は、キヤノン大全から各レンズへ移動できます。
EF50mm F1.2L USMを中古で選ぶ意味
生産終了後もF1.2の描写には代わりがない
EF50mm F1.2L USMはすでに生産を終了しています。
そのため現在は中古で探す機会が多いレンズですが、生産終了したから撮影価値までなくなったわけではありません。
むしろRFシステムへ移行した現在だからこそ、EF時代の大口径Lレンズを比較的コンパクトなサイズで楽しめる存在として見直すことができます。
最新レンズのような均質な高解像を必要とするなら別の選択肢があります。
開放F1.2の柔らかさ、少し絞ったときの描写変化、50mmらしい自然な画角を楽しむなら、EF50mm F1.2L USMには現在も明確な個性があります。
EFレンズ全体を探す場合は、キヤノン大全からEFシステムを一覧できます。
中古では光学状態とAF動作を優先して確認する
中古のEF50mm F1.2L USMを選ぶ場合は、外装の細かな傷よりレンズとしての状態を優先します。
確認したいのは、レンズ内部のカビや大きな曇り、前玉と後玉の傷、AF動作、フォーカスリング、電子絞り、マウント部分などです。
大口径レンズでは開放撮影が大きな目的になるため、実際にF1.2で撮影できる環境なら、近距離と中距離の両方でAFを確認すると状態を判断しやすくなります。
また2022年に生産された一部製品では、高温環境下で露出のばらつきやErr01が発生する現象についてキヤノンから案内が出ています。対象となったシリアル番号があるため、該当年代の中古品では確認材料の一つになります。
古いEFレンズを中古で使う場合は、単純に外観のきれいさだけで判断せず、実写に関係する光学系と動作状態を優先する方が実用的です。
EFレンズとEOS Rシリーズの組み合わせについては、Canonレンズ対応表でも確認できます。
EF50mm F1.2L USMが向いている人
解像力だけではなくレンズの描写そのものを楽しみたい人
EF50mm F1.2L USMが向いているのは、単純な解像力比較だけでレンズを選ばない人です。
開放から画面の隅々まで均一にシャープな写真が欲しいのであれば、後年に登場した高性能レンズの方が適している場合があります。
EF50mm F1.2L USMの魅力は、F1.2、F1.4、F2、F2.8と絞りを変えたときに写真の印象そのものが変化することです。
同じ50mmでも撮影距離、背景、光、絞りによって結果が大きく変わります。その変化を撮影者自身が利用して写真を作るレンズです。
特にポートレート、スナップ、日常写真では、完全に整えられた描写より少し柔らかさを含む描写が写真の雰囲気に合うことがあります。
単焦点レンズの使い方を広げたい場合は、Canon EF標準単焦点レンズ一覧も参考になります。
一眼レフとEOS Rの両方でEFレンズを楽しみたい人
EF50mm F1.2L USMは、EF一眼レフとEOS Rシリーズの両方で使えることも魅力です。
EOS 5Dシリーズの光学ファインダーで撮影すれば、EFレンズが本来想定していた一眼レフの撮影感覚を楽しめます。
一方、EOS Rシリーズへマウントアダプター EF-EOS Rを介して装着すると、EVF、拡大表示、顔検出、瞳検出などミラーレス側の機能を利用できます。
同じレンズでもボディを変えることで撮影体験が大きく変わります。
一眼レフの操作感を残したまま使う方法と、ミラーレスのAF機能を組み合わせる方法の両方を選べることは、EFレンズならではの楽しみ方です。
マウントアダプターの仕組みについては、EOS RでEFレンズを使う方法で詳しく解説しています。
まとめ
Canon EF50mm F1.2L USMは、50mmという標準焦点距離へ開放F1.2を組み合わせた大口径Lレンズです。
6群8枚という比較的シンプルな光学構成、約590gの鏡筒、USM、最短撮影距離0.45mというスペックを持ち、現在の大口径標準レンズとは異なる性格があります。
最大の魅力はF1.2での描写です。
ピント面には芯を残しながら、その前後へ柔らかくボケが広がり、人物や静物を背景から浮き上がらせます。絞れば描写は徐々に整うため、開放の柔らかさと絞ったときのシャープさを一つのレンズで使い分けられます。
EF一眼レフでは本来の組み合わせで撮影でき、EOS Rシリーズではマウントアダプター EF-EOS Rを介して使用できます。
RF50mm F1.2 L USMのような最新設計とは方向性が違います。最新レンズと同じ基準で性能を比較するより、EF50mm F1.2L USMでしか得にくい描写を求めるかどうかで判断するレンズです。
解像性能だけでは決められないレンズの味、50mmらしい自然な画角、F1.2による浅い被写界深度を楽しみたいなら、現在でも使う意味のあるEFレンズです。
ほかのEFレンズやEOS一眼レフ、EOS Rシリーズとの関係は、キヤノン大全からまとめて確認できます。



