Canon EOS 70Dは一眼レフ動画を変えた革新機|デュアルピクセルCMOS AF初搭載の実力
Canon EOS 70Dは、2013年に登場したAPS-Cデジタル一眼レフです。EOS 60Dの後継機として約2020万画素CMOSセンサー、DIGIC 5+、最高約7コマ/秒の連写性能、19点オールクロスAFを備え、写真撮影の基本性能を大きく引き上げました。
そしてEOS 70Dを語るうえで欠かせないのが、EOSシリーズで初めて搭載された「デュアルピクセルCMOS AF」です。それまで一眼レフのライブビュー撮影では、光学ファインダー撮影と比べてAF速度や追従性能に不満が残ることがありました。EOS 70Dは撮像面で位相差AFを行う新方式によって、この弱点を大きく改善しています。
現在ではデュアルピクセルCMOS AFはキヤノンのミラーレスカメラでも当たり前の技術になりました。その出発点となったEOS 70Dを振り返ると、単なるEOS 60Dの後継機ではなく、後のEOSシリーズにつながる重要な転換点だったことが分かります。
EOS 70Dとはどんなカメラなのか
EOS 70Dは2013年8月に発売されたAPS-Cサイズのデジタル一眼レフです。EOS 60Dが発売された2010年から約3年を経て登場し、センサー、映像エンジン、AF、連写、ライブビューなど幅広い部分が刷新されました。
当時の位置づけはEOS Kissシリーズより上位で、EOS 7Dほど本格的な動体撮影機に振り切らない中上級クラスです。入門機からのステップアップにも使いやすく、操作性と性能のバランスを重視したD00シリーズらしい性格を持っています。
約2020万画素APS-C CMOSセンサーを搭載
EOS 70Dには有効約2020万画素のAPS-C CMOSセンサーが搭載されています。EOS 60Dの約1800万画素から画素数が増え、2013年当時のAPS-C機として十分な解像力を備えていました。
APS-Cでは35mm判より画角が狭くなるため、望遠レンズを使用したときに被写体を大きく捉えやすい特徴があります。野鳥、鉄道、航空機、スポーツなどでは、この画角の狭さを積極的に利用できます。
EOS 70DではEFレンズだけでなくEF-Sレンズも直接装着できます。APS-C専用レンズについてはEF-Sマウントの基本とAPS-Cカメラで使うメリットでも詳しく紹介しています。
DIGIC 5+と最高約7コマ/秒の連写性能
映像エンジンにはDIGIC 5+を採用し、最高約7コマ/秒の連続撮影に対応しています。EOS 60Dの最高約5.3コマ/秒から高速化され、動く被写体への対応力が大きく高まりました。
7コマ/秒という数字は現在の高速ミラーレスと比べれば控えめですが、機械式シャッターを使用する一眼レフとして考えれば十分に実用的です。子どもやペット、鉄道、運動会、野鳥など、決定的な瞬間を連写で狙う撮影にも対応できます。
望遠撮影では焦点距離だけでなく被写体との距離によっても写り方が大きく変化します。構図との関係は撮影距離によって写真の見え方がどう変わるのかでも解説しています。
EOS 70D最大の特徴はデュアルピクセルCMOS AF
EOS 70Dがカメラ史の中で重要なのは、デュアルピクセルCMOS AFをEOSシリーズで初めて搭載したことです。
一眼レフは通常、光学ファインダーを使っているときには専用AFセンサーで位相差AFを行います。しかしライブビューではミラーを上げるため、従来型の専用AFセンサーをそのまま使えません。そのため初期のデジタル一眼レフでは、ライブビューAFが遅いことが珍しくありませんでした。
EOS 70Dは撮像素子そのものを利用して位相差AFを行えるようにし、ライブビュー撮影を一気に実用的なものへ近づけました。
ライブビューでも素早くピントを合わせられる
デュアルピクセルCMOS AFでは、撮像画面の縦横それぞれ約80%という広い範囲で位相差AFを利用できます。
液晶モニターを見ながら撮影するときでも、従来のコントラストAFのように大きく前後へピントを探す動きが減り、狙った被写体へ素早く合わせられるようになりました。
光学ファインダーを覗く撮影とライブビューを使う撮影を状況によって使い分けられる点が、EOS 70Dの大きな魅力です。AFとMFの使い分けを理解すると、一眼レフでもライブビューでも撮影の自由度をさらに高められます。
EFレンズを含めたレンズ選択については単焦点レンズならではの描写と撮影の楽しさも参考になります。
動画撮影で滑らかなAF追従が可能になった
デュアルピクセルCMOS AFの恩恵が特に大きかったのが動画撮影です。
写真ではシャッターを切る瞬間にピントが合えばよい場面もありますが、動画では撮影中も被写体へ自然にピントを合わせ続ける必要があります。急激にピントが前後したり、大きく迷ったりすると、それだけで映像が見づらくなります。
EOS 70Dでは動画サーボAFによって被写体へ連続的にピントを合わせることができ、STMレンズと組み合わせれば滑らかなフォーカス移動を生かした動画撮影が可能です。
現在のEOS Rシリーズで当たり前になった撮像面AFの考え方を、一眼レフ時代に大きく前進させたモデルがEOS 70Dでした。現在のキヤノン機についてはCanon EOS Rシリーズ大全でまとめています。
19点オールクロスAFでファインダー撮影も強化
EOS 70Dはライブビューだけが強いカメラではありません。光学ファインダー撮影では19点AFを採用し、19点すべてがクロス測距に対応しています。
EOS 60Dは9点オールクロスAFだったため、測距点数は一気に増えました。画面中央だけでなく周辺にもAFポイントを配置できるため、被写体を中央から外した構図でもピントを合わせやすくなっています。
1点AF・ゾーンAF・19点自動選択AFを使える
AFエリアは1点AF、ゾーンAF、19点自動選択AFから選択できます。
静物やポートレートで狙った場所へ正確に合わせたい場合は1点AF、動く被写体をある程度の範囲で追いたい場合はゾーンAF、カメラに被写体検出を任せたい場合は19点自動選択AFと、撮影対象によって使い分けられます。
一眼レフでは光学ファインダーを通して被写体を直接見られるため、表示遅延がありません。EOS 70Dはライブビューの進化と同時に、一眼レフ本来の光学ファインダー撮影もしっかり強化されていました。
EOS 70Dの前世代についてはEOS 60DaとEOS 60D世代の特徴を見ると、D00シリーズがどのように変化してきたのかも分かります。
最高約7コマ/秒との組み合わせで動体にも対応
19点オールクロスAFと最高約7コマ/秒の連写を組み合わせることで、EOS 70Dは動体撮影にも使いやすいカメラになりました。
EOS 7Dほど動体撮影に特化した設計ではありませんが、日常的なスポーツ、鉄道、動物、子どもの撮影などには十分対応できます。EOS Kissシリーズからステップアップした場合には、AFポイントの多さや連写速度の違いを感じやすい部分です。
APS-Cでは望遠レンズの画角を生かしやすいため、動体撮影との相性も良好です。EF-Sレンズを中心とした構成についてはEF-S18-55mmを中心に考えるAPS-Cレンズの使い方も参考になります。
バリアングル液晶とタッチ操作が使いやすい
EOS 70Dは3.0型・約104万ドットのバリアングル液晶モニターを搭載しています。
EOS 60Dですでに採用されていたバリアングル構造を引き継ぎながら、EOS 70Dではタッチ操作とデュアルピクセルCMOS AFを組み合わせたことで、ライブビュー撮影の使い勝手が大きく向上しました。
ローアングルやハイアングル撮影に強い
液晶モニターを自由な方向へ動かせるため、地面に近い位置から撮るローアングルや、カメラを頭上に持ち上げるハイアングルでも無理な姿勢を取る必要がありません。
花、ペット、子ども、風景、建築物など、通常の目線とは違った高さから撮影すると写真の印象は大きく変わります。
さらにタッチした場所へピントを移動できるため、ライブビューを使った構図づくりとの相性も良好です。撮影位置と構図の関係については被写体との距離で変わる写真表現でも詳しく取り上げています。
一眼レフなのに液晶撮影が実用的
従来の一眼レフでは「ファインダー撮影が基本で、ライブビューは補助」という印象が強いモデルもありました。
EOS 70DではデュアルピクセルCMOS AF、バリアングル液晶、タッチ操作の3つが組み合わさり、液晶モニターを見ながら撮影すること自体が一つの完成した撮影方法になっています。
この方向性は、その後のEOS 80D、EOS 90D、そしてEOS Rシリーズへとつながっていきます。一眼レフとミラーレスの間をつなぐ存在として考えると、EOS 70Dの位置づけが分かりやすくなります。
一眼レフからミラーレスへ移行した現在のEOSについてはEOS Rシリーズの機種構成と特徴で確認できます。
EOS 70Dの画質と高感度性能
EOS 70Dの常用ISO感度はISO100~12800で、拡張設定ではISO25600相当まで利用できます。
約2020万画素のAPS-CセンサーとDIGIC 5+の組み合わせは、昼間の撮影では現在でも十分な画質を得られます。RAWで撮影して適切に現像すれば、風景、スナップ、ポートレート、商品撮影など幅広い用途に対応できます。
低感度では現在でも十分な解像感
ISO100~400程度を中心に使える明るい環境では、EOS 70Dでも十分に細部を描写できます。
最新機のような3000万画素、4000万画素クラスの解像力はありませんが、約2020万画素あれば一般的なWeb掲載、SNS、A4程度のプリントには余裕があります。
むしろファイルサイズが極端に大きくならないため、RAW現像や保存容量の負担が軽いという利点もあります。
画質はボディだけで決まるものではなく、使用するレンズや撮影距離でも大きく変化します。単焦点レンズの特徴については単焦点レンズで得られる描写と表現でも紹介しています。
高感度は現在のカメラとの差が出やすい
暗い室内や夜景でISO感度を上げると、最新のAPS-C機やフルサイズ機との差は見えやすくなります。
EOS 70DでもISO3200やISO6400を使うことはできますが、細部の解像感やノイズ量を重視する場合は、できるだけ低いISO感度を使える撮影方法を選んだ方が画質を得やすくなります。
明るい単焦点レンズを使う、シャッタースピードを下げられる被写体では三脚を使う、RAWで撮影するなど、基本的な方法でEOS 70Dの画質を引き出せます。
APS-C機で明るいレンズを使う楽しさについてはEF-SマウントとAPS-Cカメラの特徴も参考になります。
EOS 70Dの動画性能
EOS 70Dは動画撮影でも大きな転換点となったカメラですが、現在の基準で見る場合には記録方式を正しく理解しておく必要があります。
フルHDの1920×1080では30p、25p、24pに対応します。60p記録が可能なのは1280×720のHDです。現在の4K60p対応ミラーレスとは世代が大きく異なります。
フルHDは最大30p
EOS 70DのフルHD撮影は最大29.97fpsです。現在の感覚で「フルHDなら60pだろう」と考えると間違えやすい部分です。
一方で、30pで通常の動画を撮影する用途なら現在でも利用できます。固定カメラ、インタビュー、商品紹介、風景、日常記録など、60pを必要としない撮影ではフルHD30pでも十分です。
映像そのもののスペックよりも、EOS 70DではデュアルピクセルCMOS AFによる滑らかなフォーカスが大きな価値を持っていました。この技術がその後のEOS動画機能の基礎になっています。
現在のEOS Rシリーズと比較する場合はCanon EOS Rシリーズ大全を見ると、動画機能がどこまで進化したのか分かりやすくなります。
ALL-IとIPBを選択できる
動画圧縮方式はALL-IとIPBに対応しています。
ALL-Iは各フレームを独立して記録するためファイルサイズが大きくなりますが、編集時に扱いやすい方式です。IPBは前後のフレーム情報を利用して圧縮するため、ファイルサイズを抑えやすくなります。
現在では動画記録方式も大きく進化していますが、EOS 70Dの時代にすでに撮影後の編集まで考えた複数の圧縮方式を選択できた点は注目できます。
写真と動画の両方でEFレンズを活用したい場合はAPS-CカメラとEF-Sマウントの基本も合わせて確認できます。
Wi-Fiを内蔵したD00シリーズ
EOS 70DはWi-Fi機能を内蔵しています。現在では珍しくありませんが、2013年の一眼レフとしては利便性の高い機能でした。
スマートフォンと接続して撮影画像を確認したり、リモート撮影を行ったりできます。ケーブルレリーズを使わず離れた位置から操作できるため、集合写真や三脚撮影にも利用できます。
一眼レフの機能をデジタル時代へ広げたモデル
EOS 70Dは光学ファインダーを備えた伝統的な一眼レフでありながら、タッチパネル、Wi-Fi、ライブビューAF、動画サーボAFなど、後のミラーレスにつながる機能を積極的に取り込んでいました。
この点でEOS 70Dは、単に性能が向上したD00シリーズというだけではありません。一眼レフを使いながら、液晶画面を中心とした新しい撮影方法へ踏み込んだモデルでもあります。
キヤノンがその後ミラーレスへ移行していく流れを見るにはEOS Rシリーズの歴代モデルと特徴も参考になります。
EOS 60DからEOS 70Dで大きく変わったところ
EOS 60DからEOS 70Dへのモデルチェンジでは、単純な画素数増加以上の変更が行われています。
| 項目 | EOS 60D | EOS 70D |
|---|---|---|
| 発売年 | 2010年 | 2013年 |
| 有効画素数 | 約1800万画素 | 約2020万画素 |
| 映像エンジン | DIGIC 4 | DIGIC 5+ |
| ファインダーAF | 9点 | 19点 |
| クロス測距 | 9点 | 19点 |
| 最高連写 | 約5.3コマ/秒 | 約7コマ/秒 |
| ライブビューAF | コントラストAF中心 | デュアルピクセルCMOS AF |
| Wi-Fi | 非内蔵 | 内蔵 |
この比較からも、EOS 70Dで特にAFと連写が大きく進歩したことが分かります。
最大の差はライブビューAF
EOS 60DからEOS 70Dへ移行した場合、最も性格が変わるのはライブビューです。
EOS 60Dにもバリアングル液晶はありましたが、EOS 70DではデュアルピクセルCMOS AFとタッチパネルが組み合わされたことで、液晶を使った撮影そのものが大幅に扱いやすくなりました。
光学ファインダーだけで撮るならEOS 60Dでも一眼レフとして十分楽しめますが、ライブビューや動画まで使うならEOS 70Dの世代交代には大きな意味があります。
EOS 60D世代の特殊モデルについてはCanon EOS 60Daは天体撮影専用の特別な一眼レフで詳しく紹介しています。
中古のEOS 70Dを今使う価値
EOS 70Dはすでに発売から長い年月が経過しているため、現在購入する場合は基本的に中古です。
最新ミラーレスのような被写体検出AF、4K動画、電子シャッター、高速連写はありません。それでも写真撮影を中心に考えれば、約2020万画素、19点オールクロスAF、最高約7コマ/秒、バリアングル液晶という基本性能は現在でも使えます。
EF・EF-Sレンズを直接装着できる
EOS 70Dを現在使う大きな利点の一つが、EFレンズとEF-Sレンズをアダプターなしで使用できることです。
ミラーレスのEOS RシリーズでEFレンズを使う場合にはマウントアダプターが必要ですが、EOS 70Dならそのまま装着できます。
中古市場にはEF・EF-Sレンズが数多く存在するため、レンズ交換式カメラを比較的低い予算から楽しみたい場合にも選択肢を作りやすいシステムです。
EF-Sレンズの特徴についてはEF-Sマウントの基本と活用方法で詳しく紹介しています。
一眼レフらしい撮影感覚を楽しめる
光学ファインダーを覗き、ミラーとシャッターが動く感触を感じながら撮影する体験は、ミラーレスとは異なります。
撮影結果を常時電子表示するEVFとは違い、光学ファインダーではレンズを通った実像を直接見ることができます。バッテリー消費を抑えながら長時間ファインダーを覗けることも一眼レフの特徴です。
EOS 70Dは古いから価値がないカメラではなく、一眼レフという撮影方式を楽しみながら、デジタル一眼レフとして十分な基本性能も使えるモデルです。
EFレンズの魅力を生かした撮影については単焦点レンズの魅力と撮影表現も参考になります。
EOS 70DはD00シリーズの大きな転換点
D30から始まったキヤノンのD00系デジタル一眼レフは、世代を重ねるごとに画素数、AF、連写、液晶モニター、動画などを進化させてきました。
その中でもEOS 70Dは特に重要なモデルです。
約2020万画素センサーや最高約7コマ/秒という数字以上に重要なのが、デュアルピクセルCMOS AFを初めて搭載したことでした。
一眼レフは光学ファインダーで撮るものという時代から、液晶モニターを見ながら静止画や動画を撮る時代へ。その変化を大きく前進させたのがEOS 70Dです。
EOS 70Dから現在のEOSへつながる
デュアルピクセルCMOS AFはその後のEOSにも受け継がれ、ミラーレス時代のキヤノンAFを支える中心技術へ発展していきました。
現在のEOS Rシリーズでは被写体検出やトラッキング性能が大幅に進化していますが、その歴史をさかのぼるとEOS 70Dという一眼レフにたどり着きます。
EOS 70Dは、D00シリーズの中でEOS 60DからEOS 80Dへつなぐだけの存在ではありません。一眼レフとミラーレス時代をつなぐ重要な一台として、現在振り返っても興味深いカメラです。
現在のキヤノンミラーレスまで含めて比較したい場合はCanon EOS Rシリーズ大全も合わせてご覧ください。
まとめ
Canon EOS 70Dは、約2020万画素APS-C CMOSセンサー、DIGIC 5+、最高約7コマ/秒、19点オールクロスAF、バリアングルタッチ液晶、Wi-Fiなどを備えた中上級向けデジタル一眼レフです。
最大の特徴は、EOSシリーズで初めてデュアルピクセルCMOS AFを搭載したことです。これによってライブビュー撮影と動画撮影のAF性能が大きく進化し、一眼レフでも液晶モニターを積極的に使える時代が始まりました。
動画性能は現在の基準ではフルHD30pまでですが、写真撮影では約2020万画素と最高約7コマ/秒の性能を備え、EF・EF-Sレンズも直接使用できます。
EOS 70Dは単なる旧型一眼レフではありません。現在のEOSへつながるAF技術が本格的に始まった、キヤノンの歴史の中でも重要な一台です。



