TS-E90mm F2.8レビュー|ティルト・シフトの使い方・作例・中古選びを徹底解説
TS-E90mm F2.8は、キヤノンEFマウントのティルト・シフトレンズです。焦点距離90mmの中望遠に、レンズを傾けるティルト機構と、レンズを平行移動させるシフト機構を組み合わせています。
一般的な90mm単焦点との最大の違いは、ピント面と構図をレンズ側で動かせることです。通常のレンズでは撮像面とピント面の関係はほぼ固定されていますが、TS-E90mm F2.8ではティルトによってピント面の向きを変え、シフトによってカメラ本体を傾けずに構図を上下左右へ調整できます。
商品撮影や料理撮影では、斜めに置いた被写体の面へピントを通しやすくできます。ポートレートでは、通常の90mm F2.8として自然な中望遠描写を使いながら、ティルトによって一部分だけへピントを集める特殊表現も可能です。
TS-E90mm F2.8は、レンズ構成5群6枚、最短撮影距離0.5m、最大撮影倍率0.29倍、ティルト±8°、シフト±11mmという構成です。AFは搭載しておらず、マニュアルフォーカス専用です。
この記事では、TS-E90mm F2.8の基本スペック、ティルトとシフトの違い、商品・料理・ポートレート・風景での使い方、EOS Rシリーズでの運用、後継TS-E90mm F2.8L マクロとの違い、中古で確認したいポイントまで詳しく解説します。
- TS-E90mm F2.8の基本スペック
- TS-E90mm F2.8のティルトとは何か
- TS-E90mm F2.8のシフトとは何か
- TS-E90mm F2.8は商品撮影で強みが分かりやすい
- 料理撮影ではティルトが実用的に使える
- ポートレートでは普通の90mmとは違う表現ができる
- 風景撮影でもティルトを利用できる
- マニュアルフォーカス専用だから撮影方法も変わる
- EOS RシリーズでTS-E90mm F2.8を使うメリット
- 後継TS-E90mm F2.8L マクロとの違い
- TS-E90mm F2.8を中古で選ぶポイント
- TS-E90mm F2.8が向いている人
- まとめ|TS-E90mm F2.8はピント面そのものを操作できる中望遠レンズ
TS-E90mm F2.8の基本スペック
| 項目 | TS-E90mm F2.8 |
|---|---|
| マウント | Canon EF |
| 焦点距離 | 90mm |
| 開放F値 | F2.8 |
| 最小絞り | F32 |
| レンズ構成 | 5群6枚 |
| 絞り羽根 | 8枚 |
| 最短撮影距離 | 0.5m |
| 最大撮影倍率 | 0.29倍 |
| ティルト | ±8° |
| シフト | ±11mm |
| フィルター径 | 58mm |
| 最大径×長さ | 約73.6×88mm |
| 質量 | 約565g |
| フォーカス | マニュアルフォーカス |
90mmは商品撮影や人物撮影に使いやすい中望遠
TS-E90mm F2.8の焦点距離は90mmです。フルサイズでは中望遠となり、50mmより画角が狭く、背景を整理しながら被写体を大きく見せやすい焦点距離です。
商品撮影では、広角レンズのように被写体へ極端に近づかなくても構図を作れます。時計、カメラ、靴、バッグ、料理、工芸品などを自然な形で写しやすく、撮影者や照明の位置も確保しやすくなります。
人物撮影でも90mmは使いやすく、顔や上半身を少し離れた位置から撮影できます。ティルトやシフトを使わず、通常の90mm F2.8単焦点として使うこともできます。
人物撮影で焦点距離を比較する場合は、Canonポートレートレンズガイドも参考になります。
5群6枚という比較的シンプルな光学構成
TS-E90mm F2.8は5群6枚という比較的シンプルな光学構成です。
ティルトやシフトを行うレンズでは、通常撮影より広いイメージサークルが必要になります。レンズを傾けたり平行移動させたりしても撮像面をカバーできるように設計されているため、普通の90mm単焦点とは内部設計の考え方が異なります。
それでも質量は約565gに収まっており、後継のLマクロモデルより軽量です。屋外へ持ち出して風景や作品撮りに使う場合には、この重量差も実用上の特徴になります。
キヤノンの単焦点レンズ全体を確認する場合は、キヤノン単焦点レンズ完全ガイドも参考になります。
最大撮影倍率0.29倍で商品や料理へ寄れる
TS-E90mm F2.8の最短撮影距離は0.5m、最大撮影倍率は0.29倍です。
等倍マクロの1.0倍には届きませんが、商品、料理、花、小物、アクセサリーなどを大きく写すには使いやすい倍率です。
90mmという焦点距離なので、被写体とレンズの間にある程度の空間を確保できます。商品撮影では照明、レフ板、ディフューザーなどを配置しやすくなり、カメラ自身が光を遮ることも避けやすくなります。
さらにティルトを利用すれば、斜めに置いた商品の面へピント面を合わせるという、普通のマクロレンズとは異なる撮影ができます。
撮影倍率と最短撮影距離については、マクロレンズの特徴と使い方も参考になります。
TS-E90mm F2.8のティルトとは何か
ティルトはピント面の向きを変える機能
通常のレンズでは、レンズの光軸と撮像面は基本的に直角です。そのためピント面も撮像面とほぼ平行になります。
TS-E90mm F2.8では、レンズを最大±8°傾けられます。これがティルトです。
レンズを傾けると、ピント面も撮像面と平行ではなくなります。その結果、カメラに対して斜めに伸びる被写体へピント面を近づけることができます。
例えばテーブル上へ商品を斜めに置いて撮影すると、普通のレンズでは商品の手前と奥で距離差が生じます。手前へピントを合わせれば奥がぼけ、奥へ合わせれば手前がぼけます。
ティルトを適切に使えば、商品の面とピント面を近づけ、必要以上に絞り込まずに手前から奥までピントを通しやすくなります。
TS-Eレンズ全体の違いについては、Canon TS-Eレンズ完全ガイドで詳しく解説しています。
ティルトは被写界深度そのものを無限に深くする機能ではない
ティルトを使えば、F2.8のまま何でも手前から奥までシャープになるわけではありません。
ティルトが行うのは、被写界深度そのものを無限に深くすることではなく、ピント面の向きを変えることです。
被写体の面とピント面がうまく重なれば、普通のレンズより少ない絞り込みで広い範囲をシャープにできます。しかし高さの異なる立体物すべてへ同時にピントを合わせられるとは限りません。
商品撮影でも、平らな時計の文字盤と、奥行きのあるカメラ本体では必要なF値が異なります。ティルトと絞りを組み合わせて最終的なピント範囲を決めることが重要です。
F値と被写界深度の関係は、F値とボケ・被写界深度の関係も参考になります。
逆ティルトでピントの合う範囲を意図的に狭くできる
ティルトは、手前から奥までピントを合わせるためだけの機能ではありません。
被写体の面とは逆方向へピント面を傾けることで、通常より狭い範囲だけへピントを集中させることもできます。
街並みを高い位置から撮影し、一部だけをシャープにして前後を大きくぼかすと、実際の街が模型のように見えるミニチュア風表現を作れます。
商品撮影でも、ロゴやボタンだけへ視線を集め、同じ距離にある他の部分を意図的にぼかすことができます。
通常の単焦点によるボケ表現との違いを確認する場合は、キヤノン単焦点レンズ完全ガイドも参考になります。
TS-E90mm F2.8のシフトとは何か
シフトはカメラを傾けずに構図を移動する機能
TS-E90mm F2.8ではレンズを最大±11mm平行移動できます。これがシフトです。
普通のレンズで画面の上側をもっと写したい場合、カメラそのものを上へ向けます。建物を撮影すると、カメラを上へ傾けたことで垂直線が収束し、建物が後ろへ倒れたように見えることがあります。
シフトでは、カメラを水平に保ったままレンズだけを上方向へ移動できます。撮像面の向きを変えずに構図だけを動かせるため、垂直線を保ちやすくなります。
90mmは建築全体を写す超広角ではありませんが、離れた位置から建物の一部分を切り取る場合や、商品撮影で構図を微調整する場合にシフトが役立ちます。
焦点距離ごとのTS-Eレンズの役割は、Canon TS-Eレンズ完全ガイドで比較できます。
商品撮影ではカメラ位置を変えずにフレーミングできる
商品撮影では、照明、レフ板、背景、三脚の位置を細かく決めたあと、構図だけを少し動かしたくなる場面があります。
普通のレンズならカメラや三脚を動かします。しかしカメラ位置を変えると、商品の反射、映り込み、光の当たり方まで変わる場合があります。
TS-E90mm F2.8なら、カメラ位置を固定したままシフトによって構図を上下左右へ微調整できます。
ガラス、金属、時計、カメラ、ボトルなど、反射しやすい商品では特に有効です。撮影者やカメラが映り込まない位置を決めたあと、その位置を崩さずに構図を調整できます。
商品撮影向けTS-Eとしては、TS-E50mm F2.8L マクロも参考になります。
シフトを使ったパノラマ撮影にも利用できる
シフト機能は複数枚をつないだパノラマ撮影にも利用できます。
カメラ本体を左右へ振る一般的なパノラマでは、カメラ位置が変わることで近距離の被写体に視差が生じる場合があります。
TS-E90mm F2.8を三脚へ固定し、シフト量だけを変えながら撮影すれば、カメラ本体の向きを大きく変えずに撮影範囲を広げられます。
90mmなので、広大な風景全体を写すというより、遠景や建築の一部分、商品を高解像で分割撮影する用途に向いています。
TS-Eのシフト機能については、ティルト・シフトレンズの使い方も参考になります。
TS-E90mm F2.8は商品撮影で強みが分かりやすい
斜めに置いた商品へピント面を合わせやすい
TS-E90mm F2.8が最も特徴を生かしやすい用途の一つが商品撮影です。
例えば腕時計を斜めに置いて撮影すると、文字盤の手前と奥でカメラまでの距離が変わります。普通の90mm F2.8では手前に合わせれば奥がぼけるため、F8やF11まで絞って被写界深度を広げることになります。
TS-E90mm F2.8なら、ティルトでピント面を文字盤へ近づけることで、必要以上に絞らずに文字盤全体をシャープにしやすくなります。
同じ考え方は、カメラ、レンズ、靴、バッグ、料理、模型などにも使えます。
近接撮影の基本については、マクロレンズの特徴と使い方も参考になります。
90mmなので商品へ近づきすぎずに撮影できる
商品撮影では、焦点距離が短すぎると被写体へ近づかなければならず、照明を遮ったりカメラ自身が商品へ映り込んだりすることがあります。
90mmならある程度距離を取って撮影できるため、商品とカメラの間に照明、レフ板、ディフューザーを配置しやすくなります。
広角のように被写体の手前部分が過度に大きく見えにくいため、商品を自然な形で見せやすいことも特徴です。
最大撮影倍率0.29倍なので、一般的な商品撮影なら十分大きく写せる場面があります。
さらに高倍率が必要なら、マクロレンズの最大撮影倍率も確認すると選びやすくなります。
料理撮影ではティルトが実用的に使える
斜め上から料理を撮るときに皿全体へピントを通しやすい
料理を斜め上から撮影すると、皿の手前と奥ではカメラまでの距離が変わります。
普通のレンズではF2.8で手前へピントを合わせると奥がぼけます。料理全体を見せたい場合はF8などへ絞る必要があります。
TS-E90mm F2.8なら、ティルトによってピント面をテーブル面へ近づけ、料理の手前から奥までシャープに見せやすくできます。
背景まで全部シャープにする必要はありません。料理の面へピントを通しながら、その後ろのテーブルや背景だけをぼかす撮影も可能です。
料理撮影で別のTS-Eを検討する場合は、TS-E50mm F2.8L マクロも参考になります。
0.29倍なら料理の細部も大きく切り取れる
TS-E90mm F2.8は最大撮影倍率0.29倍なので、料理全体だけでなく細部を大きく撮ることもできます。
ケーキの断面、焼き目、ソース、料理表面の質感、コーヒー豆などを大きく見せられます。
90mmなので背景を狭く整理しやすく、F2.8を使えば背景ボケも作れます。
逆ティルトを使えば、料理の一部分だけを鋭く見せ、周囲を急激にぼかす表現も可能です。
撮影倍率と近接撮影については、マクロレンズの撮影倍率ガイドも参考になります。
ポートレートでは普通の90mmとは違う表現ができる
ティルトを使わなければ90mm F2.8単焦点として使える
TS-E90mm F2.8は特殊レンズですが、ティルトとシフトを0位置へ戻せば、普通の90mm F2.8単焦点として撮影できます。
90mmは人物の顔や上半身を自然な距離から撮影しやすい中望遠です。F2.8を使えば背景をぼかして人物を浮かび上がらせることもできます。
AFは使えないため、人物撮影でもMFが前提です。動き回る人物より、ポーズを決めた撮影、スタジオ、作品撮りなどに向いています。
90mm前後の人物撮影については、Canonポートレートレンズガイドでも詳しく解説しています。
逆ティルトで人物の一部分だけへピントを集められる
ポートレートでティルトを使う場合、手前から奥までピントを合わせるだけが目的ではありません。
逆ティルトによってピント面を人物に対して斜めにすると、片目や顔の一部分だけをシャープにし、同じ距離にある部分でもぼかす特殊表現ができます。
普通の90mm F2.8では、同じ距離にある左右の目は基本的に同じピント面へ入ります。TS-Eではピント面そのものを傾けられるため、その関係を変えられます。
自然な人物写真を撮るだけなら必要のない機能ですが、作品性を重視するポートレートでは独自の表現になります。
通常の人物用レンズと比較する場合は、ポートレートレンズの焦点距離比較も参考になります。
風景撮影でもティルトを利用できる
手前から遠景まで続く面へピントを合わせる
風景では、カメラの近くにある花や岩から遠くの山まで、奥行きのある構図を撮ることがあります。
普通のレンズではF11やF16まで絞って被写界深度を深くします。しかし絞り込みすぎると、回折によって細部の解像感が低下する場合があります。
ティルトを利用して地面へ沿うようにピント面を傾ければ、必要以上に絞り込まず、手前から奥までピントを通しやすくなります。
90mmは広角風景向けではないため、山並み、遠くの木、建物、街並みの一部分などを中望遠で切り取る風景に向いています。
風景で使うTS-Eレンズについては、Canon TS-Eレンズ完全ガイドも参考になります。
中望遠の切り取りとティルトを組み合わせられる
90mmでは広角ほど広い範囲を写さず、遠くの景色を狭く整理できます。
山並み、木々、建物などを重ねた構図では、中望遠らしい密度の高い写真を作れます。
そこへティルトを加えることで、斜め方向へ続く被写体へピント面を合わせたり、逆にごく一部だけをシャープにしたりできます。
17mmや24mmのTS-Eが建築や広い風景で使いやすいのに対し、90mmは中望遠の切り取りとピント面操作を組み合わせることに特徴があります。
焦点距離ごとの役割は、TS-Eレンズの焦点距離比較で確認できます。
マニュアルフォーカス専用だから撮影方法も変わる
TS-E90mm F2.8はAFで撮るレンズではない
TS-E90mm F2.8はマニュアルフォーカス専用です。
シャッターボタン半押しでAFを合わせる使い方はできず、フォーカスリングを自分で回してピントを合わせます。
さらにティルトするとピント面そのものが変わるため、単純にフォーカスリングを回すだけではありません。ティルト量とフォーカス位置を交互に調整しながら追い込む操作になります。
最初から大きくティルトするより、まず0位置で通常のピントを合わせ、その後少しずつティルト量を変えて狙った範囲へピント面を近づける方が扱いやすくなります。
EF単焦点全体を比較する場合は、キヤノン単焦点レンズ完全ガイドも参考になります。
EOS Rシリーズでは拡大表示を使いやすい
TS-E90mm F2.8はEFマウントですが、マウントアダプターEF-EOS Rを使えばEOS Rシリーズでも利用できます。
ミラーレスではEVFや背面モニターを拡大できるため、一眼レフの光学ファインダーより細かなMF確認をしやすい場面があります。
商品撮影なら三脚へ固定し、拡大表示で商品の手前と奥を順番に確認しながら、ティルト量とフォーカスを調整できます。
通常のマウントアダプターには焦点距離を変える光学系がないため、フルサイズEOS Rで使えば90mm F2.8のままです。
EFレンズをEOS Rで使う方法については、EFレンズをEOS Rシリーズで使う方法も参考になります。
EOS RシリーズでTS-E90mm F2.8を使うメリット
露出とピントを画面で確認しながらアオリ操作できる
EOS Rシリーズでは、撮影前に露出やピントをEVFや背面モニターで確認できます。
ティルトやシフトを使ったときも、実際の撮影画像に近い状態を見ながら構図とピント面を追い込めます。
商品撮影や風景撮影では被写体が動かないため、AFがないことより、拡大しながら自分で細かく調整できることの方が重要になる場面があります。
古いTS-E90mm F2.8でも、EOS Rシリーズとの組み合わせによってMF操作を行いやすくできます。
EF・RFの互換性については、Canon RF・EF互換性ガイドも参考になります。
APS-CのEOS Rでは約144mm相当の画角になる
EOS R5やRPなどフルサイズEOS Rでは、TS-E90mm F2.8を90mmの画角で使えます。
EOS R7やR10などAPS-Cセンサーのカメラでは、35mm判換算で約144mm相当の画角になります。
その場合、商品や人物をさらに狭く切り取る中望遠として使うことになります。画角が狭くなるため、室内では撮影距離が必要です。
レンズ自体の焦点距離が144mmへ変わるわけではなく、APS-Cセンサーが中央部分だけを使用することで画角が狭くなります。
マウントやセンサーサイズを含めたキヤノン機材全体は、キヤノン大全から確認できます。
後継TS-E90mm F2.8L マクロとの違い
後継は最大撮影倍率0.5倍まで向上している
TS-E90mm F2.8の後継にあたるのが、TS-E90mm F2.8L マクロです。
旧TS-E90mm F2.8の最大撮影倍率は0.29倍ですが、後継は0.5倍まで拡大されています。
商品、料理、アクセサリー、花などをさらに大きく写したい場合は後継の方が有利です。
旧型でも0.29倍あれば一般的な商品撮影には使いやすいですが、より小さな被写体を画面いっぱいに写したい場合は0.5倍の差が大きくなります。
撮影倍率の違いについては、マクロレンズの最大撮影倍率も参考になります。
後継はティルト・シフト量も拡大されている
旧TS-E90mm F2.8のティルト量は±8°、シフト量は±11mmです。
後継TS-E90mm F2.8L マクロでは、ティルト±10°、シフト±12mmへ拡大されています。
後継ではアオリ操作の自由度も高まり、より細かな商品撮影や作品撮りに対応しやすくなっています。
一方、旧型でもティルトとシフトの基本的な撮影は可能です。必要な撮影倍率とアオリ量によって選び分けることになります。
他のTS-Eレンズも含めた比較は、Canon TS-Eレンズ完全ガイドが参考になります。
旧型は約565gで後継より軽い
旧TS-E90mm F2.8の質量は約565gです。
後継は光学系やアオリ機構、0.5倍マクロ対応などが強化されたぶん、大型・重量級になっています。
スタジオで三脚を使うだけなら重量差は大きな問題になりにくい一方、屋外へ持ち出して風景やポートレートに使う場合は、旧型の軽さが使いやすさにつながります。
0.29倍の撮影倍率で足り、ティルト±8°、シフト±11mmで目的を満たせるなら、旧型のサイズと重量には現在でも意味があります。
キヤノンのEF単焦点を幅広く比較する場合は、キヤノン単焦点レンズ完全ガイドも参考になります。
TS-E90mm F2.8を中古で選ぶポイント
ティルトとシフト機構を最優先で確認する
中古のTS-E90mm F2.8では、一般的なレンズ以上に機械部分の確認が重要です。
ティルトを両方向へ動かし、途中で不自然な引っ掛かりがないか確認します。シフトも両方向へ動かし、ノブやロック機構が正常に働くかを確認します。
アオリ機構に大きなガタがある個体では、微調整が難しくなる可能性があります。
0位置へ戻したときにレンズがきちんと固定されるかも重要です。
TS-Eレンズの構造を理解する場合は、Canon TS-Eレンズ完全ガイドも参考になります。
フォーカスリングと絞りの動作を確認する
TS-E90mm F2.8はMF専用なので、フォーカスリングの状態は非常に重要です。
最短撮影距離から無限遠まで回し、異常に重い場所、引っ掛かり、ガタがないか確認します。
実際のカメラへ装着し、近距離と遠距離の両方でピントを合わせると状態を判断しやすくなります。
絞りもF2.8だけでなくF5.6、F8、F16などへ変更し、正常に制御できるか確認したいところです。
中古EFレンズ全体を比較する場合は、キヤノン大全も参考になります。
カビ・クモリ・傷など光学状態を見る
発売から長い時間が経過しているため、中古では保管状態による個体差があります。
前玉と後玉の傷だけでなく、内部のカビ、白いクモリ、コーティングの劣化などを確認します。
商品撮影では細かな質感やコントラストを重視するため、光学系の状態が悪い個体は避けたいところです。
小さなチリだけで判断するより、撮影へ影響しやすい大きなカビやクモリを優先して確認します。
キヤノンの旧EFレンズを探す場合は、キヤノン大全から関連記事を確認できます。
TS-E90mm F2.8が向いている人
商品・料理・静物を時間をかけて撮る人に向く
TS-E90mm F2.8が特に向いているのは、商品、料理、アクセサリー、工芸品など、動かない被写体をじっくり撮影する人です。
三脚へ固定し、拡大表示を使いながらティルト量とフォーカスを調整する撮影では、このレンズの機能を生かせます。
被写体の面へピントを合わせたり、カメラ位置を変えずにシフトで構図を動かしたりできるため、普通の90mm単焦点とは異なる撮影ができます。
AF速度や連写性能を求めるレンズではなく、一枚の写真を細かく組み立てるためのレンズです。
商品撮影向けの別のTS-Eとしては、TS-E50mm F2.8L マクロも参考になります。
特殊なポートレート表現を狙う人にも使える
人物撮影で90mm F2.8の自然な中望遠描写を使いながら、必要なときだけティルトでピント面を変えたい場合にもTS-E90mm F2.8を使えます。
普通の85mmや100mmではF値によって被写界深度を調整しますが、TS-EではF値に加えてピント面そのものを傾けられます。
そのため人物の一部分だけを鋭く見せたり、通常とは違う方向へボケを作ったりできます。
MF専用なので、動きの速い人物より、作品撮りやスタジオ撮影など時間をかけてピントを追い込める状況に向いています。
一般的な人物用レンズと比較する場合は、Canonポートレートレンズガイドも参考になります。
初めてティルト・シフトを試す中古レンズとしても候補になる
後継TS-E90mm F2.8L マクロは、0.5倍マクロや拡大されたティルト・シフト量など大幅に進化しています。
しかし旧TS-E90mm F2.8でも、商品撮影でピント面を傾ける、シフトで構図を調整する、逆ティルトで特殊なボケを作るといった基本的なアオリ撮影を体験できます。
中古では機構と光学状態の確認が必要ですが、90mmという焦点距離が用途に合えば、TS-Eの仕組みを試す一本として役割があります。
90mm以外の焦点距離も含めて選ぶ場合は、Canon TS-Eレンズ完全ガイドで比較できます。
まとめ|TS-E90mm F2.8はピント面そのものを操作できる中望遠レンズ
TS-E90mm F2.8は、90mm F2.8の中望遠単焦点に、ティルト±8°、シフト±11mmのアオリ機構を組み合わせたEFレンズです。
レンズ構成は5群6枚、最短撮影距離0.5m、最大撮影倍率0.29倍、フィルター径58mm、質量約565gです。
ティルトではピント面の向きを変えられます。斜めに置いた商品や料理の面へピント面を近づけ、普通のレンズより少ない絞り込みで手前から奥までシャープに見せやすくできます。
逆ティルトを使えば、反対にピントの合う範囲を意図的に狭くし、商品や人物の一部分だけへ視線を集めたり、ミニチュア風の表現を作ったりできます。
シフトではカメラの向きを変えずに構図を上下左右へ動かせます。建築物の垂直線を維持する用途だけでなく、商品撮影でカメラ位置を固定したまま構図を調整する用途にも利用できます。
90mmという焦点距離は商品、料理、花、人物などに使いやすく、0.29倍まで寄れるため近接撮影にも対応します。
後継TS-E90mm F2.8L マクロは、0.5倍の撮影倍率や大きなティルト・シフト量を持っています。一方、旧型は約565gと比較的軽く、基本的なティルト・シフト撮影を行うには現在でも特徴のはっきりしたレンズです。
AFは搭載していないため、撮影はマニュアルフォーカスが基本です。EOS RシリーズではマウントアダプターEF-EOS Rを介して使用でき、拡大表示を使いながら細かなMF調整を行えます。
TS-E90mm F2.8は、シャッターを押すだけで特徴的な写真になるレンズではありません。ティルト角度、シフト量、フォーカス位置、F値を自分で調整し、写真を組み立てるためのレンズです。
TS-Eレンズ全体の比較はCanon TS-Eレンズ完全ガイド、キヤノンのカメラ・EF・RFレンズ全体はキヤノン大全から確認できます。



