裏面照射型センサーとは?表面照射型・積層型との違いと画質への影響を解説
裏面照射型センサーは、デジタルカメラの高感度画質を支える重要な技術です。従来の表面照射型センサーとは光を受ける構造が異なり、限られた光を効率よく取り込めるように設計されています。夜景や星空、室内撮影など、光量が不足しやすい場面で注目される技術ですが、裏面照射型というだけで写真が必ず明るくなり、ノイズが減るわけではありません。
また、裏面照射型センサーと積層型センサーは混同されやすいものの、両者は異なる技術です。裏面照射型は主に受光効率を高める構造であり、積層型は信号処理回路などを重ねることで高速化を実現しやすくする構造です。高速連写や電子シャッターの性能まで含めて考える場合、この違いを理解する必要があります。
この記事では、裏面照射型CMOSセンサーの仕組み、表面照射型との違い、高感度画質やダイナミックレンジへの影響、積層型との関係、実際の撮影で得られるメリットまで詳しく解説します。さらに、裏面照射型センサーを搭載したカメラを選ぶ際に、何を比較すればよいのかも整理します。
裏面照射型センサーとは?基本構造と表面照射型との違い
デジタルカメラのイメージセンサーは、レンズを通過した光を電気信号へ変換する装置です。一般的なCMOSセンサーでは、無数の画素に設けられたフォトダイオードが光を受け、その情報を読み出して画像を生成します。裏面照射型センサーは、この光がフォトダイオードへ届く経路を改善したものです。
表面照射型センサーは配線が光の通り道にある
従来の表面照射型CMOSセンサーでは、光が入射する側に配線層や回路構造が存在します。フォトダイオードは光を電気信号へ変える重要な部分ですが、入射光のすべてが効率よく受光部へ届くわけではありません。配線やトランジスタの配置によって、光が通過できる領域が制約されるためです。
こうした問題は、画素が小さくなるほど大きくなります。例えば、同じサイズのセンサーに多くの画素を配置すると、1画素あたりの面積は小さくなります。その限られた面積の中で配線や回路を配置しながら、十分な光を受ける必要があります。
表面照射型でも、マイクロレンズによって光を受光部へ集める工夫や、配線構造を改善する技術が使われています。そのため、表面照射型が必ず低画質というわけではありません。実際、表面照射型のセンサーを搭載したデジタル一眼レフやミラーレスカメラでも、高い解像性能と良好な高感度画質を実現した製品は数多く存在します。
重要なのは、受光効率を改善する余地がセンサー構造に残されていたという点です。裏面照射型は、その課題をより根本的に解決するために開発されました。
センサーの構造以外にも写真の画質を左右する要素があります。詳しくは写真の画質と表現を決める要素でも解説しています。
裏面照射型センサーは受光部に光が届きやすい
裏面照射型CMOSセンサーは、一般にBSI(Backside Illuminated)と呼ばれる構造です。シリコン基板の光を受ける側を従来とは反対にし、配線層の影響を受けにくい位置から光を取り込む仕組みになっています。
表面照射型では受光部へ向かう途中に配線構造が存在しますが、裏面照射型では光が受光部へ届く経路を確保しやすくなります。その結果、同じ画素面積でも光を効率よく利用できる可能性が高まります。
光を受ける効率を示す指標の一つが量子効率です。これは、入射した光子のうち、どれだけの割合が信号として利用されるかを示します。量子効率が高ければ、同じ光量でも多くの電子を発生させることができ、信号の確保に有利になります。
裏面照射型では配線の影響を抑えるだけでなく、斜めから入射する光への対応という点でも利点があります。レンズからセンサーへ入る光は、画面中央と周辺で角度が異なります。特に広角レンズでは周辺部の入射角が大きくなる場合があり、センサー側の受光構造が画質に影響することがあります。
裏面照射型の構造は、こうした斜め方向からの光を取り込みやすくする設計にも適しています。もっとも、周辺減光や周辺画質はレンズの光学設計、マイクロレンズの配置、センサー前面の構造などにも左右されるため、裏面照射型だけで決まるものではありません。
高画素センサーと画質の関係については、超高画素カメラの特徴と画質も参考になります。
裏面照射型が普及した背景と技術的な課題
裏面照射型CMOSセンサーは、スマホやコンパクトカメラのような小型センサーで特に大きな意味を持つ技術として発展しました。小型センサーでは画素面積が限られるため、受光効率の改善が高感度画質に結びつきやすいためです。
ソニーは2008年に、従来の表面照射型と比較して感度を高めた裏面照射型CMOSセンサーの開発を発表し、翌年には製品化しました。初期の開発では、同社が比較対象とした従来構造に対して約2倍の感度を実現したと説明されています。
これは特定のセンサー設計同士を比較した結果であり、すべての裏面照射型センサーが表面照射型より必ず2倍高感度になるという意味ではありません。実際の改善幅は、画素サイズや製造技術、回路構成によって変化します。
裏面照射型には製造上の難しさもあります。シリコン基板を薄く加工し、裏側から光を入れるため、暗電流、欠陥画素、画素間の混色、ノイズなどを抑える技術が必要になります。単に配線を移動するだけでは、良好な画質を実現できません。
そのため、フォトダイオードの形状、画素間の分離技術、マイクロレンズ、信号読み出し回路などが一体となって改良されてきました。裏面照射型の進化は、受光面の配置を変更する技術と、画素全体の完成度を高める技術の組み合わせによって実現しています。
CMOSセンサーの進化を理解するうえでは、積層技術と画質向上の関係も重要です。
裏面照射型センサーで高感度画質はどれだけ変わるのか
裏面照射型センサーの利点として最も注目されるのが、高感度画質とノイズ性能です。光を効率よく取り込めれば、暗い環境でも画像信号を確保しやすくなります。しかし、写真のノイズには複数の原因があり、画質の改善をセンサー構造だけで判断することはできません。
高ISO感度でノイズが目立つ理由
暗い場所で撮影するとき、シャッタースピードを速く保とうとすればISO感度を上げる必要があります。例えば、室内で動く人物を撮影する場合、手振れだけでなく被写体ブレも防ぐ必要があるため、シャッタースピードを極端に遅くすることはできません。
このような場面では、ISO3200、ISO6400、場合によってはISO12800以上を使用することになります。ISO感度を上げると、センサーから得られた信号が増幅されますが、同時にノイズ成分も目立ちやすくなります。
ここで重要なのは、ISO感度を上げてもセンサーに入射する光の量そのものは増えないことです。実際に受け取った光の量は、被写体の明るさ、レンズのF値、シャッタースピードなどによって決まります。
写真のノイズには、光子の到来数のばらつきによるショットノイズ、電子回路による読み出しノイズ、暗電流など、さまざまな要素があります。光量が少ない場面では、信号とノイズの比率が悪くなり、暗部のざらつきや色ノイズが目立つ原因になります。
裏面照射型センサーは、入射した光を効率よく信号へ変換することによって、一定の条件下で信号対雑音比を改善する可能性があります。ただし、光子そのものの統計的なばらつきをなくすことはできません。受光効率の改善と画像処理によるノイズ低減は、区別して考える必要があります。
ノイズの原因と対策については、写真のノイズリダクションと画質への影響で詳しく解説しています。
裏面照射型ならISO感度を上げても画質が落ちないのか
裏面照射型センサーを搭載していても、ISO感度を高く設定すれば画質低下が生じることがあります。裏面照射型は光の取り込み効率を改善する技術であり、無制限に高ISO感度を使える仕組みではありません。
例えば、同じフルサイズセンサーでも、約2400万画素と約6000万画素では1画素あたりの面積が異なります。一般に同じ世代の技術で比較すると、画素面積が大きい方が1画素あたりに多くの光を集めやすくなります。しかし、最終的な写真を同じ表示サイズに縮小して比較すると、高画素機でも良好なノイズ性能を示すことがあります。
そのため、100%表示で見たノイズ量と、同じ大きさに仕上げた写真のノイズ量は分けて考える必要があります。高画素機は等倍表示でノイズが目立っても、縮小した画像では細部の情報を利用しながらノイズを平均化できるためです。
さらに、画像処理エンジンの世代やRAW現像時の処理方法によっても、ノイズの見え方は大きく変化します。JPEG画像では、強いノイズリダクションによってざらつきが減る一方、髪の毛や鳥の羽毛などの細部が失われることもあります。
高感度性能を比較する場合は、単にノイズが少ないかを見るだけでなく、細部の解像感、色の再現性、暗部の階調がどれだけ維持されているかを確認することが重要です。
高感度性能の比較については、キヤノンの高感度性能比較も参考になります。
高感度性能とダイナミックレンジは同じではない
裏面照射型センサーを調べていると、ダイナミックレンジという言葉も頻繁に登場します。ダイナミックレンジとは、明るい部分の白飛びを抑えながら、暗い部分の情報をどこまで記録できるかを示す性能です。
例えば、晴天の風景で明るい空と日陰の建物を同時に撮影する場合、空の階調を残そうとすると建物が暗くなりやすくなります。反対に建物を明るくすると、空の一部が白飛びすることがあります。
ダイナミックレンジが広いセンサーは、こうした明暗差の大きな場面で情報を残しやすくなります。ただし、受光効率が高いこととダイナミックレンジが広いことは、完全に同じ意味ではありません。
ダイナミックレンジには、画素が蓄えられる最大電荷量、読み出しノイズ、アナログ・デジタル変換回路などが関係します。光を効率よく取り込めても、読み出し回路のノイズが大きければ暗部の階調を十分に残せない場合があります。
逆に、表面照射型でも読み出しノイズが低く、優れたダイナミックレンジを実現したセンサーは存在します。裏面照射型かどうかを確認するだけで、RAW画像をどれだけ持ち上げられるかまで判断することはできません。
実際の撮影では、露出を適切に設定してハイライトを守ることが重要です。詳しくは白飛びを防ぐカメラ設定で解説しています。
裏面照射型と積層型センサーの違い
裏面照射型センサーと積層型センサーは、どちらも高性能なCMOSセンサーに使われる技術ですが、改善する対象が異なります。裏面照射型は主に受光構造を工夫したもので、積層型は画素部分と処理回路などを上下に配置する技術です。この2つは組み合わせることもできます。
積層型センサーは読み出し速度を高めやすい
積層型CMOSセンサーでは、光を受ける画素部分と信号処理回路などを別々の層に形成し、それらを重ねる構造が使われます。この構造によって、画素と回路の配置をそれぞれの目的に合わせて設計しやすくなります。
高速な読み出し回路やメモリーを組み合わせる設計では、大量の画像情報を短時間で処理することが可能になります。特に、高画素のセンサーから毎秒何十回も画像を読み出すような場合、回路構造の効率が重要になります。
裏面照射型と積層型を比較するときに注意したいのは、積層型が裏面照射型の上位互換という単純な関係ではないことです。裏面照射型の受光構造を使いながら、処理回路を積層したセンサーも存在します。
したがって、裏面照射型と積層型のどちらを選ぶかという比較は、厳密には適切ではありません。受光効率を重視した技術と、高速な処理を実現しやすくする技術という、それぞれ異なる役割を理解する必要があります。
両者の特徴は裏面照射型と積層型センサーの違いで詳しく比較しています。
ローリングシャッター歪みを減らすには高速読み出しが重要
電子シャッターで高速移動する被写体を撮影すると、被写体の形が斜めになったり、曲がって記録されたりする場合があります。これはローリングシャッター歪みと呼ばれる現象です。
一般的なローリングシャッター方式では、画面全体を完全に同じ瞬間に読み出すわけではありません。センサーの上部と下部で読み出し時刻に差があるため、その間に被写体が移動すると形状が歪んで記録されます。
例えば、横方向に高速移動する列車や自動車を撮影すると、本来は垂直である柱が斜めに見えることがあります。また、鳥が羽ばたく瞬間では、羽の形が不自然に変形する場合もあります。
こうした現象を軽減するには、センサー全体の読み出し時間を短縮することが重要です。高速読み出しに対応した積層型センサーは、この点で有利な構造を実現しやすくなっています。
一方、裏面照射型というだけでは読み出し速度が速いとは限りません。裏面照射型でも読み出しに時間がかかるセンサーは存在します。電子シャッター性能を重視する場合は、裏面照射型という表記より、実際の読み出し速度や歪みの程度を確認する方が適切です。
この現象についてはローリングシャッター歪みの仕組みと対策で詳しく紹介しています。
裏面照射型でも高速連写性能が高いとは限らない
デジタルカメラの連写性能は、センサーの読み出し速度だけで決まるものではありません。画像処理エンジン、メモリー、記録メディア、AF演算能力、シャッター機構なども関係します。
例えば、最高連写速度が毎秒30コマと表示されていても、その性能をどのような条件で実現しているかは機種によって異なります。電子シャッター時のみ高速連写が可能な製品もあれば、RAW撮影時に連続撮影可能な枚数が制限される製品もあります。
また、AF追従やAE追従が利用できるか、連写中のファインダー表示がどのようになるかも重要です。野鳥やスポーツの撮影では、単純な連写速度だけでなく、被写体を追い続けられることが撮影結果に大きく影響します。
積層型センサーは高速読み出しに有利ですが、積層型であれば必ず最高の連写性能になるわけでもありません。製品ごとの設計や処理性能を比較する必要があります。
カメラの連写性能については連写を使った撮影の特徴と活用方法で解説しています。
裏面照射型センサーが実際の写真撮影にもたらす効果
裏面照射型センサーの特徴を理解するには、技術的な説明だけでなく、撮影条件ごとに考えることが重要です。暗所撮影、高画素撮影、日中の風景撮影では、受光効率の改善が画質に与える影響が異なります。
夜景や星空撮影では暗部のノイズ性能が重要
夜景や星空は、裏面照射型センサーの利点が注目される撮影ジャンルです。被写体から届く光が少ないため、センサーが光をどれだけ効率よく信号へ変換できるかが重要になります。
例えば、星空撮影ではレンズのF値を小さくし、シャッタースピードを一定時間まで延ばしても、ISO感度を高くする必要があります。星は地球の自転によって移動して見えるため、星を点として写したい場合には露光時間にも制約があります。
このような条件では、光を取り込む効率が高いセンサーが有利になることがあります。しかし、センサー構造だけで星空の画質が決まるわけではありません。レンズの明るさ、周辺部の収差、暗電流、読み出しノイズ、気温、露光時間なども関係します。
特に星空撮影では、点光源の形を保つレンズ性能が重要です。画面中央では星が点に写っていても、周辺部ではコマ収差などによって星が伸びる場合があります。このような収差は裏面照射型センサーでは解消できません。
さらに、暗い空を撮影するときは光害の影響も大きくなります。都市部では空自体が明るくなっているため、高性能なセンサーを使用しても背景の明るさが星の写りを制約します。
星空撮影に必要な露出設定やレンズ選びについては、キヤノンで星空を撮影するための設定で詳しく解説しています。
野鳥やスポーツ撮影では高ISO性能と読み出し速度を分けて考える
野鳥やスポーツを撮影する場合、裏面照射型センサーの高感度性能は役立ちます。特に森の中の野鳥や夕方の競技では、シャッタースピードを速く保ちながら撮影するため、ISO感度を上げることが多くなります。
例えば、飛んでいる小鳥を撮影するときは、被写体の動きを止めるために1/2000秒程度、あるいはそれ以上のシャッタースピードを使用する場合があります。超望遠レンズでは開放F値が比較的大きい製品もあるため、光量不足になりやすくなります。
裏面照射型センサーの受光効率が高ければ、このような条件で画質面の利点を得られる可能性があります。しかし、実際にはフルサイズとAPS-Cのセンサーサイズの違い、画素数、レンズの明るさなども考慮する必要があります。
また、野鳥撮影では高速連写や電子シャッター性能も重要です。これらには積層型センサーや高速読み出し回路が関係します。高感度画質に優れていても、読み出し速度が遅ければ、電子シャッターで飛翔中の鳥を撮影したときに歪みが目立つ場合があります。
野鳥撮影用のカメラを比較する際は、裏面照射型かどうかに加えて、画素密度、AF追従性能、高感度RAW画質、電子シャッター性能を総合的に見る必要があります。
高画素機を野鳥撮影に使用する利点については、野鳥撮影に適した高画素カメラの比較で紹介しています。
日中の風景撮影では裏面照射型の差が見えにくい場合もある
十分な光量がある日中の風景撮影では、裏面照射型センサーの利点が必ずしも大きな画質差として現れるとは限りません。低ISO感度を使用できるため、暗所撮影ほど受光効率の差が問題にならない場合があるためです。
例えば、晴天の屋外でISO100、F8、1/250秒といった条件で撮影する場合、センサーには比較的多くの光が届きます。このような状況では、裏面照射型の受光効率よりも、レンズの解像性能、ダイナミックレンジ、画素数、ピント精度などが画質を左右することがあります。
高画素センサーで風景を撮影する場合は、細かな葉や建物の質感、遠景のディテールをどれだけ記録できるかが重要です。裏面照射型は高画素化と受光効率を両立するうえで有利な技術ですが、画素数が同じであれば必ず解像性能が高くなるというわけではありません。
さらに、絞りを極端に小さくすると回折によって解像感が低下する場合があります。センサーが高性能でも、撮影設定によって本来の解像力を十分に引き出せないことがあります。
風景撮影ではセンサー方式の違いだけを追うより、使用するレンズの画質、適切な絞り、三脚の使用、ピント合わせなどを重視することが、結果として高画質につながります。
高画素機とレンズ性能の関係については、レンズの解像性能を比較する方法も参考になります。
裏面照射型センサーと画素数・センサーサイズの関係
裏面照射型センサーを搭載するカメラを比較するときは、画素数とセンサーサイズを合わせて考える必要があります。同じ技術を使用していても、フルサイズ、APS-C、小型センサーでは受光条件が異なり、撮影結果にも違いが生まれます。
フルサイズとAPS-Cでは受光面積が異なる
フルサイズセンサーは一般に約36×24mm、キヤノンのAPS-Cセンサーは約22.3×14.9mmの撮像面を持ちます。フルサイズはAPS-Cより面積が大きいため、同じF値、シャッタースピード、被写体の明るさで撮影した場合、撮像面全体で受ける光の総量を多く確保できます。
この違いは、高感度画質やボケの表現を考える際に重要です。例えば、同程度の画素数であれば、一般にフルサイズの方が1画素あたりの面積を大きく確保しやすくなります。
ただし、センサーサイズだけで実際の画質が決まるわけではありません。画素数やセンサー技術の世代、読み出し回路、画像処理性能によっても結果が変わります。
また、野鳥撮影ではAPS-Cの画角上の利点が重視されます。同じ焦点距離のレンズを使ったとき、APS-Cはフルサイズより狭い範囲を記録するため、遠くの被写体を画面いっぱいに写しやすくなります。
高感度性能を重視するならフルサイズが有利な条件は多いものの、望遠撮影では画素密度やトリミング耐性との比較も必要です。裏面照射型の採用だけで、どちらのセンサーサイズが有利かを決めることはできません。
センサーサイズとレンズの関係については、APS-Cレンズとフルサイズカメラの関係で解説しています。
高画素化すると裏面照射型の利点は大きくなるのか
センサーサイズを変えずに画素数を増やすと、一般に1画素あたりの面積は小さくなります。画素面積が小さくなると、限られた光を効率よく取り込む技術の重要性が高まります。
裏面照射型センサーは配線層の配置による受光上の制約を軽減できるため、高画素化に適した技術の一つです。特に画素サイズが小さいセンサーでは、受光面積を有効に利用できることが性能向上に結びつきます。
もっとも、高画素化すれば必ず高感度画質が悪くなるという単純な関係でもありません。画素数が多い場合、同じ画像サイズへ縮小することでノイズが平均化され、細部の情報も維持しやすくなります。
例えば、高画素機のRAW画像を同じ大きさに縮小して比較すると、等倍表示でのノイズの印象とは異なる結果になることがあります。高画素機を評価するときは、100%表示だけでなく、最終的な写真の使用サイズを揃えて比較することが重要です。
一方、同じ出力サイズで比較しても、画素数の違いによるすべての画質差が消えるわけではありません。レンズの解像性能、回折、読み出しノイズ、画像処理などが最終画質に影響します。
高画素カメラの利点と注意点は、キヤノンの高画素カメラ比較でも紹介しています。
裏面照射型の高画素機はトリミングにも有利なのか
野鳥や野生動物、遠くの乗り物などを撮影する場合、撮影後に画像をトリミングすることがあります。高画素センサーで撮影していれば、画像の一部を切り取っても比較的多くの画素を残せます。
例えば、約6000万画素のフルサイズ画像から中央のAPS-C相当の範囲を切り取ると、約2600万画素前後を残すことができます。これはフルサイズからキヤノンAPS-C相当の画角へ切り取った場合の概算です。
高画素機では、こうしたトリミングによって遠くの被写体を大きく表示できる利点があります。ただし、トリミングそのものがレンズの解像力を高めるわけではありません。元画像に十分なディテールが記録されていなければ、切り取って拡大しても鮮明にはなりません。
裏面照射型センサーは高画素化と受光効率を両立しやすい技術ですが、トリミング耐性には画素数、レンズの解像性能、撮影時のブレ、ピント精度、ノイズなどが関係します。
また、トリミング後の画質では被写体が元画像の中でどれだけの画素を占めていたかが重要です。フルサイズの高画素機とAPS-C機を比較するときも、単純な総画素数だけではなく、同じ被写体をどれだけ細かく記録できるかを見る必要があります。
トリミングと望遠撮影の関係については、400mmと600mmの望遠撮影比較も参考になります。
裏面照射型センサーは動画撮影でも有利なのか
裏面照射型センサーは写真だけでなく動画撮影にも利用されています。動画では一定のフレームレートで連続的に画像を記録するため、高感度性能に加えてセンサーの読み出し速度、発熱、画像処理性能などが重要になります。
暗い室内での動画撮影と高感度性能
動画撮影では、一般にシャッタースピードをフレームレートに応じて設定します。例えば30pで撮影する場合、自然な動きの表現を目的として1/60秒前後を使用することがあります。
室内や夕方など光量が不足する環境では、レンズのF値を小さくしてもISO感度を上げなければならない場合があります。動画は連続する画像によって構成されるため、ノイズが多いと画面全体にざらつきが現れ、細部の質感が損なわれます。
裏面照射型センサーは、受光効率の改善によってこうした条件での画質向上に役立つ可能性があります。しかし、動画のノイズ性能はセンサーだけでなく、画像処理やノイズリダクションにも左右されます。
特に暗所動画では、強いノイズリダクションによって動く被写体の細部が不自然に処理される場合があります。人物の髪の毛や動物の毛並み、木の葉などの質感が失われることもあるため、単純にノイズが少ない映像を高画質と判断することはできません。
動画の画質にはビットレートや記録方式も関係します。詳しくは動画の記録形式とビットレートの選び方で解説しています。
4K動画や高フレームレート撮影との関係
4K動画ではフルHDより多くの画素情報を扱うため、センサーから大量のデータを連続的に読み出す必要があります。さらに60pや120pのような高フレームレートでは、1秒間に読み出す回数も増加します。
裏面照射型センサーは受光効率を高める構造ですが、それだけで4K120pなどの高速記録が実現するわけではありません。センサーの読み出し回路、画像処理エンジン、メモリー帯域、放熱設計などが必要になります。
例えば、同じ4K動画でも、センサー全体を読み出してから縮小するオーバーサンプリング方式と、画素の一部を間引いて読み出す方式では、細部の解像感や偽色の発生しやすさが異なります。
また、高速な読み出しに対応していても、カメラ内部の温度上昇によって連続記録時間が制限される場合があります。長時間の動画撮影では、センサー方式だけでなくカメラ全体の設計が重要です。
高感度性能に優れた裏面照射型であっても、読み出し速度が遅ければ動画のローリングシャッター歪みが目立つことがあります。動画性能を比較する際には、高感度と高速読み出しを別々に評価する必要があります。
動画撮影向けカメラの特徴については、フルサイズ動画カメラの特徴と撮影性能も参考になります。
動画向けカメラでは積層型との組み合わせも重要
動画性能を重視するカメラでは、裏面照射型の受光効率と積層型の高速読み出しを組み合わせた構造が利用されることがあります。この組み合わせによって、暗い環境での画質と高速な映像処理を両立しやすくなります。
特に電子シャッターによる撮影や高フレームレート動画では、画面全体を短時間で読み出せることが重要です。読み出し時間を短くできれば、動きの速い被写体やカメラを左右に振るパン撮影で発生する歪みを軽減できます。
ただし、積層型でも読み出し速度は製品によって異なります。積層型という名称だけでローリングシャッター歪みが発生しないと考えることはできません。
また、動画撮影では被写体認識AF、手振れ補正、レンズの駆動音、記録方式なども使い勝手に影響します。センサーの性能が優れていても、レンズのフォーカス駆動が遅ければ動体へのピント追従が制約されることがあります。
動画向けカメラを選ぶ際は、センサー構造を出発点として考えつつ、実際の撮影条件で求められる機能まで含めて比較することが重要です。
動画と静止画を兼用するカメラの特徴については、EOS R50 Vの静止画撮影性能でも取り上げています。
裏面照射型センサーを搭載したカメラの選び方
裏面照射型センサーを搭載していることは、カメラ選びで確認したい仕様の一つです。しかし、同じ裏面照射型でも製品によって得意な撮影分野が異なります。高感度画質、画素数、ダイナミックレンジ、読み出し速度などを撮影目的に合わせて比較することが重要です。
高感度画質を重視するならRAW画像を比較する
夜景、室内、星空、野鳥など、ISO感度を高く設定する機会が多い場合は、実際のRAW画像を比較することが重要です。メーカーの最高ISO感度だけでは、実用的な画質を判断できません。
例えば、ISO25600まで常用感度として設定できるカメラでも、撮影者が許容できるノイズ量や細部の解像感は用途によって異なります。小さな画像として表示する場合と、大きく印刷する場合では求められる画質も変わります。
比較するときは、同じISO感度だけでなく、できる限り同じ露出条件で撮影されたRAW画像を確認することが重要です。シャッタースピードやF値が異なれば、センサーに届く光量も異なるため、ノイズの比較結果が変わってしまいます。
また、ノイズリダクションを強く適用したJPEG画像では、センサー本来の特性を判断しにくくなります。RAW画像で暗部の階調や色ノイズ、細部の残り方を比較すれば、実際の高感度性能を把握しやすくなります。
使用するRAW現像ソフトによってもノイズ処理の結果が変化するため、最終的に使用する現像環境で比較することにも意味があります。
RAW画像の細部とノイズの関係については、写真の解像度と画質の関係も参考になります。
動体撮影では電子シャッターの読み出し速度を確認する
野鳥、スポーツ、鉄道、自動車など動きの速い被写体を撮影する場合は、高感度性能だけでなく電子シャッターの読み出し速度も重要です。
高速連写に対応したカメラでも、ローリングシャッター歪みが大きければ、動体撮影で使いにくい場合があります。特に横方向へ高速移動する被写体では、歪みが写真の形状に影響することがあります。
また、電子シャッターでは人工照明の条件によって縞模様や明るさの変化が発生する場合があります。こうした現象はフリッカーと呼ばれ、センサーの読み出し速度や照明の点滅周期などが関係します。
高速読み出しに対応した積層型センサーは、ローリングシャッター歪みやフリッカーの影響を軽減するうえで有利な場合があります。しかし、すべての状況で問題が解消されるわけではありません。
動体撮影を目的にカメラを選ぶ場合は、最高連写速度だけでなく、AF追従、連続撮影可能枚数、電子シャッターの歪み、ファインダー表示などを総合的に比較する必要があります。
高速連写を活用する具体的な設定については、EOS R6 Mark IIの連写設定も参考になります。
裏面照射型という名称だけでカメラの性能を判断しない
カメラの製品仕様に裏面照射型CMOSセンサーと記載されていると、高感度画質に優れた製品という印象を受けるかもしれません。しかし、その表記だけで実際の画質や撮影性能を判断することはできません。
裏面照射型センサーの性能には、画素数、画素構造、読み出し回路、画像処理などが関係します。また、撮影結果には使用するレンズや露出設定も大きな影響を与えます。
例えば、暗い室内で撮影する場合、センサーの受光効率だけでなく、レンズの開放F値も重要です。F4のレンズからF2.8のレンズへ変更すると、同じシャッタースピードで約2倍の光を取り込めるため、同じ明るさに仕上げるならISO感度を1段下げられます。
また、手持ちで静止した被写体を撮影する場合は、手振れ補正によってシャッタースピードを遅くできることがあります。これはセンサーの受光効率とは別の方法で光量を確保する手段です。ただし、被写体自体が動く場合は手振れ補正だけでは被写体ブレを防げません。
つまり、裏面照射型センサーの採用はカメラの性能を判断する一つの材料であり、撮影目的に必要な性能をすべて保証するものではありません。実際に撮影した画像の比較、レンズとの組み合わせ、撮影時の使い勝手まで確認することが重要です。
カメラの撮影性能を左右する設定については、カメラの撮影モードと使い分けでも解説しています。
まとめ
裏面照射型センサーは、従来の表面照射型センサーで光の通り道に存在していた配線構造の影響を抑え、光を効率よく受光部へ届ける技術です。特に画素が小さいセンサーや高画素化したセンサーでは、限られた画素面積を有効に使うために重要な役割を果たします。
受光効率が高まることで、一定の条件下では高感度画質やノイズ性能の改善が期待できます。夜景、星空、室内、野鳥など、光量が不足しやすい撮影では、その利点が注目されます。一方、実際の画質はセンサーサイズ、画素数、読み出しノイズ、画像処理、レンズ性能などにも左右されます。
また、裏面照射型と積層型は異なる技術です。裏面照射型は主に光の取り込み効率を改善する構造であり、積層型は信号処理回路などを重ねることで高速読み出しを実現しやすくする構造です。高速連写やローリングシャッター歪みを重視する場合は、裏面照射型という名称だけでなく、実際の読み出し性能を確認する必要があります。
裏面照射型センサーはデジタルカメラの高画質化を支える重要な技術ですが、撮影結果を決める要素の一つです。高感度画質を重視するならRAW画像、動体撮影を重視するなら読み出し速度、風景撮影を重視するなら解像性能やダイナミックレンジというように、撮影目的に合わせて性能を比較することが、カメラ選びで重要になります。





