LUMIX S9・S1RII・S1II・S1IIEファームウェア更新|追加機能・改善点・アップデート方法を解説
パナソニックは2026年10月、フルサイズミラーレスカメラ「LUMIX S9」「LUMIX S1RII」「LUMIX S1II」「LUMIX S1IIE」の4機種を対象とする新しいファームウェアを公開しました。国内サポートサイトの更新一覧では10月12日付で掲載され、各機種の更新履歴には10月13日付で記録されています。今回の更新は4機種すべてに同じ機能を追加する内容ではなく、S9では動画記録と操作機能の拡張、S1シリーズの3機種では外部フラッシュを使用した静止画撮影時の応答性能改善が中心です。機種ごとの変更内容を区別して確認することが重要です。
特にLUMIX S9は、MP4(Lite)形式に4K60p/50pとフルHDの高フレームレート記録が追加され、動画撮影の選択肢が広がりました。さらに「LUMIX Flow Ver.1.7.0」以降への対応と、レンズのFnボタンへ割り当てられる機能の追加も行われています。一方、S1RII、S1II、S1IIEの更新内容は外部フラッシュ撮影時のレリーズタイムラグと連写速度の改善、動作安定性の向上です。また、同時期に予定されていたスマホアプリ「LUMIX Lab Ver.3.1.1」は公開が延期されており、カメラ本体のファームウェア更新とは別に考える必要があります。
この記事ではパナソニックが公表した更新履歴を基に、4機種の新しいバージョン、追加機能、撮影上の効果、更新ファイルの違い、具体的なアップデート手順を解説します。S9で追加された動画形式の使い分けや、S1シリーズの外部フラッシュ撮影に関する変更点も掘り下げます。さらにLUMIX LabとLUMIX Flowの違い、更新前の準備、正常に更新できない場合の確認事項まで整理し、使用する機種に必要な情報を把握できる内容にしています。
LUMIX 4機種のファームウェア更新内容とバージョン一覧
2026年10月公開の対象機種はS9・S1RII・S1II・S1IIE
対象となる4機種はいずれもLマウントを採用するフルサイズミラーレスカメラです。国内向けの新しいファームウェアは、LUMIX S9がVer.2.1、LUMIX S1RIIがVer.1.6、LUMIX S1IIとS1IIEがともにVer.1.5となっています。S1RIIは高画素静止画と動画を両立する上位モデル、S1IIは高速撮影や動画を重視したモデル、S1IIEは静止画と動画の幅広い撮影を想定したモデルです。S9は小型軽量のボディとリアルタイムLUTを特徴とし、ほかの3機種とは操作部やシャッター構成に違いがあります。
| 機種 | 新バージョン | 主な更新内容 |
|---|---|---|
| LUMIX S9 | Ver.2.1 | MP4(Lite)記録形式追加、LUMIX Flow対応、レンズFn機能拡張 |
| LUMIX S1RII | Ver.1.6 | 外部フラッシュ時の応答・連写改善、動作安定性向上 |
| LUMIX S1II | Ver.1.5 | 外部フラッシュ時の応答・連写改善、動作安定性向上 |
| LUMIX S1IIE | Ver.1.5 | 外部フラッシュ時の応答・連写改善、動作安定性向上 |
今回の更新を確認する際は、機種名だけでなくカメラの正式な品番まで照合する必要があります。例えばS1RIIはDC-S1RM2、S1IIはDC-S1M2、S1IIEはDC-S1M2ESという品番で管理されており、名称が似ていても更新ファイルは共通ではありません。間違った機種のファイルを使用しないことが基本になります。LUMIX S9の基本性能とほかの機種との違いについてはLUMIX S9完全ガイド|特徴・性能・画質・メリットとデメリットで詳しく解説しています。
10月12日の掲載情報と10月13日の更新履歴の違い
パナソニックの国内ソフトウェアダウンロード一覧では、4機種のアップデートプログラムが2026年10月12日付の最新情報として掲載されています。一方、各機種のファームウェアダウンロードページにある更新履歴は、いずれも10月13日となっています。これは同じ更新について掲載一覧と個別履歴で日付の表記が異なる状態であり、2種類の別々のファームウェアが提供されたという意味ではありません。記事や製品情報を確認する際には、日付とともにバージョン番号を見れば更新内容を識別しやすくなります。
なお、今回の更新内容は海外向けの製品案内にも掲載されていますが、ファームウェアのバージョンや公開時期を確認する場合は、国内で使用するカメラのサポートページを基準にすることが重要です。国内の個別ダウンロードページには機種ごとのファイル名と更新内容が示されているため、更新対象を具体的に特定できます。以前のバージョンに関する改良も履歴として残されており、過去の更新と比較できる構成です。別メーカーの更新情報でも同様の確認方法が重要であり、EOS R6 Mark III・R6 Vのファームウェア更新でもバージョンごとの変更内容を取り上げています。
更新内容はS9とS1シリーズ3機種で大きく異なる
今回の4機種をひとまとめにすると、更新内容を取り違える可能性があります。LUMIX S9に追加された4K60pのMP4(Lite)記録やLUMIX Flowへの対応は、S1RII、S1II、S1IIEの今回の更新項目として案内されたものではありません。反対にS1シリーズ3機種で改善された外部フラッシュ撮影時のレリーズタイムラグと連写性能は、S9の今回の変更点ではありません。そもそもS9は外部フラッシュ撮影に対応していないため、上位シリーズと同じフラッシュ機能の改善を期待することはできません。
更新の重要度は、所有するカメラで何を撮影するかによって異なります。S9で動画を制作する場合は記録形式とスマホ連携が直接関係しますが、静止画だけを撮る場合はレンズFnボタンへの機能割り当てが主な関心になります。S1シリーズで外部フラッシュを多用する撮影者にとっては、シャッター操作後の応答と連写性能の改善が中心です。各モデルのシステム上の位置付けについてはマイクロフォーサーズ・Xマウント・Lマウント比較でLマウントの特徴とともに解説しています。
LUMIX S9 Ver.2.1で追加された動画記録機能
MP4(Lite)に4K60pと4K50pを追加
LUMIX S9のVer.2.1で最も目立つ変更は、MP4(Lite)形式の記録設定に4K60pと4K50pが追加されたことです。MP4(Lite)は動画の記録容量と転送・編集のしやすさを意識した形式で、スマホとの連携を重視するS9に適した選択肢です。従来のMP4(Lite)で選択できる記録条件に加え、60pまたは50pの4K撮影が可能になるため、動きの滑らかな映像を軽量な記録形式で扱う用途が広がります。ただし、追加された4K60pがすべての読み出し条件でフルサイズの画角を維持することや、既存の高ビットレート記録形式と同等の画質になることを意味するわけではありません。
60pは1秒間に約60フレームを記録する方式で、歩きながらの映像、動く人物、車、スポーツなどを滑らかに記録する用途に向きます。一方、24pや30pより必要な記録フレーム数が多くなるため、同じ圧縮条件でもデータ量と画質の関係が変わります。4Kという解像度の名称が同じでも、記録方式、ビットレート、センサーの使用範囲、シャッタースピードなどが違えば結果も変化します。S9が搭載する6Kや通常の4K記録との使い分けはLUMIX S9完全ガイドの動画性能とMP4(Lite)の解説でも取り上げています。
フルHDの120p・100p・60p・50pにも対応
MP4(Lite)では、4Kに加えてフルHDの120p、100p、60p、50pが新たに選べるようになりました。フルHDの解像度で高いフレームレートを使えることにより、動きの速い被写体を撮影したり、編集時に再生速度を変更するための素材を記録したりする選択肢が広がります。120pで撮影した素材を30pのタイムラインへ配置して4分の1の速度で再生すれば、通常の時間経過よりゆっくり見せる映像を制作できます。ただし、このようなスローモーション表現は編集時の設定によって決まり、120pで撮影しただけで必ずスロー再生のファイルが完成するわけではありません。
60pや50pは、動きを比較的滑らかに記録しながらフルHDとして扱う用途に向きます。例えば旅行の記録やSNS向けの短い動画で、4Kほど高い解像度を必要としない場合には、解像度とファイルの扱いやすさのバランスを取りやすくなります。一方、細かな風景や商品を拡大して見せたい用途では、フルHDより4Kを選んだ方が解像度面の余裕を確保できます。動画と静止画のどちらを中心に使うかというS9の特徴については写真撮影を趣味として始めたくなった人が欲しくなるミラーレスでも触れています。
MP4(Lite)の追加でスマホ編集と共有の選択肢が広がる
MP4(Lite)の価値は単に動画の画質やフレームレートを増やすことだけにありません。S9はリアルタイムLUTによる色づくりとスマホ連携を重視するカメラであり、記録した動画を手軽に扱えることが製品の特徴につながっています。撮影から素材の転送、色の調整、短い動画の編集、SNSへの投稿までを一連の作業として考えた場合、過度に容量の大きい記録形式だけを使うより、用途に合わせてファイルを小さくまとめられる利点があります。ただし、MP4(Lite)の具体的なファイルサイズや画質は選択する記録設定と撮影内容で変わるため、すべての条件で同じ容量になるわけではありません。
特に大量の短いカットを撮影する場合は、素材の保存場所と編集環境をあらかじめ考えておくことが重要です。パソコンへ取り込む場合でもスマホへ転送する場合でも、記録したすべてのファイルを最高品質にする必要があるかは制作目的によって変わります。保存版の風景映像には高画質の記録形式を使い、すぐに共有する日常動画にはMP4(Lite)を使うなど、目的ごとの選択ができます。S9のリアルタイムLUTとスマホ連携の特徴については欲しくなったミラーレスは?8機種を紹介でも説明しています。
LUMIX S9のレンズFnボタン拡張とLUMIX Flow対応
レンズFnボタンへ割り当てられる機能が増加
Ver.2.1では、対応する交換レンズのFnボタンに割り当てられる機能が追加されました。パナソニックの海外向け更新案内では、アスペクト比、動画の電子手ブレ補正、Boost I.S.、動画の撮像範囲、フォーカスリング制御、フォーカスリミッター、ハイブリッドズーム、クロップズーム、フォーカスピーキング、動画記録などが追加項目として示されています。Fnボタンは撮影中によく使う機能を呼び出すための操作部であり、カメラのメニューを何段階も開く手間を減らせます。ただし、レンズのすべてにFnボタンが付いているわけではなく、機能によって使用条件や対応レンズが異なります。
例えば動画撮影で画角を切り替えることが多い場合は、対応するズーム機能を使いやすい場所に配置する方法があります。ピントを厳密に調整する場合は、フォーカスピーキングや関連機能へ素早くアクセスできると操作手順を短縮できます。レンズ側の操作部を使えることは、特にコンパクトで本体ボタン数の少ないS9にとって重要です。交換レンズの互換性とLマウントの特徴はLマウントの規格と交換レンズ選びでも解説しています。
LUMIX Flow Ver.1.7.0以降でS9との連携に対応
Ver.2.1のもう一つの追加項目は、スマホ用アプリ「LUMIX Flow」との連携です。パナソニックはS9で使用できるアプリの条件としてLUMIX Flow Ver.1.7.0以上を示しており、アプリ側の更新履歴にも2026年10月13日付でDC-S9 Ver.2.1への対応が記載されています。LUMIX Flowは映像制作を支援するアプリで、絵コンテの作成、撮影時の確認、素材整理などを目的として設計されています。スマホを撮影用の外部モニターとして利用する機能もあり、一般的な写真転送アプリとは用途が異なります。
S9を動画制作の小型カメラとして使う場合、カメラ本体の背面モニターだけでは構図を確認しにくい場面があります。自分自身を撮影するときや、三脚へカメラを据えて別の位置から映像を確認したい場合は、アプリとの連携が役立つ可能性があります。ただし、使用するスマホのOSやアプリのバージョン、接続方式などによって利用できる機能が変わる場合があります。S9が動画撮影で重視する操作性についてはLUMIX S9完全ガイドの動画機能と操作性で詳しく紹介しています。
LUMIX FlowとLUMIX Labは目的が異なるアプリ
LUMIX FlowとLUMIX Labは名称が似ていますが、主に想定する作業が異なります。LUMIX Flowは撮影前の構成や撮影現場での作業を支援する方向性を持ち、LUMIX Labは写真と動画の色づくり、LUTの編集、カメラとのデータ連携などを重視しています。S9ではリアルタイムLUTが主要機能の一つであるため、色を作ってカメラへ転送する作業にはLUMIX Labの役割が大きくなります。一方で、撮影の流れを管理したりスマホを撮影補助へ利用したりする場合はLUMIX Flowが選択肢になります。
Ver.2.1への更新によってLUMIX Flowとの連携が追加されても、既に使っているLUMIX Labの役割がなくなるわけではありません。撮影時の色を決める作業と、撮影進行を補助する作業を分けて考えることで、どちらのアプリが必要か判断しやすくなります。なお、アプリの機能追加にはカメラ側の更新とアプリ側の更新の両方が関わることがあるため、対応バージョンの確認が重要です。S9とリアルタイムLUTの関係はLUMIX S9のデザインとLUT機能を紹介した記事でも取り上げています。
LUMIX S1RII・S1II・S1IIEの変更点を詳しく解説
S1RII Ver.1.6は外部フラッシュ撮影時の応答性能を改善
LUMIX S1RIIの新しいファームウェアはVer.1.6です。メーカーが公表している変更内容は、外部フラッシュ使用時のレリーズタイムラグと連写速度の改善、および動作安定性の向上です。レリーズタイムラグはシャッターボタンを操作してから実際の露光が行われるまでに生じる時間差を指し、被写体の動きに合わせて撮影する際の操作感へ影響します。今回の改善は外部フラッシュを利用する条件が明示されており、カメラのすべてのシャッター方式でタイムラグが同じように短縮されたという発表ではありません。
スタジオポートレート、商品撮影、イベント撮影などでは、フラッシュとシャッターの動作が連携するため、撮影の応答性能が重要になります。特に人物の表情が変化する瞬間を狙う場合は、シャッターを押した感覚と実際に写る瞬間の差が小さい方が扱いやすくなります。一方、メーカーは今回の説明で改善量を具体的なミリ秒数として公表していないため、何ミリ秒短縮したかを数値で断定することはできません。S1RIIを含むLマウントシステムの特徴はマイクロフォーサーズ・Xマウント・Lマウント比較でも解説しています。
S1II Ver.1.5はフラッシュ併用の連写性能を改善
LUMIX S1IIの更新バージョンはVer.1.5で、S1RIIと同じく外部フラッシュを使用したときのレリーズタイムラグおよび連写速度が改善されています。S1IIは高速撮影を重視したモデルですが、フラッシュを使う連続撮影ではシャッター機構や発光装置の動作条件が関わります。そのため、カメラ本体の最高連写速度だけを見ても、外部フラッシュ使用時に同じ速度で撮影できるとは限りません。今回のアップデートは、このフラッシュ併用時の実用性に関わる変更として位置付けられます。
なお、フラッシュ連写の実際の間隔は、装着するフラッシュ、発光量、充電時間、撮影モードなどでも変化します。ファームウェア更新後にカメラ側の動作が改善されても、フラッシュが次の発光に必要な電力を充電できていなければ、一定間隔で連続発光できない場合があります。メーカーの更新内容を理解する際には、カメラ側の改善と外部機器側の制約を区別することが大切です。撮影システムの拡張性と操作の違いについてはミラーレスカメラを趣味として選ぶ際の比較も参考になります。
S1IIE Ver.1.5も外部フラッシュ撮影と安定性を改善
LUMIX S1IIEの新しいファームウェアもVer.1.5です。変更内容はS1RIIとS1IIに共通しており、外部フラッシュ使用時のレリーズタイムラグ、連写速度、動作安定性が改善されています。S1IIEは型番がS1IIと似ているため、更新ファイルを取り違えないことが特に重要です。国内サポートサイトではS1IIがDC-S1M2、S1IIEがDC-S1M2ESとして区別され、それぞれ別の更新データが用意されています。
今回のS1IIE向け更新では、新しいセンサー読み出し方式や動画解像度の追加などは公表されていません。更新後に新機能が利用できると期待する場合は、実際の変更履歴に記載されている項目を確認する必要があります。一方、外部フラッシュを使用する撮影者にとっては、既存機能の応答改善も実用的な意味を持ちます。S1IIEで使用するLマウントレンズの基本的な互換性はLマウントの互換性と対応レンズの特徴で解説しています。
外部フラッシュ使用時の改善は撮影にどう影響するのか
レリーズタイムラグが短くなるとシャッター操作が変わる
レリーズタイムラグは、シャッターボタンを押す操作と画像の露光が開始されるタイミングの間にある遅れです。AFに必要な時間やシャッターの構造、撮影条件によって実際に感じる応答は変わりますが、シャッターを押した瞬間を狙う撮影では重要な要素になります。外部フラッシュを使用すると発光制御も関わるため、通常の自然光撮影とは異なるタイミング制御が必要です。S1RII、S1II、S1IIEの今回の改善はこの条件が対象であり、フラッシュなしのすべての撮影動作が新しくなるという説明ではありません。
例えば人物の表情が変わる瞬間や、被写体が特定の位置を通過する場面では、シャッター操作と露光のタイミングが近い方が撮影者の意図を反映しやすくなります。ただしタイムラグが短くなれば必ずベストショットが得られるというわけではなく、被写体の速度、撮影者の反応、AFの追従なども成功率に影響します。今回の改善を確認する場合は、同じフラッシュと撮影設定を使ったときの操作感を比較する方法が考えられます。動きのある被写体に対するカメラ選びはミラーレスカメラで始める撮影ジャンル別の機種選びにも関連しています。
連写速度の改善とフラッシュのチャージ時間は別問題
外部フラッシュを使用した連写では、カメラが次の写真を撮影する準備とフラッシュが次に発光する準備の両方が必要です。発光量を大きくするとフラッシュ内部のコンデンサーを再充電する時間が長くなる場合があり、カメラが連写できても全コマで同じ発光を行えないことがあります。メーカーが今回改善したとする連写速度はカメラ側のファームウェアによる変更ですが、使用するフラッシュの発光能力を超えて連写できるようになることを意味しません。具体的な性能はフラッシュ機種、電池の状態、発光量、シャッター方式などの組み合わせで変わります。
スタジオ撮影で一定した露出を得たい場合は、最高連写速度だけを優先するよりフラッシュが安定して発光できる間隔を重視する方法があります。例えば毎回の発光量が大きい撮影では連続発光の回数を抑え、フラッシュの充電が完了する条件で撮る方が露出のばらつきを減らせます。一方、比較的小さな発光量で人物を連続撮影する場合は、カメラ側の応答改善を生かせる可能性があります。カメラの機能追加と撮影結果の関係はファームウェア更新による撮影機能の改善例でも確認できます。
動作安定性の向上は具体的な修正項目とは区別する
S1RII、S1II、S1IIEの更新履歴には、外部フラッシュに関する改善に加え、動作安定性の向上が記載されています。これはカメラの制御を改善する更新項目ですが、特定のフリーズやエラーコードが修正されたと明示されたわけではありません。したがって、過去に発生したすべてのエラーが解決するという説明や、特定のレンズとの互換性が今回大幅に変わったという説明は正確ではありません。公表された情報から確認できるのは、外部フラッシュ撮影時の改善と、そのほかの動作安定性に関する変更が含まれることです。
一般にファームウェア更新は新機能の追加だけでなく、既存の動作を調整する目的でも提供されます。大きな新機能が追加されない更新であっても、日常の撮影で発生する細かな問題の改善に関係する場合があります。ただし、メーカーが具体的な症状を公表していない場合は、使用者が経験した個別の不具合と今回の更新を直接結び付ける根拠はありません。ファームウェアで明示された修正内容と公表されていない部分を分ける考え方はEOS R7のErr70対策とファームウェア更新でも扱っています。
LUMIX Lab Ver.3.1.1の公開延期とアプリの対応状況
LUMIX Lab Ver.3.1.1は10月13日の公開を延期
パナソニックは2026年10月7日、同月13日に公開予定だったスマホアプリ「LUMIX Lab Ver.3.1.1」の公開を延期すると発表しました。理由として開発の遅れを挙げ、公開予定日を改めて案内する方針を示しています。これはLUMIX Labアプリの更新に関する告知であり、4機種のカメラ本体用ファームウェアが延期されたという発表ではありません。S9のVer.2.1とS1シリーズの更新データは、それぞれのサポートページに掲載されています。
LUMIX LabはリアルタイムLUTを使う撮影者にとって関係の深いアプリです。LUTの編集や管理、撮影データとの連携などで利用されるため、更新の延期によって新しいアプリ機能の提供時期が変わる場合があります。一方、カメラ本体に追加された動画記録機能とアプリ側で予定している機能は、必ずしも同時公開でなければ利用できないものばかりではありません。S9のリアルタイムLUTとLUMIX Labの基本的な関係についてはLUMIX S9完全ガイドのリアルタイムLUT解説で紹介しています。
S9のMP4(Lite)はLUMIX Lab Ver.3.1.0でも利用可能
今回の公開延期に関連して、パナソニックは重要な補足を発表しています。LUMIX Lab Ver.3.1.1で対応予定だったS9 Ver.2.1のMP4(Lite)については、公開済みのVer.3.1.0でも利用できると明示しました。したがって、Ver.3.1.1の配信開始を待たなければS9の新しいMP4(Lite)形式を扱えないという状況ではありません。カメラ本体の更新とアプリの対応バージョンを個別に確認すれば、公開延期による影響を整理できます。
ただし、Ver.3.1.1に予定されていたすべての新機能がVer.3.1.0に搭載されているという説明ではありません。LUT Packsなどアプリ側の新しい機能については、別途公開されるバージョンの対応状況を確認する必要があります。カメラのMP4(Lite)で動画を撮影することと、アプリで新しいLUTを取得することは異なる操作なので、目的ごとに必要な機能を整理することが重要です。LUMIXの動画と色表現の特徴はLUMIX S9の色づくりとスマホ連携の紹介にも関連しています。
LUMIX Flow Ver.1.7.0は公開済みでS9に対応
LUMIX Lab Ver.3.1.1の公開延期と対照的に、LUMIX Flow Ver.1.7.0は2026年10月13日に公開されました。パナソニックの更新情報では、DC-S9 Ver.2.1への対応と表示・操作性の改善が記載されています。したがって、S9をVer.2.1へ更新した場合にFlowとの連携を検討するのであれば、対応するVer.1.7.0以上を利用することになります。アプリの動作はカメラ本体のバージョンだけでなくスマホ側の環境にも左右されるため、組み合わせを確認することが大切です。
Flowを利用すると、映像制作の準備と撮影時の確認をスマホ側へ広げられます。例えば撮影カットの構成を考えたり、カメラの近くに立てない位置から映像を確認したりする用途が想定されます。ただし、アプリの導入によってS9のセンサー性能やレンズの光学性能が向上するわけではなく、撮影作業の効率を高めるための連携機能として理解する必要があります。S9の基本的な撮影能力についてはLUMIX S9の性能・画質・メリットとデメリットで確認できます。
ファームウェアの更新方法と作業前の注意点
パナソニック公式サイトから機種別の更新ファイルを取得
パナソニックの国内サポートサイトでは、4機種それぞれのファームウェアをZIPファイルとして配布しています。WindowsとMacのいずれでも取得でき、ダウンロードしたZIPファイルを解凍するとカメラに読み込ませる更新用のBINファイルが作成されます。更新ファイルは機種ごとに名称が異なるため、カメラ本体の品番と一致するものを使用する必要があります。S1IIとS1IIEは機種名が似ていますが、ファイルを共用することはできません。
| 機種 | ZIPファイル名 | 解凍後のファイル名 |
|---|---|---|
| S9 | S9___V21.zip | S9___V21.bin |
| S1RII | S1Rm2V16.zip | S1Rm2V16.bin |
| S1II | S1m2_V15.zip | S1m2_V15.bin |
| S1IIE | S1m2EV15.zip | S1m2EV15.bin |
更新データはメーカー公式のサポートページから取得することで、対象機種とバージョンを確認できます。ファイル名を手入力で変更したり、別の機種用のデータを流用したりする必要はありません。また、ダウンロードしたZIPファイルをそのままメモリーカードへ保存する方法と、解凍したBINファイルを保存する方法は異なります。パナソニックのカード更新手順では解凍後の更新ファイルを使用するため、この区別が重要です。カメラのファームウェア更新の基本的な考え方はEOS R6 Mark III・R6 Vの更新方法を解説した記事でも取り上げています。
満充電バッテリーとカメラでフォーマットしたカードを準備
更新作業を始める前には、満充電されたバッテリーと、使用する機種に対応したメモリーカードを準備します。パナソニックは更新時の電源確保を重視しており、バッテリー残量が不足している状態では更新に失敗する場合があると説明しています。メモリーカードは使用するカメラでフォーマットしたものを用意し、更新ファイルを保存するための空き容量を確保します。既に写真や動画が保存されているカードを初期化する場合は、必要な撮影データを別の場所へ保存しておく必要があります。
更新ファイルは、メモリーカードの最上位階層であるルートへ保存する方法が案内されています。フォルダーの中へ入れたり、複数の異なるファームウェアファイルを同時に置いたりすると、更新画面で認識されない場合があります。作業前にはカメラ本体のバージョンを確認し、既に対象バージョンである場合は更新の必要性を判断できます。バッテリーとメモリーカードの管理については撮影可能枚数を操る特別な設定と環境管理でも解説しています。
カメラのバージョン表示から更新し完了後に再確認する
パナソニックが案内しているカードを使った更新手順では、カメラの電源を切った状態で更新ファイルを保存したカードと満充電バッテリーを装着します。その後、電源を入れてセットアップメニューからバージョン表示を開き、ファームウェアアップデートを選択します。更新が始まったら表示される案内に従って処理を完了させ、カメラが通常の撮影状態へ戻った後にバージョンを確認します。機種ごとに表示や操作が異なる場合があるため、使用するモデルの公式手順を基準に進めることが重要です。
更新処理中には電源スイッチやボタンを不用意に操作せず、カードの抜き差し、バッテリーの取り外し、レンズの着脱などを行わないことが基本です。正常に完了した場合は、S9ならVer.2.1、S1RIIならVer.1.6、S1IIとS1IIEならVer.1.5と表示されます。更新後のメモリーカードを撮影に使用する際は、更新ファイルを残したままにせず適切に処理します。ただしカードをフォーマットすると撮影画像なども消去されるため、必要なデータが残っていないことの確認が欠かせません。更新作業中の電源管理についてはEOS R7のファームウェア更新と注意点でも触れています。
更新後に確認したい設定とトラブル対策
S9は新しいMP4(Lite)設定と動画再生環境を確認
Ver.2.1への更新後にS9の新機能を使う場合は、動画の記録設定で新しく追加された4K60p/50pやフルHDの各フレームレートを確認することになります。従来から利用できる形式も含めて選択肢が増えるため、撮影目的に応じて解像度とフレームレートを使い分けることが重要です。高フレームレートで撮影した動画は、再生機器や編集ソフトの対応状況によって扱いが変わる場合があります。撮影できたことだけで編集環境でも同じように扱えると判断せず、短いテスト動画を記録して確認すると運用を整えやすくなります。
また、レンズFnボタンの割り当て可能項目が増えていても、使っているレンズ側に対応する操作部がない場合は、その機能を利用できません。対応するレンズを装着している場合は、普段の撮影でよく使う機能を割り当てることで操作手順を減らせます。一方、通常の動画撮影だけを行う場合は、新しい機能をすべて使う必要はありません。MP4(Lite)、6K記録、リアルタイムLUTなどを含むS9の動画機能についてはLUMIX S9完全ガイドの動画性能と撮影設定で詳しく解説しています。
S1シリーズはフラッシュの動作と撮影条件を整理する
S1RII、S1II、S1IIEで更新後の違いを確認する場合は、外部フラッシュの使用条件が重要です。今回の変更が主としてフラッシュ使用時のレリーズタイムラグと連写性能に関係するため、自然光だけで撮影していても改善点を確認しにくい場合があります。普段使っている外部フラッシュで、シャッターを押したときの応答、連写時の発光の安定性、撮影後の操作などを確認すると実用上の変化を把握しやすくなります。ただし、メーカーが具体的な短縮時間や連写速度の改善値を公開していないため、独自の比較を行わずに性能向上を数値化することはできません。
更新後にフラッシュが発光しない場合は、フラッシュ本体の電源、充電状態、装着状態、カメラ側の撮影モードなど、通常の撮影条件を確認する必要があります。電子シャッターの設定や発光方式によって制約が生じる場合もあり、ファームウェア更新だけで解消できる問題とは限りません。サードパーティ製アクセサリーでは、機種ごとの動作確認情報も重要になります。LUMIXが採用するマウントと周辺機器の構成についてはLマウントの特徴とシステム選びが参考になります。
更新できない場合はファイル・電源・カードを順に確認
更新画面が表示されない場合は、まず機種に対応するBINファイルがメモリーカードのルートへ保存されているかを確認します。ZIPファイルのまま保存していたり、別の機種用ファイルを使用していたりすると、正しい更新処理へ進めません。また、カード内に複数の更新ファイルが混在している場合も確認が必要です。パナソニックの公式手順では、バッテリーが満充電されているかどうかも更新画面を表示できない場合の確認事項に含まれています。
カメラが既に同じバージョンへ更新されている場合は、バージョン表示を確認することで状態を整理できます。更新作業の途中で電源が切れたり、通常の操作に戻らなくなったりした場合は、根拠なくボタン操作やバッテリーの抜き差しを繰り返すと状態を悪化させる可能性があります。通常の更新手順では対応できない状態になった場合は、メーカーが案内する対処方法を確認する必要があります。異常動作とファームウェアの関係についてはカメラのエラーとファームウェア更新の考え方でも解説しています。
4機種のファームウェア更新で変わること・変わらないこと
S9は動画制作の利便性が向上する一方で基本構造は同じ
LUMIX S9は今回のVer.2.1によって、動画の記録形式と撮影時の操作、映像制作アプリとの連携が強化されました。4K60pやフルHD120pをMP4(Lite)で扱えることは、記録容量や編集方法を含めて動画制作の選択肢を広げる変更です。しかし、S9のセンサー画素数や外形寸法が変わるわけではなく、メカシャッターや電子ビューファインダーが追加されることもありません。外部フラッシュ撮影へ対応するようになったという発表でもないため、従来から存在する基本構造上の制約は残ります。
写真だけを撮影する人にとっては、動画機能の追加よりレンズFnボタンの拡張が実用的な変更になる場合があります。一方、動画を頻繁に撮影する人にとっては、新しいMP4(Lite)設定やLUMIX Flowとの連携が撮影環境を変える可能性があります。ファームウェアによって後から機能が増えるカメラでも、ハードウェアの構造とソフトウェアの制御は分けて評価することが重要です。S9の基本性能と構造上の制約はLUMIX S9完全ガイドのメリットとデメリットで紹介しています。
S1シリーズは既存の撮影性能を改善する内容が中心
S1RII、S1II、S1IIEの今回のファームウェアは、新しい撮影モードを大量に追加するものではありません。外部フラッシュを使用する条件での操作応答と連写性能を改善し、動作の安定性を高めることが主な内容です。カメラを使い続ける中では、最高解像度や最高連写速度のような仕様表上の数値だけでなく、実際の操作時に撮影者の意図へどれだけ素早く応答するかも重要になります。特に外部フラッシュを多用するスタジオや人物撮影では、こうした制御の改善に意味があります。
ただし、今回の更新によってすべての外部フラッシュが新たに利用可能になるという説明はありません。また、外部フラッシュを使用しない撮影で最高連写速度が引き上げられたという発表も確認できません。更新履歴に記載された条件を外して性能の変化を説明すると、製品の実際の機能を取り違えることになります。ファームウェアの改善内容を正確に判断する考え方はEOS R6 Mark III・R6 Vファームウェア更新の記事にも共通しています。
中古購入や長期使用でもファームウェアの確認が重要
中古のLUMIXを購入する場合は、外観やシャッター回数などの状態に加え、本体に入っているファームウェアのバージョンも確認する意味があります。例えば中古のS9が古いバージョンのままなら、最新のMP4(Lite)設定やLUMIX Flowへの対応が利用できない場合があります。S1シリーズも過去の更新で追加された機能があり、購入時のファームウェアによってメニューや操作の状態が変わる可能性があります。中古品の販売ページに記載された機能説明だけで判断せず、機種とバージョンの組み合わせを把握することが重要です。
一方、ファームウェアのバージョンが古いだけで、カメラ本体が故障しているという意味にはなりません。更新可能な機種であれば、正常な状態で適切にアップデートを行うことで新しい機能を利用できる場合があります。ただし、更新前には電源やカードの状態を整える必要があり、作業中の失敗を避けるための準備も重要になります。LUMIXを含むフルサイズミラーレスの中古購入については写真撮影を趣味として始めるためのミラーレス選びも参考になります。
まとめ
2026年10月に公開されたLUMIX S9、S1RII、S1II、S1IIEのファームウェアは、4機種それぞれに異なる意味を持つ更新です。国内のソフトウェア一覧では10月12日に掲載され、個別の更新履歴では10月13日付となっています。S9はVer.2.1へ更新され、MP4(Lite)に4K60p/50pとフルHD120p/100p/60p/50pが追加されたほか、レンズFnボタンの割り当て機能とLUMIX Flow Ver.1.7.0以降への対応が拡張されました。写真と動画の両方に対応するS9の中でも、特に動画制作と操作効率に関係する変更内容です。
S1RIIはVer.1.6、S1IIとS1IIEはVer.1.5へ更新され、3機種共通で外部フラッシュ使用時のレリーズタイムラグと連写速度が改善されました。さらに動作安定性も向上していますが、具体的な改善量やすべての撮影条件での速度向上が公表されたわけではありません。また、同時期に予定されていたLUMIX Lab Ver.3.1.1は公開が延期されたものの、S9 Ver.2.1のMP4(Lite)は公開済みのLUMIX Lab Ver.3.1.0でも利用できるとメーカーが案内しています。
更新する際は、S9、S1RII、S1II、S1IIEそれぞれに用意された専用ファイルを使用し、満充電バッテリーと適切なメモリーカードを準備することが重要です。作業後にはカメラ本体のバージョン表示で正常に完了したことを確認し、必要に応じて新しい動画設定やレンズFnボタン、外部フラッシュ撮影時の動作を確認できます。カメラの基本構造を変える更新と、既存機能の操作性を改善する更新を区別することで、自分の撮影方法にとって何が変わったのかを正確に把握できます。



